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252章 強行突破

奴隷商人ボンガンは、サブリナを狭く暗い部屋に置いてある椅子に縛り付けた。


「実はな。お前たちが慕っているあの化け物

あいつが思った以上の働きをみせている

闘技場で15回もの試合を行わせているが、どれもわざと過酷な状況のものを選んではいる

それでも生き残っているわけだ」


「ど・・・どうして、そんな試合に出させるの?お父さんに何かあれば・・・もうお金も手に入らないと思うのに・・・」


「わたしも過酷な試合に出させたいわけじゃない

ただ、金になるんだ

客が興奮する試合ほど人気があるからな

このまま順調にいけば、あと10回ほどで契約金に達するだろう」


「まさか・・・このまま自由にさせないつもり?」


「わたしもそう思っていたんだがな

そうもいかなくなった

あいつが、王族に強さを気に入られてな

契約を反故にすることもできない

だから、その10回の試合が終わる前に、お前には、お宝を見つけ出してもらいたいわけだ

もちろん、協力してくれるのなら、お前の待遇を良くしよう

お前だけじゃなく、ヤギとあの化け物もな」


「でも、そこにお金があるとは限らないわ」


「ん?どういうことだ?」


「ずっと同じ隠し場所のままとは言えないもの・・・」


「その時は、あの化け物にお宝分、また戦ってもらうだけだ」


「そんな・・・」


「当然だろ

もともと森にお前たちを探しに行ったのも、それが目的だったんだからな

それが手に入らないのなら、別の手段で手に入れるまでだ」


ボンガンは、サブリナをまじまじと見る。


「しかし、少し見ない間に、変わるものだな

前は、ただ怯えているだけで、覇気の欠片もなかったが、この状況で今はわたしにも物が言えている

お前を痛めつけるかもしれないのを知っていてもな

何がお前を変えた?」


「家族ためなら何でもするわ」


「家族か・・・、まーそれもいいだろ

お前があいつらをそれだけ大切にしているのなら、その想いの分だけしっかりと結果を出すことだな

あの化け物のようにな」



―――クーリナは、体の半分を分身体としてサブリナの守りに費やしていたが、サブリナも捕まったことで、その半分を元に戻した。

そこで、少し異変に気づく。


本体と分身体の違いは、見た目では、ほとんど差がない。しかし、決定的に違うのは、コアの有無だった。

分身体を元に戻して分かったのは、どうやら長く分離した状態にしていた分身体の一部に、小さなコアが形成されていたことだ。

自分の体にあるコアの大きさと比べれば、あまりにも小さいので、特にそのコアから得られる恩恵のようなものはない。


俺は一体、どんな生き物なんだ・・・


分身体が戻って来てくれたことは、大きな収穫だった。

もうそろそろ、飢餓状態に陥るかもしれないと思っていたからだ。

分身体は、前と変わらず、森の生き物を十分に食べて戻って来てくれた。

これからも、この分身体を放てば、遺跡などに狩りに行くこともできる。

飢餓で暴走するということは、回避できそうだ。


ただ、分身体が戻って来たからといって3人無事に脱走することは難しいかもしれない。

やたらと嗅覚や聴覚が発達している獣人が常にふたりを近くで武器を抜いたまま見張り続けているからだ。

サブリナに貼り付かせている分身体で、報告される前に、そいつらを殺してしまえば逃げ切れるが、脱出するために、雇われたであろう冒険者アドベンチャーを殺すというのは、気が引けた。


闘技の戦いは順調に勝ち進んでいる、奴隷商人は、契約を反故にすることもできない、正規の方法で自由になったほうが、あとあとの暮らしが危険にさらされることもない。

この国が強さこそが正義だというのなら、闘技場で戦っていることは、俺の名を広げ、プラスに働くことだろう。

サブリナが心配していたような拷問などをする様子も今のところないのなら、このまま自由になれるように戦い続けるほうがいい。


闘技場では、人を殺すが、殺し合いだと分かっていて参加しているものたちなのだから、いくらかマシだ。



――――サブリナが示した場所を人を雇い探させたが、目的のものは発見されなかった。サブリナが懸念していたように、隠し財産は、移動していた。


ボンガンは、苛立ちながら、サブリナを痛めつけようとまた狭く暗い部屋に閉じ込めた。


「本当の金のありかを言え!」


ボンガンは、ムチを地面にバチンバチンと叩きつけて威嚇する。


「わたしが知っていたのは、あの場所だけです!移動させられたのなら、もう分かりません!」


「クソッ!役に立たんガキだ」


ボンガンは、右手を振り下ろして、おもいっきりムチをサブリナにぶつけた。

サブリナは、痛みを想像して、目をつぶる。


だが、想像していた痛みはこなかった。

目を開けて、確認する。


ボンガンは、ムチを振るったようだが、サブリナが平気な顔のままだったので、驚いた顔をしていた。


「なんだ?お前・・・痛くないのか?」


ボンガンは、バチィッと、またムチを振り下ろしたが、サブリナは平然としたままだった。


何度、ムチを振り下ろしても、サブリナには効いていないので、右手にナイフを持って、サブリナの太ももに、突き刺したが、ナイフは、刺さらなかった。


「ただのガキじゃないのか!?」


ボンガンは、サブリナの顔面にナイフを突きつけると、サブリナの体から見たこともないものが飛び出して、そのナイフを掴み取られた。


「うおッ!」


驚いて、ナイフを手放し、後ろへと下がった。


「お前も、あの化け物と同じだというのか?誰か来い!こっちへ来てくれ!」


クーリナは、サブリナを縛りあげていた縄を切り取った。


クーリナは、サブリナの耳元で小声で話した。


「もうこうなったら、強行突破で、ここから脱出するぞ。あいつを人質にして、クーテンのところに行くんだ

俺の本体も助けに行く」


サブリナは、頷いて、ボンガンに近づくと、クーリナの触手が、両腕を拘束して、さらに先ほど奪いとったナイフを首にあてた。


「クーテンのところに行くわよ」


「わ・・・分かった!」


雇われた護衛兵、数人がやってきたが、ボンガンがナイフを突きつけられ、捕まっているのをみて、動きを止める。


「変なことをすれば、ナイフを刺すわ!」


「こ・・・こいつの言うことを聞け!」


兵士たちは、部屋の隅に移動させられ、その部屋のドアの鍵の形に触手を変形させて、鍵を閉め、兵士を閉じ込める。


そして、クーテンのところまで移動した。


しかし、すでに、クーテンを数人の兵士たちが、取り囲んで、首に剣を突き立てられていた。


「ふはっ。ふはははは。俺に何かしてみろ。そうしたら、ヤギの命はないぞ!はやく、俺を放せ!」


クーテンに剣を向けていた兵士が、異変に気づく。


「主人、クーリナが来る!」


「何!?」


ボンガンは、首をまわし、後ろをみると、殺気だったクーリナが、立っていることに驚く。


「お・・・お前・・・なぜ、勝手に動ける・・・?奴隷具はどうしたんだ!?」


「いいか。ここにいる奴らを殺すことが簡単なことだということは、お前たちは分かっているだろ

このまま、俺たちを解放しろ

さもないと・・・・」


クーテンを囲んでいたひとりの獣人が、ナイフをクーテンの足に刺した。


「ぎゃーーー!」


「クーテン!!」サブリナが、叫ぶ。


「ふはははは。解放するのは、お前たちだ。すぐにわしを放せ!そうしないと何度もヤギの足を刺させるぞ!」


クーリナは、右手を剣のように変形させて、ボンガンの足を突き刺した。


「うぎゃーーー!!」


「お前は、バカなのか?人質のクーテンにしたことは、人質のお前に返って来るだけだ

クーテンが死ねば、お前も、ここにいる全員、殺してやる

こどもたちがいるから、お前たちを殺さずにいてやっているだけだ

お前たちのほうが圧倒的に不利だということを忘れるな!」


「わわわわ・・・分かった!放せ!ヤギを放すんだ!」


ボンガンが命令するが、兵士たちは、簡単に動かなかった。


「早くしろ!そいつを解放するんだ!」


兵士は、クーテンに着けられていた奴隷具などを取り除き、解放した。


触手を伸ばし、足を怪我しているクーテンを確保して、こちら側に、連れて来ると、サブリナが、クーテンを抱きしめた。


「クーテン!」


「よし!いいか!お前たちは、この牢屋から出るな

この屋敷から出たら、こいつを解放してやる」


クーリナは、牢屋の鍵も閉めて、二人を守りながら、ボンガンを人質のまま外へと出た。


「いいか。約束の金は、用意する。あと1試合で、契約は解除されたはずだ

お前が、サブリナに手を出さなければ、お互いこんなことをせずに、丸く収まったはずなんだ

その1試合分の金を手に入れて、お前に俺が返しにいくから、俺たちには、もう関わるな!」


「ふ・・・ふざけやがって!このガキが手に入れるはずの金はどうする?こいつは、お宝を手に入れてないんだぞ!」


「そんなこと知るか!この二人の奴隷としての代金とお前に与えた損害金の分は、きちんと払い終える

宝がどうとかという話は、お前の欲だけのことだろが

俺たちに近づいてみろ!今度こそ、命を奪うからな!だが、もう関わらないというのならお前は金を手に入れることが出来るんだ」


ボンガンを解放して、二人を連れて、クーリナは、消えた。



―――クーリナは、その後、遠くの場所に移住して、その近くの遺跡で素材を集め、金にして、ボンガンに約束の金よりも多くを用意して渡した。

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