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55章 シンダラード森林への道

リタ叔母さんの予想は当たっていた。しかも、思ったよりも多い・・・とリリスは思った。

ボルフ王国に生きて戻って来た農民兵たちを外に逃がさないためのシンダラード森林への道のりに、多くの盗賊たちが、まるで待ち構えているかのようにバラバラの場所で待機していた。総勢で100人ほどいると思われる。

ボルフ王国の郊外に出没した者たちは、盗賊なのかどうか分からない姿だったが、今回は、あきらかに盗賊だと分る。ボルフ王国は、このようなものたちまで関わりがあり、雇うこということだ。


190人全員でここを突破しようとしても、これだけの数が連携を取ってすぐに追ってきたら、シンダラード森林までには、全滅してしまうだろう。


リリスは、大型怪鳥フィーネル2体に、長い布を巻き付け垂らし、イスのようにして、そこに座り大型犬タークも連れて、シンダラード森林への道が塞がれているのかを確認していた。

リタ叔母さんから黒いコートを与えられ、それで夜の暗闇に隠れた。白いタークも黒色の着物を着させた。


目的地に着くと、森に住む鳥たちを使って、捜索を開始した。夜になって、封鎖している人間たちが、火をつけはじめるので、見つけるのはそれほど難しくなかった。


それにしても、ここを突破するのは、容易ではないと思わされた。


そう考えていた時、突然、フィーネルの羽に黒い矢が刺さった!

どこから見ているのか分からないが、こちらの動きを把握されたようだ。敵がどこから矢を放って来たのかまったく視認できなかった。でも、矢の刺さっている角度からすると、左側から攻撃してきたと思われたので、右側の森の中に入り込んで姿を暗まそうと考えた。

フィーネルを下降させながら、森に入ろうとするが、矢は次々と放たれては、フィーネルに直撃する。


この矢の正確さ・・・これはプロだわ・・・このままだとフィーネルが危険になる・・・


リリスは、危険になった時、使って逃げかえるためにリタが渡してくれた煙幕が噴出するアイテムをカバンから取り出して、栓をひっぱると、黙々と黒い煙が出て、フィーネルの位置も隠す。


はやくも、この煙幕のアイテムを使ってしまったとリリスは焦る。これでさらに逃げるのは、困難になった。


だが、せっかく使った煙幕も関係ないのか、フィーネルにさらに矢が刺さる。


なんとか、森の中の高い枝に降りることができたが、5本もの矢が、一羽のフィーネルに刺さってしまっていた。フィーネルを助けるのなら、何とか追手を倒さなければいけない。今、悠長に、矢を抜いて治療している時間はなかった。矢を抜けば出血もひどくなるので、今はこのままでいるしかなかった。


それにしても、相手は、どうして、こちらの動きが分かったのだろうとリリスは考える。煙幕を焚いても、正確に矢が放たれたことから、視覚による視認した攻撃ではないとリリスは思った。


タークは、「クゥーン」という声をあげる。


「本当にできるの?相手はひとりじゃないかもしれないのよ?」


「ククゥーン」と頷く。


傷ついていないフィーネルにリリスは指示を出して、タークを地面へと下ろさせる。

タークは、地面が5mほどになると飛び降りて、すぐさま相手が追ってきている方向とは違う別方向へと走って行った。


リリスもタークだけにまかせてはおけない。そして、リリスは、両手で丸くボールを掴むような形を作ると、そこに口を持っていき、「フオフオ。ホ」と鳴らした。


すると、森の中からフクロウが現れて、リリスの木の枝に止まった。


「ごめんなさい。フクロウさん。わたしたちを助けて」


「フオフオフオ」


「ありがとう」


20匹ほどのフクロウが一斉に、空を飛んで、周辺の木の枝に止まって、鳴き続ける。


黒いペイントを顔に付けて、闇に偽装した射撃手シューターがひとり、そして、そのシューターを守るかのように二人の黒い姿の剣士らしき人間が、まっすぐに、リリスの方に向かってきていることを堂々と鳴いて教えてくれた。射撃手シューターたちからは、森の動物の鳴き声としか聞こえていない。そんな森のフクロウをわざわざ射撃をするはずもない。


でも、どうして、真っすぐ向かってこられるのだろうか・・・なぜこっちの位置が分かるのか、まったく分からない。フクロウからの情報だとその射撃手シューターの能力だろうということだった。


「フオフオフオ」


そんな・・・はやすぎる・・・


その射撃手シューターに発見され攻撃されてから、10分も経っていないのに、十数人の盗賊たちが、こっちの森に入って来たという情報が知らされる。かなり連携が取れている。


先に追ってきている3人を早く倒さなければ、追い詰められていくだけだ。


速く倒さなければいけないのに、射撃手シューターは、正確な遠隔攻撃をしてくるので、とても厄介だ。まったく傷を負わずに、近づくことは難しい。


三人組の情報は、森の中を走っているタークにも知らされている。タークは、自分の嗅覚や聴覚の情報と森から教えられる情報を頼りに、相手の風下から近かづこうとしていた。


リリスは、「ピュー」という小さな音を森へと走らせた。


なるべく、遠くからタークに攻撃をさせようとするが、その間にも、盗賊が後ろからやってきてしまう。この盗賊たちは、暗闇を把握できていないと思われるので、前進する速度は遅いが、それでも近づいてきている。


射撃手シューターは、リリスの木の真下で止まって、狙いを定めた。


そこにタークが、走り寄る。


それに、やはり射撃手シューターが気づいて、すぐにタークへと矢を放つ、タークは、木を盾にして、ジグザグに走ることで矢をかわすが、いつまでもかわしきれない。


射撃手シューターは「ぐわー!」という声をあげた。


足に一匹の蛇が、噛みついたからだ。射撃手シューターは、その蛇にも気づいていたと思われるが、ただの森の生き物だと思って、フクロウのように放っておいたのだが、噛まれた。


射撃手シューターが、慌てている間に、タークは闇に乗じて、剣士のひとりに襲い掛かる。一気に首に噛みついた。

もうひとりの剣士が剣を持って対処しようとするが、夜の森の中で、暴れる仲間と敵を的確に視認して、攻撃を加えることはできない。それが出来るのは、射撃手シューターだけだったが、彼も蛇への対処をしていたので、対処が遅れる。


手の空いた剣士が慌てている間に、木の上からフィーネルが、射撃手シューターに襲いかかる。鋭い爪で、頭を鷲掴みにして、空へと連れて行った。


剣士は、射撃手シューターが突然、空に飛んでいってしまったのにさらに混乱して、まわりに剣を振り回し始めた。闇の中から突然攻撃してくる謎で頭が混乱しているのだろう。


フィーネルは、高く高く飛んでいき、暴れる射撃手シューターを運んでいくが、パッと足を開いて、射撃手シューターを捨てた。


「うわーーー!」と叫んで、落ちていく。暗闇でも把握できているからこそ、状況を把握できて、さらに恐怖を感じたまま、落下していった。


フィーネルは、その落下していく射撃手シューターに、追いついて、足に噛みついていた蛇を捕まえて、離れた。手助けしてくれた蛇までは、見捨てられない。


タークは、ひとりの首を噛みちぎり、倒し、その顔を赤く染め上げたが、剣を振り回している剣士も倒さなければいけない。自分の身を守ろうとしかしない相手だけにすぐに攻撃できない。


リリスは、目をつぶって、森を感じる。


タークとは別の方向から、「ウオン!」という鳴き声を森の狼に鳴かさせた。

その別方向からの狼の鳴き声に驚いた剣士は、タークを後ろにして、振り回す剣を止めて、鳴いた方に剣を向けた。


その隙をタークは、見逃さなかった。後ろから剣士の首を狙って噛みついて、倒した。


この剣士は、リリスのことを少し情報を得てしまったのだから、生かしてはおけなかった。


だが、もうすぐ十数人の盗賊たちが、やって来る。これを相手をしたら、犠牲が出てしまうので、見られる前に、フィーネルに乗って、さらに森の中へと逃げていった。怪我をしたフィーネルには、頑張って着いてきてもらう。


森からの情報で、射撃手シューターが死んでいる地点から、リリスたちを追ってくる者はいなかった。


リリスは、傷ついたフィーネルの傷をリタのポーションで処置をして、包帯を巻いた。そして、リリスは、タークに乗って、森をぬけ、貧民地へと帰って行った。

傷ついたフィーネルは、もう一体が連れて帰って来た。


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