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64章 はじめ対盗賊

「どういうことだ!?いねーじゃねーか!!」

命からがら、ボルフ王国からビックボアに乗って逃げて、途中からは、自分たちの足でシンダラード森林の中を必死で進んできたが、湖のまわりをどれだけ見渡しても、生き物一匹見当たらない。


「もう・・・お終いだ・・・」


「くそーここまで来たのに!」


「あきらめるな!森に隠れるだけ隠れて、時間を稼げ!」


三日目からビックボアを降りて、自分たちの足で、シンダラード森林に向かった農民兵たちは、ボロボロだった。リリスが、命を懸けて、ビックボア200匹とともに、盗賊の馬を狙い馬を蹴散らしたが、徒歩でも盗賊のスピードは、農民兵よりも早く、何度も、追いつかれては、逃げてを繰り返し、農民兵は、120人も生き残っていなかった。リリスも、何とか助けようとするが、腕に矢がささり、熱を出しながら、目的地を進んでいた。


だが、目的地だという2つの湖についても、誰もいなかった。セルフィという少年は、この湖にいるという情報だったのに・・・。リリスにとっては、始めての土地で、前もって調べることもできず、後ろから追ってくる盗賊を抑えるので精一杯だった。リリスも守りながらの行進は疲労を極めていて、今にも意識を失う寸前だった。

タークやフィーネルたちとも森の中ではぐれてしまっていた。


もうすぐそこに、盗賊たちがやってくる。バルトは、そんなリリスを背中に抱えて、イールと共に、リリスを森の中に隠す。命に代えても、リリスを守らなければいけないと疲労がありながらも、その想いで力を振り絞る。

「ぐわー!」という悲鳴が聞こえはじめる。盗賊たちが、喜びながら、次々と隠れている農民兵を発見しては殺していく。

盗賊は、殺した人間の左耳を切り取り、ポケットにしまい込む。自分が何人殺して仕事をやり遂げたのかの証拠になるからだ。


このままでは、リリスの命も守り切れない。


「ケケケケ。女の子の耳もほしいなー」

盗賊は、虫の息の少女を見つけ、喜びながら、剣を振り上げた。他の農民とは違って、動物を操る娘は、報酬が高いので狙われていた。


イールがその前に飛び出し、体でリリスを守るが、盗賊は何度も、イールの体を突き刺し殺そうとしてくる。



―――警戒音が鳴り、レジェンドの者たちは、それぞれやるべき行動をして、集まった。源は、空を飛んでレジェンドの者たちに指示を出す。


「それぞれ自分たちの配置について、待機!」


すると、村人たちの伝言係が、同じ言葉をつなげていく。


「それぞれ自分たちの配置について、待機!」

「それぞれ自分たちの配置について、待機!」


ウオウルフは、3つの扉の前に、3つに分かれて、それぞれグラファイ装備をして、待機し、村人たちは、各自、壁に登って武器などを準備する。


女性や老人、こどもは、中央から隠し通路へと入って、地下にある待機広場で、避難する。めすウオウルフや、子ウオウルフ、歳をとったウオウルフなども、同じように避難所に集まる。


前長は、何があっても、ウオウルフの洞窟からは動かないので、一匹で洞窟内で待ち続ける。


源は、ウオガウを連れて、切れた警戒ロープの場所に確認するために、向かって飛んでいく。ロックは、レジェンドの防衛の要だ。移動速度があるウオウルフや源は、臨機応変に攻撃もすれば、守りにも付く。


途中、北側からレジェンドに向かって走って行く装備したウオウルフを発見した。

昼間の警備をしているウオウルフだ。


ウオガウと源をみて、「ウオンウウオン」と吠えて、報告する。


「きき・・・傷ついた人間が、もも・・森のな中にあは入り込んだ・・・ようです・・」


傷ついた人間?森に迷い込んで、モンスターにでも襲われたのか?と思った。


源は、警備をしていたウオルフに、レジェンドに戻って報告をし、一緒に待機するように指示を出して、ウオガウとともに、さらに北へと向かった。


源たちは、ロックハウスのある湖に付いた。


湖のまわりには、大勢の人々が、斬り殺されていた。湖の水に赤い血が、一部染まっている。


『源。森の中に、多数の人々とそれを攻撃する多数の人間がいます』


『よく分からないが、人間が人間に襲われているってことだな?』


『はい。そうです。源』


森の中は、木々に邪魔されて源からは視認できない。だが、愛の補助のおかげで、青い襲われている影と黒い襲っている影が、源の視覚に表示される。


源は、「ウオガウ」というと、ウオガウは理解したように、鎧に付けてある筒の紐を引き、一発の花火が、空に打ちあがり「ボン」という音をあげた。


すると、その音のあった方角に、一斉にレジェンドで待機していたウオウルフ40匹が、走り出した。

ロックは、レジェンドの最終防衛責任者として、レジェンドに留まる。


―――盗賊は、イールの体を深く突き刺すと、イールをゴミでも捨てるように、横に転がした。

バルトは、「イール!」と叫ぶが、次は、自分であることも分かっている。バルトは、小さな包丁を握りしめて、目をつぶって盗賊に走り込むが、盗賊は、バルトの顔を蹴り上げ、バルトを倒す。


バルトを無視して、動けない少女に向かって、剣を振り上げる。


リリスは、横目でそれをみるが、もう疲労で、体を動かすことができない。


ここまで来たのに、みんなを助けることが出来なかったとあきらめ目をつぶるが、振り下ろされた剣は、なぜか、自分に当たった気がしない。


目を開けると、盗賊の剣を綺麗な黒い剣が、防いで止めていた。

その黒い剣を片手に持って、防いでいたのは、少年だった。


源は、女の子を殺そうとしている男にいち早く気づき、その剣を金剛剣グラファイソードで、止めたのだ。


「おい。お前なんの理由があって、そのを殺そうとしてるんだ?」


男は、剣を止められたことに不快を感じたのか、つばを吐きながら言う。

「うるせー!理由なんて、どうだっていいんだよ!お前こそ誰なんだ!?」


源は、どうみても、この女の子や殺され続けている人たちよりも、この男のほうが悪人にみえた。たぶん、こっちのほうが悪いやつだろうと考える。


「俺はこの森を守るセルフィというものだ」


と源は、答える。


それを聞いて、リリスは、「セ・・・セルフィ!?」と小さい声で驚く。


源は、自分の名前に驚く女の子をみるが、見たこともない子だった。


この世界に来て、出会っているとは思えないのだけれど・・・


「えーっと。襲われているみたいの君たちは、一体だれだい?」と源は近くにいた襲われたと思われる男に聞く。


盗賊の蹴りを顔面に喰らって倒れていたバルト・ピレリリは、起き上がり答える。


「わたしたちは、以前ここでお世話になった農民兵の生き残りです」


それを聞いて、源は、すぐに表情をひきしめ、素早く、剣を持っている男の剣をそのまま斬り捨てた。鉄の剣だと思われるが、重なり合っていた剣は0距離で切り取られ、地面に刺さったと思うと、その瞬間、男の頭も地に落ちた。


『愛。青い表示が、襲われている人たちだな?』


『はい。青い表示が、農民兵だと思われるひとたちです。認識しました。源』


源は、下に落ちてある。石を拾って、黒い表示で、攻撃をしかけようとしている者に向かって、石を投げると、その石は、木々を貫通しながら、黒い表示の者たちの頭も突き抜けて行く。


次々と、源は、石を投げては、黒い表示を倒していく。


源は、大きな声で


「ウオガウ」と呼んだ。


ウオガウは、すぐに源のところに近寄った。


「襲われているひとたちは、俺たちに手助けしてくれた農民兵の人たちだった。森の中で、軽装で逃げている者たちが、農民兵で、装備を持って襲おうとしている者たちが、俺たちの敵だ。それをウオウルフに報告してくれ。あと1つ。ロー村の医療班をここに呼ぶように、一匹、レジェンドにやってくれ」


それを聞くと、ウオガウは、大きな声で、吠え続けた。


レジェンドから素晴らしく早く到着したウオウルフたちは、ウオガウの吠える指示に従って、森の中に入り込み、軽装の人間を殺そうとしている装備をした人間を倒し始めた。


「何だ!こいつらは!!」と盗賊たちが、叫ぶが、気づいた時にはもう遅い。グラファイ装備を付けたウオウルフに、森の中で勝つことは、まず無理だ。



―――ウオウルフの一匹は、レジェンドに引き返し、「医療イリョウ・・・イリョウ」と伝えると、ロー村の医療班が、レジェンドを急いで、飛び出し、そのウオウルフの後をついていく。



―――源が倒した攻撃をしようとする男は、10人だった。ウオウルフたちが、倒したのも10人。


まだ、北の森からそれ以上の人間の気配を感じる。


源は、大きな声で、叫んだ。


「農民兵のみなさん!湖にある大きな岩は避難所になっています!そこに逃げ込んでください」


生き残った農民兵は、「セルフィ様だ!」と言いながら、その指示がったように、湖に出て、岩の中に向かおうとしはじめる。


源は、少女についていた農民兵の男に聞いた。


「まだ、北の森の方角から30人ほどの人間がこっちに向かってきてるんだけど、そいつらは敵か?」


バルトは、首を縦に振る。

「はい。盗賊たちです。農民兵を殺すために、ボルフ王国に雇われた者たちです」


それを聞いて、源は「あいつ!」と顔を怒りの表情にする。


バルトは、起き上がり、リリスを抱えて、避難所といわれる岩に向かおうとする。


「セルフィ様ありがとうございます」


源は、男の顔をみながら、深く頷く。


そして、「ウオガウ。ウオウルフのみんなを呼んでくれ」と指示をする。


「ウオウン」


ウオウルフたちが、集まると源は、言う。


「ロックハウスを囲んで、そこに無理やり入ろうとする者は倒せ」


ウオガウは、「せせセルフィ様・・・わわたしもおお共します・・」と言った。


「いや、この先は、農民兵なのか、敵なのか分からないから、俺だけで行ってくる。だから、ウオガウは、農民兵とここに来るロー村の医療班を守って、指示をしてくれ」


源は、空を飛んで、北の森に向かう。


愛は、北の森から近づいてくる生き物を黒い表示で源に表示させた。


『愛。どうして黒い表示で表しているんだ?』


『盗賊と思われる装備を認識して、その装備に近い者たちは、盗賊だと想定して、黒色表示にしています。源』


なるほどな。こんな森の奥まで、装備してくる奴らが、農民兵の中にいるわけもないかと考えた。


『ということは、あとは全部、盗賊だということだな』


『その確率が高いと思われます。源』


源は、森の中で、全員倒そうかとも思ったが、思い留まった。そして、また、ロックハウスの方角に飛んで、森が切れる湖の淵で、宙に浮かびながら、盗賊たちが来るのを待った。


次々と盗賊たちが、森が切れた場所に辿り着き、湖に出てくると、3mほど上に浮かぶ少年を目にして、足を止める。

まわりには、農民らしき死体が、散乱している。


盗賊は、大きな声で質問した。


「何なんだ?お前は?」


「お前らこそ、なぜ農民兵を殺そうとする?」


「それは・・・」と言おうとする男の口を左手で塞いで、止める盗賊のボスのような男が会話を続ける。


「あいつらは、俺たちの縄張りを勝手に通過しようとしやがった。通行費もはらわず、逃げやがるから追いかけてきたまでだ」


「通行費のために、これだけの人を殺すわけがないだろ?」


「それが殺すんだよ。そういう世の中さ」


「お前たちは、ボルフ王国の許可をもらってるのか?」


「俺たちは、国や法律なんて関係ないのさ。それが盗賊ってもんだ!」


源は、この男が、たぶんこの集団のリーダーだと思った。そして、手をあげると、ロックハウスの前にいたウオウルフ40匹が、一斉に、源の下に、並び、グルグルグルと威嚇をはじめる。


盗賊たちは、かなりの装備をした巨大なオオカミの集団をみて、少し後ずさる。その鎧から出たソードは、人間の赤い血が滴り落ちていて、盗賊たちはつばを飲みこむ。


源は忠告した。

「正直に話せば、命は助けてやる。だが、この森に無断で入って来た以上、お前たちの道義通りに、不法侵入どころか、殺人罪とみなして、お前たちを殺すことも簡単にできる。ボルフ王国は、我々と協定を結んでいる。お前たちが、ボルフ王国と関係ないのなら、これ以上なにかしようとするお前たちを手にかけるまでだ。だから、よく考えて発言しろよ。お前たちを雇った雇い主は、誰だ?」


「雇い主なんていねーよ!」


源は、右手の三本指、左手の三本指をたてると、ウオウルフ三匹が、左右からでて、6匹が、吠え始める。


「各自、ひとりずつ倒せ!」と源が言うと、ウオウルフ6匹は、突進しはじめた。


盗賊たち30人は、武器を構えて、迎撃しようとするが、ウオウルフは、その横を走り抜いて、首や体を切裂いた。太ももから片足を切断された者もいた。ドスドスと6人が倒れて、「たすけてくれ」と仲間に手を伸ばす。


「いいか。正直に言わないと、死ぬだけだ」


「解ったよ。俺たちは引く」そういって、盗賊たちが、後ろに少しずつ下がり始めた。


源は、また手を振ってウオウルフに合図を送る。


ウオウルフ6匹は、また6人の盗賊を切り捨てる。


「逃げられるわけがないだろ?森の中に入ったら余計お前たちは、助からない。お前たちが生きて帰るためには、正直に答えることだ」


恐怖に襲われた盗賊が、助かりたいと思ったのか、ひとり叫んだ。


「ボルフ王国だ!ボルフ王国に雇われた!」


「バッ」と言って、盗賊のボスが、その声をあげた男の口を塞ごうとする。


源は、すぐさま石を投げて、男を刺そうとした周りの盗賊の頭を吹き飛ばすと、素早く飛んで、盗賊の中に、入り込み、剣を振る。


盗賊たちは、源が突然、スっと中に入って来たのを驚きながらも、武器で攻撃を一斉にしかける。源は、その動きを的確に読み切り、かわしながら、盗賊を無駄のない動きで、斬り捨てて行く。


顔を狙ってきた剣をグラファイソードで、一刀両断し、吹き飛ばすと、その切られた剣の破片が、盗賊に突き刺さり、倒れて行く。源は、わざと剣を粉々に割るように、グラファイソードの腹で叩き込み、狙ったのだ。


盗賊の武器の攻撃を躱しながら、その武器を奪って、違う盗賊に投げて、突き刺す。


5秒もしない間に、10人もの盗賊たちが倒されていく。残り、8人。


残った6人は、あまりの源の強さに、攻撃をするのをやめた盗賊とリーダーだと思われる男と口を割ろうとした男だった。


源は、口を割ろうとした男を自分の後ろに置いて、守るように後ろに下がる。


「で?」


と源は、質問をする。


口を割ろうとした男が混乱した様子で言う。

「え・・・?あー。ボルフ王国じきじきの依頼だということまでは知っている。でも、雇った人間の名前はでは、分からない。多額の報酬を払うということで、冒険者アドベンチャーの仲介者がやってきて、俺たちは、その指示に従って、あいつらを殺したまでだ」


アドベンチャー・・・っていうのは、何なのか分からないが、冒険者という意味、そのままだとして、ボルフ王国にある仕事の一種だろうと考えた。アドベンチャーで仲介って意味が分からないが、そのアドベンチャーという者も、雇われってことだろう


「アドベンチャーの依頼主の情報は?」


「ほ・・・本当にしらねー・・・」


リーダーだと思われる男に、剣をかざして尋問する。

「お前なら、何か知ってるんだろ?これに答えなければ、お前のいのちは、これでおしまいだ。死で罪を償え」


「ティト・セルバリー・シュベルツ伯爵だ」


『愛。今の男の発言は、嘘か?』


『人間行動心理学から推測するとあの体と目線の動きは、嘘を表していると思われます。源』


源は、素早く、盗賊7人の中に入り込み、グルっと一回まわると、盗賊7人の体が切断されて、バタバタと倒れていった。


それを残った最後の盗賊がみて、「うわー!」と声をあげて叫びながら逃げようとするがスーと移動して男をグラファイソードをかざして止める。


「お前、逃げるなよ。大人しく、俺についてこい」


と言うと、男は、もの凄く怯えながら、黙って首を振って着いてきた。

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