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261章 クーリナの決意

大死霊ハデスが攻め込んできたが、そのハデス領土内の村々に、謎のモンスターが暴れ出し、ハデス軍は、それを制圧するためにペルマゼ獣王国から軍を引いた。


ハデス軍を退却させたことは、民に安心を与えたが、その被害は尊大で、ペルマゼ獣王国の新しい王と期待されていたゼブル・パテ・アガ王子が戦死したことは、国中に知れ渡った。王子とともにさらに5万の兵士もすべて戦死した。

見事、ハデス軍を退却させた王子は、階級をあげられ、国王となったが、崩御されたので、引き続き前王であったマゼラン・パテ・アガが国王として即位した。


ペルマゼ獣王国の精鋭2万もその5万の中に投入されていたので、また新たに精鋭を育成していくための企画が実行された。


国をあげてのコロシアムによる大会が行われたり、無理やり戦争のきっかけを他国にふっかけては、戦争の経験を積ませ、新たな人材を発掘しようとする。


ペルマゼ獣王国には、四将軍と呼ばれる獣人騎士がいた。


ラガール部隊は、王子直属部隊なので、特殊部隊として存続していたが、ペルマゼ獣王国を支えていたのは、この四将軍たちとその軍だった。


クーリナは、ハデスとの戦いの唯一の生き残りとして、その四将軍の地位に近い階級を与えられた。



―――モーリスの前に、影が現れた。影は赤い目を光らせていた。


「モーリス様。ディア・ガル・ア・ダリウスヘルは、自国の暴れ出したモンスターを駆除した後は、軍を解散させました

こちらからもコンタクトを取りましたので、当分は、ペルマゼ獣王国に攻め込むということはありません」


「飼い犬の手綱は、しっかりと掴んでいろ

勝手に自由に動かれて、こちらが噛まれたら、その分の損害はお前たちに払ってもらう」


「申し訳ありませんでした

しかし、前々からハデス王のペルマゼ獣王国に対するイメージはあまりよいものではないようです

何か心当たりはないでしょうか?」


「我は愚かではない。勝てるかどうかも分からない相手を襲うことなどはしない

ハデス王の残虐性を目の当たりにしたが、それさえも知らなくとて、みだりに手だしするなどしない

その残虐性から、許可も得ずに、唐突に戦争を起こそうとしたのではないのか?

それとも、やはりお前たちの策略かだな」


「とんでもございません

我らシンは、エジプタスの意思を継承しているわけですから、相当な理由がないかぎり、協定を結んだ王たちを見捨てることなどいたしません

特にモーリス様が飼われているペルマゼ獣王国は、常に戦争をしてくださっているのですから、組織から何かするなど考えられません

ディア・ガル・ア・ダリウスヘルは組織からはみ出した存在ですから、それが原因だとみるのが妥当かと・・・・」


「お前が考えられなくとも、結局、五老の判断で動くのがシンだろうよ

だが、実際に南老は動かれたので、お主たちについては、信用してやろう

こちらとしても、今回のことで邪魔な王子を始末できたのだからな」


「ありがとうございます」


―――大死霊ハデスが動かないということを知ると、毎月のように行われていた生贄の儀式が執り行われるようになった。


地下に作られたその場所は、薄暗く、気分をよくする煙が炊かれ、その奥には、背中から無数の手が生えている牛の顔をした像が置かれていた。

その像の手前にある二本の腕は、片方が上を指さし、もう片方が地面の指さしていた。

あらゆる種族の100人のこどもたちが、白い衣服を着て立たされていた。こどもたちの後ろには、動物のラマが数十匹、並ばされていた。

ペルマゼ獣王国の有力者たちが、黒いマント、黒いマスクを被って、手にナイフを持って壁際に並んでいた。

黒姿の者たちは、姿は隠されていて分からないが、体の大きさや雰囲気から、女性やこどもも、黒い恰好をしていることが分かる。

操られていたクーリナもその場に黒いマスクを被せられ立っていた。


美しい女性たちが、縦に並んで、左右に腕を伸ばして、暗闇の中、怪しげなダンスを踊りだす。


笛や太鼓で不気味な音楽が奏でられていた。


音楽が鳴り止むと、像の前に、モーリスの本体が現れた。


その存在の大きさから、その場にいた者たちは、氷つくように時が止まったかのようになるが、次第に、床に伏せて、モーリスを拝みだす。


モーリスは、像と同じように、腕をいくつも出して、手前の二本の腕をそれぞれ、上と下へと向けた。


「天上天下唯我独尊!!

お主たちの貢ぎ物を受け取ろう」


黒いマントを着た者たちが、規則正しく並びながら、こどもたちとラマの前へとやってきて、持ち場へと連れて行く。


部屋には、ベッドのような100個の台座が置かれ、その台座にこどもたちとラマを寝かせた。


クーリナも、操られながら、ひとりのこどもを連れて行き、台座に寝かせる。


そのこどもを前にして、クーリナは、驚いた。


サブリナ!?


大きさ以外は、見た目が全く違う少年をみて、サブリナと見間違えたクーリナは、我に戻った。


違う・・・サブリナじゃない・・・

お・・・・俺は・・・何をしているんだ・・・


この子たちは・・・?


そうか・・・ペルマゼ獣王国に置かれた複数の手が生えている像は、あいつを模したものだったのか

あいつは、まるで自分が神にでもなったかのように、生贄を毎月のように用意させていたんだ・・・


ガ・キーン・ロドレスは、奴の一部でしかなかった・・・

本体はこれほどまで、巨大な力を持っていたのか・・・


体が動かない・・・いうことをきかない


また、俺はあいつの言いなりになって、やりたくもないことをやらされるのか?


こいつら・・・ナイフを持って、この子たちを・・・


中央には、燃え盛る大きな暖炉が置かれていて、黒姿の者たちが、数人のこどもたちを連れて、その中に投げ込み、入り口を塞ぐ。


中から悲鳴が聞こえる。


「ぎゃーーーー」


寝かされたこどもたちに、黒姿たちが、一斉にナイフを振り上げる。

クーリナの腕もナイフを振りかざしていた。


やめろーーー!!こんなこと・・・俺にやらせるな!!


心の中で叫ぶが、体を自分の意思で動かすことができない。


何の抵抗もできず、ナイフは、こどもやラマの心臓めがけて振り下ろされた。


うめき声が聞こえたと思うとまた、あの不気味な音楽が奏でられる。


息絶えた者たちに、触手が伸びていき、その触手は、遺体をゆっくりと飲み込んでいった。


サブリナやクーテンだけじゃなく、毎月のようにこいつは、食べているんだ・・・

お前は、ゆるるさない!絶対に殺してやる!


俺にこんなことをさせやがったお前をどんな手をつかってでも!

お前の国を滅ぼしてやる!


クーリナは、サブリナとクーテンと暮らした時の思い出を思い出す。思い出す度に、苦しくなり、また憎悪が中から湧き出していく。


体は動かすことが出来なかったが、目の前の亡骸をみて、ふたりを想い、クーリナは、黒いマスクの中で涙した。


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