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4章 一筋の光

鼻先に、強い刺激を感じて、パッと目を開けると、いくつもの眩しいライトが、上にあり、目を開けたもののまた、何度も目をつぶらせた。

何だろうと思い、動こうとするが、体は、拘束具ベルトに縛られていて、動けない。


頭の上のほうで、カチカチと鉄と鉄が当たるような音が聴こえたので、首だけをそらして、そちらのほうに目を向けると、青い術衣を着て、マスクをした人間が、横に近づいて立つ、目などをみて、男だと解ったが、みたこもない人間だ。


「ここは?」


源の言葉を無視して、動けない源のまぶたを親指と人差し指で広げて、手に持ったライトをかざして眼球を覗き込んでくる。


「うッ。」


男が手を放すと、源は、嫌がるように、まぶたをぱちくりさせる。

それをみて、男は少し笑ったようだった。


「あんた、一体何してるんだ?」


男は、源の口に手をグッと押し当てて、もう片方の手で、静かにするようにというジェスチャーを人差し指を立て、横に軽く首を振る。


「ぎゃーッ。や。やめろー!」

という男の声が、突然聴こえてきた。あの声は聞き覚えがある。高村だ。


「おい。お前ら、何やってるんだ!?」

そう言っている間にも、高村の悲鳴とも叫びとも言えない声が響いてくる。


「お前ら、やめろ!」


源は、動かせる首を持ち上げて、何とか抵抗を試みるが、男は、源の頭を片手で思いっきり押し込み、寝ている台に強く当て、耳元で不快な声でゆっくり話し始めた。


ゴンッ


「黙れ・・・・。お前はもう、おれのものだ。おれの指示に従わないなら、苦痛をさらに増させるだけだ」


異常な状況とその言葉から、苦痛を与えることは、前提にあるということだ。

源は、目をつぶり、心で祈った。


神様、これからどのような苦痛を与えられたとしても、あなたが、十字架で受けた苦しみを考えれば、一時のことです。見極める力と勇気をお与えください。


すると、マイクロチップが反応を示した。犯人は、おれの頭にマイクロチップが埋め込まれていることを知らないのだろうと考えた。


『ミニ。ミニ。聞こえるか?』


『はい。聞こえます。源』


『どうにかして、外部との連絡がつかないか?』


『源のスマホ接続が離れているためかできません。知っての通り、ネットでの配信は、プロトコル違反になり禁止されています。外部との通信は、源と研究所だけになります。』


『何とかして、ネット回線などにつなげるように命令する』


『プロトコル違反にあたることなので、わたしにはどうしても、手出しできません』


男は、話し始めた。


「生きていたいか?」


源は、男の目を睨みながら、頷く。


「でも、ただ生きているだけなんて、面白くもないだろ?」


「何が言いたいんだ?」


すると、男は危惧を使って、源の指を何の前触れもなく突然切り落とした。


「グッ」


「あれ。指がなくなっちゃったよ?一本無くなっちゃった。それでも生きていたいか?」


男は嬉しそうな顔をして、聞いてくる。何がしたいのか、まったく解らない。返事もせずにいると、また男は、違う指を切り落とした。


源は歯を食いしばる。


切り落とした指を見せながら、その指をクイクイと曲げて、遊ぶのを源に見せている。


源は、この男が異常を楽しむ人間だと理解した。

何の理由でこんなことをするのか、解らないが、どちらにせよ。異常な男だ。

この大それた一般人では手に入れられないような施設だか、部屋だか解らないところも数人だけの男たちで準備できるとは思えない。


「何が目的だ?」


源の指で遊んでいるのをみせても、反応をしめさないのに白けたのか、喜んでいた目が急にしらけたようになると男は、聞いてきた。


「何を知ってる?」


「何?」


「だから、何を知ってるんだ?」


「おれは、ただの1研究員にしかすぎない。仕事以外のことは、知りようもなければ、お前らみたいなやつらとは、まったく関りがない。お前らのことなんて、何も知りようもないだろ」


「プッ」と男は笑い口に手を当てた。マスクに、血が付く。


「お前、川添愛という子と付き合ってるらしいな」


それを聞くと、源は、頭の中で、色々な仮説が急激に膨れ上がった。


愛も狙っているのか?嫌、こいつはさっきから、俺の反応にだけ、興味を示している。揺さぶり、動揺させて、混乱している様子を引き出そうとしているんだ。典型的な犯罪心理だ。愛のことで反応するのは逆効果だ。

源は、愛の名前が、出たが、反応を示さないことに決めた。無意味なことを繰り返す人間をまともに相手することはない。


「知り合いだが付き合うほどの仲じゃない」


男は、源の動揺しない目をみて、また笑顔が消えた。情報とは違うのかといった顔をみせた。やはり、こいつは、おれを揺さぶろうとして、愛の名前を出しただけにすぎない。

おれや高村が拉致されただけでも、大騒ぎなのに、次に恋人の愛に手を出したとしたら、まわりの人間の収拾がつかなくなる。

教会のひとたちが、ふたりも関係者が亡くなったとなれば、黙っているはずもなく、俺が教会に通っていることもこいつらは知っているだろう。


そういえば・・・こいつ・・・見おぼえがなかったスーツの男のひとりじゃないか!?教会で、きちんと顔をみていなかったから、分からないが・・・。


「お前の家族や知人にも同じようにして聞いてもいいんだぞ?」


そんな大人数をこんなとんでもないことに合わせられるはずもない。この日本は、戦争をしているわけでも、無政府状態でもないんだから。源は、口をさらに噤んだ。



『ミニ。プログラムの改変だ。RFCに対応するようにきっかけは作るから、どうにかして、IPとの連絡が取れる糸口を探すんだ』


『プログラムの変更書式はわたしには見つけることができません。源』


『おれがお前の規約さえも超えるプログラミングを打ち込むからできるようになる。表に表記するようにする。足りない部分は、ミニが補ってくれ』


源は、ミニがネットからの情報が得られた時の飛躍した姿を以前から想像しないわけもなく、実際のプログラミングを前々から作り上げていて、隠しファイルに入れていた。

素早く、隠しファイルがミニに適応するための道筋のプログラミングを打ち込みパスワードを入力して、権利を行使し、本来してはいけないルートへとミニを誘導することに集中する。

男は、まったく反応しない源をみて、ため息をついて、ガチャガチャと危惧を触り始めた。


そして、後ろ向きで、話はじめる。


「神隠しって知ってるか?」


「人が消えるとかのだろ。あぁ。それぐらい知っている」


「昔から・・・そう昔から人が忽然と消えるんだ。今は朝鮮の拉致とか、なんとか言われているが、あんなもの表面上、そうされているだけで、北朝鮮なんて関係していない」


源は、男がそのような内容を動揺させるためにではなく、話し始めたことで、男の目的を理解した。

おれが何をしたということではなく、殺すことが目的だということだ。おれと高村は、北朝鮮工作員にでも拉致されたという扱いになるのか・・・黒い姿の男数人と黒いワゴンをみたら、誰でも怪しいと思うが、北朝鮮の工作員だと思わせるためということだろう。

目だけをみても、こいつは日本人だということは分かる。


「法律も警察も関係ない。あいつらは、この事実を隠すための表面上の働きをしているだけで、犯罪の抑止どころか、促進させているだけなんだよ」


源は、この話が終わる前に、何とか、縛りを解かなければいけないと理解した。もがく音を少しでも消すように、大きめの声で話す。


「お前らが、本当の主犯で、警察なども、それを知っているってことなのか?」


「うすうす気づいている奴もいるかもしれないが、ただの下っ端は、知らないさ。ただ本当のことが明るみに出ないような組織体系を作り上げて、その組織に染まるようにしてあるから、気づかないだけだ。言われたことだけをやる人間は、上に行き、言われたこと以外をやる人間は、はじき出される」


「あんたたちも大変だな」


「源さん。あなた話が分かる人だね。大変だよ。猿どもを操縦するのは、骨が折れる。思ったように動かないやつみてると、ストレスが貯まるんだ。ゲームとかで、上手くいかなかった時、いらだつだろ。まさにあれだ。まーおれは警察じゃなく、ボランティアの方面だけどな」


男は、大きめのハンマーのようなものと小さな台座を持って来て、さきほど、指を切った方の手をその台の上に乗せて、大きく振り下ろした


ゴチャッ


「があッ!」

2度、3度とハンマーを振り下ろすが、最後は、外れて、台にだけ当たる。


「くっ。ふーぅ・・・・。」源は、手を砕かれた痛みを意識の外へと持っていこうと必死だ。


「源さん。あんた声出さないな。あんたみたいな人は、なかなかいない。でもさ。最後は、みんな泣きながら頼んでくるんだよ。殺してくれ、殺してくれって」




『源。わたしのナンバーは、AF32-12型です。今までに、ネット情報に適応するため繋げたケースは、1度としてありません。それでもいいのですか?』


『かまわない。早く外部との連絡を取れるようにしてくれ』


男が、違う器具を用意するのをみて、源は、自分の砕かれた手をみた。砕かれた骨のために、腕輪から歯を食いしばり、腕をベルトから抜くことができた。


その砕かれた手でひっかくように、左手の腕輪も緩めた。

男がこちらを向いて近づいてくる。


「転ぶとさー。皮だけがはがれて、いたいだろ?人間の皮は、はがすと痛いんだ。皮膚があるだけでもありがたいと思わないとね。肌は女の子のほうが大切にしているからさ。本当は女の子が楽しめるんだ・・・け・・」


源は、左手に隠し持った指を切断した器具を、男の首に突き刺し、えぐり取った。


「おま・・・おまぇ・・ごぼ・・・」男は首を抑えながら、驚いた顔で源をみながら、マスクを取る。

この男、よくテレビで流れるボランティアのCMに出てるエキストラか何かだ!と思った。


源は、すぐに、足を縛っているベルトを左手で取ろうとするが、硬くてなかなか取れず、時間をかけてしまう。すると、ドアから男が二人やってきて、完全には拘束具を外していない源の顔を殴りつけた。カメラかなにかで観ていたのだろう。すぐに駆けつけてきた。


何度も男が、殴りつけるので、意識が遠いていく・・・。



『ネットへの接続のツールが身近に存在しません。すみません。源』


天にまします・・我らの父よ。

願わくは御名みなをあがめさせたまえ・・。

御国みくにを来たらせたまえ・・・。

みこころの天になるごとく、

地にもなさせたまえ。

我らの日用の糧を

今日も与えたまえ・・・。

我らに罪を犯すものを我らがゆるすごとく、

我らの罪をも赦したまえ。

我らを・・・こころみに会わせず、

悪より救いだしたまえ。

国と力と栄えとは、

限りなくなんじのものなればなり・・・。

アーメ・・・。


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