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60章 ブラックフラワー

どうすれば、安全を確保できるのか、源は、それを考える。

新しいコミュニティ『レジェンド』のまわりを強固な壁で囲むというのは、考えられる。

そこそこの高さ、20mほどの城壁のような壁を源はイメージする。

そのような壁さえあれば、またコボルトのような4000匹などが来ても、上から蹴散らしながら、自分たちは、仲間を守りきれると考えた。20mあれば、5m級のサイクロプスだって手を届かすことはできない。


そして、上から、自分の巨大炎弾ファイアボールを何度も浴びせられたら、相手も困り果てるだろう。


あとは、愛が感知できる以上の広範囲に、金剛針金グラファイロープによる仕掛けを張り巡らすことだ。

罠は仕掛けることはできない。森の中に罠なんて設置したら、レジェンドの生き物たちも、危険になるし、森に入り込んだだけの人で敵でもないのに怪我をさせてしまう可能性もある。その場合は、こちらに責任が出てきてしまうからだ。


ただ、小さなトラップは、出来ないにしても、大きなトラップなら別だ。大きなトラップなら、簡単には発動できないようにしておけば、村の生き物も、外から来たものも、配慮ができるからだ。


まず、今出来ることと言えば、広範囲に、黒いグラファイロープを張り巡らせて、誰かがこの森に入って来たことをいち早く、こちら側が、把握できるようにすることだ。なるべく、相手に気づかれないような仕掛けが好ましいと源は考えた。


なので、グラファイロープを簡単に切れる程度にまで細く伸ばして、使うことにした。相手は、移動すれば、知らずに踏んだり、切ったりして、進むが、ロープが切れたら、こちら側の警戒音が、鳴るようにしておけばいい。


源は、森の広範囲に、色々な工夫した警戒ロープを張り巡らせた。その作業は、二日に渡って続いた。


また、金剛石グラファイトの元になる炭素と硝酸カリウム、硫黄いおうを混ぜ合わせることで、火薬を作っておいた。離れた場所からも指示ができるためにも、必要になると考えたからだ。これらは適切な配分をしなければ、その効果は発揮されない。


その二日の間に、ボルア・ニールセンが、早くも新しい土地のロー村の移設計画書を完成させて、源にみせてくれた。



レジェンド予定地の場所から、川はすぐ近くにあり、その川の浸水もロー村の川と変わらなかったので、そこに、ロー村の中型の水車を持っていき、ロー村の家を中央の道を開けたまま、整然と並べて行く、中央には、ロックハウスを置くように書かれており、ロックハウスの周りにも、土地の余力を残しておく計画だった。かなりのゆとりのある間隔で、作ろうとした計画書だ。


2つ目の計画書は、逆に土地を無駄にせず、とてもこじんまりと凝縮するものだった。

1つ目は、広い分だけ、守ることが大変になるが、生き物が増えて来たり、生活するには、それだけの土地があれば、便利なのは間違いない。


2つ目の計画書は、狭い場所に固めるので、守りを硬くして、壁なども簡単に作れることだろう。

迷うところだが、1つ目のゆとりのある土地にした。

広すぎるわけでもなく、ゆとりがあったほうが、のびのびと生活できるとも思えたし、1つ目と2つ目の労力は、それほど違うとは思えなかったからだった。1.5割増しの労力というところだ。もちろん、それはリトシスがあるからだ。


ボルア・ニールセンには、1つ目の計画書の写しをいくつか書いてもらい、それを代表者たちや関係者たちの説明のために使ってもらうように指示をした。


そして、源は、森の大量に生えている木を次々と根っこから抜き取っていき、その木を一カ所に集めていく。リトシスの効果で、大きな木も、まるで雑草を抜くかのように、ひっこぬかれていき、たった半日ほどで、予定の広さ以上の木々を伐採した。


予定よりも多く広げたのは、巨大な壁を作っても、近くに木があっては、意味がなくなってしまうからだった。


ボルア・ニールセンの計画書が、ロー村やロック、ウオウルフたちに届けられ、許可を得るまでの間、源は、壁の建設をはじめる。


その壁は、源とロックの最初の場所、遺跡の外からまたロックハウスの時のように持って来た。ウオウルフの洞窟も巨大で、岩はあったが、そこから持っていくと、後ろの守りが、薄くなってしまうからだった。


巨石を8つ持って来て、壁をまた粘土のようにつなげていき、巨大な壁を作ってゆく。レジェンドの土地を囲むように建設していくので、どうしても時間がかかってしまう。源が巨大岩を運んでくる度に、ウオウルフも、人間もざわめく。


その間に、計画書は、見直され、改良されて確定し、みなに賛同を得たということだったので、計画変更された配置通りに、ロー村の引っ越しが行われた。その引っ越しは、面白いものになった。


ロー村の50棟の建物を源が、引き抜き、ある程度、一か所の場所に集めると、その建物の中に、ロー村の150人ほどが入ってもらい、残りの練習をした50人が、家と家をしっかりと掴む。

そして、源がリトシスで一斉に、全体を無重力にして、持ち上げたのだ。

オモチャの村をこどもが、右から左へと移動させるように、本当の村をロー村の場所からレジェンド予定地へと移動させていく。途中、置ける場所もないので、一気に移動させなければいけない。


村が空を飛んだ。


レジェンドで待っていたロックやウオウルフたちは、空から村が飛んでくるのをみて、どよめいた。その中には、水車小屋まであった。


一斉に、レジェンドの新しい土地に、ロー村が降ってきて、ゆっくり下ろされた。


空から村が降りて来るその光景は、空からラピュタが降りて来るかのようで、解っていても驚かずにはおれないものだった。


そして、村の人たちは、一旦、レジェンドの外に出てもらい、源は、ボルア・ニールセンの指示通りに、次々と家を並べて行く。最後に、水車を設置して完成だ。


司祭様のお屋敷も無事に的確な場所に設置され、龍王の意思の伝道者の書が入った神殿も損傷させることもなかった。

以前のロー村の土地は、建物がすべて消えたが、木で造られた壁は、そのままだったので、その土地は、平地なのもあり、継続して畑として利用していくことにした。少し、離れているが、運動にはいいといったぐらいの距離なので、丁度よかった。湖も、前よりも近くなり、魚も確保できるようになる。


土地は、引っ越したが、建物も人も生活も変わらない。


ロックハウスも予定されたところに、持っていこうとしたが、あのロックハウスは、あそこに残しておくことにした。

そして、また大岩で新しい家を作った。セカンドロックハウスだ。

今度は、特に偽装する必要もないので、堂々とした、四角い家を作り、煙突も普通に設置した。ボルアが計画してくれたのだが、レジェンドの中央に、セカンドロックハウスがポツンとあるような状態になっていた。


家や建物だけだと殺風景だと思い、森から抜いた木々を規則正しく並べた場所に、再度植えな直していった。そうすると、自然に溶け込んだような村にみえた。これは、偽装にも役立つとも思えた。


源は、ロー村の引っ越しとセカンドロックハウスの製作をすべて終えると、壁の建設をまたはじめた。


それらの作業の間も、ウオウルフたちは、狩りをして、肉や魚、果物の食料を確保してくれた。


一番時間がかかったのは、壁だった。

壁は垂直に作ったものではなく、まるで花のように逆に反っているような壁にした。こうすることで、大抵の生き物は、上ってはこれない。

そして、大量に伐採した木々を利用して、グラファイドを大量に生成し、壁の表面を保護した。岩の壁よりもさらに強化された壁になり、色は黒色で、夜には、偽装にもなった。


壁には、いくつかの小さい穴が設置され、壁内部からしか開閉ができないようにして、もし、敵が来た時には、内部から攻撃できるようにした。壁の厚さは5mもあり、壁の上には、人が余裕で行き来できる通路が作られ、そこに滑車を等間隔でいくつも用意した。物を上に簡単に上げられるようにもなっており、防衛しやすい工夫がされた。内部からは、簡単に壁の上に登れる階段をいくつも用意した。安全を考慮して、手すりさえもあるほどだった。


壁の入り口は、3つ。正面と左右で、後ろは、ウオウルフの洞窟の岩で塞がれていた。もちろん、ウオウルフの洞窟の岩の上も、壁になっているので、後ろから入り込むことはさらに困難だ。

入り口には、大きなグラファイトで造られた扉と小さなグラファイトで造られた扉がそれぞれ3つの入り口に設置され、計6つの扉が作られた。普段、利用するのは、小さいほうで、大きな扉は、簡単には、開けらないようなまるで現世の銀行の扉のように頑丈に作られていた。


壁のすぐ内側には、ウオウルフ専用のボックスが用意された。それぞれにナンバーが表示されていて、100個のボックスが並んでいる。その中には、ウオウルフの装備が入っていて、何か起こった場合は、ウオウルフと村人がそこに駆け寄ることになっている。ウオウルフと村人はそれぞれ相棒を決めており、その相棒が、ウオウルフの鎧をボックスから出して、装備させるのだ。


素早くウオウルフに装備できるように何度か練習を繰り返した。だが、ウオウルフの鎧には、グラファイトの刃がいくつもあるので、何回やっても、少し怪我をしてしまう人が出てしまう。そこで、ウイングソードやチューソードには、木で作った鞘をつけることにして、それらの鞘には、紐がついていて、相棒が、紐を2つ持って、ウオウルフが、前に進むと、鞘がすぐに取れるようにした。そうすることで刃で怪我をする人も少なくなった。


また、レジェンドの村の四隅と中央から地下へと移動できる通路を作った。もし、何かあった時は、この通路から、200m離れた森に逃げることが出来るようにした。その5つの避難扉は、もちろん、隠されていて、村の生き物しか分からないようにしてある。外に通じる扉も、中からしか開けられないようになっており、その扉は、森に偽装されていながら、城壁の扉と同じぐらい強固に造られた。それらの通路は、ただの土を掘った穴ではなく、岩の壁なので、敵が掘り進んで、その通路に入り込むのも簡単ではない。また、岩が支えになって、崩れることもない。


迅速な避難や行動ができるように、ウオウルフの鎧には、背中に穴が二つあけられており、お腹の部分に2本の10cmほどのグラファイトの棒がつけられていた。

その棒をその背中の穴にはめ込むと取っ手のようになり、相棒を背中にひとり乗せることができるようにした。鎧についているウイングソードは、両刃なので、内側の部分30cmほどだけは、斬れない部分を作り、そこに人が足を乗せられるようにして、乗るのを安定させた。森の中を逃げるにしても、ウオウルフに乗れば、それだけ早く避難できるようになるからだ。ウオウルフに乗る練習も、行うようにした。こどもたちは、普段からウオウルフに乗って遊ぶようになったので、大人よりも乗るのがうまい。


壁の中には、グラファイトの玉や矢、そして、武器が並び、村人でも使える軽装の装備も用意した。グラファイトは、鉄よりも比重が高いので、重装では、大抵の人が動きを悪くしてしまうのだ。

考えられる、最低限の守るべき準備は、整った。あとは、ここから、みんなのアイディアや才能、生活の向上、設備、教育、政治、法律など、様々な細かいものを発展させていくことになる。


レジェンドは、外からみると、巨大な黒い花のような村になった。

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