表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/269

36章 2対1000

【36章 2対1000】


湖から森へと逃げていったウオウルフたちに置いていかれたかのように、ロックと源だけが、その場に残った。


森にウオウルフたちを追いかけていったコボルトたちも多かったが、源たちと対峙するコボルトたちも多かった。源たちの鎧は完全な黒ではないので、発見されやすいからだ。1000匹は、ロックと源の前に残っていた。


ウオウルフたちが、森の奥へと移動し、大勢のコボルトがそれを追いかけていったのを見計らって、ロックは吠えた。


「うぉおおおお!!」


そして、1000匹のコボルト軍団へとひとりでかけあがる。


巨体のロックが振り回す、セカンドアックスは、次々とコボルトたちを倒していく。前回同様に、コボルトたちは、ロックのパワーに吹き飛ばされて、まったく自分たちの攻撃はダメージにならない。しかし、あらゆる方法で、ロックにしがみつき、その動きをにぶらせようとしてくる。ロックは、それを振りほどく。


ロックにしがみつくコボルトを振りほどいては、攻撃を繰り返すが、あまりにも数が多い連続攻撃なので、振りほどくのが間に合わない。


すると、ロックの横をするどい何かが通りすぎたと思うと、それが大量のコボルトたちを一列に吹き飛ばしていく。


それは、源の攻撃だった。



源は、ひとりでコボルト1000匹に叫びながら飛び込むロックを確認し、背中に背負っていた大きな黒色の袋を地面に置いた。


その袋からは、大量の野球ボール大の金剛石グラファイドの玉が入っていた。


源は、暗くなっている中でも、的確にロックの位置を把握していた。


なぜなら、ロックは、意味もないように、わざと吠え続けて戦っていたからだ。


ロックが吠えることで、ロックの位置を正確に把握していた。


ロックがわざと叫ぶことで、大勢のコボルトたちがロックへと集中的に押し寄せている。

そして、グラファイドで造った鉄球に自分のパワーに乗せて、ロックに襲いかかるコボルトたちの集団に投げ込むと、まるですべての道の駒を取ってしまう無双した将棋の飛車のように、一直線に、コボルトたちを貫いていった。


投げればその鉄球は、どこまでもコボルトたちを直線的に倒していく。一投一投だけで、複数のコボルトを倒していく。

その鉄球も黒色に塗ってあるので、コボルトたちは、何もないところで、なぜか大量にふっとばされていくのを気づかずに、攻撃を続けていく。

遠くからみていたコボルトリーダーやボルフ王国王子サムジは、その異様さをみて意味が分からないように困惑しながら傍観する。


彼らからすれば、まるで手品をみせられているようなものだ。大量のコボルトの集合体が一列にドミノ倒しのように一気に倒れていくからだ。


だが、源のその攻撃も長くは続けられなかった。コボルトたちは、ロックだけではなく、源にも攻撃をしかけはじめたからだ。


源の方にも、コボルトが集まり始めると源は、空へとゆっくりと上がって行く。


その上がっている間に、右手を掲げて、エネルギーを集めていくと、炎が作られた。その炎は玉のように丸く、そのマナの異常なほど集まった炎は20mにも及ぶ大きさだった。ありえない光景がさらに突然現れ、それが炎だけに、明確に辺り一面の状況を照らしだした。


あの時の少年が、また夜の空を飛び、その手には、己の何倍もの大きさの巨大な炎を持っているのだ。


それをみて、コボルトリーダーも鍔を飲む。



―――サムジ王子は、飛び跳ねて喜んだ。


「見ろ!あれだ!。あれがセルフィの力だ。凄いぞ!あいつが、ほしい。絶対に欲しい!!あいつさえいれば!」


そういって、興奮しながら、戦いを見守る。



―――源は、さらに体の中のマナで、炎の巨大な固まりをさらに大きくして25mにもなろうかという炎弾ファイアボールを作り出した。そして、小さくつぶやくように、なるべくロックから離れながらも、コボルトに被害がいくだろうと愛の想定した場所に向かって投げた。


炎弾ファイアボール


その炎は、暗闇を眩しいくらいに照らしたと思うと、比較的ゆっくりと、コボルトが大量に集まった場所に落ちていった。炎弾ファイアボールがまだ落ちる前からその熱量によって、コボルトの服や槍が発火をはじめ、まるで太陽が落ちてきたかのような状況を生み出す。炎弾ファイアボールは落下したその場で爆発し、大量のコボルトが火だるまになって燃えた。近くにいたコボルトは、一気に炭になりコナゴナになる。



―――「うはははははは」


それを見て、サムジ王子は、お腹をかかえてテントの中で笑った。圧倒的すぎるその力をみて、喜んだ。


両手を握りこぶしで握りしめ

「こんな光景は、なかなか目に出来るものではない」



―――森の中で戦っていたウオウルフたちは、大量のコボルトを壊滅させて、一匹もウオウルフの被害なしで、湖に戻って来た。


残るは、コボルト400匹とコボルトリーダー、そして。


1時間もしないうちに、戦力が8分の1にまで減ったのをみて、コボルトリーダーも、状況が把握できないように混乱する。たった三日だった。たった三日前までは、ウオウルフは、傷だらけでほとんど全滅する寸前だった。被害こそ出していたが、コボルトのほうが優勢だった。

なのに、三日たった今は逆に、1時間程度で、壊滅的な被害をこうむってしまったことに、コボルトリーダーは困惑の色を隠しきれない。何が起こっているのか、戦いがはじまってから分からないと窮地に追い込まれてた。夕方までじらされ怒り狂っていたとはいえ、この状況は想像だに出来なかった。たった三日でこれほど戦力が変わるなど誰も想像できるわけがなかった。


しかし、その中で、愛が、源に警告を発する。


『源。後ろからかなりの人数の二足歩行の生き物が接近しています。その数200以上』


『何?まだ森の中に隠していたのか?』


『分かりません。しかし、コボルトではありません。コボルトよりも大きな生き物です』


ここへきて、あの謎の黒い軍団が参戦してくるとかいうオチはやめてくれよと源は思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ