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78章 ユダ村の強化

シャルロイ・ジャジャ司祭は、無事にセルフィが迎えにきたことを知ると、安堵あんどの顔を浮かべた。


「遺跡には、何がいたのでしょうか?」


「はい。遺跡の中には、アイスドラゴンがいました。何とかわたしたちで倒すことが出来たので、司祭様を迎えにきました。」


「アイスドラゴンですか・・・さすがセルフィ様です。そのようなモンスターさえも倒してしまわれるとは・・・」


「では、司祭様。行きましょう」


源は、シャルロイ・ジャジャ司祭をリトシスで、素早く連れて行った。遺跡の階段も飛んで、移動していくので、早かった。


そして、遺跡の広間にまで司祭を連れて行くと、司祭は、裏返った声で叫ぶ。


「い・・・いいい・・!!生きているじゃないですか!?」とアイスドラゴンをみて、床に尻もちをついた。


「あー。すみません。アイスドラゴンは、龍王の命令に従ってここを守っていただけだったので、命までは取らなかったのです。そして、今、リリスと契約を果たしたので、たぶん大丈夫です」


司祭様は、巨大なドラゴンを目の前にして、安心しろと言われても、安心できない様子だった。


リリスは、司祭様に言う。

「アイスドラゴンは、わたしに服従している状態ですから、決してわたしの許可なく、攻撃などはしませんから、ご安心ください。」


「は・・・はい・・・」


源は、司祭に、許可を頼む。


「司祭様がよろしければ、この先の遺跡の探求をしたいのですが、よろしいでしょうか?」


「はい。もちろんです。セルフィ様の遺跡だと思って、ご自由に探索してください」


広場には、ほとんど、これといって目に付くものは無かった。なので、広場からさらに続くだろう扉があったので、その扉を調べる。


鍵のようなものはなく、その扉は簡単に開閉することができた。


開けると、またアイスドラゴンがいた広場の2倍はあると思われる広い空間が横に広がっていた。その空間を支えるかのようにいくつもの大きな柱が立っている。そして、土のようなものが、大量に山のようにいくつも積まれていた。


リリスは、声に出す。

「何?これ・・・」


リリスは、土のような砂のようなものを手に持つが、特にそれは輝いているわけでもなく、金でもなければ、銀でもなかった。


色がバラバラなそういった砂のような石のような物が、山となって、まるで分けられているようにいくつも大量にその広場に置かれていた。小山がいくつも大量に並んである。


『源。これらは、鉱物資源です』


『鉱物資源!?』


『この世のありとあらゆる鉱物が、種類ごとに、山積みにされています。源』


『これ全部。資源だというのか!?』


『はい。源。信じられませんが、普通では手に入らないような鉱物などが、大量にあります』


『ということは・・・今まで作れなかったようなものまで、作れるようになるということか!?


『そうです。源。現世の情報さえあれば、資源がある限り、あらゆるものを作り出すことができます。わざわざ不純物を振り分ける必要もなくこれらは利用できます』


「すごい・・・」と声を出した。


ロックは、頭をかしげて、源に聞く。

「これの何がすごいんだ?」


現世のことを知らないロックたちに、この凄さを源は、説明もできない。


「どう言えばいいかなー・・・。例えば鉄で武器を作るにしても、純粋な鉄だけよりも、他の素材を混ぜると鉄が、はがねという硬い物質に変わるんだよ。だから、あらゆる資源があれば、今までには作れなかったものが、作れるようになるわけさ」


「源。セルフィだから、有効に使えるというわけか」


「教えれば、他の人も有効に使えるようになるよ」


源たちは、その他に何があるのか確かめようと、その広場のものを調べる。


中央に、20個ほどの黒い小さい箱が、綺麗に並べられて置かれていた。


ロックは声を出す。


「何だ。これは」


源は、その声に反応して、その箱をみたが、よく分からない。やたらと、綺麗に整列されている。その箱の1つを手に持ってみたが、とても軽くて、何の素材で出来ているのか分からなかった。


箱は、開閉できるみたいだったので、ゆっくりとあけてみた。


透明のダイヤ型の小さい宝石のようなものだけが、箱の中の中央に納められていた。


「何だろうね・・・俺にも解らないな・・・」


『源。解りませんが、もしかすると、この世界の太陽と同じものかもしれません』


『ダイヤ型の太陽のことか!』


源は、フタを全開にして、少し、ダイヤ型のものを指先で触ってみたが、熱さもなければ、冷たさもなかった。


その直径1cmほどのダイヤ型のものをつまんで、箱から出して持ってみると、突然、光だした。


「お」


光ったと思うと、そのダイヤ型のものは、その場で止まって、光りと熱を外に出し始めた。


「凄く熱い・・・それに眩しい・・・」


何だか、広場の温度が、急激に上昇していくように感じた。

どうすれば、これを止められる?


源は、さっきの黒い箱で、そのダイヤ型のものを挟んで、フタを閉めてみると、熱は下がっていた。そして、またフタを開けてみると、光りも消えていた。


「この黒い箱が、オンオフの役目をしているようだな」と源は語る。


その他は、目立ったものはなく、宝石もなければ、財宝もなく、封印の珠も見当たらなかった。狼王の遺跡の時のような神殿のようなものもなく、龍王が残すような書物もないので情報もない。


ただ、大量の多種多様な材料の素材と太陽の小型版だと思われるものだけが、遺跡にあるだけだった。


源以外の人たちからすると、ただの砂の山にしかみえなかった。


ロックは、その広場を歩いては、他に何かないのかと探索するが、やはりなにもなくて、山積みにされている石をまるでお菓子をつまみ食いするように食べた。


「おい!食べるなよ!」と源はツッコミを入れた。


だが、ロックは、何かキョトンとして、立ちつくす。ロックは、ボーと一点をみて、動かなくなったので、源はロックに話しかけた。


「ロック。大丈夫か?」資源をつまみ食いして、腹でもこわしたのかと思った。


「いや・・・何かがおかしい・・・」


「ん?」


「何か感じるんだ」


「感じる?」


「これ。これだ!」とロックは、山積みになった資源を指さした。そして、次は、あらぬ方向を指さして


「向こうにも感じるぞ!」と言い始める。


『源。ロック様が食べたのは、ニッケルです。そして、ロック様が指を指したものも、ニッケルです。壁に指を指しているのは解りません』


源は、よく解らなかったので、本人のロックに聞いた。

「なーロック。何を感じるんだ?」


「俺はこの石を食べたんだ。そうしたら、この岩を感じるようになったんだ」


ロックは、手を握りしめると、手の一部分の岩が、色が変わってしまった。


「ロックの手の色が変わった・・・」と言って、源は、その色の部分を触って確認してみた。


『源。その色の変わった部分は、ニッケルです』


『やっぱりそうか』


「ロック。お前が食べた資源は、ニッケルというものなんだけど、それをお前が食べたから体に入り込んで、それを感じてるんだよ」


ロックは、首を振った。

「いや、違う。そういうことじゃない。俺の体だけじゃなくて、そのニッケルというものを感じるんだ」


『源。ロック様は、食べた資源を感知できるようになったのかもしれません』


『感知って、感覚で資源を見分けるということか?』


『解りませんが、そういうことなのかもしれません。源』



源は、ロックに気づかれないように、右手にニッケル。左手に、他の山の資源を持って、聞いてみた。


「ロック。どっちの手にニッケルがあるか分るか?」


すぐに、ロックは、源の右手を指さした。


「マジか・・・」


源は、いくつかの資源7つほどを、適当にならべて、一番右にニッケルを置いて、腕で隠した。


「ロック。横に並べた7つの資源のうち、ニッケルは、どれだ?」


と聞くと、ロックは、何番目とは言わずに、指で、ニッケルの位置に的確に指を指した。


「おいおいおい・・・マジかよ」と源がいうと、リリスが近づいてきて聞いた。


「何どうしたの?」


「いや・・・ロックが、資源をつまみ食いしたんだけど、その食べた資源を感知できるようになったみたいなんだ。たぶん、壁を指さして、あらぬ方向を指したのは、ニッケルの資源がある方角かもしれないな」


リリスは聞く。

「えーっと・・・ロックさんは、食べた物を発見できる賜物ギフトを持ってるってこと?」


「そうかもしれない。天然資源発見機とでも呼べるモンスターだな・・・本当にそれが出来るのなら、ロックは宝物そのものってことになる・・・」


「俺が宝物?」


「ここほれ。ワンワンだな・・・」と源はいうが誰も理解できない。


「まーとにかく、ロックは貴重だということは、分かった。例えば、ロックに金を食べさせたら、金の鉱山を感じ取ってしまうかもしれないってことだね」


「おー!」とリリスとロックは、声をだした。


リリスは言った。

「これからはトレジャーロックと呼ぶことにするわ」


「それはやめてくれ・・・」とロックは否定した。


「トレジャーロックは、レジェンドに帰ってから実験体として、捕獲して、研究対象にしよう」


と源が言うと、ロックは、何をされるのか分からないといったように体を震えはじめた。


「ロックのことはまた時間がある時に調べよう」


源は、シャルロイ・ジャジャ司祭に聞いた。


「アイスドラゴンをこの遺跡から外に出したいのですが、そのためには、大きな穴をあけなければいけません。もちろん、穴をあけた後は、ちゃんと塞ぎますが、開けさせてもらってもいいでしょうか?」


「はい。この遺跡は、セルフィ様がご自由にお使いください」


「ありがとうございます。そのお礼ではありませんが、アイスドラゴンが外に出られた後は、今、私たちに提供できることを最大限させていただきます」


シャルロイ・ジャジャ司祭は、源に言う。

「あまりお気になさらないようにしてください。私たちは、龍王の意思をセルフィ様に見せることが最大の目的だったのですから」


源は、深々と頭をさげて、司祭様に礼をいう。


「そのことについては、心から感謝しています

それじゃーみんなは、遺跡から出ててもらえるかな?穴をあけるのも、人がいると危険だからね」


ロックとリリスは、司祭と共に、ユダ村に移動していった。



源は、アイスドラゴンに声をかける。


「よし。お前を出してやろう。待っててくれよ」


アイスドラゴンのフレーは、頷くように顔を動かした。


源は、アイスドラゴンがいる広場の一番上から、リトシスを使って、次々と穴を掘って行く。岩だろうと土だろうと、どんな素材だろうと、リトシスにかかれば、粘土のように削れていく。ロックハウスをセーフティエリアで作った時とは違い、上から土を下に落としていけばいいだけなので、とても簡単だ。


10分もしないうちに、地上へと穴をあけられた。大量の土が、アイスドラゴンに降りかかり、アイスドラゴンの足は土などで埋まってしまった。


半径10mの穴をあけて、アイスドラゴンが、出られるようにした。


アイスドラゴンは、羽を広げて、穴の向こう側の世界の光に向かって飛んでいく。


しかし、10mしかない広さで、羽を広げきることが出来なかったので、源は、アイスドラゴンのお腹を持って、リトシスで上に押し上げた。


アイスドラゴンは、地上へと顔を出して、遺跡から脱出を果たした。それと同時に、大きな喜びの雄たけびをあげて、まわりを氷つかせて、源に怒られた。


次は、穴を塞ぐ作業だ。アイスドラゴンを外に出すと、源は、空を飛んで、巨大な岩を探す。5つほどの巨大な岩をみつけて、龍王の遺跡に置いておいた。そして、その岩で、8mほどの岩の板のようなものを作って、また、遺跡の広場に戻る。


そして、その板をまるで巨大なスコップのようにして、広場に埋まった大量の土や岩や石をすくっては、地上に持っていって、捨てて行った。


アイスドラゴンがいた広場の土を全部地上に持っていくと、次は、その穴を巨大な岩を加工して、塞いでいった。この穴からは、遺跡に簡単に入ることはできないようにした。さらに塞いだ上に、巨大な岩を置いて外からみても、不自然ではないようにした。


アイスドラゴンは、外に出られると、リリスの匂いを辿って、ユダ村へと向かった。


ユダ村の村人たちは、巨大な青いドラゴンが、村にやってきたのに脅えた。


リリスは、アイスドラゴンに近づき、このドラゴンは、仲間だということを伝えるが、もちろん、恐怖は消えないので、リリスは、フレーを連れて、違う場所に移動させた。


「人は、あなたをみると怖がるから気を付けてね」


「ウガオオオオ」


「そうね。人間は怖がりなのよ。モンスターもあなたをみたら、怖がると思うけどね」

リリスは、優しく手で撫でてあげた。


源は、遺跡を綺麗にして、穴もきちんと塞ぐと、ユダ村へと戻った。


村人たちは、セルフィをみると、恐る恐る近づいてきて、握手をして、交流を広げようとしてくれた。


握手をしたあと、眼の前で回りながら踊り出す人もいて、さすがの源もそれには、引いた。


シャルロイ・ジャジャ司祭に面会して、源は、約束をした提供できることを告げた。


巨大壁の建設や武具の提供だ。


シャルロイ・ジャジャ司祭は、遠慮していたが、源が迷惑ではないのならといって提供させてもらった。


ユダ村も、レジェンドと同じように壁を作り、ボウガンやグラファイトの鎧などを作って、守りの強化を行った。これでもし、このユダ村が発見されて、攻め込まれたとしても、簡単には、敵は入り込めないだろう。


地下に通じる避難経路も用意した。


源の信じられない作業を目にして、ユダ村の人たちも、やはりセルフィは、伝説の天使だという認識が勝手に固定されていく。


源が、ユダ村の強化作業を進めている時に、リリスの元に、鷲が2つの手紙を持って来た。リリスは、セルフィに手紙がきたことを伝えて手渡した。


ロー村司祭様からの手紙だった。


『セルフィ様。ボルフ王国からセルフィ様との面会を希望される使者がやってきました。ボルフ王国の王自ら、シンダラード森林の主であるセルフィ様と今後のことについての協議をしたいということです』


そして、次にろうで固められた刻印で封じられた手紙を開いて読んだ。


『シンダラード森林の主セルフィ殿。協議を執り行う会合を希望する。ボルフ王国は、シンダラード森林レジェンドの発展を祝福し、友好関係を築かんとする。協力は利益となり、シンダラード森林もボルフ王国の恩恵を得るであろう。

ボルフ王国国王キグダム・ハラ・コンソニョール・ソール』


本音では、ボルフ王国とは関わりたくはない。だが、そうもいかないのが、組織を持っている立場だ。

王国と名乗っているだけに上から目線の手紙が届いたが、次は、何を狙っているのだろうかと源は、考える。


この手紙にどのように返事をするかは、レジェンドの主要人物を集めて協議しなければいけないだろう。


源は、ユダ村の強化工事を済ませて、ユダ村司祭様に、レジェンドの今の状況を説明しておいた。置かれている自分たちの情報を隠しごとをせずに話せる勢力は、少ないからだ。レジェンドが追い込まれてしまった時には、ユダ村にかくまってもらうことも可能になるだろう。


また、ユダ村の龍王の意思の書簡4つの写しを頼んだ。これらもロー村の伝道者の書と同じように、レジェンドではだれでも読めるようにするためだ。ユダ村にも、伝道者の書を送り届けることを約束した。


そして、シャルロイ・ジャジャ司祭が知っている3つの龍王の意思を守り抜く村の場所も教えてもらった。司祭様が連絡を取り合っているので、その村にも源のことは自然と伝わっているということだった。


シャルロイ・ジャジャ司祭は、自分たちが出来ることは、何でも言ってくださいと協力の姿勢をみせてくれた。


源は、リリスに頼んで、リタ・パームとバルト・ピレリリに迎えに行くので、レジェンドの協議に参加してくれるように伝えることを頼んだ。


リリスは、アイスドラゴンで迎えに行くと言ったが、目立ちすぎるので、それはやめておいてもらった。鷲を使って、手紙だけをリタたちに送ってもらった。


そして、源たちは、レジェンドへと戻って行った。

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