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260章 魔王降臨

ペルマゼ獣王国軍が、西へと向かうにしたがって、空の色が暗くなっていたことに動揺が広がっていた。

雨というものがないこの世界には、空は、太陽の色以外には、変化しないのが当然とされていたが、空一面が、黒いモヤのようなものが広がり、そこから水の粒が落ちてきていた。


雨雲であったが、ペルマゼ獣王国兵士たちは、ウォーター系の魔法だと恐れた。


雲によって太陽の光りが弱まり、薄暗いだけではなく、水が落ちてくることに警戒心が頂点に達していた。

残酷な手段を知っているからこそ、同じ残酷さを持つハデス軍を脅威だと考える。

戦いの中で生きていたペルマゼ獣王国の兵士たちは、雄たけびを上げて士気を奮い立だせた。


前方方向には、万を超えるアンデッドの大軍が、ゆっくりとペルマゼ獣王国領土へと歩んできていた。

スケルトンもいれば、ゾンビやグールなどもいる。

あらゆるアンデッド系モンスターの集団の後ろに、真っ赤な鎧の兵士1万程度が控えていた。


薄暗くなったことで、赤く光るアンデッドたちの目が、強調され、不気味さを増している。


王子ゼブル・パテ・アガは、精鋭部隊1000名を自分の周りに配置して、今回連れてきた5万の兵士を前方方向に3つの軍に分けて迎え撃つ、つもりだ。


ゼース・ブシ・ハマル隊長が、全軍に向かって叫んだ。


「すべてのペルマゼ獣王国軍兵士たちよ!

我らの国に攻め入った者がどのような結末になるのかしらしめ」


隊長が話している途中に、大死霊ハデス軍の方向に、巨大な人型が現れた。

頭には2本の角が横に生えた悪魔だった。

あまりにも巨大すぎて、ハデス軍より奥がすべてその巨大な者が壁となり、阻まれて、みることが出来ないほどだった。

ペルマゼ獣王国軍兵士たちは、一斉に巨大な山をみるかのように、上に首を上げた。

その者は、黒いモヤのようなものに包まれ、巨大なのに姿が曖昧にみえ、体が揺れるほどの大きく、そして、体の芯に恐怖が響いてくるような声を発した。


「我こそが大死霊ハデスの王ディア・ガル・ア・ダリウスヘル・・・・

ペルマゼ獣王国の者は、生かしてはおかぬ・・・・

消滅あるのみ・・・・」


山が2つ動くかのような巨大な両腕をゆっくりと上へと動かすとハデス軍のアンデッドたちの前に、黒い闇が現れ、その闇が、アンデッドたちを覆ったかと思うと、アンデッドたちが苦しそうに叫び出した。


「ギャアアァアアギャアア!!」


2万ほどのすべてのアンデッドたちの体のまわりに黒いモヤのような闇がすべて覆うと一斉に、すべてのアンデッドが、狂ったように猛然と突撃を開始した。

さきほどまで、よろめいていたかのように、ゆっくりと歩いていたアンデッドたちが、人間よりも早いほどのスピードで突進してくる。


ゼース・ブシ・ハマル隊長が叫んだ。


「中央2軍、突撃ぃぃ!!」


左右1万ずつの軍を残して、中央3万の軍が、2万ほどのアンデッドの突撃に対抗するかのように、突撃を開始した。


「グオオオオオオ!!!」


ペルマゼ獣王国2軍が雄たけびを上げながら、アンデッドたちとぶつかる。


オーガやオーク、ライカンなどの兵士たちが、大きな武器を振り回して、アンデッドに攻撃をしかけた。

F級スケルトンぐらいなら、一撃で数体吹き飛ばすほどの威力があるが、ハデス軍のアンデッドに一撃を喰らわせると、本体に当たる直前に、黒い闇が、ペルマゼ獣王国軍の武器を逆に破壊した。


武器でさえも、触るだけで破壊されるので、そのまま衝突したペルマゼ獣王国軍は、アンデッド2万の闇に飲み込まれるかのように、数を減らしていく。


ペルマゼ獣王国軍は、左右の1軍と3軍を動かし、アンデッドの大軍をさらに囲むように攻撃をはじめる。

闇の効果は、無限ではないらしく、何かとぶつかり、それを消滅させると闇もまた消えて、本来のアンデッドの体があらわになった。

闇が消えたアンデッドを獣人たちの怪力が薙ぎ払う。

しかし、後ろからも闇の兵士たちは、迫りくるので、囲い込んだはずのペルマゼ獣王国軍のほうが被害を増大させていた。

さらに、ペルマゼ獣王国軍の兵士の死体もまた、アンデッドとなり、立ちあがるとハデス軍の兵士となり、数を増やした。

腐ってもいないアンデッド化した兵士は、動きもスムーズで、相手の攻撃を恐れることなく襲い掛かって来るので、その強さは、生きていた時と変わらない強さとなっていた。


ペルマゼ獣王国軍の指揮官からの指示は、突撃と囲い込みだけで特にそれ以外はなかったので、時間とともに削られていく。


ゼース・ブシ・ハマル隊長が、王子に話しかけた。


「やはり、ハデス軍のアンデッドは、一般的な魔物ではありませんね」


「ああ。そのようだな」


「しかも、さらに1万の精鋭軍が後ろに控えています

数こそ、こちらのほうが勝っていますが、その精鋭やディア・ガル・ア・ダリウスヘル本人が動きはじめれば、さらに勢いが増すでしょう」


「さすがは、帝国と対をなす悪魔族の国だ

一国のそれもただの5万だけで押さえきれるものではなかったか」


クーリナの体を操り、この戦いに参加していたモーリスは、苦々しい顔を浮かべる。


悪魔族の一角が簡単に倒せるとは思ってはいなかったが・・・あの程度のアンデッドをペルマゼ獣王国の兵士たちと互角以上の能力を持たせるとは・・・


モーリスは、クーリナの体を地面に潜らせ、木の根のように、触手を戦場の下へと伸ばしていった。


クーリナのすべての触手には、赤いオーラがほどこされていて、地面からアンデッドたちを一斉に攻撃をしかけた。

アンデッドたちの黒いモヤは、クーリナの赤いオーラと相殺されて、その攻撃は、直接、アンデッドたちに届き、千単位で粉砕していった。


押され気味だったペルマゼ獣王国軍は、クーリナの攻撃の後押しのおかげで、また勢いを戻した。


それをみて、ゼース・ブシ・ハマル隊長とゼブル・パテ・アガ王子は、驚く。


「あれは・・・クーリナか・・・」


「はい。そのようですね・・・」


「奴の能力は、ディア・ガル・ア・ダリウスヘルに迫るというのか・・・」


王子は、口惜しそうな表情を浮かべた。


アンデッドたちが押されはじめたところで、突然、その上空にディア・ガル・ア・ダリウスヘルが現れ、右腕を前にかざすと、巨大な黒い空間が現れ、その中から5m級から10m級のスケルドラゴンやスケルリザードが大量に湧き出し、戦場の中に落ちていった。

それらすべてが、闇をまとっていた。


モーリスは、ここぞとばかりに100本の触手で、現れたディア・ガル・ア・ダリウスヘルに攻撃をしかけた。


しかし、ディア・ガル・ア・ダリウスヘルの体に触ることさえ出来ず、触手は、赤いオーラとともに消滅していく。


ディア・ガル・ア・ダリウスヘルだけではなく、黒い空間から湧き出して来たスケルドラゴンなどにも、クーリナの触手の攻撃は、通らなかった。


モーリスは、歯ぎしりをして、悔しそうにする。


操っている体がクーリナだということで、力の4分の1も出せてはいないが、本体で攻撃したとして、果たして奴に勝てるのか・・・


スケルドラゴンやスケルリザードは、大きな口を開けて、ペルマゼ獣王国軍をかみ砕いていく。

さらに口から黒い闇を吐き出し、獣人たちを大量に粉砕していった。

ただのアンデッドにも苦戦していたが、さらに強力な魔物が現れ、さすがのペルマゼ獣王国兵士も、前に進む士気を失っていた。

黒い闇に触った獣人たちは、ジワジワと体を食べられるかのように、体を破壊されていき、苦しみながら死んでいく。


「た・・・助けてくれぇぇ・・・」


精強な兵士たちの口から、聞いたこともない言葉が発せられ始めると、ペルマゼ獣王国軍は、一気に隊列が崩され、壊滅していった。


ディア・ガル・ア・ダリウスヘルは、さらに、両手を広げ、その指から大量の黒い闇の粒のようなものが、もの凄いスピードで、残りの兵士たちへと襲いかかると、その闇の粒が、兵士たちの体内に入り込んで、内部から体を破壊した。


獣人たちは、もがき苦しむ。


その闇の粒は、ゼブル・パテ・アガ王子たちのも及び、王子直属部隊の兵士たちを黒い闇が覆うと次々とその場から消え去った。


ディア・ガル・ア・ダリウスヘルは、逃げる兵士にも容赦なく、攻撃をして、誰一人として逃がす様子はなかった。


モーリスは、ディア・ガル・ア・ダリウスヘルの次の攻撃が来る前に、素早く離脱して、クーリナの体を守っていた。


早い闇の粒の攻撃がクーリナにも、及んだが、体の何割かを犠牲にして、逃げ切った。


奴には、まだ勝てぬッ!!


モーリスは、その戦場を見捨てて、クーリナの体を首都デリスへと向かわせた。

ディア・ガル・ア・ダリウスヘルの目的がペルマゼ獣王国のすべての破壊であるのなら、これから全面戦争になるので、クーリナをここで失うわけにはいかなかった。


ハデス軍の赤い騎士が、空を飛んで、ディア・ガル・ア・ダリウスヘルへと近づいた。


「魔王様

大死霊ハデス領土内の村々に、見たこともないようなモンスターが突如として現れました

それらは、多くの村人を襲っては、村人をそのモンスターにして、増殖しています」


「見たこともない・・・モンスター・・・」


ディア・ガル・ア・ダリウスヘルは、水晶玉ほどの黒い丸い闇を目の前に出すと、その闇から村々の様子を確認した。


「確かにな・・・・全軍を退却・・・・」


「はっ!!」


ペルマゼ獣王国軍のすべての敵を排除し終わると、ハデス軍は、反転して、ハデス領土へと退却していった。


ディア・ガル・ア・ダリウスヘルは、ひとり、その場から姿を消した。


モーリスは、ハデス軍が、進軍をせず、なぜか退却していくのを確認して、疑問を抱いた。


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