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6章 異能の片鱗

俺の手?この岩が、手?


「冗談は・・・」といいながら、手探りをして、確かめようとするが、岩しかなく、どうしても、話している相手の体が触れない。


「それは俺の体だ」


「・・・なら、動かしてみてください」


その相手は、体を動かして、源の体を持ち上げた。持ち上げた状態だということが分かったところで、その状態で相手の体を触るが、やはり岩だ。


暗くて、確認のしようがない。冗談なのか、何なのかわからず、頭が混乱する。


「お前も人間じゃないな」


その言葉を聴いて、源は、自分の体を手探りで触り始めた。いや、おれの体は、人間のものだ。でも、なんだろうか・・・以前よりも腕が細くなった感じがする。真っ暗な洞窟の中だから、頭をぶつけないようにかがんでいたが、なんだか、違和感を少し感じていた。顔も触ったが、人間のそれと変わらない。でも、なんだか解らないが、違和感がある。声も洞窟反響してなのか、起きたばかりだからか、高く自分の声に聞こえない。いや、背中か?


「うわー!」


源は大きな声を出してしまった。


「どうした?大丈夫か?」


「どういうことだ・・・」


源は頭が混乱した。今何が起こっているのか、把握できない。夢?催眠術にかけられている?それとも、あいつらに何かされたのか?


「これは夢なのか?」


「嫌、これは夢じゃない。夢では、おれは人間として夢をみえるが、現実は岩なんだ」


「俺はどうなってしまったんだ・・・背中に何かがついている・・・」


なんだこれは・・・変なものが背中についてる・・・。あいつらに何か付けられたのか・・・。声を出してしまったのは、その変なものにも、感触があったからだ。手を触ったらさわられた感触があるように、背中のものも、触られた感触があるのが、不安を煽る。


「とはいえ、君は生き物のようだ」


「・・・」


「君が生き物なら、まずい」


「まずいとは?」


「俺は岩だから何年も生きながらえてきたが、君は生き物だけに何かを食さなければ、餓死してしまうだろう?」


そうだ・・・このままは、非常にまずい、何が起こっているにしろ、外に出ることが優先だ。


冷静に考えろ・・・


源は、色々考えてみた、洞窟などに閉じ込められた時の想定と解決策だ。


あいつらは、赤外線カメラなどで、俺たちの様子をみているのか?出口はない。穴もない。光も、食べ物もない。


「ここは、まったくの密室なのか?」


「分からない。小さい穴が繋がっているかもしれないが、密室だったとしても不思議じゃない。君は生き物だから、空気を使う。密室なら、もしかすれば、餓死よりも先に窒息死する可能性もあるな」


源は、癖で、考え込む時は、右拳を眉間に持っていった。こうすると集中力が増す気がするからだ。


『落ち着け・・・落ち着け』


「生き物は、いままで一回もみたことがないんだよね?」


「いや、話せる生き物は一匹もないという意味だ。話せるものは、君がはじめてだから、驚いた」


「話せる?」


「あぁ。探ると得たいの知れないかたまりのようなものが、たまに現れては消えてく」


「得体のしれないものってなんだ?」


「よく分からないが、生き物のなりそこない?のような奇形みたいなものじゃないかと思う。そいつらは、死ぬと動かなくなって、腐敗していった。俺が知っているような動物はいなかった。得体の知れないものを口にも出来なかった。それ以前に腹が減らないんだ」


「奇形みたいなもの・・・」


まったく的を得ない・・・それが本当なのか、彼がおかしくなった妄想なのかも分からない。


ただ、小さなコウモリでさえも、行き来していないような密閉された場所とういわけだ。酸素があるだけ奇跡かもしれない。源は、大きく唾を吐いて、手に付けて広げた。そして、空気の流れがあるのか、感じようとした。なんとなく、左側に空気の流れがあるように感触があった。それにそって、近づいていった。すると、下のほうに、小さい穴らしきものがあり、そこから、空気の流れがあることを強く感じた。


「大丈夫。密閉されているわけじゃない」


「本当か?」


「うん。君は唾がはけないだろうし、空気の感触がないから分からなかったかもしれないけれど、俺には感じる。この小さい穴の向こうには、少なくとも、外に通じる空気の流れがある」


「ということは、その流れに沿って、岩を掘り進めれば外に出られるということか」


「そういうことだね」


岩か・・・、岩なんてものをどうすれば、掘り進めることができるというんだ・・・。岩の彼でも、かなりの時間ほり進めようとしても無理だったのに、それが出来るとは考えられないな。


『ミニ。』


『はい。なんでしょうか。源』


『岩の割り方なんて情報は、君にはないよね?』


『ネットに接続すれば、その検索も可能かと思われます』


『ネットに接続できるのか?!』


『はい。源がネットへのアクセス権を承諾し、プログラムの改変を行ってくれたおかげで、あらゆる方法でネットへの接続を可能にしました』


『ということは、ここにさえも電波が届く近くの範囲にネット環境があるということなのか。意外とすぐそこに外が通じている可能性がある』


『外に出ることは困難でしょう。ここは少なくとも地下200m地点だからです』


『そうか・・・そういってたな・・・でも・・・ネットがつながるということは、助けも呼べるということだ。誰かにアクセスして、助けを求めてくれ、愛でもいい』


『愛への連絡していたアドレスは、現在使われていません。ですから、他の機関に連絡を取ってみようと思うのですが、どうでしょうか』


『愛が、アドレスを変えた?・・・まーいい、そうしてくれ』


『そして、岩の割り方ですね』


『そうだ』


『岩はその材質によって、変化はしますが、小さな傷を直線状に結ぶことで、大きく割る方法を古来から人間は行ってきたといいます。小さな衝撃であっても、積み重ねれば、岩は割れてしまうのです。』


『なるほど、大きな岩も綺麗に切断していたな。古来の人がそれができたのなら、何か希望が持てるかもしれない』


源は、岩の作りや形などを念入りに探り、直線上に、穴をあけられるかどうかを考える。岩の形は、規則性がなく、何の道具もなければ、明かりさえもない中で、どうやれば、まっすぐの傷をつけられるのか、考えなければいけない。


道具がないなら、道具を作れだな


源は、手ごろな岩を見つけて、その岩を投げて壊すと、5cmほどの直線の欠片を見つけた。その欠片を手ごろな岩の上から下まで、直線になるような点の傷をつけて、その点を線へとつなげて、軽く叩いて、刺激を与えていった。それを360度の線と結んで叩いていくと、真っ二つに岩が割れ、その岩をさらに割っていくことで、即席の岩の定規を手に入れる。


長さこそないが、そこそこの平行なものがあることで、めぼしがつけやすくなり、その直線にそって、大きな岩にも傷をつけて割ろうとするが、手ごろな岩とは違い、大きな岩をそれで割るのは難しかった。360度回転させて、岩を動かせるわけでもないからだ。


「さっきみたいに、岩を割ったらどうなんだ?」


そういえば、さっきは軽石で砕けたなと思った。確かにさっきは偶然だと思ったが、岩がもろいということかもしれないと、手に収まるぐらいの石で、ぶつけてみると、思いの外、岩は砕けた。


これぐらいの穴が両面だけでも直線にあけられれば、大岩も崩していけるかもしれない。


「本当にお前はすごいな。こんな岩を簡単に崩していくんだから」


「そうかな・・・。もしかして、君がその姿で、力が入らないのかもしれないね。体が岩だから力もありそうなものだけどね」


「自分の感覚でも、力があるように思えていたけれど、実は力が無かったのか・・・」


「君、名前も記憶にないの?」


「ない・・・まったく個人的な記憶がないんだ。」


「俺は、末永源すえながはじめ、はじめと呼んでくれ」


「俺は・・・源、君が俺の名前、仮の名前を決めてくれないか?」


「俺が?」


「うん。お願いするよ」


「そうだなー・・・。岩だから、ロックっていうのは、どうだい?」


「ロックか・・・」


「嫌なら、やめていいよ。でも、冗談でいったわけでもなくて、ロックって響き、格好いいだろ?だから、いいかなって思っただけさ」


「嫌、ロックでいい。それでいいよ。岩ちゃんとかよりも、ロックの方がいいしね」


「分かったよ。岩ちゃん」


「おい!ロックだろ!」


「ははは。」


拉致されてからやっと少し笑えたと源は思った。最悪の中でも、笑いは大切だ。


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