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97章 はじめ対20人の戦士

とうとうドラゴネル帝国連合軍が、レジェンドの壁のまわりを囲んでしまった。完全な包囲網だ。ねずみ一匹、その包囲網から抜け出すことはできないと思わせるほどの大軍だ。


35カ国の集まりである連合軍は、統一感はなく、さまざまな種族、さまざまな鎧や服装をしながら、各隊ごとに整列して、レジェンドを囲む。


大勢の兵士たちは、笑っていた。


壁なども立派な村だったが、村の1つがドラゴネル帝国連合軍と戦おうとしているのは、滑稽にみえるのは当たり前だった。


彼らからすれば遊びのような雰囲気になっていたのだ。森の中で1万もの兵士たちが負傷していることも、巨大モンスター隊が消息を絶ったことも、大きな連合軍の兵士には、ほとんど伝わってはいない。


40万の大兵力を任せられた総指揮官らしきものが、精強な戦士たち5人を連れて、騎乗しながら、レジェンドの中央の門、西門へと進み出た。精強な戦士たちは、それぞれ恰好や種族が違うので、各国の指揮官たちだろう。


総指揮官は気の張った声でレジェンドに宣告してきた。

「レジェンドは、帝国連合軍に包囲された。この包囲網を抜けることは不可能だ。ここで降伏して、セルフィの首を差し出せば、レジェンドの村人の命は保証しよう」


源は、西門の壁の上に立って返答をする。


「俺の首1つで大勢が助かるのなら、それもやもなしと思えるが、俺が生きているうちは、レジェンドは降伏はしない」


レジェンドの中からセルフィは渡さないという大勢の咆哮が鳴り響いた。


源は、指揮官に提案した。


「俺の首だけがほしいのなら、余興でもやらないか?」


「なに?余興だと?」


「ああ。そちらの手練れ数人と俺が戦おう。そちらは何人でもいい。その余興で、もし俺が負ければ、レジェンドはそのまま降伏するようにしよう。どうだ?」


「命を懸けて一騎打ちということか。だが、お前たち、たかが村人と命を懸けて総指揮官であるこのわたしが戦うわけがないだろう?」


「おい。話を聞いていたか?俺はお前と戦うとは言っていないぞ。お前たちの軍で、腕に覚えがあるものを出して、俺が戦おうということだ。総指揮官は、戦う必要はない」


ドラゴネル帝国連合軍の総指揮官が叫ぶ。

「そちらが勝ったら、俺たちは負けろというのか?」


「いや。余興だと言ったろ。でも、こちらの要件を聞いてくれるのなら、こちらがそちらの精鋭に勝ったら、一日の休戦をするというのはどうだ?」


「お前、気は正気か?35カ国の集められた兵士が、こちらには、いるのだぞ?それらとリーダーであるお前が命を懸けて戦うというのか?」


「ドラゴネル帝国連合軍総指揮官殿が、負けるのが怖いというのなら、この余興は、なしでもいい。だが、恐れもなく、約束を守るという気概をみせるのなら、35カ国の国々も、帝国を認めるだろう。俺を倒せば、この壁とも戦う必要はなくなるんだぞ?」


5人の各国の指揮官らしき戦士たちが、やれと言っているようだ。


そのやり取りを帝国軍も聴こえた者がいたらしく、兵士たちも余興を楽しみたいのか、「やーれ。やーれ」と叫び始めた。


総指揮官は、指示を出して、兵士たちを黙らせると源に叫んだ。

「分かった。その申し出を受けよう。ただ、後悔するなよ。こちらは、約束通り腕に覚えのあるものたちを出すからな。負けたらお前の首はない!」


源も叫ぶ。

「分かった!俺が勝ったら一日、休戦だ!」


遥々遠い土地から歩いてきたドラゴネル帝国連合軍の兵士たちも、休めるかもしれないと喜び騒ぎはじめるものたちもいた。


その話を聞いていたロックが、源に通信マインドシグナルで聞く。


《源。どうしてそんな無茶なことをする?このまま作戦通り、みんなで戦ったほうがいいだろ?》


《このまま戦ったら、一斉に敵は攻撃をしかけてくる

その中で、誰が精強な戦士なのかをみわけて、俺が倒していくことはできない

でも、一騎打ちとして、出てくる奴らは、かなりの手練れのはずだ。それを俺が倒せたら、それだけレジェンドの戦士たちが、そいつらと戦う必要がなくなるということだ。それに俺が勝てば、一日も足止めできるんだぞ》


《そうかもしれないが・・・本当に勝てると思うのか?》


《分からない。ただ、俺も勝てなさそうなサムエル・ダニョル・クライシス最強戦士長は、この部隊にはいないはずなんだ

その他にも、俺に勝てるような奴がいるのなら、レジェンドはやっぱり負けるしかないということだろ?それを確かめるためにも、これはやるべきだと思わないか?》


《命をかけてそれを確かめるというわけか・・・お前らしい考え方だよ・・・分かった。了解しよう》


源は、通信マインドシグナルで聞いているはずの50人にも聞く。


《俺のこの意見、理解してくれるな?》


皆は、返答した。


《《《分かりました。どうかご無事で》》》


伝言係も、その状況をレジェンド全体に通達した。


レジェンドの戦士たちは、連呼しはじめた。


「「「セルフィ!セルフィ!セルフィ!」」」


源は、みんなに手を振りながら、壁の外へと出ていった。



壁の外には、20人の精強な戦士たちが、それぞれ対峙して立っていた。


上半身は人間のようで、下半身は動物のケンタウロスの獣人や10m級の巨人。マジックキャスターのような恰好をした者もいた。水のようないでたちのモンスターや影のような不思議なモンスターまでいた。それぞれは、少しは名を知らしめている者たちだろう。


35カ国のそれぞれの最強だとされる戦士は、各国に留まっているか、この戦いには参加していないはずだ。この20人は、各国の2番手、3番手でもないだろう。


だが、手練れであることは間違いがないはずだ。


源は敵に忠告の意味で話し始める。


「これは余興だと言ったが、命がけの戦いだということを理解して参加してもらいたい。命までは取ろうとは思わないが、負傷させざる負えない。それを理解していてもらおう」


20人は、当たり前だという顔で、それぞれの武器を触り始める。


源は考えた。このドラゴネル帝国連合軍のほとんどは農民兵でこの前に出てくる20人とは明らかに違う。

もし、俺が圧倒的な力で、この20人を倒すことが出来たのなら、農民兵の覚悟は、緩むだろう。化け物級のものが敵にいると解っただけでも、足並みを崩せるかもしれない。


「20人全員と一斉に戦うつもりだ」


20人は、不快な態度を表した。


獣人でブタの顔をして、まるまると太ったものがそれを聞いて嫌悪感を出す。


「何?この20人と一斉に戦うだと?お前、頭いかれているな」


「俺は構わないぞ。ただ、他の見学者に忠告しておく。もっと離れていないと巻き添えを喰うかもしれないぞ」


その言葉を聞いて、大勢が笑った。


総指揮官は、命令した。


「20人全員で確実にあいつの命を奪え。これで勝てば報奨も高くなる。セルフィのとどめを刺したものは、さらに報奨金を上乗せしてやろう」


20人は納得したようで、頷く。


源は愛との認識確認をする。


『愛。相手がどのような戦い方をするのか、それぞれ予想を建てて対処することは可能か?』


『今までのこの世界の情報などからあくまで予想というだけなら、どのような行動にでるかは直接、源の脳へと伝達することは可能でしょう。ですが、その精度は低いものだということは認識してください。源』


『分かった。今出来る予想の情報だけよこしてくれ』


源は、目をつぶると、その20人の姿形やその種族ごとのデーターが解析されたものが、直接脳に伝達され、予想できる情報を瞬時に受け取った。


源は、総指揮官に、声をかける。


「号令は、総指揮官。あなたがかけてくれ」


20人は、少しいら立ちながら、その号令を待ち、源から10mほど離れたところで待機する。


総指揮官は、ゆっくりと手をあげて、叫んだ。


「はじめよッ!!」


その号令と共に、モーションなく、矢が放たれた。一番うしろの後方から三角マスクの青い姿の男が、弓を放ったのだ。その腕の厚みは1mを超え、弓矢に必要な筋肉の張りとその熟練度の高さから、矢が放たれることは、源の脳に情報として伝わっていた。

その矢は通常の矢よりも明らかに大きく威力がある。放たれることが分かっていたとしても、早すぎるほどの予備動作だった。その矢は、真っすぐ源の顔を正確に飛んできた。その矢はかすかに光を帯びていて、マナ力が入っているようだが、源は、リトシスでそのマナを無効化して、矢を右手で掴むと、回転して、マジックキャスターへと投げた。リトシスのパワーを乗せている矢は、真っすぐにマジックキャスターに飛んでいくが、その矢に反応したのか、精強な騎士が、分厚い盾で、矢をはじこうとする。源の投げ返した早い矢に反応して、マジックキャスターを守ろうとしたのだ。やはり、この20人は強い。


しかし、源の投げ返した矢は、その盾を貫き、騎士の右胸元を貫いた。

盾の騎士は、たじろいだ。


その間にも、次々と正確な矢が投げ込まれていく。この短い時間で5つもの矢が正確に源へと向かってくるのだ。


10人の近衛の戦士たちが、源へと走り込んできたが、その矢は1つも味方には当たらず、その隙間を縫って正確に源にだけ飛ばされてくる。その1つ1つを予想された位置を読み解き、グラファイトソードを固定して、弾きながら、左手で1本の矢を取って、また回転しながら、次は、水系モンスターへと投げた。

その矢は、見事、水系モンスターに直撃した。すると、弾けたように水系モンスターがちりじりになって吹き飛んでしまった。


10m級の巨人は、その巨体に似合わぬ早い動きで、走り込み巨大なハンマーを振り回し、源を攻撃するが、源は、そのパワーを利用して、逆にその流れの方向へと力を加えると、3人の近衛戦士をそのハンマーはなぎ倒していった。早い攻撃だけに、吹き飛ばされた近衛戦士3人は、気づいていないかのように飛ばされていった。


あと15人。


源は、巨人は使えると思って、攻撃をせずに、そのまま躱し続ける。


6人の近衛戦士が、それぞれ剣やハンマーで攻撃をしかけるが、源は、片手のグラファイトソードを今回は、2本用意していて、両手で持ったソードで6人の攻撃を受けきった。

戦士6人をこどものセルフィがたったひとりで攻撃を止めたので、帝国側は驚きを隠しきれない。右手に2本の武器、左手に4本の武器が、防がれている。まるで源の剣に武器が絡められているかのようだ。源には、まったく衝撃はない。


そして、源はその近衛戦士の腕を狙ってグラファイトソードを振りぬくと戦士の剣ごと斬り捨てた。


源の死角の右後ろから鋭い槍攻撃を騎士が行おうとしているのを感知して、顔を目の前に飛んできた矢の軌道をソードを斜めに固定して、変えた。後ろを攻撃しようとしてきた相手の顔へと命中させた。その矢は、槍使いの目にささり矢の威力で吹き飛ぶように倒れた。たぶん、即死だろう。


あと14人。


源は、他の5人の近衛戦士たちの攻撃を躱しながら、グラファイトソードに炎弾ファイアボールのマナを注ぐと、ソードは赤く光はじめると、その剣を真下の地面へと深く突き刺した。

ジュシュー!という音が鳴る。


先ほど矢で貫いて、弾け飛ばしたと思われた水系モンスターは生きていて、地面を伝って源の下へと潜り込んでいたので、それを察知して、熱によって一瞬で蒸発させて倒したのだ。


地面にソードを指した源に間髪いれずに、矢と近衛の攻撃が四方八方から攻撃を繰り出して来た。どこにも逃げ場がなく、すべてを防ぐには2本の腕では、足りない。


源は、2本のグラファイトソードをXの形で、重ね合わせると、その重ねた場所からファイアボールが急激に膨れ上がり、まわりの4人と飛んでいた矢を巻き込ませた。その熱量によって矢も融けきった。


巨人は、瞬時に危険だと思ったのか、大きく後ろに後退して、避けきった。この巨人は、本当に強い。


あと10人。


姿はないが、あらゆる気配が、その存在を隠し切れない。視覚では感知できないように透明になっている敵を源の脳では、ハッキリと認識して、源は、その敵に、横一線の攻撃を繰り出す。


その敵は二人いる。どちらの能力なのかは分からないが、ひとりは、斬り捨てられ、ひとりは、源の剣を自分の剣で受けて、8mほど飛ばされていった。


リトシスの攻撃で壊されなかった剣は、初めてで、しかも、受けきられた。もうひとりの透明の敵も強い。


あと9人。


巨人は、早い攻撃でハンマーを振りまわすが、源はそれをすべて受けきる。巨人の太くて筋肉質の左足を狙うように、右手のソードで斬りつけるが、それもかわされることを認識して、途中でソードの軌道を90度変えて、巨人の右腕を斬り落とした。そして、巨人が右腕で持っていたハンマーを源は、奪い大きく振りかざして、回転させながら、空へと投げると、空を飛んでいたマジックキャスターに直撃した。


あと7人。


ケンタウロスは、その様子を見ながら、動き出した。馬の2倍もの速さ100km/hの速度で、源との距離を急激に縮め向かって突っ込んできた。両手には種類の違う剣を持って、源の首を狙って距離を縮めてきたのだ。


源は、まったく同じ速度で後ろにリトシスで移動して、その距離を保ち、ケンタウロスの2本の剣を右手で防いで、左手の剣で首を逆にはねた。


残り6人。


残った者たちは、ケンタウロスのその移動速度とまったく同じ速度で後ろに下がりながら移動した源の攻防をみて、驚いていた。本当なら、このまま脅して、この6人をゆるしてやるところだが、今ここで倒さなければ、この強い6人は、レジェンドの戦士たちに牙を向く。だから、ここで倒さなければいけない。


源は、3人固まっていた。戦士のところに次は200km/hの速さで瞬時に近づいて、ぐるっと回転して、3人の腕や足を切り取った。


普通ならそれに反応もできないはずだが、3人はそれに対応しようと体だけは反応していただけにやはり、強い敵だったと認識できる。


残り3人。信じられない速さで矢を打ち込むアーチャーと影のような黒いモンスター。そして、透明の戦士で、そいつは源の最初の攻撃でふきとばされてから、倒れたままだった。例えみえなくても、源は、音によって相手の位置だけではなく、姿さえも把握できる。この世界の遺跡に閉じ込められた時からの能力だ。


アーチャーは、何度も矢を放ち続けるが、源は、早い矢でさえも認識感知して、剣で弾いていきながら、ゆっくりと歩いて近づいていく。


源は、目の前まで迫った。


「申し訳ないが、君をそのままにしてはおけない。君の片腕だけもらうよ」


と言って、アーチャーの分厚い1mの左腕を斬り落とした。青い三角のマスクをかぶったアーチャーは、地面に倒れ込んだ。


アーチャーが、倒れ込んだその下の影に、源はグラファイトソードを突き刺した。影モンスターが、そこに入ったと感知したからだ。しかし、物理攻撃が効かないのか、影はまた、別の影の中へと消えて、スルリと移動しきりぬける。


総指揮官の影の中に移動したのを感知して、源は、素早くその影に手を置いて、炎弾ファイアボールを発動させた。


叫ぶまもなく一瞬で、影モンスターは、消し飛んだ。


残りは、倒れたままの透明の戦士だけだ。


この戦士は、源のリトシスの攻撃を唯一受け止めて、飛ばされた者だ。身体能力は分からないが、パワーは相当なものだと思われる。


源は、透明の戦士に聞く。


「腕か、足どちらがいい?」


ほとんどの兵士は、透明の戦士に気づいていないので、源が独り言をいっているかのようにみえていた。


透明の戦士が、言う。


「分かった。俺の降参だ・・・もうこの戦争には俺は絶対にかかわらないからゆるしてくれ」


「すまない・・・その言葉を信じることはできないな。お前は、俺の攻撃を防ぐほどの強さを持っているから見逃すわけにはいかない」


「わ・・・分かった。じゃー俺はお前たちレジェンドに降る。お前たちの仲間になる。それでも、信用できないのなら、俺を牢屋にでも入れろ。俺は透明だが、見えないだけで、体はあるから壁などは通過することは出来ないんだ!」


『愛。今のこいつの発言は、嘘か分るか?』


『源。声音と微妙に感知できる振動では、嘘は言っていない確率が高いです』


「分かった。じゃーお前は、牢屋に入ってもらう。戦争が終わったら必ず解放しよう」


「ありがたい。絶対に裏切ったりはしない」


源は、グラファイロープでその透明戦士の腕をうしろで縛って確保した。その戦士の所持しているものも透明になる効果があるようだったので、グラファイロープも透明になって消えた。


最後に、巨人だ。


10m級の巨人の右腕を肘から斬り落としたが、それだけなら、まだレジェンドと戦うかもしれない。源は、巨人のもとに行って、聞いた。


「お前は俺に片腕を斬られたが、戦争がはじまったら、それでもまだ戦うつもりか?」


巨人は、太くい声で答える。


「ああ。俺は死んでも戦争をして、戦い続ける。戦いこそがおれのすべてだ!」



源は、グラファイトソードで、巨人の両足を斬り捨てた。


「これでこの戦争では戦えないだろう。いのちまでは取らない」



源は、ふぅーっと深いため息をついて、総指揮官を睨みつけた。


「お前たちが選んだ20人を目の前で倒した。約束は、守ってくれるんだろうな?」


総指揮官は、顔を歪めて、答える。


「俺が許可したのは、たった一日だ。明日の夕方。お前たちに総攻撃を仕掛ける。この20人がドラゴネル帝国連合軍の精鋭だと思うなよ。こいつらは、ただのコマにしかすぎない。中級レベルの者たちだ。お前たちのいのちは明日で終わると知れ!」


源は、透明戦士を連れて、リトシスで宙に浮いて、レジェンドへと戻って来ると、レジェンド内で、大歓声が起こった。


うおおおおおーーー!


20人の精鋭をたったひとりで倒しきったセルフィの強さを目の当たりにしたからだ。そして、ドラゴネル帝国連合軍は逆に静まり返っていた。目の前で起こったことが理解できないようだった。小さな少年が、精強な戦士を20人も、5分とかからず、倒しきったからだ。


源には、返り血一滴、その体に浴びていなかった。

20人の戦士たちを殺そうとは思っていなかった。腕などを斬って生かしておこうと思ったが、予想以上に、彼らが強かったのと、その生死の緊張感から手加減することも出来なかったのだ。


勝利して、一日の時間を手に入れたが、源の心の中は、まったく晴れるわけではなかった。相手が以前リリスたちを襲った盗賊などなら気も落とさないが、今回は相手が悪なのかの判断もできない。彼らからすれば、こちらが悪なのだから。


司祭様が、そのセルフィの気持ちを汲んだのか、話しかけた。


「あの20人は、日々の鍛錬を積んで、戦うことを目指した戦士たちでしたのじゃ。戦いの中で死ぬことこそ、彼らの本望ですじゃ。それにセルフィ様は、同じ条件どころか不利な条件で正々堂々と戦われ勝利されました。気に病むことはありません」


「司祭様・・・ありがとうございます・・・」


あの20人を残していたら、必ずレジェンドの多くが傷つけられていただろう。仲間が傷つかないように処置できたことを良しと無理やり考えようと源は考えた。

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