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245章 飢餓

く・・・苦しい・・・


なんだ・・・こんなに苦しいのは、はじめてだ・・・


「お父さん!どうしたの?お父さん!」


「わ・・・分からない・・・苦しい・・・」


朝方、突然、寝ていたクーリナが、もだえはじめたのをこどもたちが心配する。


もしかして・・・やっぱり、俺は・・・寄生しなければ生きていけないのか・・・?


体中の細胞が、まるで締め付けるように、中へ中へと集まっているかのようだ・・・。

暴走しそうにもなる・・・。


せっかく、サブリナやクーテンと一緒に暮らしていこうと希望が持てたのに、俺はこのまま死ぬのか・・・?


「す・・・すまない・・・お前たちには・・・いってなかった・・・俺は寄生する・・・モンスターだから・・・このまま死ぬかもしれ・・・ない・・」


「そんなぁ!」


サブリナが不安そうに叫ぶ。


「お父さん!体が小さくなってるわ!」


確かに・・・小さくなってる気がする・・・このまま干からびるのか・・・?


「ゴブリン・・・に・・ゴブリンに寄生してたんだ・・・その宿主が死んで・・・俺の寿命も・・・」


クーテンが焦りながら聞く。


「キセイってなに?」


「生き物の体に・・・くっつくような・・・感じ・・・だ・・・りつくんだ・・・その生き物の栄養を奪う・・・」


「僕じゃダメなの?お父さん。僕にキセイすればいいんじゃない?」


「お前たちには・・・寄生したくない・・・そんなことするくらいなら・・・このまま・・・死ぬ・・・すまない・・・助けるって・・・やくそく・・・」


サブリナが言い放つ

「他の動物ならいいんでしょ!

鹿の肉。まだ残ってるわ。まずは食べて、お父さん!」


サブリナが、持って来た鹿の肉を体に取り入れた。

少しだけだが、苦しさが和らいだ気がした。


「ちょっと・・・楽になったかもしれない・・・」


栄養が足りないのか?こんなこと、はじめてだぞ・・・


突然、どうして・・・


少し楽になった今を逃したらヤバイ気がする・・・。


分身体を出して、他の生き物を探した。みつけた生き物は、手あたり次第、襲い掛かって吸収していく。


食べて、分身体を戻していくと、苦しさが和らいでいった。


「ふぅー・・・なんとか、治まったみたいだ・・・」


「よかった。お父さん」


「サブリナが、鹿の肉を渡してくれたから、少し動けるようになって、他の生き物を5匹を分身体に食べさせたら、苦しくなくなった・・・ありがとう」


でも、どうしてだ・・・こんな風になったことなんて、無かった・・・。


急激にエネルギーが枯渇したかのような苦しさだった。


俺の体は、変だ。生き物を吸収すれば、その吸収したものの能力などを奪うことができる。

人間ひとりの筋肉の繊維の数は同じだというが、俺の場合は、吸収したものの筋肉を上乗せするような感じなので、筋肉の繊維の数が増えていく。

すべて奪えるわけではないようだが、体を増やしていくようなものだろう。


もしかして・・・増やした分のエネルギーを確保しないといけないのか!?


そういうことなのかもしれない・・・


3mmや20cmぐらいの時の必要なエネルギーなど、たかがしれていたのだろう。

ゴブリンのエネルギーを少しだけ分けてもらえれば、それでよかった。


だが、ゴブリンが死んで、10体のゴブリンを取り入れた。


その時から、約10体分のエネルギーを必要とするようになったのかもしれない。


そして、どんどん強くなるのをいいことに、調子に乗って森のあらゆる生き物を取り入れていった。


取り入れている間は、エネルギーを確保し続けていたからいいが、討伐隊が来てからは、吸収する数が極端に減っていた。


ゴブリン10体どころではないエネルギー補給が必要なのに、食べていなかったから、苦しくなったのか?


「どうやら・・・俺はお前たちとは比べ物にならないほど、多くの食べ物が必要なのかもしれない・・・」


「そうなの?」


「分からないが・・・お前たちと出会う前まで、俺は沢山の生き物を調子にのって食べていたんだ・・・そのせいで、沢山のエネルギーが必要なのかもしれない・・・」


「じゃーまた、森に狩りにいけばいいのね?」


「いや・・・そうもいかない・・・」


「どうして?」


「狩りをやめた理由は、俺が森を荒らしていたら、討伐隊が来てしまったからなんだ

もし、また俺が森の生き物を多く食べてしまえば、討伐隊がやってくるかもしれない

お前たちの存在もバレるかもしれない・・・」


「それじゃーどうするの?」


「分からない・・・あの時の俺は本当の化け物だった。動物たちをただ楽しいというだけで食べていたんだ・・・もうあんな何も考えないような俺には戻りたくない・・・お前たちに会えたのは本当に運がよかった」


クーテンが、ひらめいたように話す。


「お父さんは、遺跡に入ればいいんじゃないの?」


「遺跡?なんだそれは・・・」


「遺跡知らないの?」


「知らないな・・・」


「この世界の生き物を生み出している場所だよ

モンスターも、人間も、動物も、沢山、色々な種類の生き物を生み出し続けてるんだ

その遺跡内では、モンスターを狩ることは、悪いことじゃなくて、モンスターを減らす英雄のように扱われるんだよ」


「そうなのか!?」


「うん。森の動物たちを襲うのはダメかもしれないけど、遺跡内のモンスターは、いくら倒しても、文句いわれないよ」


「いいじゃないか!クーテン!その遺跡は、どこにあるんだ?」


「ここら辺の遺跡は、どこにあるのか分からないけど・・・遺跡は世界中に沢山あるから探せばみつけられると思うよ

僕の国でも200個以上、遺跡はあったし、ペルマゼ獣王国にも、同じぐらいあるはずだね」


「クーテンは、物知りだなー」


「えへへへ」


「お父さんは、クーテンに助けられたかもしれないな。ありがとう」


「うん!」


クーテンは、さらに聞いた。


「でも、お父さんは、遺跡から生まれたミステリアスバースじゃなかったの?」


「なんだその・・・ミステリアスバースってのは」


「遺跡から生まれた生き物のことだよ

遺跡から生まれた生き物は、お父さんのように名前が無かったりするんだよ」


「そうなのか・・・俺は、気が付いたら、ゴブリンの腕に寄生していたな

俺が生まれたとしたら、この洞窟だよ

この洞窟が遺跡なのか?」


「ううん。ここは遺跡じゃないよ

ただの洞窟だね」


「クーテンは、本当に物知りだな・・・将来は学者にでもなれるかもしれないな」


「クーテンは、頭いいのよ」


クーテンは、舌を出しながら笑う。

「えへ」


「俺には記憶がないけど、もしかしたら、俺が寄生していたゴブリンも、そのミステリアスバースで生まれて、俺も同時にそこで生まれたのかもしれないな」


「うん。そうかもしれないね」


「そうか・・・何だか謎がひとつ解けたような気がしたよ」


モンスターを生み出す遺跡か・・・


「お父さんは、探してみる

遺跡がみつかれば、苦しむこともなくなるかもしれないしな」




―――森の中心部分に青色の入り口があった。クーテンがいっていたように、あちこちの場所に遺跡というものはあるらしい。


その扉は、鍵がかけられてはおらず、押しても引いても、扉が開くようになっていた。


普通の動物でも開閉が簡単にできる。


モンスターが生み出されるというのなら、遺跡のモンスターを狙えばいい。

だが、これ以上、体に吸収するのは、まずい。


ただの栄養源としてのモンスターにして、その能力などは、極力、奪わないようにしなければいけない。それを続けていたら、遺跡のモンスターでも間に合わなくなる可能性も出てくるからだ。


倒した時、微量のパワーが流れ込んでくるのは、いいとしても、吸収する時は、腸などで吸収する必要があるかもしれない。


まずは、一匹だけ試してみるか。


遺跡内部にはいるが、扉を閉めると真っ暗だった。


何もみえない・・・


外にでて、大きめの石を扉にかませて、光を遺跡内部に入るようにした。


奥まではいけないが、モンスター1匹ぐらいは、見つけられるだろ。

次からは、松明でも用意しないとな。


外の光りが届く範囲まで、遺跡にはいってみるが、生き物の気配がしない。


もっと奥に行かないといないのか・・・?


これ以上、奥にいけば、暗すぎて、目では確認できないぞ・・・


あ・・・奥から何かが来る!


その場で待機していると、遺跡の奥から人間らしき気配があるものを感じ、それがランプを持って歩いてきた。

すべて獣人だった。


すぐに、狼兵に体を変えた。


「お!遺跡探索か?」


獣人たちが話しかけてきた。


「そうだ」


「お前。ランプもなしでやってきたのかよ」


「遺跡は、はじめてでな・・・様子だけをみにきたんだ」


「暗くて何もみえないだろうが」


「まーな・・・」


「しょうがねーな。この火をやるよ」


獣人は、荷物の中から木を出して、ランプの火をその木につけてくれた。


「いいのか?」


「ああ。同じ冒険者アドベンチャーのよしみだ

やるよ

だが、その木も長持ちはしないぞ

奥へいって、火が消えたら、遺跡内部で迷子になってお陀仏ってこともある

せいぜい、気を付けるこった」


「すまない」


獣人たちは、そのまま去っていった。


小さな火がつく木の枝を持って、進んで行く。

もし、火が消えた時のためにも、感覚で、戻ることができるように、壁を触りながら、進んで行く。


何か気配を感じた。


今度は、人間や獣人とは違う。生き物の気配だ。

モンスターかもしれない。


分身体を出して、火を確保させ、かざさした。


奥から数匹の四本足の生き物が、威嚇しながら、近づいて来る。

灰色の狐のようだが、前歯だけが極端に長く、出っ歯のようになっていて、普通の狐とは明らかに違う。

まるで喧嘩をけしかけるかのように、威嚇を続けてくる。


4匹か。


どんな攻撃をしかけてくるのか分からないが、たぶんやれるだろう。


クーリナは、分身体に火だけは消さないように注意させて、その狐系モンスターに近づいていく。


両手を広げ、右手には、斧。左手には、スモールソードを自分の体を硬質化させて作り出し、手に持つ。


一匹が廊下の隅をかけぬけるように走り出し、クーリナの後ろを取ると、大きく吠えだした。


「クワン!クワン!」


そちらに意識を向けようとしているのかもしれないが、クーリナには、目はいくつもあり、後ろを振り向く必要はない。


前から3匹が同時に襲い掛かってきた。


斧を横一線に、振りぬいて、2匹を弾き飛ばし、下からかいくぐろうとしたモンスターを左手の剣で貫いた。

そして、後ろで吠えていたモンスターにも、背中から腕のように出した太い槍を喉元に突き刺した。

弾き飛ばされた2匹のうち一匹だけが生き残っていた。

とどめを刺そうと近づくが、そのままモンスターは逃げて行った。


まーいい。逃がしてやるよ。


暗闇の中、追いかけられないからな・・・。それに火が消えたら厄介だ。


倒れた3匹の狐系モンスターのうち一匹がまだ生きていたので、心臓を貫き、とどめを刺した。


3匹を一カ所に集め、考え込む。


こいつらを焼いて、口で食べ、腸で消化するという方法は、大量のエネルギーがいる俺には、遅すぎる気がする。


森で暴れていた頃に巨大蛇を吸収したが、体の内部を蛇のように胃や腸のようにして、取り込むことはできないだろうか?


そのようにイメージして、3匹のモンスターを大きな口をあけて体の中に丸飲みにしていく。


強烈な酸によって融かされていくのが分かった。


倒した時の得たパワーのようなものは感じたが、吸収した時のようなさらに強烈な強化のようなものは感じられなかった。


どうやらうまくいったようだ。


これで、今の状態をキープできるエネルギーを遺跡で得られれば生きていけるだろう。

クーリナは、火が消えないうちに、遺跡を移動し、外へと戻った。


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