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79章 亡命者

源は、巨大なアイスドラゴンに、皆を乗せて、リトシスで、ドラゴンまでも飛ばしながらレジェンドへと戻っていた。この長い旅で空を飛ぶ練習が出来ていたことで、源の浮遊術は、速度を増していた。今では180km以上もの速さで飛ぶことができる。これが熟練度というものなのかもしれないと源は思った。


4000kmの距離を帰るその間に、源は、リリスからケイト・ピューマ・モーゼスの話を聞いた。龍王のことは知っているが、大共和ケーシスやケイト・ピューマ・モーゼスのことは聞いたことが無かったからだ。


リリスの話を聞いて源は、疑問が残る。


「ケイト・ピューマ・モーゼスは、妖精族なんだよね?」


リリスは答える。

「そうだと言われているわ」


「ケイト・ピューマ・モーゼスがいなくなって、妖精族は、ボルフ王国に追い回されてるようになった。そして、どこかに逃げて、今でもその子孫は、生き残っているということだね?」


リリスは、迷った。セルフィには、自分のことを全部話してもいいのではないかとこの旅で思ったが、リタに何も相談せずに、それを教えていいのかという想いがあったからだ。どこまでセルフィに話していいのか迷っていた。


「そうね。でも、ここ数百年は、妖精族は見られていないようよ。まるでアイスドラゴンのようね」


源はつぶやくように言った。


「でも、なんだろう・・・ケイト・ピューマ・モーゼスの話を聞くと、何だかリリスに似てるような気がするのは、俺の気のせいか?」


「どうしてそう思うの?」


「だって、リリスは、動物たちと話をしたりもできる。ドラゴンさえも操る。何だか、大共和ケーシスを作ったケイト・ピューマ・モーゼスも、そういった能力の持ち主だったんじゃないの?フレーもケイト・ピューマ・モーゼスのドラゴンだったみたいだしね」


「そうかもしれないわね。わたしと同じ、魔物飼ビーストトレーナーだった可能性はあるわよね」


源は、大共和ケーシスの子孫になるだろうボルフ王国の民を想像しながら、質問をする。


「貧民地の人たちは、大共和ケーシスのことやケイト・ピューマ・モーゼスのことは知ってるの?」


「昔話のように知っている人もいれば、知らない人もいるってところかしら」


「でも、龍王とケイト・ピューマ・モーゼスの共通点は、平和思想というものみたいだけど、他には突然消えたってところだよね。龍王は種族スキル、高判断力ハイセンスというもので他を寄せ付けない強さを持っていたと聞いたことがるし、その龍王の騎士団の団長だったケイトも強かったはず。そんな凄い人たちが、突然消えるなんてことあるのか・・・」


「言われてみれば、そうね・・・。どのように消えたのかまでは、わたしもリタ叔母さんから教えられてないわ」


「最近、みんなのおかげで、色々なことが分かり始めたんだけど、分れば分かるほど、分からなくなることも多いんだよね・・・」


「そうなの?」


「説明がつかないというか・・・何かの情報が間違っているのか・・・それも分からないしね。司祭様たちの信じているこの世の歴史も、実は正しくない可能性もあるだろうから・・・」


「どうして、そんな風に思うの?」


この世界が仮想世界で、現世という本当の世界があるから色々、予想できるからだよ。何て言えない・・・。聖書はこの世界とは切り離されているなども言えないのだ。


「まー何となくね。そういう可能性もあるっていうことだよ」


「可能性だとか言われたら、何でも間違いかもしれないってことになるじゃない」


「だね・・・リリスは、しっかりしてるね。何だかハキハキしているし・・・」


リリスは、少しセルフィを睨みながら言った。

「それって嫌み??」


「いや・・・嫌みじゃないよ・・・良い事だなーってね・・・ハハハ・・・」


リリスは、少し申し訳ないと思えた。セルフィが自分の話に何か納得いかないのは、わたしが本当のことを言わずに誤魔化しているからだと思ったからだ。帰ったら、リタに話して、セルフィにも真実を伝えて良いかを聞こうと思った。





―――レジェンドの村人たちは、「うわー!」といって騒ぎだした。

そして、警戒音が鳴り響く、混乱しながらも、やるべき行動を取って、ウオウルフなどに装備を装着させる。

しかし、慌てふためいている状況では、うまく装備を付けることができない。


こどもたちも、空をみあげて、みたこもない生き物をみて泣いている。

レジェンドの上空に、一匹の巨大な青いドラゴンが、飛んでいたからだ。



源たちは、二日かけて、レジェンドに到着した。でも、源のリトシスの速さは、連絡のために送った鷲よりも早く着いてしまっていた。アイスドラゴンのことはレジェンドのみんなには、伝わっていなかった。


セルフィたちがいないのに、アイスドラゴンの突然の襲来に、みなは慌てていたのだ。


源たちが背中に乗っているが、アイスドラゴンのインパクトがありすぎて、見えていない。どうすれば、みんなが落ち着くようにさせるのか、悩む。


「なー、どうすればいい?この状況・・・」


リリスは、提案した。

「まずは、アイスドラゴンを壁の外に連れて行きましょうか」


「そうだね。じゃーリリスがアイスドラゴンを連れて行ってよ。俺は、ロックと一緒に、みんなのところにいって、説明してくる」


「分かったわ」


リリスは、アイスドラゴンの羽をはばたかせ、他の動物を乗せながら、壁の外に移動させた。


「ドラゴンがいなくなったぞ!」という村人の声が聞こえるが、ロックや俺のことには、気づいていないようだった・・・。


ダメだ・・・みんな慌てて、準備をしながら動いているから上を向こうとはしない。


そう思っていたら、こどもが、「セルフィ様だ」と声を出した。やっと大人も上を向いて、「セルフィ様!」と言い出した。


源は、両手を輪のようにして、手のメガホンを作って、大きな声で叫ぶ。


「みなさーん!すみませーん!あのドラゴンは、仲間です!慌てないでください!」


伝言係、伝言係・・・と探すが、伝言係がなぜか見つからない・・・。


仕方ないので、何度も同じ言葉を叫び続けて、ようやく皆が、我に戻ってくれた。


「みなさん・・・すみません・・・」と言いながら、源は、やっとレジェンドに戻って来れた。


源は、ロックに言った。

「そりゃー驚くよね・・・俺たちだってアイスドラゴンと対峙した時は緊張したんだから・・・」


「まったくだ・・・俺たちの認識不足のせいで、みんなに不安な想いをさせてしまったな・・・」


「慣れって本当に怖いな・・・」と源はつぶやく。


二日間、アイスドラゴンと一緒に移動していたので、少し慣れていた。そして、ボルフ王国の対応を急ごうと思って、レジェンドにそのままドラゴンと降りようとしたのが、間違いだ・・・。


源とロックは、謝りながら、みんなに挨拶をしていった。


「ロック。フレーはどうしようか・・・みんな怖がるよね」


「うーん。そうだなー。湖の主のようにあそこをあいつの縄張りにしたらどうだ?」


源はそれを聞いて手を叩いた。


「おーなるほど。それいい案だよ。あそこはもともとモンスターも少ないし、問題ないな」


「あいつの行動次第で、問題になるとは思うけどな・・・」


「そうか・・・あいつは何しでかすのか確かに予想が付かない・・・リリスにちょっと相談するか」


源とロックは、司祭様とボルア・ニールセンに少し説明して、壁の向こうのリリスたちのところに戻った。


「リリス。フレーなんだけど、湖の主のようにあの辺りをフレーの縄張りにさせてあげようと思うんだけど、フレーって森を荒らしたりするのかな?」


「いいえ。わたしと契約しているから、そうとう意識が混濁こんだくしない限りは、暴れたり、何かを襲ったりはしないわ。アイスドラゴンは、前も言ったけど、空気を凍らせて、その氷を食べて生きているから生き物も捕食しないのよ」


「そうか。じゃーレジェンドのみんなが慣れるまでは、森の2つの湖のあの場所に、フレーの個人安全地帯パーソナルスペースにしてくれるかな」


「分かったわ。フレーよかったわね。とても広い場所をあなたのために用意してくれたのよ。お礼を言って」


フレーは、大きな声で「グオオオオ!」と言うので、壁が少し凍った。


それが危険だっていうんだよな・・・分かっているのかな・・・


源が睨んでいるようにみえて、フレーは少し首を下げた。


「わたしは、フレーをその場所に連れて行ってから、レジェンドに戻るわ」


「よろしく」


フレーは、その巨体をまた空に飛ばすために、大きな羽を羽ばたかすと、周りにもの凄い風が巻き起こる。あの巨体を空に飛ばすほどだからだ。


「豪快だなー」とロックが言うので、源は笑った。




―――源とロックは、司祭様のところに戻り、状況を把握しようとした。


「司祭様、ボルフ王国以外のことで何か問題などはありましたか?」


「それが、どこから噂が広がったのか分からないのですが、レジェンドの住民になりたいという者たちが、次から次へとやって来ておりますのじゃ・・・セルフィ様がいない時に、これを受け入れていいものかとボルアとも話しておったのですじゃ。ウオウルフの方々は、問題はないとおっしゃってはいたのですが・・・セルフィ様、どういたしましょう」


「その人たちは、今どうしてるのですか?」


「その者たちは、森に追い返すわけもいかないので、レジェンドの土地を解放して、仮住まいさせておりますのじゃ」


「えーっと、司祭様たちの結論は、どうなのですか?」


ボルア・ニールセンが答えた。

「セルフィ様たちが出かけられていた20日間で、200人もの人々がここに来ているのですが、その者たちの素性は、確認のしようがないのですが、その者たちの言葉を信じるのなら、彼らはボルフ王国の貧民地から抜け出してきたものが多く、50人ほどは、農民兵の生き残りだということです

この農民兵については、レジェンドの村人の家族が承認となってくれたのですが、残りの150人は、知り合いだというものが、100人で、50人は素性が解りません

他国から商売をしている実績があるという商人も来ているのですが、その素性を調べる手段もありませんから、どうしたものかと・・・」


「なるほどね・・・200人を受け入れるのは、確かに出来るけど、これからずっとボルフ王国の農民がここにやってきてしまったら、外交問題になるよね・・・ボルフ王国が農民なんて、腐るほどいるからいらないなんて、いうのなら別だけどね

それは今度、ボルフ王国で協議する時の議題の1つにあげよう

それまでは、100人のボルフ王国の農民は、帰ってもらったほうがいいかもね。」


ボルア・ニールセンも言った。

「やはりそうですか。そして、素性の分からない50人ですが、彼らはどう致しますか?」


「そうだね・・・変な人が入ってこられても困るしね・・・地区長たちを集めて、50人の面接をしてみたらどうかな?7地区の地区長7人とレジェンド村長司祭様で、受け入れられる人、受けれられない人を紙に書いて、審査をするってのはどうかな?」


司祭様が、言う。


「そうですな。いつもセルフィ様だけに許可を求めておっては、セルフィ様が大変ですからな・・・ここは、わたしたち地区長の8人にお任せくださいですじゃ」


「はい。ひとりでも反対者がいれば、受け入れないというものでもいいですし、何割が認めればというものでもいいですし、みなさんにお任せします。ですが、こいつは、怪しいという者だけは、報告していただけますか?僕の方でも調べられるようなら調べます」


『わたしなら、嘘をついている人間かどうかは、判別できますが、よろしいのですか?源』


『うん。すべての仕事を俺たちがしてしまっては、成長できないからね

それで問題が起こったら、またやり方を検討していくという風にしないとやっていけないよ

それにこの世界の常識は、みなさんのほうが詳しいんだから、まかせるべきだね。この世界の選別の仕方も勉強したいしね』


『解りました。源』


「あ。すみません。ボルフ王国の協議について、どのように対応するのかを主要メンバーで話し合いがしたいのですが、その7地区長とリタ・パーム、リリス・パーム、ロック、バルト・ピレリリ、ローグ・プレス、司祭様の14人で会議を開きたいのですが、日時が決まったら、集まってもらえますか?」


ボルア・ニールセンが頷く。

「解りました。さっきの受け入れの件もあわせて、地区長たちとローグ・プレス殿にも話はしておいきます」


「ありがとうございます。では、僕はこれから、ボルフ王国の亡命してきた農民100人の方を連れて、ボルフ王国に行き、リタ・パームとバルト・ピレリリにそのことを報告してきます。夕方には、戻ると思いますので、よろしくお願いします」


司祭様が答える。

「はい。お気をつけていってきてください」


「えーっとロックは、レジェンドの防衛お願いできるかな?」


「わかってるって!今回、旅を出来たんだし、もう我がままは言わないさ」


「まー我がままじゃないけどね・・・ほんと申し訳ない。信頼して、任せられる強い戦士は、限られているからさ・・・」


ロックは笑顔で応える。

「おう!」



源は、100人の亡命者というボルフ王国の農民たちのところいった。


農民たちは、セルフィをみて、拍手をしだした。尊敬のまなざしで、会えたのを喜んでくれてるようだ。


これでは・・・帰ってもらいずらい・・・と源は思った。


少し大きな声で、話しかける


「すみません。ボルフ王国から来てくださった100人の農民の方々は、集まってもらえますか?農民兵の方は、集まらなくてもいいです」


その言葉に従って、平地にテントを張って待機していた身元不明の50人もあわせて、150人が集まって来た。


「みなさん。レジェンドに来てくださり、ありがとうございます。色々な噂が飛び交って、ここまで来てくださったのでしょう」


100人の農民兵は、笑顔でうなずいていた。


「ですが、わたしたちレジェンドは、ボルフ王国と協定を結んでいるのです

みなさんのように、農民の方たちを受け入れてしまうとボルフ王国もレジェンドに疑念を持たざる負えなくなり、最後には戦いという結果になってしまうかもしれません

ですから、今回は、ボルフ王国にお戻りください。今からみなさんをきちんとボルフ王国まで送り届けます」


源がそういうと、100人の顔はいっきに暗くなって、ぼやくものもいた。


「ここまで来るのに、どれだけ死んだと思ってるんだ・・・」


と聴こえた。源はそうか・・・と思った。農民の家族がシンダラード森林まで辿り着いて、さらに中にまで来るのは容易なことではない・・・何人かは、犠牲になったのか!と思った。


でも、そこまで責任を持てるわけがない・・・


「みなさんは、ご不満かもしれません。ですが、こちらに受け入れてもらえるのかご確認した方はこの中にいらっしゃりますか?」


100人は、黙った。


「みなさんをボルフ王国に黙って受け入れてしまえば、今いるレジェンドの村人たちの命が危なくなるかもしれないのです

なのに、わたしはそれでも、連絡をされてこなかったみなさんを受け入れなければいけないのでしょうか?」


かなりきつく言ってしまったが、何でも許可できるものではないと割り切るしかない・・・。


「レジェンドとしては、みなさんを受け入れたい。でも、勝手には受け入れられないのです

そして、今度、ボルフ王国との協議がもたらされるので、今回の件も話し合いたいと思っています

その時に、もし、ボルフ王国が許可をしてくれたのなら、わたしがまた、みなさんを迎えに行きます

その時は、安全にまたレジェンドに来れるはずです。どうかご理解ください

これを理解していただけないのなら、その時にもし許可をされても、こちらは受け入れることはできません。お願いします」


完全にではないが・・・納得してくれたようだった。


では、みなさんには、ロープを渡しますから、そのロープを荷物と自分の体に結んでください。


100人の農民の家族たちは、言われた通りにしてくれた。


源は、グラファイロープを結べたと思うと、ゆっくりとみんなを浮かしていった。


100人が驚き騒ぎ出した。浮くとは思っていなかったのだろう。


「きちんと、ロープにつながっていれば、安全ですので、このまま空を飛んでボルフ王国に向かいます」


源は、最初は、ゆっくりとなるべく低く飛んで、移動をはじめ、慣れてきたところで、スピードを徐々に上げて、ボルフ王国へと向かった。

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