002 よくある迷子とよくある父親
迷子の女の子と手を繋いで街を歩く。この街ホントでけぇなぁ…。
僕はロリコンでは無いが、リアルでは童貞を貫いているので、女という生物と触れ合っているというのは、その、まぁ、ドキドキしないことも無い。
2人の静寂を彼女が破った。
「私、ミルシー。」
ビクッとしてしまったが、すぐに自分の愚かさを恥じた。
自己紹介を忘れていたのである。
ぼっちだったことが完全に露呈した瞬間であった。
急いでこちらも返答する。
「自己紹介がまだだったね。僕はカエデ!よろしくね!ミルシーちゃん」
この口調でしゃべるの地味に疲れるんだよな…
言ったあとに思った。何だよ。よろしくって。テンプレで返すと自分の言葉が制御出来ないらしい。
「うん…よろし…く?」
少し疑問形で返されたが返答してくれて嬉しかった。
僕らはそのまま街を進んでいった。
二分くらい歩いていると
「ミルシー!ミルシー!いるなら返事してくれー!」
と大声で叫ぶ大男がいた。Oh...So big...
190cmくらいで横にも大きく、なんというか相撲できるノッポ?みたいで少々気味悪かったが、ミルシーを必死に探しているあたり、立派な父親に見えた。
「パパー!!」
さっきまで泣きじゃくっていた女の子が笑顔になった。女の子の笑顔ほど可愛いものはないな。そう確信した。
「ミルシー!」
父親らしき人も笑顔を見せていた。
「パパ!この人がね、一緒にパパのこと探してくれたの!」
ありがとうその一言!!
その一言のおかげで俺はロリコン不審者(?)から正義の味方へとジョブチェンジできるのだ!
「君が我が娘を助けてくれたのか!ありがとう!!本当に…本当にありがとう!!」
心からの感謝だということが即座に受け取れた。
「いえいえ。困っている女の子を助けるのは当然のことですよ。」
ろくな会話ができない俺はテンプレでしか返さない。というか返せない。
「なにかお礼をさせてくれ!俺に出来ることなら何でもしよう!」
ん?今なんでもするって?
そんなリアルでも対人の会話では通用しないネタをいいそうになったが、なんとかこらえて、
「実は僕一文無しなんです…食べ物を少し分けてくれませんか?」
と答えた。泊まるところも欲しいところではあるが、とにかく食い物さえあれば野宿はできる。
だが泊まるところがあっても、飢え死ぬときは飢え死ぬ。人間は衣食住の食に大きく依存しているのである。
「おおいいぞ!うちは宿屋だからな!なんなら、好きに泊まっていってくれ!食い物に関しては豪華なものは出せないがな。一室だけ部屋を貸してあげよう。こんなことしかできなくてすまないな。うちは妻を若い頃になくしちまってな。」
「!?」
食と住確保だ~!!
って嬉しい気持ちがあったが、なんかその、最後の一文のせいで素直に喜べないのが少し悲しい。
「ありがとうございます!生活の場所もなくてどうしようか困っていたんです!」
お礼はしておかねば。
「良かった!ではうちに案内しよう。」
大男はそう言って自分についてくるように指示した。