30章 脅し
資源ほしさに、無意味に、ウオウルフを追い詰め、自国の民でさえも、残虐に殺そうとし、ガーウも殺され、戦争で次々と仲間のウオウルフが死んでいくのをみて、源は、キレた。
ロックハウスという巨大な岩をまるで隕石を落とすかのように、ぶつけていき、戦場を黙らせ、停止させた。そして、この戦いの指揮官、残虐な計略を実行し続けた指揮官へと源は、辿り着いた。
高台のテントの前にいくと、源は、大きな声で言った。
「この中にいるのは、分かっている。顔をみせろ!」
といいながら、グラファイソードで、テントを切り裂いた。
ほとんど裸で、恐れおののく、第三王子サムジを発見した。女性たちは、隅で、恐怖して震えている。
「お前・・・自分たちの国の農民兵を殺そうとしただろ?」
「ち・・・ちち違う!逃げるものは、愛国心がない裏切り者だ。だから処断したまでだ!」
「なぜ、シンダラード森林東部を襲った?」
「コ・・・コボルトが・・・そうしてほしいと頼んできたからだ・・・」
源は、サムジ王子を鋭く睨みつけた。
そして、テントの一部を手で砕いて、破片を手に持つと、それをサムジ王子に投げつけ、ほほを数ミリだけ斬り付けた。
王子は、「ひぃーッ」といって、両手を前に出した赤ちゃんのように震える。
「今、お前のいのちを握っているのは、俺だ。今の俺は心から怒ってる。自分でも何をするのか分からない。嘘をついたら、お前が農民兵にしたように、ウオウルフに食べさせるぞ!それとも、あの大岩で潰されたいか?」
「や・・・やめてくれ。俺は偉大な・・・」といって、王子は、恐怖し、顔を歪める。
「なぜ、シンダラード森林東部を襲った?」
少し間があきながら、答える。
「こ・・・この森には、資源が大量に埋蔵されているからだ」
「資源がほしいのなら、そう言えばいいだろ!」
「そ・・・そんなこと、誰に言えばいいっていうんだ?あの獣か?あんな獣に話しかけるバカがどこにいる?」
こいつは、どこまでいっても、高い位置からの目線でしか物事が考えられない奴なんだろうと、言葉の端々から源は、感じた。
「お前は、コボルトとも話をしただろ。コボルトに出来て、ウオウルフには出来ないというのか。結局、お前たちは、コボルトも裏切ろうとしてたんだろ?」
図星を付かれて黙り込む
「・・・」
「お前はボルフ王国の何だ。お前は何者だ?」
「わたしは、ボルフ王国第三王子キグダム・ハラ・コンソニョール・サムジだ」
王子か・・・もし、こいつを今ここで衝動的に殺せば、ボルフ王国は、今度こそ、本腰をいれて、ここに攻め上って来るだろう・・・。第三王子ということは、第一や第二王子までは生きていればいるということだ。こいつを殺しても何の解決にもならない・・・。
どうする・・・。
「ウオウルフも会話をすることができる。お前たちがほしいのが、資源なら、資源は、自由に掘ればいい。だが、戦争などをしようとするなら、こちらもお前たちを滅ぼすぞ」
「お・・お前は一体何者なんだ・・・?あの異様な力はなんだ?」
こんな人間に、まともに答えるのは危険だ。適当に怖がらせるような話をしようと考えた。
「俺の名は、セルフィ。この森の自然エネルギーを自由に解放することができる森の管理者だ。もちろん、森の力を蓄えて、森の外でも使うことがでる。」
「だから、あんな異常な力があるのか・・・」
サムジ王子は確認するように聞いた。
「聞くが、資源をくれるというのか?」
「人間がほしがるものと、モンスターがほしがるものが、同じだなんて思わないことだ。でも、この提案を断るのなら、今ここで死ね。お前のような犯罪者は、死んだほうがいい。俺がお前を処刑する」
「こ・・断るなどはせん!ただ、コボルトどもが何と言うかだ。俺がお前たちの提案に乗ってもあいつらは、攻撃をやめないぞ?」
「お前たちだけでも手を引け、コボルトとの戦いは、ウオウルフとコボルトの問題で、解決する。お前にとってはどちらが勝っても、得することだろ?」
「ま・・・まぁ・・そうなるな・・・」
「でも、この約束をお前が、破ったら、俺はたったひとりでも、ボルフ王国に乗り込んで、そこの大岩でお前とお前の部屋ごと粉々にしてくれる。俺ひとりなら、どんなに攻撃をされても、無意味だということは、さっきのをみて、分かっただろ?」
サムジ王子は、震えながら答える。
「わ・・・分かった」
「もし、この森に何か問題を起こすのなら、また俺が相手になる。その時は、絶対にお前を生かしておかないぞ!わかったな!」
サムジ王子は、頭を大きく縦に振りながら、大きく発言する。
「わかった!森の資源さえ手に入れば、俺たちは何の文句もない。あとはコボルトとそちらが、決着をつけろ。俺は手を引くだけだ。」
「絶対に、手出しをするなよ!」
「分かった。承諾する」
「今日の戦いは、これで終わりだ。お前が仲裁に入れ、そして、コボルトとの戦いが裂けられないのなら、三日後に再開する」
「コボルトが、明日にでも攻撃してくるかもしれんぞ」
「その時は、ボルフ王国は、ウオウルフに付くと言え」
源は、そう言い残すと、テントの外に出て、神輿のような高台に戻った。偽サムジ王子は、怯えている。
「お前が、コボルトの頭か?」
コボルトの王らしきものに声をかけた。
「そうだ。俺がコボルトリーダーだ」
「今、俺たちウオウルフ側も、ボルフ王国と協定を結んだ」
それを聞くと、騎士たちも、騒めく。
「何だと??」
騎士たちの反応を無視して話を続ける。
「ボルフ王国は、ウオウルフ側、東部にはもう手出ししないと約束した。手出ししない約束の代わりに、資源を提供することをこちらも了承した」
それを聞いて、騎士たちも少し納得したようだった。
「だが、お前たちコボルトは、資源が欲しくてウオウルフに攻撃をしかけたわけじゃないんだろ?」
「その通りだ。コボルトは、この森最強のモンスターだ。ウオウルフは邪魔だ。消えろ」
「争いをやめないということか?」
「コボルトは、ウオウルフをゆるさない。」
「分かった。コボルトとウオウルフの戦いだ。決着をつけよう。三日後。お前たちコボルトと、ウオウルフの最後の戦いだ。こちらは、戦いたくないと言ったが、コボルト、お前たちから攻撃をしかけてきたんだ。滅びても文句をいうな」
「滅びるのは、お前だ」
「三日後以外に、攻撃をしかけてきたら、ボルフ王国は、お前たちを攻撃する。ボルフ王国とウオウルフから同時に、次に、攻撃されるのは、お前たちコボルトになるというわけだ。
だが、約束を守って、三日後に、全面戦争をするのなら、こちらは、ウオウルフ側だけで、相手をしょう。お前たちが三日以内に攻撃してきたら、ボルフ王国はこの森の権利を獲られたとして、大義名分をかかげて、喜んでお前たちを滅ぼしに来るぞ」
「分かった。だが、コボルトがお前たちを滅ぼす!」
源は、その言葉を聞いて、何も言わず、背を向けて、空を飛び、ウオウルフたちの元へと戻っていった。源が、戻って来るとボルフ王国も、コボルトも兵を引いていった。
ウオウルフの多くは傷ついて疲労困憊していたが、源の凄まじい攻撃の様子を目の当たりにし、しかも、そのコボルトとボルフ王国をどうやったのか引かせたことに、歓声の雄たけびをあげた。
ウオウルフたちの中に、源という偉大な存在の1つの歴が刻まれたのだった。
一匹として源を認めないウオウルフはいなかった。