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25章 コボルト襲来

源とロックは、ローの村の司祭から、龍王の意思が書かれた書簡の内容を聞いて、驚いた。

その内容が、なぜか現世に存在していた聖書の伝道者の書であったからだ。

また驚いたのは、それだけではなかった。その後に龍王が残したと思われる文章が、まるで源のことが書かれおり、予言のように子孫に大切に伝えられてきたと知ったからだ。

源は、何かの間違いなのか、ただの偶然でしかないとしか考えられなかった。なぜなら、源は、この世界が仮想世界だということを知っているからだ。

そして、この世界を作ったのは、源を拉致したあいつらの仲間だと分かっている。聖書をわざわざ仕様で広げる意味がまた分からない。また源の気持ちとしても、何かの間違いだと思いたかった。


そのように、何が何なのか分からず、混乱していると、ウオウルフが、村の外で吠えているのが聴こえた。


もしかすると、源が人間とトラブルにあっていると思って心配して、ここまで来たのかもしれないと思った。ウオウルフたちには説明したが、上手く連絡がまわっていないのかと考えた。


急いで、村の外に出て、ウオウルフがなぜ鳴いているのか確認をしに源とロックは向かった。


外にいたのは、ウオガウだった。ウオガウは、その目に涙を流していた。


「どうした?ウオガウ」


「ははは ハジメさまま。ががが・・ガーウが殺されままました・・・」


「なにぃ!?」


何があったんだ・・・ウオガウの息子ガーウがなぜ突然殺されたんだ・・・?



「何があったんだ?」


「こここ コボルトです・・・」


「コボルト?」


「ししし・・・シンダラードしっし森林、にに西側をししし支配しているモンスターでです。ががガーウをわわ罠にはめ、すすす数千で、ヒヒ東に向かってきておりおります・・・」


「数千だって!?」


これは、ただ事じゃない・・・なぜ、そのコボルトというモンスターがウオウルフたちを襲いはじめたのか分からないが、数千のコボルトたちが、ウオウルフの土地、俺たちのセーフティエリアに向かってきている。フォルもまだそこにいる・・・。


「詳しい話は、向かいながら、聞かせてもらうぞ。ウオガウ」


「はははい。ももちろんでごございます・・・」


そう源が言うと、源は、村人に言う。


「司祭様に、急用ができたということをお伝えください」


「はい!分かりました」


ロー村のひとたちまで、巻き込みたくはなかった。だから、あえて詳しい話を司祭には伝えないほうがいいと簡単な伝言だけを伝えることにした。


源のことを救世主とか、なんとか思い込んでいる村に、自分たちの危機を伝えたら、自分たちのいのちを使ってでも、加勢しようとしてくるかもしれないと考えたからだ。そこで死人でも出したら、目も当てられない。


ロックとウオガウの体を触って、宙に浮かんで、空からセーフティエリアへと向かった。


ウオガウからこの土地の詳しい情報を飛びながら、教えてもらった。


あの動かない太陽は、やはりここの太陽として認識されていた。この地域を照らしている太陽を基準にして、東西南北が、無理やり、言い表されていた。この太陽の地域ではないところでは、また方角がコロっと変わってしまう。磁場によって方位をつかめば、もしかしたら、世界共通の2方向による方位にすることが出来るのかもしれないが、今はまだ磁場は発見されていないのだろう。


ウオウルフは、深い森、シンダラード森林の東側を主に縄張りとして支配していた。

源たちは、そのことを知らずに、ミステリアスバースとして生まれ、遺跡から出た後、その東側にセーフティエリアを作ろうとしていたのだ。


そして、ウオウルフの天敵は、シンダラード森林の西側を支配するコボルトだという。


このコボルトとの因縁は深く、能力が高いウオウルフと能力は低いが数がいるコボルトのふたつが、30年も衝突を繰り返していると教わった。

コボルトは、多い時でも数百単位で襲って来たということだ。

コボルトは、人間に近いモンスターということで、策を練って罠や弓なども使ってくるらしい。戦う時には、何か仕掛けを使ってウオウルフと戦い続けてきた。人間ほどではないが、言葉も使い賢いモンスターの種族であるということだ。


また、ウオウルフたちを最近、悩ませているのは、ボルフ王国の人間で、シンダラード森林の北側、さらに200kmも離れた位置に設立されていた国があった。

長年、王国の人間は、シンダラード森林にはモンスターが多くいて、近づかなかったが、ここ最近になって、人間が入り込みはじめたと思うと、穴を掘り始めたり、モンスターを狩り始めたという。


それは何故かというと、シンダラード森林には、鉄が出土することが解かったからだと推測される。

ボルフ王国の兵士が森の中で、話しているのをウオウルフが耳にした情報だということだ。


その兵士の話によると、ボルフ王国は、国の強化を目指すために、このシンダラード森林の資源を狙っていたのだった。


横道にそれるが、そういった情報を聞くと、源は鉄にも価値があると考えられていると連想した。もしそうなら、金剛石グラファイトを使用できる源たちの価値は、かなりのものだと予想できた。


この土地に鉄が出土することは源たちも分かっていた。でも、国をあげて狙っていることを聞くと、思った以上の資源がここにはあり、現代では、それは重宝されているということだ。


ここの湖が、青と緑の色に別れていたのは、鉄の埋蔵量が関係していた為かもしれないと源は思った。

地球では鉄は豊富な資源だといわれているが、この世界ではどうなのだろうか・・・。


そして、シンダラード森林の西側を支配しているコボルトの裏には、ボルフ王国がいる可能性があり、コボルト軍団数千を動かして、ウオウルフを追い出し、資源を狙っていると考えられる。


とはいえ、ウオウルフがここまでの情報を持っているとは思わなかった。せいぜい、コボルトなどのモンスターと小競り合いをしているぐらいだと思っていたからだ。

もっと早くウオガウにこの場所の状況を教えてもらうべきだったと源は後悔した。どこかで、動物系のモンスターだと考えて、見下していたのではないかと自分を恥じた。自分たちのセーフティエリアの森の名前が、シンダラード森林ということすら知らなかったのだから・・・。もっとウオウルフを信頼して、この状況を知っていれば、数日あれば、ウオウルフたちにあった武具を与えることが出来ていたはずだ。だが、時間の猶予はすでにない。時間がないことに後悔が残される。


空を飛び、森全体を見渡すと、セーフティエリア、森林東側から煙が次々とあがりはじめた。コボルトは、火責めをしているようだ。


昼間の時間帯に攻めてきたこれらのコボルトは、あきらかに、ウオウルフを突くポイントを把握していると思われた。


すでに戦場になっているところに、近づくにつれて、絶望感が増していく。


コボルトの軍団が、湖全体の地域を埋め尽くすほどの数でゆっくりと進軍していたからだ。


コボルトの大きさは、1mほどしかない小さな体だったが、4千?とも思えるような大群で集まられると、圧倒的な威圧感があった。


一匹一匹が、槍のような武器を持っている。


肩に弓をぶらさげているコボルトもいた。


ウオウルフは、120匹いるが、その中で、戦えるのは50匹ほどだ。本当の戦士だけにしたら、さらに少なくなる。こどもは別だが、ウオウルフなら、コボルトよりは強いので100匹で戦う選択枠もあるが、もちろん、数が圧倒的にあちらが上なので、すぐに数でやられるウオウルフも出て、被害が拡大してしまうだろう。


どうすればいいんだ・・・


源が悩んでいると、ロックが、話かけてきた。


「源・・・さっきはすまん・・・」



「司祭の部屋で混乱してたことか」


「ああ。そうだ。俺たちは、ここで死ぬかもしれない。だから、謝っておきたかったんだ」


ロックもコボルトたちの数をみて、絶望的だと考えたのだろう・・・。


「俺もロックと同じで、混乱して、司祭様や村の人たちを疑ったよ。

ロックが混乱したのも理解できる。気にすることはないよ。

でも言いたいのは、この世界で心から信頼できるのは、ロックしかいないってことだ。

同じ境遇で、何も分からずに、乗り越えてきたからこそ、ロックを信頼できる。あの追い込まれた状況に嘘はないってね。

知識があるとかパワーがあるとか、そういうことじゃなくて、状況に翻弄されて、騙しあうことなんてできなかったことを肌で感じ取ったからだ」


「源のいう通りだよ。なのに・・・俺は君を疑ってしまった・・・」


「それはもういいよ。龍王の意思に俺の名前が書いてあるほうが、異常なんだから・・・でも、あれもただの偶然だよ。きっとね。今は、コボルト軍団をどうするのかだ・・・」


「そうだな・・・」


源は、ウオガウに相談した。


「ウオガウ。シンダラード森林を捨てて、俺たちと一緒に、違う土地にいくという選択枠はウオウルフにはあるのか?」


「わっわわたしたちは、ここここの森をははなれません。ふふファーストの意思が、ある限り、こここの土地をはははなれるわけには、いいきません・・・」


「ファースト?」


「いい偉大なるおお狼の王でです」


龍王の次は、狼の王か・・・


「滅びるとしても、この土地を守るということか?」


「はははい。うおウオウルフはにににげません・・ガーウもにににげずに戦いました・・・」


ガーウのことを想うと、何も言い返せなくなる。

でも、ガーウの犠牲をゆるせないと考えて戦えば、さらに被害は大きくなってしまう。

何とか融通はきかすことはできないのか・・・と源は思った。こういった話もあらかじめしておくべきだったと、悩む。


生きていれば、違う土地で繁栄することもできるという前向きな考え方に、ウオウルフはならないのかもしれない。


そして、源たちの立場からすれば、同じ仲間として、共同しはじめた矢先、すぐに彼らを置いて逃げるというわけにもいかない・・・ロックが最初に懸念していたことが、現実となってしまった。


一番問題なのは、この戦いの準備をしていなかったことだ・・・。どうすれば、こんな数を相手にできるというのだ・・・。


「ロック。君は、フォルを連れて、ロー村に逃げてくれ。俺はウオウルフたちと何とか切り抜けて見せる」


そう源が言うと、ロックは笑いながら言った。


「源に俺は誓っただろ。命を助けてくれた源に、おれは自分の命を1度使わなければいけない。なのに、逃げてられるか!」


「ロック・・・」


源は、ロックとはこの世界に来てからずっといてくれた仲間だ。一緒に危機を何度も乗り越えてきた。そして、ここにきて、4000以上もの大軍との戦いにおいても、一緒に命をかけると言ってくれた。この世界でロックの後押しほど、源に勇気を与えてくれるものはない。


「このロック様にかかれば、コボルトなんて何匹いても、相手になどならん!」


さっきのここで死ぬかもしれないという発言とまったく違う内容と話し方をするロックに源は、感謝を抱く。


「よし!とことん、やってやろうじゃないか!」


そう源が宣言すると、ロックもウオガウも決心を固める。



死への一本道へと後悔することもなく、華を咲かせてやろう。


「ガーウ。見ていてくれ。」

源がそういうと、ウオガウは何とも言えない色々な想いを含んだ顔でほほ笑んだ。

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