71章 リリス・パームの飛躍
リリスは、セルフィに言われて、一緒に戦う動物たちを呼んだ。
ポル・パラインやライム・パライン、そして、レジェンドの医療班などに、リリスの動物の怪我も治してもらっていた。
シンダラード森林で、動物たちは、休息を取ることが出来ていた。
リリスとよく戦う動物は、大型犬タークと大型怪鳥フィーネル2体、そして、ビックボアだった。その他の動物は、撹乱や誘導、調査などには使うが決定的な仕事をしているのは、この4匹だった。
この4匹のモンスターたちを源は、みてどういった武具がいいのかを考えながら言う。
「リリスも、仲間の動物がどんな武具にしたら、強くなるのかを考えてみて」
「分かったわ」
源は経験したことをリリスに語る。
「大型犬タークは、ウオウルフと同じ装備でもいいかもしれないね
噛む攻撃をしていると思うけれど、噛むという攻撃は、1対1とか、もしくは、こちらが数が勝れば役立つ
でも、相手が複数いて、数で負けていたら、噛んでいる間に、周りから攻撃されてしまう。だから、ウオウルフたちも、噛むことをやめて、斬るというものに変えたんだよ。それがこのチューソードなんだ」
源はウオウルフの装備している兜に付けられたチューソードをみせながら説明した。
「なるほどね。確かに、ウオウルフの装備を見たとき、タークにもほしいと思ったわ」
「それじゃータークには、新しい素材のウオウルフと同じ装備を作ってみるよ」
源は、大型怪鳥フィーネルを次はみた。
「フィーネルは、どういう攻撃をするの?」
「フィーネルは、敵を鷲掴みにして、針を刺すように爪で相手を攻撃する方法と、その羽を利用して、突風を巻き起こして、撹乱させるスキルを使うわ。そして、いつもわたしを体を張って守ってくれるの」
「なるほどね。爪と羽、そして、ガードか」
「フィーネルに関しては、武器は必要ないかもしれないね」
「どうして?」
「例えば、足に鋭い槍の矛のようなものを付けたとしても、それを装備したら、リリスを運べなくなるでしょ。だから、足に武器をつけるのは、危険になる
羽にも、防具を付ければ、たぶん風を巻き起こすことが出来なくなるんじゃないかな。空を飛べるのかも怪しい
もし、武器をつけるとしたら、羽の一番硬い部分に、刃物を取り付けたり、顔に矛のような武器をつけるのが、いいかもしれないね。そして、羽以外は、軽い素材で鎧を頑丈につけて、リリスを守らせる
どうかな?」
「セルフィの言う通り、フィーネルの足と羽には武器はつけられないわ。口ばしもなるべく、話せる状態にはしてほしい。タークもそうだけどね」
「タークの場合は大丈夫だよ。ウオウルフのチューソードは、確かに攻撃の時には、しっかりと噛んで固定しなければいけないけど、それ以外は、噛まなくても、兜と武器が一体化しているから落ちることはないからね。フィーネルも、口ばしを固定するようには、作らないようにしてみるよ。そして、最後は、大猪のビックボアだね」
「うん。ビックボアは、突進して相手をはじき倒す攻撃をするのよ」
「やっぱり、攻撃は突進が主体なんだね」
「そうね」
「なら、突進してぶつける箇所を強化してみようか。それだけでかなりの強さになるかもしれない。そして、ビックボアは、軽い装備ではなくて、わざと重くて硬い素材を使って武具を作ってみようか」
「いいわね」
「そして、タークもそうだけど、ビックボアに乗る時には、乗りやすい工夫を施したほうがいいかもね。ウオウルフには、そういう工夫があるんだ」
「うん。じゃーそれもお願いするわ」
源は、愛の能力を使って、それぞれの動物のサイズを正確に測って記録した。
そして、ビックボアの上半身は、グラファイト装備にして、それ以外は、カーボンナノチューブで作ることにした。
タークは、ウオウルフと同じ型だが、素材はカーボンナノチューブで、グラファイトと比べたら比較にならいほど軽くて、重装備だ
ウオウルフと同じで、視覚や聴覚や嗅覚を邪魔しないように顔のまわりだけは空いていて、そこが弱点になるが、それ以外は、ほとんど隙間はない。
フィーネル2体には、体と足を全身守れるカーボンナノチューブの素材で作り上げた。
なるべく、飛ぶのに支障がないように、かぎりなく薄くて細かい鎖帷子のような装備にしてみた。
かなり薄くて、まるで布のように体の動きにあわせて形が変化する鎧だ。もちろん、薄いので、もの凄く軽い。だが、鉄の数倍の強度をほこってしまう優れものだ。
空を飛ぶフィーネルなら剣で攻撃されるよりも、矢などで攻撃されるほうが多くなると思い、鉄ほどの強度で十分だと思ったからだ。
顔に矛のような武器を付けようと思ったが、鳥の首は、長くて細いので、不適切だと思い、顔を守る兜だけにした。その兜も軽くしてある。鳥なので、チューソードも付けることはできない。
武器は、装備させられないと思ったが、肩の付け根の部分に、箱型のボウガンを着けることにした。
愛の情報から武器の設計図を生成し、組み立てて行く、ナノサイズで編むことができる源にとって、武器の生成は愛の情報さえあれば、物凄く簡単だ。
カーボンナノチューブで作ったロープで、箱もカーボンなので、軽く、そして、攻撃力がある。
片方に10本の小さめの矢が詰められ、両方で20本の矢を飛ばせる。
発射や装填は、羽の筋肉の動きで出来るようにした。
鳥の腕の筋肉は複雑に発達しているので、それを利用したアイディアだった。羽をはばたかせれば、勝手に弓矢が引かれ装填できる。空から弓矢で攻撃できる遠距離武器だ。
発射位置は、体で覚えてもらうしかなく、体を動かさなければならないのが難点だが、無いよりはマシだろう。矢じりだけは重くて強度のあるグラファイトにして、飛距離を伸ばせるようにした。
ビックボアには、体の上半身から頭まで、覆いかぶせたような鎧を作った。
その鎧をビックボアに着せると、まるでサイのようになり、鼻のところには、太くて鋭い角をつけた。これでかなりの殺傷力を高めたことになるだろう。
ただ、視界が悪くなってしまってはいけないので、目の周りだけは、カーボン製にして、視界も確保した。また、下半身からは、カーボンナノチューブの素材で鎧を作ったので、走る際にも苦にはならないように作った。
三匹の動物たちの鎧の隙間を狙われても大丈夫なように、それぞれ極薄のカーボン製の鎖帷子を下に着てもらう。これがほとんど重さもなく鉄と同じ強度をほこるので、一番の優れものだとさえ言えてしまうほどだ。
それらを5日間で、作り終えて、リリスに提供した。
自分の動物たちに素晴らしい武具を提供され、それをリリスがつけてあげたが、今までとは違いとても強い雰囲気が漂っていた。カーボンナノチューブには、何だか木目のような模様がどうしても出るのだが、それがまた味わい深さを醸しだす。
「セルフィ・・・本当にすごいよ・・・ありがとう」
源はさらにリリスに提供した。
「あとこれは、リリスの鎧だよ」
「え!?わたしの鎧?」
「うん。リリスも軽量型の鎧がいいと思って、カーボンナノチューブで作ってみたよ
下には、カーボンナノチューブの鎖帷子で、服の布と同じぐらい軽いのに鉄と同じ強度がある動物たちの装備と同じものだよ
そして、リリスは、動物たちに乗ることになるから、お尻の部分は、柔らかい素材のクッションを入れてみた。フィーネルがリリスを持ち上げる時も、お互いの鎧が簡単に取り外しができるフックにしてみたよ。これでフィーネルも足の筋肉を使わずに、楽にリリスを運ぶことができるようになる
もちろん、咄嗟の時は、フックなんてかけている時間はないから掴むことになるだろうけどね」
リリスは、源から受け取った鎧をみて、喜んだ。
その鎧は、カーボンナノチューブで作られているのに、緑色で、その兜もどことなく、普段からリリスが被っている帽子の形に似ていたからだ。
鎧も鎖帷子もみなリリスのトレンドカラーである緑色だ。
「本当に凄いわ。セルフィ。ありがとう!」
「でも、装備してみて、違和感や不具合が出てくるはずだから、それは今から試して、教えてほしいんだ」
リリスは、頷く。
タークやビックボアは、そのスピードを影らすこともなく、武具を使うことができた。タークは、やはりウオウルフと同じで、かなりの攻撃力を持つようになった。カーボン製なのでかなり早い動きが可能で、不具合らしい不具合はなかった。
チューソードやウィングソードは、鎧よりも強度のある鋼の鎧を的にして試してみたが、簡単にその鎧を突き抜けて、斬り込みをいれることができた。
ビックボアは、前から攻撃力はあったが、それをさらに上回った。何重にも重ねたような鉄の壁もひしゃげるほどだった。
フィーネルが一番問題だと思っていた。
体に鎧をつけると、空気抵抗などが変わってしまうし、羽にはもちろんつけることはできない。
鎧を付けたら飛べなくなったなどとなったら、意味がないので、カーボン製の鎖帷子だ。
予想通り、フィーネルの飛行力は、かなり落ちてしまった。また、フィーネルの突風をふかせるスキルも威力が半減してしまっていた。
それはなぜなのか源は、愛と検証してみた。
源と愛の観察力は、あらゆる感覚を用いるだけに、優れている。その結果、浮力による効果が激減していたことが分かった。
羽の部分を若干重い装備にして、浮力を生み出す形にしてやると、なんと前よりも早く空を飛べるようになってしまった。速さや浮力は生み出せるが、コントロールは少し劣ってしまうという具合だ。羽の厚みを増したので、羽の一部分は、鉄の20倍の強度のまま確保できた。
浮力を増した羽は、突風を前の1.2倍ほど強めることができるようにもなった。
そして、ボウガンも、威力があった。鉄で作った的を貫くほどだ。腕の筋肉を巧みに使って、放つことができた。安全装置も筋肉の動きでオンオフできる。
リリスを持ち上げるのも、問題はなかった。リリスの装備も軽く、お互いの鎧のフックのおかげで楽に持ち上げることが出来るようになったからだ。
弓矢以外のフィーネルの武器は、無かったが、装備をしたことで、リリスを守るために傷ついてきたその体を今度は、自らを傷つけることなく鎧で守ることができるようになる。リリスも装備をしたことで、半端な攻撃では傷つけられることはないはずだ。
源は、細かいところは別として、不具合がそれほどないのをみて
「できれば、装備した動物を操るリリスと誰かが相手して試しができればいいんだけどなー」
と言いながら、ロックをみる。
「え?俺?」
とロックはいうが、ロックの選択枠はない。
まだ、畑になっていない広場に、集合して、試してみることにした。
だが、そこにリリスの冒険者仲間のエリーゼ・プルとバーボン・パスタポがリリスや動物たちの装備をみて、物珍しそうに近づいてきた。
「ねー。リリス。その装備はなに?なんだか、すごい装備つけてるようだけど・・・」
リリスは、どうしようかと悩んだ。この装備が優れた素材だということはレジェンドだけの秘密だからだ。
源は、リリスの仲間というふたりに挨拶をした。
「はじめまして、わたしはセルフィと言います」
エリーゼ・プルは礼儀正しく挨拶をした。
「セルフィ様。はじめまして。あなたのご活躍は、レジェンドだけではなく、ボルフ王国にも広く知れ渡っています。わたしエリーゼ・プルとバーボン・パスタポは、リリス・パームを守るための依頼を受けて今、護衛にあたっています」
「そうらしいね。リリスとは、前からの友達だと聞いているよ。だから、君たちが内緒にしてくれるのなら、レジェンドの秘密を1つ教えてもいいと思っている」
エリーゼ・プルは、首をかしげるように聞く。
「秘密・・・ですか?」
「リリスの仲間だということで信頼しているけど、秘密は洩らさないと約束してくれるかな?」
「はい。絶対に他言はいたしません」とふたりは答えた。
「今、リリスと動物たちが付けている装備は、レジェンドで開発した新しい素材で、カーボンナノチューブというものなんだ。これは、鉄の8分の1の軽さなのに、鉄の20倍の強度がある素材で、これからリリスに試してもらおうと思ってるんだ。君たちも見学に来るかい?」
「それはすごい・・・。是非、拝見させてください」
そのふたりと嫌がるロックを連れて、源は、畑の広場へと向かった。リリスは、早速、フィーネルにフックをかけて、飛んで向かう。
リリスチームと岩モンスターロックの試し試合だ。
源は、何だか、長い木の箱を地面に置きながら、リリスに助言した。
「ロックは、岩モンスターで、岩を食べれば、体は回復するから、粉々にしてもいいからね。フィーネルの弓矢もタークのウィングソードも、ビックボアの突進も、どんどん使っていいよ」
ロックは、慌てて反論する。
「おい!待てよ。回復するっていっても、痛みはあるんだからな!」
リリスは、ふたりのやり取りをみて笑った。セルフィにとって一番心をゆるせる相手は、ロックさんなのだろうと思った。
ロックは、自分が攻撃していいのか分からないといった具合で、武器を持ちながら、立ち続ける。動物を操るとはいえ、少女とその少女が大切にしている動物を傷つけたくもなかったからだ。
リリスは、試合の開始と同時に、フィーネルに乗って、空を飛んで、目を閉じる。
知的モンスターである岩モンスターと戦うのは、リリスは始めてだった。なので、どのように攻撃すればいいのかイメージが湧かない。
でも、あの2mを超える巨大なロックに有効だろうと思える武器は、ビックボアだと思った。
なので、ビックボアが会心の一撃を与えるそのチャンスを作り出すために、フィーネルとタークを使ってかく乱させようとリリスは考えた。
まずは、試しに、フィーネルの矢を空から打ってみることにした。一発空から、ロックにめがけて放つと、ロックは、左腕の盾で上手にそれを受け止め、矢は、金剛の盾に弾かれてしまう。
そして、その矢を放ったスキに、タークが、走り込む。わざとロックの鎧にウィングソードが当たるように、タークは攻撃をすると、突っ込んだはずのタークが、逆にバランスを崩した。
やっぱり、ロックは、巨大で重量があるのだ。だが、お互いの武具に損傷はない。
リリスは、森の鳥たちを一斉に、空をとばさせた。大量の鳥が、空を飛ぶのを何だろうとロックが空を見上げた瞬間、フィーネルが、突風をまきおこして、砂ぼこりをたてさせた。
「見えない!」とロックは砂ぼこりを払うように、腕を振るが、ほこりが消えるわけもない。
その間に、タークが、次は、鎧の隙間の岩にウィングソードを当てると、凄い音がしながら、ロックの足をウィングソードで攻撃した。
鎧の隙間だったが、ロックはグラファイトの鎖帷子を着ているので足が切れるまではいかない。
「ぐわ!」と言いながら片膝を地面に着いた瞬間、ビックボアが、砂煙の中から飛びだして、ロックに体当たりをすると、あの巨体のロックを少し吹き飛ばした。
ロックは突然吹き飛ばされたことに驚きながら言った。
「おい!何でこいつら、この煙の中でも、俺の位置が分かるんだ?」
そう言っている間に、ロックは、足が回復して、立ち上がり、煙がないところに、移動しようと走るが、フィーネルはそこにも、砂煙をたてる。
「おい!またかよ」
ロックは、考える。標的にするべき相手は、空の上。自分はその動物たちに攻撃され続ける。これでは分が悪いと思った。ロックは、源の石を投げる攻撃を思い出して、自分の体から岩を取り、空に飛んでいるフィーネルに投げつけた。動物で唯一みえるのは、空を飛ぶフィーネルだったからだ。
フィーネルの羽に岩が「ガゴン」と当たるが、フィーネルの装備に当たっただけで、支障はなかった。
その間にも、タークとビックボアの攻撃が続く。そして、フィーネルは、空から矢を放つと、ロックは、てのひらで受け止めようとしてしまい岩の手に突き刺さる。
源は、この戦いをみて、凄いと思った。
本当は、ロックが優勢になると思っていたからだ。
ロックは、グラファイトの装備をしているし、巨体でパワーもある。動物たちの攻撃を受け止めて、終わるのかと思ったが、リリスチームの連携の素晴らしさに驚きを隠せない。リリスは、強いと思った。
ロックは、不思議がっていたが、第三者の目からみて、砂煙があがっているところでも、タークやビックボアが敵を認識しているのは、空を飛んでいるリリスが彼らをコントロールしているからだろうと思った。
ロックは、一対一でなら負けることはないはずだが、複数攻撃でああも見事に連携されると弱い部分が出てきてしまう。コボルトの時も、数には苦戦していたからだ。
それに空を飛んでいるものには、ロックは攻撃できる武器がないこともこれで解った。
「やめー!」という源の号令で、試合は終了した。
源は、両手で拍手をしながら、称賛を送る。
「凄いよ。リリス。ロックは、レジェンドで一番の戦士なんだよ。そのロックとこれだけ戦えるのは、強い証拠だ。あのサイクロプスも一対一で倒したほどの戦士がロックなんだからね」
「これも装備のおかげよ。今でも、この装備がなければ、岩のロックさんにどうやって攻撃すればいいのか、分からないもの・・・ビックボアだって装備がなければ、岩にぶつかって行くようなことになるから、攻撃できないし・・・装備を付けるとここまで変わるものなのね・・・」
リリスはとても喜んでくれていた。その反面、ロックは少し不機嫌そうな顔だった。
「俺は何も出来なかったぞ?」
「それはしょうがないさ。だって、俺はロックに空を飛ぶ相手に攻撃できる武器を与えていなかったんだからね。自分の岩を投げ飛ばすという発想は、驚かされたよ。そのお詫びじゃないけど、これをロックには渡しておくよ」
と言って、源は、地面に置いてあった長い木の箱から二振りのとても長い斧を取り出した。
「おいおい。そんな長いグラファイトの武器なんて、さすがの俺も使いこなせないぞ?」
「それが、これはグラファイトじゃないんだよ。ロック
これはカーボンナノチューブといって、グラファイトと同じ炭素で、金剛石から作ったものだけど、それを改良して造られた新素材で作った斧なんだ。持ってみればわかる」
ロックは、二振りの木目の長い斧を持つと驚いた。長い武器なのに、とても軽い。短い取ってのグラファイトで作ったセカンドアックスのほうがよほど重い。
「これ本当に大丈夫なのか?軽すぎて、強度がない気がするぞ」
「それがカーボンナノチューブは、鉄の20倍の強度がある優れものなんだ。グラファイトの方が若干強度はあるが、壊れにくく柔らかさも備えた武器なんだ」
ロックは、そう言われて、近くにあった岩に斧を振りぬいてみると、その岩は、まっぷたつに割れた。長くて、スピードがあるだけに、威力も増した。エリーゼ・プルとバーボン・パスタポはそれをみて、驚愕していた。
「凄いな。源。この武器・・・」
とロックが言うと、リリスが聞いた。
「ハジメ?」
「あ!セルフィだったな」とロックは言い直して、さらに変な疑問をリリスに与えるが、源もロックと一緒に誤魔化して、武器の話の続きを始めた。
「ロックには、フィーネルよりも強力な空にも攻撃できるボウガンをどこかに装備できるようにしたほうがいいね。今度作っておくよ。
そして、エリーゼ・プルとバーボン・パスタポは、リリスを警護する大切な役目を担っているらしいから、レジェンドからカーボン製の武具を提供させてもらうよ」
と源が言うと、エリーゼ・プルが、もの凄く喜んだ。
「本当ですか!?セルフィ様!」
「うんうん。でも、誰かにその鎧の出どころなどを聞かれてもレジェンドのことは言わないでほしい。そして、その素材も鉄や鋼といって誤魔化してほしいんだ。もし、それが知られてしまったら、ボルフ王国だけじゃなく、その技術を狙ってレジェンドに来るものもいるかもしれないからね」
「はい!もちろんです。セルフィ様!」
「あと、条件の1つとして、レジェンドの農民兵に武術や戦い方を教えてほしいんだ。その報酬として、君たちに新素材の武具を提供するというのはどうだろうか」
エリーゼ・プルは答える。
「もちろんです。わたしたちも、レジェンドの方たちにはお世話になっていますし、いくらでも戦いかたを教えますよ。それだけでもらえるのなら、安すぎますよ」
とても喜んでくれているようだったので、源も少し嬉しい気持ちになった。
そして、源は、リリスに言った。
「あと、リリスの鎧の背中には、パラシュートを付けてみたよ」
リリスは、頭をかしげて聞く。
「パラシュートって何?」
「背中から布が出てきて、その布が空気を捉え、落下速度を落として、空からひとりで落ちても、無事に地上に戻ることができるアイテムだよ」
「そんなものまであるんだ・・・」
「うん。リリスは、空を飛ぶことが多いみたいだから、パラシュートも必要かなって思ってね
でも、簡単には、開けないようにしてある
鎧の左の腕が、小さい扉のように開閉できるんだけど、その中にある止め具をひっぱらないと出ない仕掛けさ
パラシュートは、一度使うと、またきちんと正確に折りたたんで、しまわなければ使えないから、一回使ったら、使えなくなると思ってね
ちなみに、そのパラシュートは、カーボンナノチューブも織り交ぜているから、例え矢でいられたりしても、簡単には破れないはずだよ」
「セルフィってどうしてそんなに、色々なアイディアが出てくるの?」
現世で見ているからだよ。とは言えない・・・。
「そういう仕事をしていたことがあるからね。発明家だったんだ」
リリスは、セルフィの強さは、その発明にあるのかもと思った。自分の動物たちも飛躍的に強くしてしまう不思議な道具を使って、生き抜いているのかと考えた。