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87章 決断

リリスが、リタと一緒に、レジェンドに来て、血相を変えた顔で源に報告してきた。


「セルフィ!貧民地の多くの人たちが、徴兵されて、帝国と戦争をさせられようとしているわ!レジェンドが提供した鉄の武具を着ている農民兵もいる」


源は、やはり、帝国が来ているのは、本当のことで、しかも、戦争をしようとしているのだと思った。もう内密どころか全体に知れ渡っている。


「今、帝国の使者が来て、教えてもらったばかりだ。シンダラード森林の南1000km地点に、80万人の帝国連合軍が、こちらに進行しているらしい・・・35カ国が参加しているようだ」


リリスは、その内容を聞いて、絶望した。

「なんてこと・・・」


セルフィとリリスのやり取りをレジェンドの人たちが耳にして、次々とその話は伝言されていき、人々が集まり始めた。


「どういうことですか?セルフィ様!」


「今、ボルフ王国の使者が来て、ボルフ王国と帝国の戦争を告げられました

ボルフ王国は、レジェンドは参加しなくてもいいと言っていますが、貧民地からは6万人が徴兵で参加するようにいわれています」


その話を村人が聞いて騒めき出した。


「わたしは、これからボルフ王国国王に会って、こんな無謀な戦争は、やめるように忠告しにいく予定です。ボルフ王国は、降伏するしか道はないなずだからです

その後の詳細は、帰ってからみなさんにご報告しますので、お待ちください」


源は、主要メンバーを全員呼び寄せた。地区長7人。村長司祭様。ロック。リリス・パーム、リタ・パーム、そして、ローグ・プレスだ。バルト・ピレリリは、ボルフ王国にいる。


リリス・パームの冒険者アドベンチャー仲間で、護衛の仕事をこなしているエリーゼ・プルとバーボン・パスタポも、カーボン製のレジェンドからもらった鎧を装備して集まった。

彼らもボルフ王国とドラゴネル帝国の戦争の真意が知りたいと一緒の動向を願ったので許可した。


源は、使者からの情報をみなに説明して、正装して、付いてきてくれるように頼む。


レジェンドの守りは、戦士たち200人とウオウルフに任せ、隊長たちに一任した。

それぞれが、鎧などを着て、正装し、準備を整えてくれた。


源は、使者も連れて、リトシスで空を飛んで移動する。最高速度の200km/hで空を進む。


その移動している間に、打ち合わせをする。


「ボルフ王国は、なぜこんな無謀な戦争を続けるつもりなんだと思う?」


皆は、その答えがすぐに見つからないのだろう。黙ったままだ。


「明らかに、これは負け戦で、6万人の農民兵も大勢が亡くなるはずだ。なのになぜ降伏しないんだ・・・」


みなが黙っていたので、ボルフ王国の使者テェアリア・パラディンが、割って入ってくる。


「我慢の限界というものかもしれません

長らくドラゴネル帝国に従属され続け、農民兵にしわ寄せを強いてくるしかなかった。その我慢が、セルフィ様の行動によって感化され目覚められたのかもしれません」


その話を聞いても、みなは、黙ったままだった。


源は話す。


「確かテェアリアという名前だったね。テェアリア。君には悪いけれど、俺はボルフ王国がやってきたことを知っているから、そういう考えではないとしか言えない」


使者テェアリア・パラディンは、ボルフ王国は何をしたのだろうと困惑した顔で質問する。

「ボルフ王国がやってきたこととは、どのようなことですか?」


「本当は、ボルフ王国の使者の君の前で言うことではないけれど、僕は君が誠実な人間だと思って話すよ

シンダラード森林に進行してきたボルフ王国は、1000人の自国農民兵を殺すために、わざと戦争に連れて行き、ウオウルフと戦わせたんだ

ウオウルフは、コボルトよりも数倍の強さを持つ。なので多くの農民兵は何も出来ずに死んでいった

でも、ボルフ王国はまったく農民兵を助けようとはせず、それどころか、後ろからコボルト4000匹に攻撃させて、農民兵を虐殺し始めたんだ」


「まさか・・・そんなこと・・・」


「これは本当のことだよ

そして、俺は虐殺されていく農民兵をみて、敵なのに、いたたまれなくなり、ウオウルフたちに攻撃をやめさせて、農民兵が前から逃げられるようにしたんだ。それで400人ほどの農民兵が生き残れた

その後、俺たちは、コボルト4000匹と戦ったが、400人の農民兵は、ウオウルフの味方になり、一緒に戦ってくれた

彼らは逃げたことで、ボルフ王国から反逆者とされてしまって、生きる目的を失って、最後に俺たちに恩を返すために、戦う選択をしてくれたんだ

その後、コボルトに俺たちは圧勝したことで、ボルフ王国第三王子サムジが、俺の頼み事を聞いてくれると発言したから、俺は農民兵を国に返してあげるように頼んだ

そして許可され無事に彼らはボルフ王国に戻された。でも、ボルフ王国は、俺に気づかれないように多くの盗賊や外部の冒険者アドベンチャーを雇って、その生き残った400人の農民兵をボルフ王国の民には内緒で、秘密裏に殺し始めたんだ」


使者テェアリア・パラディンは驚いた顔で再確認しようとする。

「それは本当の話ですか!?」


「嘘じゃない。そこにいるリリス・パームのフィアンセは、農民兵の生き残りのひとりだった。彼はリリスの目の前で突然襲われ殺されたんだ」


「・・・そんな・・・」と声をもらす。


エリーゼ・プルとバーボン・パスタポも、はじめてそれらの話を聞いてテェアリア・パラディンと同様に驚いた。リリスの顔をみて、そういう裏があって、リリスは襲われ死にかけて、フィアンセを殺されていたということをやっと理解した。ふたりは、リリスのことを考えると、心を痛めた。


「リリス・パームは、命をかけて、生き残った農民兵190人を連れて、レジェンドに逃げてきた

だが、ボルフ王国は、その脱出をゆるさないとして、雇った盗賊に追わせて、逃げる農民兵100人を殺した。190人中、85人が無事にレジェンドに来て助かった

俺は、無事に返したはずの農民兵が暗殺され続けていることをはじめてリリスたちから聞いて、ボルフ王国に向かったんだ。君もみたんじゃないか?巨大な氷守アイスドームがボルフ王国の上空に現れたのを」


ボルフ王国の使者テェアリア・パラディンは答える。

「確かにみました・・・」


「俺は約束を破った第三王子サムジを脅して、農民兵たちの命を狙うことをやめさせ、その家族3000人をレジェンドでひきとったんだ。そして、今がある。ここまでしてくるボルフ王国が正義のために立ち上がったとは、俺には到底思えないんだよ」


使者は、反論できずに、悩み下を向いた。


「ヘタをしたら、今回出兵している6万人を殺すのが目的かもしれない」


「まさか!!そんなことは・・・」


「正直、彼らが何を求めているのか、皆目見当もつかないよ。だからみんなも黙っているんだね

俺の行動のおかげでボルフ王国が勇気を出して帝国に牙を向いたのなら、それは俺たちから言わせれば、俺のせいで戦争になると言われているようなものなんだよ」


司祭様は言ってくれた。


「セルフィ様は正しいことを行っただけ、それを悪意で利用するほうが悪いのですじゃ。セルフィ様のせいではござりませぬ」


「はい。ありがとうございます」


使者は、黙ってしまった。ボルフ王国の正義を信じていただけに、裏の出来事を知ってしまうとまったく見方が変わってしまうからだ。エリーゼ・プルとバーボン・パスタポも少なからずボルフ王国の大義を信じていたので、そこまで酷いとは思っておらず、困惑した顔になる。


源たちは、ボルフ王国に付くと、貧民地の人たちが「セルフィ様!」といって集まってきてくれた。


そして、これからボルフ王国に事情を聞きに行くと言って、主要メンバーと城に向かった。




使者テェアリア・パラディンは、城の兵士に話をして、国王に謁見できるように手配してくれた。


源たちは、城の中に入り、宮殿大広間の場で、片膝をついて、ボルフ王国国王に謁見する。


「使者を派遣し、ボルフ王国の危機だということで、何が起こっているのかを把握するために、今日はやってきました。国王、ドラゴネル帝国とのいくさを考えられているのでしょうか?」


ボルフ王国国王は、言った。


「その通りじゃ。セルフィ殿」


「ドラゴネル帝国は、80万もの大軍で1000kmまで迫ってきているということですが、それに勝利する手立てがあるということでしょうか」


「それは、軍事戦略上、申すことができぬ。レジェンドは、戦争には参加しなくてもよい。無理にわたしはセルフィ殿を戦争に出させようとは思っておらぬゆえ」


戦争に参加しないものには、情報は流せないとはね付けられた。戦争に参加しないものの意見は聞かないということだ。確かに簡単に作戦を教えられるわけがない。


「ですが、国王。相手は35カ国です。それでもボルフ王国はこの戦争をやめないのでしょうか」


「わたしは、セルフィ殿。お主に出会って、貧民地の人間たちにも希望があると思ったのじゃ。そして、そんな希望を持った農民たちをずっと苦しめていくのは、忍びない。だから今回は立ち上がった」


源はその言い草に、怒りを覚えて、言葉を吐き出した。

「戦争をわたしのせいにするということでしょうか?」


セルフィの言葉に、場は、氷付いた。


「セルフィ殿のせいではなく、セルフィ殿のおかげだと申しておるのじゃ」


さらに源は、怒りを抑えながら、追及していく。


「わたしが関係ないことは、分かっています。なぜなら、ドラゴネル帝国は、もうすでに1000km地点にまで進行しているからです。8000kmを一日100kmの速度で船を使い移動したとしても、数カ月もの時間がかかってしまう

数カ月前には、わたしは、貧民地の開拓を成功させてもいません。わたしたちへの建前の言葉で、はぐらかすことはおやめください」


「確かにそうじゃ。だが、お主の噂は、第三王子サムジから聞いておったのじゃ。そして、わたしは調査を依頼し、その調査からお主が、農民を見捨てない者だということを知っておった

もともとわしも、民には解放を与えたいと願っていたからこそ、セルフィ殿のような存在に背中を押された気分で行動を起こしたのじゃ」


誤魔化す言葉にも限度がある。無理やり誤魔化そうとしているだけの言葉にいら立ちを覚える。


「ただの小さな村の人間から影響を受けただけで、ドラゴネル帝国に弓を引くわけがないではありませんか。以前からこのことは、計画されていたとしか思えません。そして、それをドラゴネル帝国に感づかれてしまったということでは、ありませんか?」


ボルフ王国国王は、顔を険しくして答える。

「どんな国だろうと色々な想定はするものじゃ。それを計画というのなら、お主の言う通りじゃろう」


源は、断固たる意思で、ハッキリと宣言した。


「わたしたちレジェンドは、決して戦争には、参加いたしません。何の説明もなく、突然降って湧いて出たようなものに、手助けはできないからです。わたしたちレジェンドは、ボルフ王国とドラゴネル帝国、どちらの味方でもなければ、敵でもありません!」


「使者にも伝言を届けたように、レジェンドは戦争に参加しなくてよろしい。ただ、ボルフ王国との貿易は続けて行ってほしい。ただそれだけじゃ」


源は、2カ月後の惨劇を予想して、怒りのゲージが振り切れそうになる。

だから、ボルフ王国の王族を今ここで殺そうかと思った。

源からすれば、ドラゴネル帝国80万と戦うよりも、ボルフ王国1万と戦うほうがどれだけ楽だろうか。ペルマゼ獣王国やワグワナ法国があわさったとしても、ドラゴネル帝国と戦うよりはマシだ。

そうすれば、貧民地の人たちの命も助かる。ボルフ王国の王族の首を差し出せば、帝国も納得するかもしれない。話にだけは応じてくれるだろう。


しかし、今回に関しては、ボルフ王国側が、決定的な悪だというわけではない。ボルフ王国から出される理由のドラゴネル帝国の横暴も、どこまで本当のことなのかは分からないが、すべて嘘ではないだろう。レジスタンスなども帝国に作られてしまい、監視され続けるのは、嫌なものだろう。それも分からなくもない。だが、それで貧民地の20万人の多くが死んでいいわけがない。


殺すか・・・?


と源は自分の左腰にある剣を少しみる。


だが、それこそ横暴だ。突然、横から入って来た村の人間が、隣の国の王族の選択が気に入らないからといって、王族を殺していいわけがない。それは、力で支配する考え方だ。


どのような作戦があるのかは知らないが、作戦内容を聞くためには、戦争に参加しなければいけなくなる。


源は悩む。参加して、勝利できるように尽力すべきか、それとも、観てみないふりをして、レジェンドだけ助かるのかだ。


しかし、源はもう決めていた。

前にリタ・パームが言っていたように、すべてを上手く動かせるわけがない。レジェンドを守ること、それが自分の勤めで、ボルフ王国の農民を守ることに、手出ししたくても、他国のことだから出来ないのだ。


「国王。鉄の武具の貿易はさせてもらいますが、わたしたちは、戦争は反対です。ですから、ボルフ王国とレジェンドが武器のやり取りをしているということは、内密にしていただきたい」


「分かった。そのようにしよう」


源は、自分なら未来を変えられることも解っていても、手出しできない苛立たしさを自分に感じながら、マントを翻して、立ちあがり、その場をみんなと一緒に立ち去った。


もう、戦争を止めることはできない。悲惨な未来が貧民地には待ち受けているだろう。せめて、レジェンドが巻き込まれないようにすることしか自分には出来ないのだ。


源は、城の廊下を歩きながら、悔しそうに、リタ・パームに言った。

「すみません。やはり僕は、貧民地の皆さんを見捨てるしかありません」


リタは、笑顔でセルフィに言った。

「いいのよ。それが正しいことよ。あなたは必ず、手出しせずにいることよ」


悔しいが、それしかできない・・・。



源は、貧民地の農民たちに、戦争を止めることができなかったと報告した。みなは落ち込んでいたが、しょうがないと納得してくれたようだった。逆に源に感謝を言ってくれる人たちまでいた。


何も出来ず、この人たちを見捨てなければいけない自分に怒りを覚える。


源は、ここ数カ月間、一緒に前に進んできたこの貧民地の人たちを捨てるのだと心を痛烈に痛めた。それぞれが努力して、我慢してやっと農業に光りが差し込んだと思ったら、次は戦争だ・・・。しかも、10歳そこそこの子供たちも戦争に出ていく。大人の笑顔も、こどもの笑顔も、戦争がすべてを奪っていくだろう。救うことはできないのだ。彼らと数カ月、ともに暮らし、仲良くなったことが、源を苦しめる。



―――主要メンバーと共に、レジェンドに戻り、ロックハウスに集まって、会議を開いた。


セルフィの今までみたこともない険しい顔をみて、主要メンバーもセルフィの気持ちを察する。


源は、感情を無理やり押し殺しながら、冷静な言葉で話し始める。


「今後、どのような状況になるのか、予想してみましょう

10歳から徴兵に出された6万の農民兵は、レジェンドの鉄の防具を着て戦うことになるでしょう

ボルフ王国に今まで通り武具を提供することはいいことでしょうか?

提供できても3万人分の武具になるでしょう。残り3万は、武器は与えることは出来ても鎧は与えられないでしょう」


C地区長が、発言した。

「レジェンドで配れた女性でも使えるボウガンなどを提供してはどうでしょうか?20万人がもし、そのような小型のボウガンを持っていたら、それだけでかなりの戦力になるのではないですか?」


源は考えて答えた。

「いい考えだとは思います。かなりの戦力UPになるでしょう。ですが、それでも、ドラゴネル帝国には勝てないでしょう

勝てないのに、ヘタに女性こどもも武器を持っているという状況にしてしまえば、ドラゴネル帝国はどのような行動にでるでしょうか

実際には、解りませんが、徹底的にその20万人を粛清しはじめるのではないでしょうか

だったら、初めから武器を持たせずに、降参させたほうが、戦争に参加しない人たちのためになるのではないでしょうか」


C地区長は納得した。


「確かにその通りですね。では、戦争に参加する農民兵の武具に取り付けるのは、どうでしょうか」


「それもいい案だとは思うのですが、そのような効果的な武器を開発し、与えたレジェンドをドラゴネル帝国は、ゆるすでしょうか

ボウガンを与えても、ドラゴネル帝国には、勝てないでしょう。戦争後、レジェンドが責任をとらされて、村を滅ぼされてしまうなども考えられます

ですから、ボルフ王国から注文されない限りは、こちらからの新しい武器の提供は控えたほうがいいかもしれません

すみません。僕は、レジェンドを守ることしかできません。とてもじゃありませんが、80万の軍勢に勝てません。それに、わたしは何も知らないので、ドラゴネル帝国が悪いとも思えない。相手が悪なのかもわからないのに、その相手を殺すことはできません。ですから、わたしは貧民地の方たちを見捨てようと決断しました」


リタ・パームは、言った。


「みなさんも、セルフィの言っていることを守ってください。レジェンドの人々は、レジェンドだけを守るように割り切らなければ、戦争に巻き込まれ、滅ぼされてしまいます。セルフィの選択は、正しいのです」


ローグ・プレスは、言った。


「でも、リタさん。あなたは、そんなことを言って、ボルフ王国に戻るんですよね?自分を見捨てろと言っているようにしか聞こえませんよ?」


「ローグ・プレス。わたしはそう言ってるのよ。わたしも見捨てなさいってね。それがレジェンドのためなのよ。すべてを守り切れるわけがないでしょ」


ローグ・プレスは、リタ・パームの決意に、口をつぐんだ。何も言い返せない。そして、自分はレジェンドに逃げ延びた農民兵として、後ろめたさを感じる。


C地区長は、確認するかのように聞く。

「では、ボルフ王国との武器の貿易もやめたほうが安全ではないですか?」


源は答える。

「確かにそうですね。ですが、ボルフ王国の願いは、戦争にレジェンドは参加しなくてもいいが、貿易だけは続けてほしいということでした。そこまでは、断り切れなかった

農具だけの装備で、戦争にいかせられない。そこだけは提供してあげたいと思うんです

ですが、その貿易は、秘密裏に行うように国王には伝えておきました」


「そういうことですか。ボルフ王国が求めるものは提供するが、ボルフ王国も驚くようなボウガンのような技術までは、提供はしないほうが無難だということですね」


「はい・・・結局、見捨てるということです・・・」


司祭様は、予想される最悪の状況を語ってくれた。


「たぶん、むごいことになるのでしょうな

ボルフ王国に帝国軍が攻め込めば、兵以外の命は助かっても、その後、食料は、80万人の帝国軍人のために没収され、食べ物もないまま、14万人は、放置されることになる。どれだけの人が死ぬことでしょうか・・・」


司祭様のいう通りだと源は思った。ドラゴネル帝国がどこまで兵士たちにきちんと報酬を与えるのかは分からないが、もし、武田信玄のように報酬を与えず、相手の国の略奪や強奪で済ませるようなら、さらにひどい結果が待っているだろう

女こどもは、何をされるか分かったものではない。貴族も例外ではないだろう。その結果に、見て見ぬふりをしなければいけないのだ。


ボルア・ニールセンは、発言した。


「では、そのような結果が予想されるのなら、レジェンドの農作物は、あらかじめ、保存し、隠しておくべきでしょう

ボルフ王国が侵略されて、食べ物も没収された時に、内緒で食べ物を配れる状態にしておいたほうがいいのではないでしょうか」


源は答えた。

「確かにそうだね。そのために、レジェンドの地下倉庫は、広げておくよ

そして、そこには、アイスドラゴンのフレーの生活で出る氷などを利用できるように改良を加えておく。その氷でまた保存状態もよくなるだろう。リリス。それでいいかな?」


リリスは答えた。


「うん。わたしも賛成よ」


ボルア・ニールセンは、さらにセルフィに提案を出す。


「セルフィ様がおっしゃったように、20万の貧民地の人たちにボウガンを与えることは、レジェンドにも、貧民地の人たちの安全にも、よくない結果を生むかもしれません

しかし、それは負けた時の想定で、もし、帝国にあとひといきで、ボルフ王国が勝てるようなら、ボウガンは、とても役立つのではないでしょうか?

作るのは、セルフィ様なので解りませんが、あらかじめ20万人分のボウガンを作って、倉庫かどこかにひそかに保存しておいてはどうでしょうか?」


源はうなずきながら答える。


「ボルアの言う通りだね。ボウガンがすぐに渡せる状態とすぐに渡せない状態、どちらがいいかと言えば、すぐに渡せる状態にしておいたほうが、いいに決まってる

ボウガンは渡さない確率のほうが高いかもしれないけど、使える選択枠を作っておいた方がいい。小型ボウガンはすぐに作れるから、それは用意して、倉庫に置いておくよ」


提案したC地区長も納得してくれたようだった。


会議は、続けられ、予想される今後のことを話し合い、その後、教会にレジェンドの村人3700人全員を集めて、状況を説明した。レジェンドは、戦争には参加せず、貧民地を見捨てるということも伝えた。セルフィが元気なく話すことに、見捨てるということもセルフィの決断だと思い、追及する人もその時は、いなかった。


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