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33章 異世界の仕組み1

源は、セーフティエリアに戻って来た。

すると、ロー村の司祭が、村人たちと源を待っていた。


「司祭様・・・。」


司祭は、初めて会った時のように、後ろに多くの村人を置いて、背中を曲げながら微笑んでいた。


「わたしたちは、龍王の意思を受け継ぐ者。あなたの敵は、わたしたちの敵ですじゃ」


「司祭様・・・お気持ちはありがたいのですが、わたしはまだ龍王の言っている救世主だとは自分では思えないのです。そんなわたしのために村人たちの血が流されるのは、望むことではありません」


「だからですじゃ。あなたがご自分を救世主と言わないからこそ、あなたは、予言通りの方なのですじゃ」


「そう言えるかもしれませんが、偶然ということもありえます。わたしは、仲間のウオウルフが傷つくことも嫌なのです。そして、あなたたちが、もし、傷ついたとしたら、わたしはわたしを赦せなくなるでしょう」


「では、わたしたちで出来ることを何か与えてくださいませ」


「僕はウオウルフと共生することに決めました。そして、ウオウルフの縄張りのこの森を一緒に守ると誓ったのです。ウオウルフの敵は、シンダラード森林西部のコボルト3000匹です。一匹一匹はそれほどは強くはありませんが、それでも、ウオウルフは追い込まれました。もう今は70匹しかウオウルフはいません。ましてや人なら無事では済みません」


「セルフィ様。あなたは、わたしたちを見くびられておられる。これでもシンダラード森林で、長らく龍王の意思を守り抜いてきた村。能もなく、モンスターが住む森では暮らしてはいけませぬ!」


確かにそうだ・・・。ただの人間の能力だけで、力のあるモンスターたちの中で生き抜いてこれたとは思えない。


「モンスターをセルフィ様のように倒すことはできなくても、知恵がわたしたちには、あるのですじゃ」


そうか・・・ニーナは、カバンにモンスターが嫌がるような香水を持っていた。ああいった工夫したこの世界独特のアイテムなどを使っては、生きてきたのなら、そのアイディアだけでも、教えてもらえば、生き残るヒントになるはずだ。


「ありがとうございます。司祭様。あなたのおっしゃる通り、ロー村が生き抜いてきたその方法、教えてください」


「はい。当然いくらでもセルフィ様のためなら、教えるつもりですじゃ」


司祭は、小さい体を少し起こし、天に向かって片手をあげると、「半幻滅マインドレスロー」と唱えると、ロックハウスが、消えた。


「消えた!?」


「おおー!」と近くにいたロックも驚いている。


「これは、マインド系のマナの力ですじゃ。中規模の近づく敵に、居所を見えなくさせる効力を持ちますじゃ」


なるほど、これで村を守っていたのか。


「マナをセルフィ様はご存知ですかな?」


「マナのことやスキルのことは、ウオウルフから聞きました。ですが、この目でみたのは、はじめてです。村も見えないようにモンスターから守られていたのですか?」


「はい。その通りですじゃ」


「ですが、わたしは、あなたがたと交流する前に、ローの村を発見しました。なぜわたしは発見できたのでしょうか」


「それはわたしの半幻滅マインドレスローは、調整することができるからですじゃ」


「調整?」


「マナとはとても奥が深い能力で、同じマナ使いであっても、その人によって違う効力を発揮し、そのマナをどれだけ使いこなすのかという熟練度でも、変わって来るのですじゃ。わたしの場合は、知的生物にはみえて、そうではないというモンスターや動物にはみえないということができるのですじゃ。ですから、動物は、何もないと勘違いして、村に入り込み、わたしたちに狩られることもあります。そして、知的な者には、村は避難所として示すことを繰り返し、村人を増やしていくのです。見え無くなればいいというものでもないのですじゃ」


なるほど、マナは、使いようによっては、さらに便利なものに変えていけるということか。


「わたしとロックは、遺跡で目を覚まし、脱出する途中で、封印の珠を手に入れることができました。その封印の珠の中身は、確認できるのでしょうか?」


「封印の珠?」

ロックは、聞いてきた。


「マナとは、魔法のことで、俺たちが遺跡から持って来た石、巨大サソリを倒した硬い不思議な石の中に、そのマナやスキルが封じ込められているんだ。その封印を解けば、俺やロックも、今、司祭様がされたようなマナの力を使えるようになる」


「あの石か」


と言って、ロックは、ロックハウスから封印の珠を持って来た。


それをみるなり、司祭は、説明した。


「封印の珠の色で、ある程度、何系のマナなのかが解ります。それは赤色ですから、ファイア系、火のマナだと思われます。その他には、ウォーター系、青といったように、見分けることはできますが、鑑定したり、封印を解かなければ、ファイア系のレベルは解りませぬ」


「ファイア系のレベル?」


「ファイア系の中でも、難しくマナを大量に使ってしまうもので分かれておりまする。威力や効力が違うので、それらを難易度のレベルで言い表しているのですじゃ。例えば、わたしがさきほどした、半幻滅マインドレスローは、レベル3の難易度だと認定されておりますが、幻滅マインドレスというレベル1のマナもあります。これは対象がひとりだけのもので、マナを使う量も半幻滅マインドレスローに比べて、低くなります」


「えーっと・・・マナは、魔法という認識と、エネルギーのようなものでも言われるのですか?」


「種族やその者の持って生まれたマナの量は、違うのですじゃ。いうなれば、エネルギーのようなものを誰しもが内に秘めており、そのマナをすべて使いきり、失うと意識を失うという危険もあるのですじゃ」


マナは使えるが、諸刃の剣でもあるってことなんだろう。やはりリスクもあるということだな。


源は、ロックに聞いた。


「ロック。その封印の珠は、体のどこかで触りながら、息を吹きかけると、ひとりだけに能力が得られる。ふたりなどで一緒に吹きかけたりすると、どちらにも手に入らず、壊れるだけらしい。封印を解いて試してみてくれ」


ロックは、それを聞くと、源に封印の珠を渡した。


「これは源が、自分の力で巨大サソリを倒して得た封印の珠だ。俺のではない。だから、それは源のものだよ」


「いいのか?」


ロックは、当然だといった顔で頷いた。


「あーでも、ロック。これからは俺のことはセルフィと呼んでくれ。本当の名前だと誤解する人が出てくるからな」


「そうだったな。すまん。セルフィ・・・」

とロックは、良い慣れないといったように頭をかく素振りをする。



司祭は、話を続けた。


「封印の珠の中身などを知る「鑑定」というスキルや鑑定魔法アペイザアイがありますのじゃ。それを手に入れて鑑定士の仕事をしている者たちがおります。いまのところ、確認されたマナは100種ほどで、その他にも、巨大なマナや隠された種類のマナ、上位魔法が遺跡には眠っているといわれておりまする。独自魔法というその者だけが所持しているマナもあるといいます。それらの中には、神話級のマナもあるらしいですじゃ」


「マナ1つにしても、本当に奥が深そうですね・・・」


「はい。その通りですじゃ。それでは、封印を解いてくださいませ」


そう言われ、源は、封印の珠を両手で持ち、想いを込めて、自分の息を吐いた。


封印の珠は、赤色に光りはじめ触っていた両手に、エネルギーのようなものが流れていくように、消えていった。モンスターを倒した時のような体力など、何かが増えたというのではなく、何か使えるようになったという感覚がある。


そのすぐ後、源は、肩に熱さを感じた。


「熱ッ!」


源は、自分の左の腕、肩をみると、炎のような小さなマークが付いていた。少し熱さを感じた。


「マナを宿した者は、そのマナのマークを腕に刻むのですじゃ。わたしもこのように」


と司祭が腕をみせると、3つの違うマークがついていた。


「これでも、わたしは、若い頃、世界を旅した者ですじゃ。ですから、マナの1つや2つは、持ってから出たのですじゃ。そして、村人たちの数人もまた、マナを持っておりまする」


なるほど・・・いろいろな道具の工夫やマナを利用して、龍王の意思を守り抜いてきたんだ・・・確かに、これらの情報は、役に立つと源は思った。


「先ほどと違うマナでは、段階回復グリーンヒールという怪我をゆっくりと回復し続けるマナも持っておりまする。自己治癒力を促進させるのですじゃ」


そうか。もし、ガーウが危険な時に、司祭様がいてくれたら、助かっていたかもしれないということだ。回復マナを持っていたのだから・・・それは明日の戦いでも言えることだろう。確かに、ロー村のひとたちの手助けは、生存確率を挙げてくれる


自分が今、手に入れたはじめてのマナがどんなものなのか、確認してみようと、右手を上にあげて、唱えた。


炎弾ファイアボール


すると、源の右のてのひらに炎が集まりだした。


周りにいた人々は、どよめいた。


「な・・・なんと!!」


さすがの司祭も驚きの声をあげた。


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