237章 目が見える
マジか!見えたぞ!まぶたが開いたぞ!!
心の目??
だが、なんだか、片目だけでみている感じだ
まーそんなのどうでもいい!見えるなんて、最高だ!
これが見えるという喜びか!
目をキョロキョロさせて、まわりをみた。
岩?
薄暗くて、よくみえないが、一番最初に目に飛び込んできたのは、岩の壁?いや・・・天井か・・・岩のようなごつごつしたものだった。
かなり高い天井のようだ。
なんだか、横にものがあって見える範囲が限られている。
俺は、どこかに横にされているようだ。
ここ・・・洞窟か?
横に目を動かすと、やはり、なんだか、よく分からない巨大なものが、横にあった。
緑色のような柔らかそうな大きなものだ。
ベッドか?
暗くて、横目でみているから、よく分からない・・・緑色の柔らかい巨大なベッド・・・
少しずつ暗さに目が慣れてきた。
でも、何だか生き物の皮膚のような・・・
動物性の毛皮?高価なベッドか?
デカい!!たぶん、このベッドめちゃくちゃデカいぞ!!!
巨大すぎて、まるでちょっとした丘にさえみえる。
横目にした目のすぐそこにあるから、大きく見えてしまっているだけなのか?
え!!ベッドが、動いた!?
暗くてよくみえなかったが、ジーっとよくみると、緑色の毛皮だと思っていたものは、動いている。
生きてるのかよ!!!
これ・・・ベッドじゃない!??何か生き物か!
右側だけじゃない。左側にも同じ緑色の皮膚をした大きな生き物がいる。
緑色の肌なんて、絶対俺の知っている動物じゃない!
俺を乗せていた、謎の動物とは、こいらなんだ!
やっぱり、馬じゃなかった。
たぶんだけど・・・緑色に塗られたバカでかい馬とかそういうこともあるかも・・・。
あいつは・・・?
俺を看病し続けてくれた、あいつはどこにいるんだ?
ダメだ。岩の壁と左右にいる緑色のたぶん巨大な動物の一部分しか、みることができない。自分の体さえも、まったくみえない。
顔を少しでも、起き上がらせて、動かすことができれば、かなり見えるはずだけど・・・。
まったく、体は動かせない。
動くのは目だけだ。
やっぱりそうだ・・・俺の体は、動かせなくなってしまったんだ。
そして、この巨大な動物に乗せられていた。
たぶん、馬の数倍はあるな・・・巨大な生き物だ。
見える範囲の皮膚しかみえないから、大きさがまったく測れないので、推測するしかない。
あいつ・・・俺が目を動かしたのをみたら、驚くだろうなー・・・あはは
絶体、喜んでくれるはずだよ
体が微妙に動いたのか、動かないのか分からない程度の反応じゃない。
あきらかに目を動かすという行為は、意識があるという現れなんだからな!
どんな奴なんだろうか。
俺の兄弟とか?親とかかな・・・。
それとも恋人?なんて・・・。
俺は何か怪我をして、体が動かせなくなった。そして、頭にたぶんひどい怪我を負って、その時、記憶も無くなったんだ。
最低、最悪ってやつだ!
そして、俺の知り合いが、俺を保護してくれていた。
あまり裕福とは言えないみたいだな。
まるで洞窟みたいな場所に、俺を寝かしたままにしてるんだからな・・・。
よく俺を生かしておいたよな・・・。洞窟に住むとか、そんな状況で、俺を生かし続けるって相当だぞ・・・おい・・・
まーでも、天井だけが岩で、他は、普通の家とかかもしれないな。
夜で、暗くて、よく見えないし、横のものにさいぎられて見えない。あいつも寝てるんだろう。
やばい・・・ドキドキしてきた。目がみえるってこんなに最高なことだったのか・・・。
何をされているのか、まったく分からなかったけど、明日になったら、分かるはずだ。
この目でみれば、どうして、俺がこんな状態になってしまったのかも、分かるかもしれない。
目がみえても、片目しか開けていないようだ。
暗くて片目で、動くこともできないので、それ以上分かることがなかった。
とはいえ・・・このでかい動物と隣り合わせで寝かせ続けるってどういうことよ・・・俺動けないから、押しつぶされるとかあるかもしれねーだろうーに・・・
押しつぶされれば、それでよしといったところかもしれないな・・・。
謎解きの朝のために、目をつぶって眠ることにした。
―――うおおっ!
動きだしたぞ・・・
え!ええええーー!!
なんだ!これ!?
ベッドのように下にあった緑色の皮膚の生き物が動き出したが、状況がつかめない。
とにかく、高い!
こいつ起き上がったら、もの凄く大きいぞ!
主観だけでいえば、100mはあるんじゃないのか!?
俺は横に寝ていたようにされて、天井しかみえなかったが、こいつが起き上がったと思われるので、横に起き上がらせられる位置になった。
天井だけではなく、壁もゴツゴツした巨大な岩になっていた。
どうみても、洞窟そのものだが、もの凄い巨大な洞窟だ。
こんなにデカイ洞窟があるのか!?
暗くてみにくいが、この生き物の体に俺は、磔られているようだった。
こいつの動きと同時に、俺も動かされる。
どうやら、緑色の皮膚の生き物は、左右に複数いると思っていたが、違うようだ。
この左右の皮膚は、両方とも1体の生き物の体だと思われる。
そして、俺は左側の皮膚に磔られていて、左側の皮膚と同時に動く。
右側の皮膚が、本体で、その本体の腕?
腕に、なぜか縫われたようになっているのが、俺だ。
むちゃくちゃデカイ!
俺の身長が、178cmほどだとして、その100倍としたら、178mもある巨大な生き物で、その巨大な生き物の腕に、なぜか俺は磔られている。
そして、こいつは動物のように4本脚じゃなく、2本脚のように直立して歩いているようだ。
腕が動くたびに、凄い勢いで俺も動かされる。
暗いのもあるが、巨大すぎて、こいつの顔がみえない。
目しか動かせないので、腕だと思われるものが動いてくれないと、本体をしっかりと捉えてみえないし、暗くて巨大なので上の部分が遠すぎてみえないのだ。
うおおおおお!!
なんだ!
デカイのが近づいてきた!
右側の手だ!
むちゃくちゃデカイ!
10mはあるかのような巨大な手が、俺のほうに近づいてきた。
ぎゃーーーー!!
あおおおおうおう!!
痛い!痛い!
指だ!!こいつ巨大な指で、俺を押さえつけるように触ってくるぞ!!
ほぎゃーーー!!
はあ・・・はあ・・・
やめてくれた・・・。
そういうことか!
分かったぞ!
看病してくれている人間なんていなかったんだ!
俺はなぜかこいつの腕に、磔られ、アクセサリーのように持ち運ばれていたんだ!
こいつが俺を襲って、俺をおもちゃのように所持し続けているんだ!
たぶん!こいつに、攻撃されたんだ!
それで俺の体は動かなくなり、記憶も失い。そんな俺をこいつは、自分の体に縫い付けたんだろう・・・。
この巨大な野蛮なやろうは、裸だ。
緑色の皮膚を持つ裸の巨大な生き物。
人間は、こいつ、いや・・・こいつらに支配されちまったのか!!??
一体だけじゃないだろう。
裸で巨大洞窟に住んでいるんだ。
こいつは、人間のように賢くはない。
だが、猿よりは賢いようだ。
俺を捕えて、おもちゃとして、体に縫い付けるぐらいの知能はあるのだろう。
あ!いた!やっぱりそうだ!こいつだけじゃない!
巨大な奴が、もう一体いる!
何だか今日は、やたらと動くぞ!!
その一体に着いていくように、こいつも歩き出した。
歩くたびに、俺も激しく動かされる。
眩しいぃぃぃぃ><!!
突然、洞窟から外に出て、明るすぎて、目が痛い。
ええええ!!??
なんだ!ここは!
巨大なのは、こいつと洞窟だけじゃない!
外の世界のすべてがデカイ!
木も石も、花も草も、森のようなものすべてが、信じられないぐらいデカイ!
俺はどんな世界に迷い込んだんだ!!??
うお!
本体が左腕を上にあげた。
ぐおおおお!!でかい巨大な顔が近づいた。
洞窟から出て、明るくなり、俺ははじめて本体の顔をみた。
あがが・・・・あ・・・ゴ・・・・ゴブリン!?
たぶん、ゴブリンだ。
もの凄い巨大なゴブリン。
やっと本体の顔を目にすることが出来たが、最悪だ。
巨大な化け物の体に縫い付けられ、出来ることは目をうごかすこと。
左腕が動く度に、俺も激しく動かされ、なすがままにされている。
いつ死んでもおかしくはない。
こいつが、俺を指で少しつまむだけで、俺は昇天してしまうだろう。
一体・・・俺に何が起こっているんだ??
どうみても、普通の世界じゃない・・・。
ゴブリンなんて架空の生き物が実際にいるのもおかしいし、世界が巨大すぎる・・・。
ゴブリンがこんなにデカくていいのかよ!
夢か?夢なら覚めてくれ・・・。
こいつは何を主食にしてるんだ・・・?もし、人間も食べるのなら、いつでも俺はこいつに食べられてもおかしくはいない。
なのに、俺が出来ることは、目を動かすことだけだ・・・。最悪だ・・・。
あ!2体だけじゃない・・・。もっといた!
たぶん、4・5体、巨大ゴブリンがいる。
ゴブリンは、森を数匹、揃って歩き続ける。
動く度に、振り回される。
そして、巨大ゴブリンは、巨大木に登り始めた。
信じられないほど高い。
巨大な棟の外壁にぶら下げられている気分だ。
恐ろしい・・・。どれだけしっかり縫い込まれているのかもわからないので、ゴブリンの体からいつ落ちるか分からない。
え!
ええ・・・・!!
おい!やめろ・・・やめとけ!
ゴブリンは、下を見下ろしながら、体をゆらしはじめた。
どうやら、飛び降りる気のようだ。
うぎゃーーー!!
落ちた!!
いや、飛び降りた!
「ギャウン!ギャウン!ギャウン!」
俺はゴブリンに振り回され続けた。今までの急激な動きなんてものじゃなく、信じられない動きを何度も何度も上にあがっては、下に動かされた。
大量の液体が、俺の体に浴びせられた。
赤い液体。血だ。
ゴブリンは、鹿?のような生き物に襲い掛かり、武器で何度もその生き物を刺して殺そうとしていた。
その生き物の血が噴き出して、俺にかかる。
頼むから・・・やめてくれよ・・・