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95章 王族の権利

リタ・パームが、手を挙げた。


「セルフィ。少しいいかしら?」


「はい。何か気になることでもありましたか?」


「あなたがそこまでの想いで、苦しんでいたとは思わなかったから言えなかったけれど、リリスとも話し合った結果、みなさんには、わたしとリリスのことを打ち明けようとと思うの」


「打ち明ける?何のことでしょうか?」


「実は、わたしとリリスは、妖精族の王族の末裔なの」


村雨有紀がケケケケっと笑いはじめ一言いった。


「ケイト・ピューマ・モーゼス。あはははは」


サネル・カパ・デーレピュースは、慌てて村雨有紀を止めようとする。


「これ!突然なに笑いだしている!やめんか」


リタ・パームは言った。


「村雨有紀殿の仰る通りです。わたしとリリスは、ケイト・ピューマ・モーゼスの意思を受け継いだ王族なのです」


村雨有紀は言う。


「龍王が認められた龍王騎士団長のひとり、ケイト・ピューマ・モーゼスは意思を託していた。それは失われた種族、妖精族に伝えられ、隠され、龍王と同じように、ケイトは消えたのですよ。正統なるこの広大な土地の継承者、ケイト・ピューマ・モーゼスの意思の生き残り、モーゼス家だということです!」


源は、少し混乱しながら、聞いた。


「ちょっと待ってくださいよ・・・えと・・・確か、ボルフ王国の前の国、大共和ケーシスは、シンダラード森林も含めて、広い土地を龍王から認可されて、国を形成していたけれど、のちにボルフ王国が誕生して、妖精族は、消えてしまったと聞いたけれど、リタさんや、リリスは、その妖精族で、しかも、ケイト・ピューマ・モーゼスの子孫だということですか!?」


リタ・パームは、頷きながら、答える。


「その通りよ。セルフィ。わたしとリリスには、二つ名があって、パームというものは、本当の名前ではないの。わたしは、リタ・ピューマ・モーゼス。そして、リリスは、リリス・ピューマ・モーゼスなのよ」


それを聞いて、サネル・カパ・デーレピュースは、すぐに座り直し、頭をさげた。


「ケイト・ピューマ・モーゼスの子孫、モーゼス家の王族。女王様とは知らずに拝謁していました。申し訳ありません」


ドラゴネル帝国の上院議員が、頭を突然さげる姿をみて、源も他の者たちも驚いた。村雨有紀だけが笑っている。


村雨有紀は、言う。


「龍王の意思と連動しているセルフィ様とケイト・ピューマ・モーゼスの意思を受け継いだ王族が、この場所に偶然居合わせる?こんなことありえるわけがありません。あはははは。これぞ運命。繋がった意思です」


司祭様も、驚いて、頭を下げ始めた。


「リタ・ピューマ・モーゼス様。リリス・ピューマ・モーゼス様。知らなかったこととは言え、今までの非礼をお詫び申し上げますのじゃ!」


リタ・パームは言った。


「お二人ともおやめください。以前はこの土地の主だったケイト・ピューマ・モーゼスでしたが、今はキグダム家に政権を取られて、わたしたちは一介の民でしかりません。頭をお上げください」


ふたりは顔を上げた。


源は言う。


「ということは・・・別にレジェンドがボルフ王国の王族を撃つということではなく、もともとの正統な王族であり、龍王の意思にも通じているモーゼス家が、主体となってボルフ王国の王族を撃つとしたら、道理にかなっているってことじゃないですか?」


リタ・パームはうなずく。


「そういうことね。セルフィ。わたしたちは、長らく妖精族であること、ケイト・ピューマ・モーゼスの子孫であり、王族であることを隠して来たの。だから、セルフィにも今まで言わずに来てしまっていた。わたしの命は特に重要視はしていないけれど、娘のリリスは、妖精族の中でも特別な存在なの。ケイト・ピューマ・モーゼスの正当な後継者であるとわたしも思っている。この子だけは、絶対に守らなければいけなかったの。セルフィ。あなたのこともどこまで信じていいのか慎重に判断する必要があった。分かって頂戴」


リリスも謝る。


「みなさん。黙っていて、ごめんなさい・・・」


村雨有紀は、言った。


「意思が深いところでは、同じ種族の次のランクへと駆け上がる数度目の生命が誕生する―――」


村雨有紀が言っている言葉の意味は分からないが、リタ・パームの言っている意味は分かる。妖精族であり、王族であったふたりが、その秘密を打ち明けられるはずもない。


「リタさん。そして、リリス。あなたたちの気持ちはよく分かりますよ。ここで打ち明けてくれたことさえも、感謝するしかありません。ふたりが正統な王位継承者であると名乗り出て、ドラゴネル帝国でも、それが認められれば、今のボルフ王国の王族を追放させられるわけですね?」


サネル・カパ・デーレピュースは、断言する。


「確かにそれは正当性があり、ドラゴネル帝国に反旗を翻したボルフ王国の王族を糾弾するのなら、使えます。しかし、大共和ケーシスを後押ししたのも、ドラゴネル帝国ですが、大共和ケーシスを滅ぼしたのも、ドラゴネル帝国なのです。驚異だという認識だった大共和ケーシスを後押しする政治家たちが、今のドラゴネル帝国にいるのかが問題になります」



「リタさんやリリスは、毎週のように龍王の意思である学びの場で、龍王の書簡を理解しようとされています。ドラゴネル帝国に反旗を翻そうとは考えてはいません。それでも通じないのでしょうか?」


「ドラゴネル帝国が、龍王の意思をみなが受け継いでいたら、それは通じるのですが、今のドラゴネル帝国は、龍王の意思は消え去っていて、別の利権が後ろにはびこっているのです

利用できれば、それを利用するが、利用できないのであれば、邪魔でしかないとみることでしょう・・・わたしは、龍王の意思を受け継いだものなので、もちろん、リタ様とリリス様の後押しをさせてもらいますが、帝国がそれを認可するかは、やはり別問題です・・・。ただ、ドラゴネル帝国は、共和制の国家元首ですが、皇帝という帝制である両天秤をいったりきたりしているのです

そして、戦争は特に帝制が、採用され、統括して、軍事面でも強さを持たせようとしているので、ドラゴネル帝国皇帝に伝えることは出来るはずです

皇帝から認可が出れば、今回の戦争は別の意味を持たせることもできるかもしれません」


この世界の帝政の意味は現世と同じなのかは分からないが、サネル・カパ・デーレピュースの話からすると、独裁的な権限を皇帝が戦争時には持てるようになっているようだ

共和制は戦争がない時には、それなりに意味をなして民主主義のように役立つが、多様な思想が飛び交うので、スピードがない

しかし、戦争時にそのような決断力の無さは致命的になるから、独裁的な権限を皇帝に持たせて、スピードのある対応を持たせるということだ。


日本のように何をしても、法律と照らし合わせてからでないと行動できないというものは、戦争などできない。その間に攻められて終わる。


ドラゴネル帝国は、それを回避しているということだろう。


だからと言って、皇帝が理解を示すかは解らないし、理解を示したからといって、すぐに戦争への影響力となるとは思えない。


帝国の本体は、もうすぐそこまで来ていて、レジェンドに付くのも数日後だ。9000kmも離れた帝国に行ったり来たりしているだけで、すでに手遅れなのだ。


「先ほども言われていましたが、今回の遠征には、皇帝は出陣されているのですよね?」


サネル・カパ・デーレピュースは、答える。

「はい。皇帝陛下は、この遠征軍の後方に陣をひいています

ボルフ王国の反乱を機に、他の国が攻め込んでくる恐れがあるために、帝国の主力部隊は、今回は出てきてはいないのですが、皇帝陛下も出陣されているのです

その皇帝陛下を守るために、ドラゴネル帝国最強戦士長サムエル・ダニョル・クライシスも、今回は出兵をして、後列に参列しています」


リタが声をあげた。


「サムエル・ダニョル・クライシスも・・・!?」


「確か、悪魔族と匹敵するほどの戦士だと聞いたことがありますが、本当ですか?」


「それは本当です。3年前、大死霊だいしりょうハデスの王、ディア・ガル・ア・ダリウスヘルと一戦交えています

勝ち負けこそ決まりませんでしたが、サムエル・ダニョル・クライシス戦士長は、悪魔族の力を抑えきり、他の兵士たちの戦力さでハデスの侵攻を食い止めたのです」


村雨有紀が間に入って話す。

「10年ほど前に、サムエル・ダニョル・クライシス戦士長の生命数値は600を超えていたという噂があります

今はどこまで生命数値を上げているかは分かりませんねー

戦士長クラスになるとその能力の開示は、国家機密にもなるので隠すために、アイテムによって鑑定拒否されています」


「えっと・・・生命数値とは何でしょうか?」


司祭様が源に答える。


「生命数値とはその個人の生命力を総合した時の数値ですじゃ

あらゆる基本レベルを踏まえて総合的な数値にしたものだと言われていますのじゃ。スキルの1つ鑑定で個人をみれば、見える最初の数値ですじゃ」


あまりよく分からないが、たぶんレベルみたいなものかもしれない。

そして、サムエル・ダニョル・クライシスは、10年前は、600レベルを超えていたということだろう。

同じ1レベルでも各自の能力値が変わるというからレベルでは強さは分からないというけれど、最強戦士といわれる存在の1レベルの能力値の幅が低いとは思えない。俺自身、鑑定を1度も受けたことがないから、まったく強さの基準が解らない・・・。


村雨有紀は、楽しそうに話す。

「ちなみに、龍王の生命数値は2000を超えていたという記録がありますよー」


2000レベル・・・さすが世界を統一しただけあって半端ではない・・・


「今回の戦争にも、ドラゴネル帝国最強戦士長サムエル・ダニョル・クライシス殿は、当然出てくるということですね?」


「それはないかもしれません」


「なぜですか?」


「彼は切り札としての戦力であって、彼が出てしまえば大方の戦いが終わってしまうので、帝国の力の底上げの妨げになると出て来ない場合が多いからです

また、国家規模の戦力の戦士長の能力を35カ国の連合軍の国々に見せるわけにもいかないのです

戦士長の戦力が測れない以上、他の国が反乱を起こさないための抑止にもなるからです

それに今回の戦争は帝国自体は、それほど驚異だとは思ってはいません。帝国の最強軍団といわれている騎士たちの多くは、帝国に残っていて、サムエル・ダニョル・クライシス戦士長だけが、今回出陣してはいますが、もし、帝国になにかあれば、すぐに戻れるように、戦士長と皇帝陛下は遠征軍の最後尾に陣をひいているのです」


戦争を終わらせてしまうほど・・・・強いのか・・・でも、最後尾にいるということだから、今回は出て来ないかもしれない。

それに出てきても、俺にはリトシスがある。この能力は、未だに出会った人は誰もみたことがないと驚くものだから、レア能力のはずだ。

悪魔族と言えども、持っていないのではないだろうか。

リトシスさえあれば、敵からの攻撃は無効化され、こちらはダメージを受けないわけだから、負けることもないはずだ。

帝国連合軍80万が兵量不足で撤退するまでの間を守り切れるのかが重要だということだ。


時間稼ぎをすれば、それだけサネル・カパ・デーレピュース上院議員殿が、総指揮官や皇帝に発言することが出来るのだから、かすかな希望の1つとして、少し期待しよう。


サネル・カパ・デーレピュースは真剣な面持ちで、言う。


「レジェンドが仕方なく今回の戦争に繰り出されていしまい本当は帝国とは戦いたくはないという意思は分かりました

そして、帝国と同じで、レジェンドはボルフ王国の王族に疑念を持ち、大共和ケーシスの王族もまた、ボルフ王国に疑いを抱いて、立ちあがっているということを報告したいと思います。これでよろしいでしょうか?」


源も、リタも頷く。


「ですが、ドラゴネル帝国は、大共和ケーシスを倒した後、妖精族をボルフ王国と共に追い詰めようとしたと聞きました。今回報告することで、リタさんやリリスが、同じように追い込まれるということはありませんか?」


「申し訳ありませんが、何とも言えません。ただ、追い込もうとした時代は、相当前の時代であって、今は妖精族をドラゴネル帝国が弾圧していたことさえも、知らないはずです

大共和ケーシスは歴史的には悪い国だったという内容にはなっていていも、その中身までは曖昧なのです。村雨有紀は、知っていたようですが、妖精族の経緯はわたしも知りませんでした

そして、ドラゴネル帝国に前向きである主旨をわたしから伝えますから、帝国から追い込まれるとは思えません。その可能性はいくらかはあるかもしれませんが、帝国にとって利益になりえるので、大丈夫かとは思いますが、リタ様は、よろしいでしょうか?」


「はい。どちらに転んでも後悔はありません。サネル・カパ・デーレピュース上院議員にお任せします」


「では、早速、軍に戻ってこのことを総指揮官皇帝陛下に報告したいと思います」


源は言った。


「では、わたしがそこまでお送りしましょう。どの乗り物よりも、早く送り届けることがわたしになら出来ます。もちろん、騎馬や馬車も一緒にです

目的地の10km地点からはわたしは入らないとお約束します。そうすれば、サネル・カパ・デーレピュース上院議員殿も、体裁ていさいが保てるでしょう」


「ありがとうございます。ですが、そのようなことが出来るのですね・・・」


そして、黒いコートの者を呼び寄せた。


「ソロモン。もう戻るぞ」


ソロモンか・・・世界の知恵者、ソロモン王と同じ名前とは凄いなと源は思った。


源は、話を終えて、リトシスを使って、13人と騎馬と馬車を浮かせて、最高速度で、目的地10km付近まで連れて行った。


サネル・カパ・デーレピュース上院議員は、もの凄く驚いていたが、村雨有紀は、とても興奮して喜んでいた。

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