よくある夢のよくいる少年?
「…キロ…起きろ…楓…」
目を覚ますとそこは暗闇と、そこにいる一人だけだった。
「…離れ……あいつ…完全にクル…」
途切れ途切れの声に耳をすませた。
「その宿主は…ヮナだ…」
「!?」
罠!?俺は騙されていたって事か!?
それよりも聞きたいことがあった。
「お前は誰だ…?」
全体が黒いオーラのようなものでおおわれていて、口調から性別が男であることくらいしか分からない。
「…ィ…」
「聞こえないんだ!はっきり言ってくれ!」
「だから…ナィ…」
????
分からない…
彼は、必死に叫んでいるようだったが、声は何一つ聞こえなかった。
だんだんと世界がぼやけていった。
彼の姿もだんだんと黒く霞んでいく。
彼は必死に手を伸ばしていた。
……
…ハッ!
ふと目を覚ますと、深夜2時だった。
変な時間に目を覚ましたなぁ。
そう思っていたのもつかの間、夢の事を思い出した。
宿主が罠…とかあいつは言ってたな。
夢にしては気味が悪い。
あいつは誰なんだろうか。
夢に干渉してくる系の魔法でもあるのだろうか。
はたまた、僕の不安が呼び起こしたものなのだろうか。
確かに、少し優しくされ過ぎたような気がしないことも無い。
この部屋をずっと使って良いとか、都合がよさ過ぎないか?
逃げるべきなのか?
不安がよぎる。
でも、昼頃には住民権を獲得する為に役場に行く予定だ。
今の自分は住民権をもっていない。
故に、家畜同然ということではないだろうか。奴隷にするも、売買するも、殺すのも、全てに対しての権限が僕には無いのではないか。
具体的な内容は聞かされなかったが、奴隷に出来るということはそういう事でもないだろうか。
1度想像してしまったバッドエンドは頭から離れない。
考えるなと思うと余計に想像を膨らませてしまう。
シロクマのことを考えるなと言うように。
僕は逃げることを決意した。
そうすることで今の不安からは解消される。
第一に役場へ誰かと行く必要など無いのだ。
案内が必要だから一緒に行くと言ったのだろうと思っていたが、そのあとに人身売買の市場へと連れていくことも考えられない訳では無い。
今の僕にとっては彼らよりも街のみんなの方が、信頼が高いのだ。
変な夢のせいで。
ドアを開けるが、人の気配は無い。
全方位を気にしながら玄関まで行ったが、誰かが追ってくるようなことは無かった。
そして、僕は無事、半日ばかりのセレブ生活から抜け出したのだった。