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262章 褒章式

ブーンバタフライというモンスターの幼虫、カイコのまゆからとれた動物繊維で織られた白いドレスは、太陽の光りを反射させて、光沢を放ち、トリアティー師団女王ゴルバフ・ダレーシアの美しさをさらに引き立てていた。


同じようにルピリート将軍の赤いマントと源のシルバーのタキシードジャケットもレジェンドで開発された新しい絹製品だった。


源とゴルバフ・ダレーシア女王が先頭になり、次にルピリート将軍が後ろに控えながら、前回と同じように、ドラゴネル帝国の首都ドラゴのメインストリート、龍の道を行進していく。


例にならって、源の光系マナによって作り出された小さな粒子は、三人のまわりにチカチカと光りながら、まるで源とダレーシア、ルピリート将軍を守るかのように浮遊している。


帝国へと反旗を翻したワグワナ法国の新しい王として即位したガマル・ルィール・チェクホン王は、シンと結託していた元ワグワナ法国政治家バッカス・トワ・オルドールに従っていた150人の政治家たちに縄をかけて、行進する物質モンスターミカエルの集団の中央に並んで歩んだ。


そういった背景からガマル・ルィール・チェクホン王は、三人とは真逆に、正装はしていても、なるべく目立たない服装で、行列に追随する。


帝国政治家サネル・カパ・デーレピュース上院議員による伝説の天使セルフィの人気取り政策は、被害を最小限に抑えたあり得ないほどの結果と多大な功績をすでに、帝国市民に情報を流して成功させていた。


レジェンドと帝国連合軍との戦いがまるでなかったかのように、帝国市民は、セルフィの姿をみて、大声援を贈っていた。


笑顔で行進する源の心中は、騒がれすぎることを嫌うが、レジェンドの長であり、伝説の天使という名目上の役目を全うするために仕方なく従っていた。


前回は、リリスと共に、空中を浮きながらの行進だったが、今回は、地面を歩いて、市民と同じ高さで観覧してもらっていたが、黒い物質モンスターのミカエルの個体数は、500体と多めに配置させることで、見栄えを良くしている。


帝国市民がセルフィをみようと大勢が集まり、大声援を贈っている。


右側のミカエルは、レジェンドの国旗を、そして、左側のミカエルは、トリアティー師団の国旗、そして、中央に並ぶミカエルは、帝国の国旗を掲げ、議事堂へと到着した。


帝国議事堂、大広間には、精強なドラゴネル帝国騎士に守られながら、ヨハネ・ルシーマデル・ウル・サイリュー・スピリカ皇帝陛下が玉座に座り、待機していた。


帝国の名だたる王族・貴族などが、大広間の左右に並んで、今回の戦いの褒章式を見守る。


500体のミカエルは、外に元政治家の奴隷とともに待機させておいて、護衛分の数体だけが付き従い、源、ゴルバフ・ダレーシア女王、ルピリート将軍、ガマル・ルィール・チェクホン王が、大広間の中央に参上して歩き、皇帝の前で、それぞれが、膝をついて頭を下げた。


帝国側の伝令が巻物を開いて、控えめな功績を述べる。


「帝国連盟に反旗を翻した三国同盟のうち2カ国を見事、平定し、その被害は数えるほどしなかった功績は高く、今回に至っては国を亡ぼすことなく、連盟に再度参加させたレジェンドとセルフィ侯爵には、金1万枚と伝説の防具デフォルメーションメイル一式を贈呈する

帝国が侵攻する以前に多大な被害を被られながらも、そこから不屈の精神で戦い6万の兵を興して帝国を勝利に導いたトリアティー師団国は、帝国とは別に参加した唯一の国として、高く評価され、金2万枚が贈られる

代表者は、誇り高き獣人族の女王ゴルバフ・ダレーシア女王である

帝国からは、8万の軍を率いた帝国強撃団隊長ルピリート将軍には、金2000を贈呈する

低迷した国を復興させようと新たに王に即位したガマル・ルィール・チェクホン王には、王族復興と帝国への加盟、また同じ過ちを犯さないように要請する」


皇帝ヨハネ・ルシーマデル・ウル・サイリュー・スピリカが、デフォルメーションメイルを源に手渡しする。


デフォルメーションソードの時も感じた力強さが、国宝級の宝物デフォルメーションメイルにもあると理解する。


こいつは凄いな・・・ダンベラの剣だけでも、かなりの効果を与えてくれていたが、さらに鎧一式まで、同じ効果があるとしたら、技もさらに広がるだろうな・・・


リトシスを作動させて、デフォルメーションメイルを調べる。


『源。デフォルメーションと同じで、グラファイトが使用されています

付与された効果も含めるとデフォルメーションの戦術の幅は、50%増しになることでしょう』


やっぱりそうか・・・伝説の防具を手に入れられるのはいいことだ。

だけど・・・これを受け取れば、また帝国には逆らえなくなるな。

まー・・・特に逆らおうなんて思わないけど・・・


考え込む源の顔を見て、ヨハネは、少し笑みを浮かべる。


ヨハネ・・・こいつ・・・悪だくみしている奴の目になってるぞ・・・


こんな状況で褒美を受け取らないなんてことは出来ないので、源は、頭を深々と下げて、デフォルメーションメイルを手にした。


皇帝ヨハネ・ルシーマデル・ウル・サイリュー・スピリカが、3名に褒美を与えて、労いの言葉をかける。


「レジェンド、そして、トリアティー師団国の素晴らしい働きに感謝する

レジェンドには、三国同盟の残りの国、ペルマゼ獣王国の攻略にひき続き、取り組んでもらいたい

トリアティ師団国は、アモラ襲撃によって数万の被害を被ったが、それらの回復に専念するように

帝国としても、手を差し伸べる所存だ

報告によるとトリアティ師団国にも、龍王の意思である一神教を学ぶ機関を検討していると聞いたが、それは事実か?」


ゴルバフ・ダレーシアが、頭を下げて答える。


「はい。もともとトリアティ師団国は、建国以来、一神教の教えがされてきた国です

今回、レジェンドの軍とともに戦わせてもらいましたが、彼らの価値観は、我らに近いものだと感じました

トリアティ師団国の民の多くをセルフィ殿が助けてくださったこともあり、多くの我が国民は、龍王の意思を受け入れることでしょう

ワグワナ法国にも、教会が建てられるというのなら、トリアティ師団国に教会を建てないということはないことでしょう」


「そうか・・・・

現在、帝国も、一神教の復古を手掛けている最中だ

連合国の一角として、トリアティ師団国もまた、龍王の意思を広げて行かれるのは、心強いことだ

帝国は、龍王亡き後、多神教になり、様々な主義主張を自由に与え続けてきたが、それが今の戦いの原因のひとつとなってしまっている

帝国として世を統一しても、価値観がそろわなければ、争いは続くばかり

義を定めて、苦しみを軽減できるように共に歩もうぞ」


「はい。皇帝陛下」


「セルフィ。ペルマゼ獣王国は、どのように対処するつもりだ?」


「まだ、ワグワナ法国を改善している最中ですから、すぐに取り掛かるということは出来ません

ボルフ王国とワグワナ法国は、人間が支配する国でしたが、ペルマゼ獣王国は、生まれた時から強靭な体を持っている獣人との戦いになります

一筋縄でいくとは思えません

ですから、それなりの準備をしてから出陣したいと思っています」


「力を貯めるということだな?」


「はい。その通りです。皇帝陛下」


「今回は、帝国からは8万の軍を出したが、ペルマゼ獣王国の際は、他国との共同戦線を引いて、かなりの規模で行おうと思っている

その総指揮官として、セルフィ侯爵に立ってもらいたいと思っている

必要なものがあれば、言ってくれ」


「ありがとうございます。皇帝陛下」


「この後は、盛大なパーティを開くこととなっている

楽しんで行ってくれ」



源たちは、騎士たちに案内されて、別部屋へと案内された。

別の大広間には、世界中の食材が用意された立食パーティが並べられていた。


源は、ゴルバフ・ダレーシア女王をエスコートしながら、パーティに参加した。

絶世の美女ダレーシアと小さな美しい少年セルフィのカップルは、まわりの目を集めた。


褒章式でも顔をみせていた王族・貴族・大商人などが、こぞってセルフィの元へと近づいて、話かけてきた。


「レジェンドには、今までみたこともない画期的なものが多数あると聞いていますが、真でしょうか?」


「他国の国の文化は、どこであっても珍しいものです

そこに伝説の天使などと大げさに宣伝もされれば、少しの違いが大きくも感じるのでしょう

皇帝陛下からは、レジェンドの技術は、秘匿特権として保持する許可を得ています

それらの技術の多くがクリスチャンになった者だけが使用できるようになっているのです」


「そうですか・・・

噂によれば、生活水の恩恵を向上させるレジェンドの技術を帝国にも、採用するなどと聞いたのですが、本当でしょうか?」


「どうなのでしょうね

どれを採用するかは、帝国側が決めることですし、ただの噂で終わる場合もあるのではないでしょうか

わたしからは、それらのことは言えることはありません」


技術のことはもちろん、レジェンドの存在によって利益を得ようとする人たちが、大勢取り囲むので、源も上手に断ることに気を配る。


同じように断るのも疲れるので、愛に文章を形成してもらってそのセリフを使った。


ゴルバフ・ダレーシア女王が、気を利かせて、セルフィをダンスに誘った。

源は、現世でダンスなど一度も踊ったこともなかったが、愛の情報から、奏でられた音楽にあうダンスをピックアップして、踊った。

タンゴ系の音楽がこのようなパーティに流れるわけもなく、スローバラードな音楽なので、現世のダンスで応用してみた。


少年と美女が踊るその落差はあったが、クルクルとまわるようなダンスは、あまり見られないようで、源が誘導して踊る美しいダレーシアとのダンスは、周りからさらに注目された。


やっぱり、愛は便利だ・・・。


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