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238章 化け物

ゴブリンは、四日に一度ぐらいのペースで、洞窟から外にでて、狩りをしては、食べ物を確保しているようだ。


俺のことは無視して、ゴブリンは、生活を続ける。


日に何度も、俺に指をこすりつけるが、それ以外、俺には興味がないようだ。


俺の近くの皮膚をひっぱったりして、何か違和感を感じているかのようだったが、ならどうして、俺を腕にはりつけたんだと言いたくなる。


たぶん、こいつは、俺が死んだものだと思っているのだろう。


俺に興味をしめさなすぎる。


だが、俺はしっかりと意識がある。目を開けることさえ出来るのだ。


俺が生きていることを知られると殺されるかもしれないので、目をあけているのをバレそうになるとまぶたをつぶって、やり過ごした。


こいつがそうなら、他のゴブリンたちは、猶更、俺のことには気づいていないようだった。


他のゴブリンの体をみるが、俺のように人間を体にはりつけにするようなゴブリンはなく、そのような風習はないようだ。


俺をこんなめに合わせるのは、こいつの個人的な趣向なのだろう。


目以外の体が動かせれば、何かできるかもしれないのに・・・。


せめて、顔を動かすだけでもしたい。


目だけでキョロキョロみて、動かすのは、疲れるし、いつ見られるのか分からないからだ。


おれの視線からは他のゴブリンなどがみえなくても、向こうからは、俺をみえる時だってあるので、目をあけっぱなしにするのも危険なのだ。


顔さえ動かせれば、視野がかなり広がり、見つかるという危険も回避できるようになる。


顔よ!動け!動け! 顔よーー。うごけーー!!


そんなことを念じても・・・え・・・


グググググ


動ける!?


ゆっくりだが、顔を動かせるようだ・・・。


やった!顔が動かせるようになった!


目の時と同じだ!必死で、動くのをイメージして、念じたら、顔が動くようになった。


心の中で祈るように念じ続けるとたぶん壊れていた脳が回復するのかもしれない!


俺は念じることしか出来なかったのだから・・・


顔をゆっくりと左右に振って、まわりを見渡した。


暗い洞窟の中に、ゴブリンたちがいるが、みな寝転がって、そのまま寝ている。


今はみつかる心配はない。


やったーー!!順調にいけば、腕とかも動かせるようになるかもしれないぞ!!



え・・・・


うん・・・?


おかしいぞ・・・


あれ・・・?


体がない?????


俺の体がないぞ!!


顔を下に向けて、自分の体をみようとしたが、体が無い・・・。


緑色のゴブリンの肌しかない・・・。


腕も無ければ、足もない。


体を縫い付けられていると思っていたが、その体が無いのだ・・・。


はあ??


え・・・。


どういうことだ・・・。


あ!そういうことか!


皮膚に縫い付けていたんじゃくて、こいつ・・・


マジかよ・・・。


俺を体の中に埋め込んで、顔の表面だけ外に出るようにしているのか!!


どんな悪趣味だ!!


なんとか、顔だけは動かせたのは、そういうことだったのか。


ということは、たとえ・・・体の感覚を取り戻して、動かせるようになったとしても、体全体が、ゴブリンの体に埋め込まれている状態だから、動かせないじゃないか!?


地中に首だけ出させて、体を埋められているような状態なんだ・・・。


他のゴブリンは、そんなことしていないのに、こいつの趣味がキモすぎる・・・。


そんなことして、楽しいのかよ!


ダメだ・・・詰んだ・・・。


物理的に、外に出ようと思うのなら、外から誰かに助けてもらう以外にない・・・。


顔だけで外に出られるわけがない。


手足の感覚すらないのに、さらにこれかよ・・・。


それにもうそろそろ、俺、死ぬんじゃないのか・・・。


俺をこんな目にあわせたゴブリンは、俺を無視して、何も食べ物を食べさせようとしない。俺が生きていることも知らないだろう。


そのうち俺は、このゴブリンの体に埋め込まれたまま、餓死する可能性が高い。


意識があることがバレれば、また殺されるようなことをされるだろうし、このままでも、餓死する・・・。


動けない・・・。


詰んだ・・・。


何のためにこいつは、こんなことをするんだ・・・。


理由なんてない・・・。


こいつは、やりたいからやっているだけ・・・。


理由なんて考えるような知能すらなさそうだ・・・。



顔だけで出来ることと言えば・・・、しゃべること、口を動かすこと・・・顔を動かすこと・・・


しゃべるにしても、耳さえ聞こえていない・・・。


正しくしゃべっているのかも自分でも分からないし、ゴブリンに言葉が通じるとも思えないし、バレて殺されるだけだ。


微妙に体は動かせた。動いているのは分る。体の感覚はあるんだ。


だから、手や腕の感覚も、戻ってもいいかもしれない。


動かせないにしても、手足がある感覚は取り戻したい。


恐ろしいが・・・考えたくなかったが・・・手足の感覚がないのは、もしかしたら・・・こいつに、奪われてしまっている可能性もある・・・。


手足がすでにないのなら、感覚など戻るはずもない・・・。


頼む!手足の感覚!手足の感覚を!!少しでも、動いてくれ!


お!


おお!!


なんか!


腕あるかも!


なんか!動かせる!!


ズズズズズ


右腕!そして、左腕!右足。そして、左足・・・。あるぞ!分かる・・・あるのが分かる・・・


よかったー!!手足はもぎ取られてなかった!


あれ・・・しかも、以外と動かせる!?


ゆっくりと、右腕を上げていける感覚があった。


マジかよ・・・。埋め込まれているのに、どうして、動かせるんだ!?


ズズズズズ


よし、そのまま顔の前まで腕を・・・


おお??


おえお!??


うお???


はあ・・・?


腕じゃない・・・。腕だと思っていた動かしたものは、肌色の皮膚のようなでっぱりだった。その皮膚のまわりには、なんだか赤いもやのようなものがある。


腕じゃないのかよ・・・。これ・・・なんだ・・・!?


指もない・・・。


左腕もあげてみることにしたが、同じだった。


お腹を膨らませるかのように、皮膚が盛り上がって、指のない腕が、出てきたような感じだ。


なんだ・・・これ・・・


どうして、腕だと思ってたものが、こんなのなんだ・・・


俺のあの手・・・指はどこ・・・


え・・・


その丸みを帯びて、出てきた皮膚は、自分がイメージした形の手や指へと変化していった。


はぁ???


えーーー!!??


どういうことだ・・・


手になっていく・・・


爪はないが、左も右も、5本の指の形と手になった。


おれ・・・イカレてるのか!?


やっぱり、悪い夢でもみているのか・・・?


おそるおそる2本の腕だけではなく、胸から3本目の腕をイメージしてみると、さきほどのように、皮膚がもりあがり、それが3本目の腕と手になった。


はあ・・・はあ・・・はあ・・・


俺はどうしちまったんだ・・・


もしかして!イメージか!?


俺がイメージしたように、体が変化するのか!?


ろくろ首のように、首を長くするイメージで、首を伸ばしてみると、やはり、イメージ通りに、首が伸びて行った。


伸びたぞ・・・!


はあ・・・はあ・・・はあ・・・


ショックが大きすぎる・・・。


首を伸ばして、自分の体全体をみた。


嘘・・・だろ・・・おい・・・


人間じゃない・・・。


人間の体じゃない・・・。


肌色の肌のようなのが、長く伸びた先に、ゴブリンの肌の一部にとりついているかのように、広がっていた。


ゴブリンからすれば、ホクロのぐらいの小さな、デキモノが俺だ・・・。


俺は、このゴブリンが、俺を襲って、俺をこんな目にあわせたのだろうと思っていたが、逆だったのかもしれない。


俺が、ゴブリンの体に寄生していたのかもしれない・・・。


目があるのは・・・なんだ・・・。


そう思い片目しかない感覚だった目を体中に、目があるイメージで思い描くと、体中に大量の目が、現れた。


化け物・・・。


俺は化け物だ・・・。


人間じゃなかった・・・。


気が付いて、数日経ったと思うが、お腹がすいた気分にならなかったのは、もしかしたら、ゴブリンから栄養を奪っていたのかもしれない。


ゴブリンが何かを食べれば、俺は餓死なんてしないのかもしれない。



これもたぶんだが、ゴブリンは、俺のことに気づいていないんだ。

ただのデキモノで、指でかいたり、伸ばしたりはするが、その程度で、まさか意識があるものだと気づいていない。


俺がもぞもぞ動いたから、反射的に、俺を指でかいたんだ。

ただ、それだけだったんだ。


もちろん、他のゴブリンたちが、この小さなデキモノに気づくはずもない。


悪意があって俺をこうしたなんてこと、まったく無かったんだ・・・。


そして、世界がデカイわけじゃなく、逆に俺が小さかったのかもしれない・・・。


ゴブリンもデカいわけでは、なかったんだ。


小さな俺が勝手に自分が人間だと思い込んでいて、自分と比べて、まわりが大きく感じていたから、世界が大きいと思ったんだ。


おかしいのは、俺だった・・・。



―――俺は、お腹がすかない。

胃もなければ、腸もないからだ。


栄養は、寄生した本体の内蔵で消化されたエネルギーでまかなえるようだ。


ゴブリンの内蔵は、俺の内蔵でもあるということだ。


たぶん、ゴブリンが、死ねば、俺も死ぬ・・・。


エネルギーを持って来てくれる本体がいなくなれば、俺も干からびるだろう。


ゴブリンを心の中で、非難して、憎んでいたが、こいつは、俺の仲間だった。


相手は気づいていないが、間違いなく仲間で、こいつの命は、俺にとっても、自分の命なんだ。


協力していかなければいけない。


小さすぎる俺に何ができるのかは、分からないが、見つからないように、俺が出来ることを探っていこう。


まず、俺の体は、以外と機敏に動かせる。


最初は、ゆっくりともぞもぞとしか、動かせなかったが、カメレオンの舌のように、かなり早く、腕などを動かすこともできた。


目は作り放題なので、死角がほとんどない。


ゴブリンの体が死角になるだけで、自分の体は、下以外は、視認できる。


ゴブリンが寝ている時に、色々試しているが、洞窟内で飛んでいる虫を捕まえることもできた。


虫は、俺の攻撃に気づくことさえ出来ないほどだ。


でも、捕まえたからといって、何をするわけでもない。


食べる必要もないからだ。


ただ俺の体試しにつきあってもらっただけだ。


すぐに、虫を逃がした。


動ける範囲は、極端に、狭い。


俺の体は、3ミリ程度しかないからだ。


その小さな体で、限界まで体を伸ばせるのは、10cm程度だった。


3ミリ程度の体をほそーっく伸ばして、やっと10cmだ。


そのほそーい体で虫を捕えた。


虫のほうが、俺の伸ばした体よりも体積があるが、どうやら俺の体は、かなり頑丈なようだ。


ゴブリンの巨大な指でごりごり、かかれても、生き残れるほど頑丈だ。


気づいたのは、俺のその変な体のまわりに、赤い色のモヤのようなものが、漂っていることだ。


そのモヤは、俺の意思で、体のどの部分にも出せるようだが、逆に体の一部分だけ消すということもできる。


その赤いモヤを消すと、俺の体は、イメージ通りに自由には、動かせなくなるようだ。


俺が体をかなり動かせるのは、どうやらこの赤いモヤが関係しているらしい。


俺は自分のことを人間だと思っていた。


実際は違っていた。


体を変化させる化け物で、ゴブリンの体に寄生する変な生き物が俺だ。


どうしてか分からないが、自分が人間だった気がする。


なので、人間の形に変化させようとしたが、形こそ人間だが、細かいところまで、人間のように変化することは出来なかった。


例えば、髪の毛を再現しようとしても、髪の毛ほど細かくはならないし、体はすべて肌色だ。


指の形のように単純な形には出来るが、それほど細かくは出来ないようだ。


とはいっても、俺事体が小さいから、すでに細かいといえば、細かい。

髪の毛や眉毛がないスキンヘッドの3mmの人間の姿にはなれる。

外見は人間ぽいが、中身は、内臓がない細胞の塊りだ。


できるのは、腕のように伸ばしたものを槍のように鋭い武器にすることだ。


これは、かなり優秀な武器だった。


もの凄い速度で、10cmまで槍を伸ばせるのだ。


虫程度のものなら、急所を狙えば、倒すこともできる。


ゴブリンたちは、外から狩って来た肉などを洞窟内で食べては、そこら辺に、無造作に捨てるので、洞窟内部は、ひどいことになっていた。


腐った肉などが散乱している。


鼻がなくてよかったと思うほどだ。


なので、洞窟内部には、大量の虫がわいていた。ハエも大量に飛んでいたり、あらゆる虫がゴブリンたちの住み家にいた。

虫もいれば、虫を食べるねずみのような生き物なども床をはいまわっていた。


虫が大量にいるので、俺の小さな10cmの範囲にも、たまに虫が近づくので、それを狙って武器を試していた。


俺は暇だったので、捕らえた虫を腕で転がして、眺めていた。


すでに死骸となっている。


虫みたいに空を飛んで、自由に動きまわれればな・・・。


もし、それが出来たとしても、ゴブリンから離れたら、俺はたぶん死ぬ・・・。


ふぅー・・・。


ゴブリンは、虫を食べることなどしないし、いくらこんな小さな虫を倒しても、意味が無いだろう。


ただ、倒すとなんだか、少しパワーみたいなのが、みなぎった気がするが、ほとんど微妙な感覚でしかない。


俺には口もなければ、内臓もないようなので、食べられないよな・・・。


そう思っていたが、手に持っていた虫の一部を腕が、吸収した。


どうやら、虫を持ったまま、食べるというイメージをしたせいか、体が勝手にそのように動いて、虫を取り込んだようだった。


あれ・・・


何か、俺、大きくなったんじゃね?


いや・・・かなり大きくなったぞ・・・


虫一匹を体内に取り込んだら、俺の体も大きくなるのか!?



俺は、それをまた、試してみることにした。


虫の数は多いが、10cmの範囲に入って来てくれる虫は、少ない。


虫が入った瞬間を見逃さず、また、虫を捕えて、体の中に取り来んだ。


2匹を取り込んだことで、3mm程度だった俺の体が、6mmと倍ほどの大きさになった。


やっぱりだ!俺が捕食すると、俺の体が大きくなる!


ゴブリンからすれば、デキモノが大きくなるので、嫌かもしれないが、もし、俺がゴブリンの食べるような動物さえも倒せるようになれば、ゴブリンも助かるだろう。


動物の急所を狙い倒せるほどの大きさといえば、10cm程度だろうか。


3mmで約30倍の10cmにまで、体を伸ばせたから、10cmもあれば、3mほどの細い虫を倒せる槍で攻撃できる。


その槍では、虫は倒せるが、動物までは倒せないので、せいぜい1m範囲で太い槍で急所を攻撃することになるだろう。


俺の体が20cmにもなれば、動物程度なら簡単に倒せるようになるはずだ。


だが、20cmのデキモノは、大きい。


ゴブリンが、そこまで大きくなったデキモノを放置してくれるのかな・・・。


うーん・・・気づかれないように、自然に大きくなっていって、違和感がないようにしたほうがいいな。


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