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240章 自由の身

宿主だったゴブリンの顔は、地面に転がっていた。

本体の首から青い血が噴き出しきって、もう血さえも流れ出ないほど、時間が経過した。


死んだ宿主の体から排泄物が出ている。


全身に力が及んでいない証拠だ。


そして、それは血液の流れが止まり、栄養源もストップしているということだ。


少しの間だけだったが、宿主として、一緒に生きていたゴブリンの片耳が無い顔を拾って、首の近くまで、そっと持っていった。


逃げる時は、逃げてくれよ・・・。


ゴブリンの死体の匂いをかぎつけたのか、ハイエナのような動物が、群がって来た。


おい!お前らあっちへいけ!


こいつらを食べるつもりか!


しかも、俺も食べる気だろ!


宿主が死んで気が落ち込んでいた。

もう・・・このまま、あいつらに食べられて、死ぬほうがいいのか・・・?



ハイエナが、死んだ宿主の死体に近づいて食べようとしたので、腕を伸ばしてハイエナを攻撃した。


「ギャウン!」


思わぬ攻撃を受けてヘイエナたちは、警戒する。


あっちへいけって!俺が死ぬまでは、こいつだけは食べさせないぞ!


体を伸ばして、ハイエナたちにも見える程度の速度で、振り回した。


シュッシュッシュッ!


という空振りの音をたてると、ハイエナたちは、去っていった。


くそ!こいつが死んでも、俺はこんなにもハッキリと意識があるのか。


いつごろ、苦しくなっていくんだろ・・・。


ハイエナなんかに食べさせるものか・・・。


でも、ちょっとまてよ・・・。


俺はただの寄生物じゃない。倒した相手を食べるように体に取り込める能力みたいなのがある。そして、体を大きくすることができる。


これって、エネルギーを蓄えてるってことじゃないのか?


宿主が食べないと栄養が入ってこないと思っていたけど、宿主が死んで、数時間経っても、俺はまだ苦しくなっていない。


もしかして、俺は、単体だけで生きていけるんじゃないのか?


取り込んでみるか・・・。


生き物を取り込んで、栄養を確保できたとしたら・・・。それで、そのまま生きていけるのなら、寄生せずに、自由に生きていけるようになるんじゃないのか?


たぶん、望みは薄いが・・・やってみる以外にない・・・。


ほら・・・空気を吸うことだって宿主が死んでいるのに、苦しくないということは、自分で出来ているから生きているんだろ。


宿主に依存しているわけじゃないんだと信じよう・・・。


短い間だったけど、ありがとうな。ゴブリン


お前の名前は、結局、なんだったのか分からないけど、お前は頑張ったよ

それに俺を知らないにしても、助けてくれて、ありがとう。


20cmの体を広げて、ゴブリンの体をゆっくりと吸収していった。


虫やねずみの時のように、体に触るだけで、他の生き物を吸収していく。


体全体が、消化器官のようなものだ。


ゆっくりと、ゴブリンに感謝しながら、吸収していった。


食べれば食べるほど、自分の体が大きくなっていく。


ゴブリンの体は1m弱ぐらいだったが、その体積をそのまま、自分のものとしていった。


敵を倒した時の力のみなぎりとは違う、何か一体化したかのような感覚になる。


なんだろ・・・不思議な感覚だ。


お?


体が肌色じゃなく、緑色?


吸収したものの特性か何かまで、吸収するのか!?



もし、俺が宿主に依存しないような寄生物のようなものなら、今宿主を取り込んだエネルギーで当分は、生きていけるはずだ。


そうじゃなければ、数日の命だろう・・・。


ゴブリンの斬り落とされた顔を丁寧に、もちあげて、洞穴の前の横に、土を掘り起こして、穴をあけ、そこに顔だけ埋葬した。


他のゴブリンたちのまでは作れないが、これでゆるしてほしい。


いや・・・あのゴブリンたちも、俺が吸収しよう。

俺が生き残れたら、彼らも俺の体の中で生きた証として残っていくはずだ。


また、ゴブリンたちが倒れたところに戻って、9体のゴブリンの遺体を吸収していった。


おおおお!


パワーがみなぎる。


体の一部を腕のように伸ばして、遠くから自分の姿をみた。


ゴブリン10体を吸収したからか、見た目が、まるでゴブリンのようになっていた。

だが、ゴブリンたちの10体の体積がそのまま表面に出ているようで、体が巨大化している。

筋力も、宿主のゴブリンと比べても、数段上のように思える。


どうやら、吸収した者の力を手にいれることができるようだ。


高さは、7mにも及んで、大きすぎたので、どうしようかと悩んだが、小さくなるイメージを思い浮かべると、そのように小さくなっていった。


見た目は小さいが、その体に宿した力は、変わらない。


見た目は、宿主だったゴブリンに似せるようにした。



さー・・・。これで俺はいつまで生きていけるのか。

俺の体は、内臓がない。

何かを食べる時には、触れて体全体で吸収するだけだ。


それで果たして、生きていけるのだろうか。


それで無理なら、他の生き物に寄生することで、生きていけるのかもしれない。


だが、それも分からない。


元の宿主だけが、唯一俺を生かすことが出来た主だった可能性が高いからだ。


間違いなくあいつは、相性がよかった。


だが、もうあいつはいない。



それにしても、3mm程度しかなかった俺が、これだけ大きくなったのだから、そのパワーは計り知れない。


腕を出して、色々な変化を試してみた。


オークが持っていたような斧を体で作り出して、それを武器として使うこともできた。


同じように、硬質化させた体を鎧の形にして、体を守ることにした。


そのまま裸のゴブリンで過ごすのも抵抗があったので、服を着て、鎧をまとった姿にする。


近くにあった木を試しに、殴ってみた。


ドガ!ボキボキボキボキ!!


木はまるで、殴られたところがもぎ取られたように、えぐられ、そのまま横に倒れた。


おおー!


やっぱりこれだけの体を手に入れたら、パワーが全然違うぞ!



どうする?


あいつらを追うか?


宿主ゴブリンを殺した討伐隊を討伐するか?


いや・・・やめておこう。


あいつらも、たぶん雌オークが襲われたから、派遣された奴らなんだ。


雌オークを食べたゴブリンたちのほうが悪いのだろう。


俺もゴブリンの醜さをみて全滅させたいとさえ思ったからな。


宿主と俺の命を危険にさらしたことは、怒りが込み上げてくるが、やつらに手をだしたら、他の討伐隊が出てくるかもしれない。


もし、宿主が死んでも、このまま生きていけるのなら、そんなリスクをわざわざ生み出す必要ないだろ。


でも、誰にも負けないような強さを持つ必要がある。


よーし!決めた!


死ぬまで、食べつくしてやる!


どこまで強くなるのか分からないが、吸収すれば強くなれるのなら、やってやる!


生き物を大量に吸収して、誰にも負けない強さを持ってやるんだ!



鼻をねずみの形にして、匂いをかぎわけた。


先ほど、宿主の体を食べようとしたハイエナたちの体臭をかぎつけ、後を追った。



さすがは、ハイエナ。移動速度が速い。


背中に虫の羽をはやした。

その羽をバタつかせると、体を浮かすことができた。

フラフラするがすぐに慣れそうだ。

空から追いかけてやる。最初の獲物は、ハイエナだ。


数十センチほどの空中を飛びながら、ハイエナの匂いを嗅いで、大体の位置を把握して、向かった。



―――数十分、飛び続けた。

いる!


ハイエナたちだ。近いぞ!


さらに高く飛んで、空からハイエナたちを探す。


体全体に大きな目を大量に作って、あらゆる方向を探る。


いた!あいつらだ!


俺を襲おうとしたものは、どうなるのか、思い知らせてやる!


というのは、口実だけどな。



「ウオンオウンオウン!!」


ハイエナたちは、俺の存在に気づいたのか、吠え始めた。


お前たちの命は、俺がもらいうける!


うーん・・・。声が出てないから、雰囲気が出ない。


口や声帯のイメージを想像して、口を作り出した。


そして、生やした指で、ハイエナに指さした。


「お前たちの命は、俺がもらいうける!」


お。結構いい声じゃないか。


ハイエナたちは、睨みつける。


地面に降りて、わざとハイエナたちの中心に、立つ。


ハイエナたちは、一斉に、襲い掛かって来たが、体にある無数の目は、360度すべての方角を視認して、ハイエナの動きを把握していた。


ハリネズミのように体から大量の長いとげが外へと向かって伸びていくと、一斉に飛び掛かったハイエナたちを串刺しにした。


息があるハイエナは、すぐに息の根を止めて楽にさせた。


やっぱり、俺強いんじゃないか?


でも、一匹、生かしておいたほうがよかったかな・・・。


寄生主として、利用できたかも。

まーいいか。次あった動物に俺の体の一部を寄生させておこう。



ハイエナ12匹を一斉に、腕を伸ばして、吸収していった。


倒した時のパワーとさらに取り込んだ時の恩恵が一気に体に流れ込んでいく。


これすごいなー・・・。


口元がむずむずしだしたので、目を伸ばして、みると、牙のようなものが生えていた。


ハイエナの特性も手に入れたようだ。視力も少しよくなった気がする。

そして、嗅覚は、ねずみのものを超えていた。


食べつくしてやる!


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