236章 英雄たちの台頭4
なんだ・・・?
真っ暗だ・・・
あれ!しゃべれない!?
というよりも・・・何も聞こえない・・・?
体を動かそうとしても、うごけない・・・
体があるのは感じるが、腕や足などがない??
微妙に、本当に僅かだけだが、体が動くが、それ以上は、まったく体を動かすことができない!?
なんなんだ・・・なんで、こんなに暗いんだ?
何が起こった!?
何で俺はこんな状態になってるんだ・・・。まったく思い出せない・・・。
誰か!助けてくれ!真っ暗なんだ!動けないんだ!
叫ぼうとするが、声の振動が、体に響くこともないことから、まったく音が出せていないと気づく。
耳だけじゃない・・・。声が出せていない!?
口を開いている感覚もない・・・
どうすればいいんだ・・・
―――1時間、2時間経っても、その状態は変わらなかった。叫ぼうとするが叫べず、まったく身動きも取れない。
意識だけはしっかりしている。
毒でも盛られたのか?
そうだ・・・そうに違いない・・・体が動かせなくなるような毒物があってもおかしくはない。
俺は誰かから憎まれていたのか?何か悪いことでもして、刑罰でも受けているのか?
いや・・・崖とか高いところから落ちて、意識だけある状態とか・・・?そんなことも考えられる・・・
その場合・・・毒物よりタチが悪いぞ・・・
毒物ならいつかは効果が消えて動けるようになるかもしれないが・・・怪我をしてこうなっているのなら、死ぬまでこのまま・・・??
動かなくなった俺を誰かが看病している状態で、目や耳などが使えないから、看病している人を感じ取れないとか・・・?
マジか!頼む!やめてくれ!
これが死ぬまでずっと続くのなら、今すぐ殺してくれたほうがいいだろ
そう思っていると、体が突然、動き出した。
え・・・?動いた?
いや・・・違う、俺じゃない、運ばれてるんだ・・・
うおおおおー!!!
なんだ!凄く早く動いたかと思うと、突然、動きが止まる・・・
うおおおお!!
また、早く動いた!
そして、すぐに止まる!
なんなんだ・・・これは、乗り物か・・・?看病している奴が、俺の体を弄んでるのか?
もしかして、動かなくなった俺の体を無理やり動かして、体をほぐそうとしてくれてるとか?
刺激を外から与えているのかもしれない・・・。
俺が回復すると信じてくれているのか?
うおおおお!!
また、動いた!
それにしても、動きがランダムすぎる・・・もっと、リズムよく、刺激を与えてくれよッ!!
いつ動くのか、リズムに合わせられないから、毎回、動かれるたびに、驚くじゃないか!
バカなのか、こいつは!!
むちゃくちゃ、ストレスなんだけど・・・
うおおお!
でも、なんだろ、何度も動くのを体験すると慣れてきたのか、早く動かれても、死ぬようなことや痛みがないから・・・驚かなくなってきた。どうやら、危険なことをしているわけではないようだな・・・
あ!ああああ!???ああ??
なんだ・・・!?今度は、体を締め付けてきたぞ!
あ・あ・あ・あああ。なんだか、苦しい気が・・・このまま、押しつぶされる!?
やばい!やばいぞッ!!次は引っ張られる!!!
あれ・・・緩んだ!?
ふぅー・・・じわじわと、締め付けられるというか、体をひっぱられたというか・・・苦しかった・・・
ギャー―ッ!!
痛い!!痛い!!痛いぞぉぉ!!
もの凄い大きな物を、俺の体に押し付け、えぐろうとしているのか!!??
痛い!やめてくれ!
マジで!それ死ぬ!!
ダメだ・・・苦しい・・・これ以上、これを続けられたら・・・しぬ・・・
やば・・・い・・・
やめ・・・った・・・?と・・・止まったぞ?
こいつ・・・看病なんてもんじゃない!
俺を殺そうとしているぞ・・・
そうか・・・たぶん、こいつだ・・・こいつが俺に毒を盛ったんだ・・・
どういう、経緯かは、分からないが、俺が完全に死なずに、看病するはめになって、どうにかして、邪魔になった俺を自然に死んだようにみせながら、殺そうとしてるんだ!
今・・・俺は殺される寸前だった・・・
やばい・・・このままだと殺される・・・
これは・・・イジメなんて、生易しいものじゃないぞ!
―――数日経ったような気がする・・・目や耳が壊れているから、時間の感覚も分からない・・・
看病する奴が寝ていると思われる時間は、まったく俺を運ぶ奴はいない。
だが、2時間に1回ぐらいは、突然、動かされるが、奴が起きている時と比べると、格段にイジメの回数は減る。
奴が起きている時は、数分に一回どころか、数秒に一回といった具合で、飽きることなく、俺の体を運び続ける。
そして、日に数度、また俺を殺す限界まで痛めつける・・・もの凄い痛み・・・苦痛を与えてくる・・・
なんて陰険な野郎なんだ!
相当、嫌みな奴だぞ!
恨みで毒を盛ったのなら、また毒で殺せばいいだろうに・・・
でも、どうして、こいつは、俺に殺すほどの痛みを与えて、いつまでも、生かしておくんだ・・・??意味が分からないぞ・・・
あれ・・・もしかして・・・!毒じゃない・・・?
俺が怪我をして、この状態になって、優しさから看病するようになったが、何の変化も反応もない俺に疲れを感じはじめ、そのストレスから、俺を殺そうと考えだしたのかもしれない・・・
たぶん、そっちだ!
良い奴なんだ!こいつ・・・俺のために看病していたけど、疲れたんだ・・・
そうか・・・だから、俺をすぐに殺さないんだ・・・殺せないんだ!
すまない・・・俺のせいで・・・そこまで追い込んでしまったのか・・・
いっそのこと・・・俺を殺してくれ
お前には、何の罪もない・・・お前は、良い事をしてくれていたんだ
ォギャーーーアアア!!
痛い!痛すぎる!!
俺の意思が通じたのか・・・また、あのヒドイ痛みを・・痛い・・・痛い痛い・・・
体に何を押し付けてるんだ!!毎日その同じ物を使ってストレスを発散してくる・・・
また・・・やめた・・・?
やっぱり・・・お前は、俺を殺せないのか?
この苦痛を毎日味あわせるのは、殺すよりも苦痛だと分からないのか・・・?
俺には、お前の苦しみを解放してあげることが出来ない・・・自分で命を絶つことさえも出来ないんだ・・・
まったく体を動かせないんだから・・・
いや・・・まったくではない・・・微妙に、本当に微妙にだけ、体を動かすことができる。
ほんの少しだけだが・・・
でも、俺が動いて反応していることに気づいたら、こいつも喜ぶんじゃないのか?
まったく反応がないから、何をしているのか分からなくなってストレスになるけど、何か反応が見えるようになれば、小さな希望をこの男?女に与えることが出来るかもしれない。
無駄かもしれないけど、動かすぞ・・・こいつが、気づくまで、何度も何度も、体を動かすんだ!
―――俺は、何度も少しだけ動かせる体を頑張って動かし続けた。
だが、いつしか、俺が動くたびに、こいつは喜ぶどころか、逆にあれをやってきた!
そう・・・俺を痛めつける行為だ!
俺が動く度に、痛めつけてくる。
痛い!痛い!痛い!!
動かす回数とともに、痛みは増していくようだった。
ということは、こいつは、俺の反応に気づいている証拠だ。
だが、こいつは希望どころか、逆に俺を痛めつける・・・
もぞもぞと動いたところで・・・希望になど、ならないという無言の現れなんだろう・・・。
いや、こいつは、ストレスを発散させるために、俺に罵声をあびせかけているかもしれないが、俺の耳が壊れているから、気づけないだけなのか?
もう・・・動くのは、やめだ。痛めつけられるだけだ・・・。痛いのは、いやだ・・・。
こいつは、相当、心が病んでいるな・・・
生かしたいという気持ちよりも、殺したいという気持ちのほうが、もう上回ってしまっているんだ・・・。
俺は数日前に、意識を取り戻したが、こいつにとっては、何カ月、何年という看病の日々だったのかもしれない・・・。
ちょっと動いただけで、それが希望になるなんて、俺の願望でしかなかったんだ・・・。
こいつが、俺を殺すまで、俺はずっとこのままなのか・・・?
動きが・・・止まった?
どうやら、寝る時間が来たんだろう・・・
俺はどうすれいい・・・このまま、この状態を続けなければいけないのか・・・
何も出来ないのは、苦しすぎる・・・
何か頭の中で、物語でも、作り、イメージして、時間を費やそう・・・。
うさぎと亀が競争するような物語を聞いたことがある気がする・・・。
なんだったっけ・・・、どうして、うさぎと亀が競争なんてはじめようとしたんだろう・・・
どう考えても、競争しないだろ・・・
何かの大会?
ハンデがありすぎて、どんな大会だよ・・・まったく・・・
でも・・・亀が勝ったんじゃなかったっけ・・・?
えーー!!どうやって亀が、うさぎに勝てたんだ・・・
不思議だ・・・あのノロマな亀が、あのうさぎに競争で勝つ!?凄すぎるだろ!
うーん・・・のろまな、亀でも競争に勝てた理由・・・なんだったっけ・・・
あーー!!ダメだ。思い出せない!!
ふぅー・・・でも・・・どうやって勝ったのか思い出せないけど、1つだけ確かなことがある。
それは、亀は、前に進んだということだ。
前に進まなければ、いくら亀でも競争に勝てるわけがない。
止まっていたら、空の鳥に捕まえられて、運んでくれたとかそういうオチじゃなかったはずだ。
そう・・・。亀は、あきらかに、ゆっくりとしか動けなかったが、それでも前に進んだんだ。
何か・・・勝手に頭で想像していた物語に、励まされた感じがする・・・俺はアホか・・・
アホでもなんでもいい。俺に出来ることは、思考することぐらいだ・・・。それしか、何もできない・・・。
俺を運ぶやつは、俺を看病している奴と同一人物なんだろうか・・・?
ひとりで、毎日、俺を動かしているのか?
俺の体重が70kgぐらいだったとして・・・それを早いスピードで一日中、動かし続けるとか、人間ひとりが抱えて、出来るわけが無い。
だから、何かに乗せている。
何に乗せてるんだろ・・・。上だけじゃない。横にも、下にも、円を描くような動きになることもあって、ランダムに動くようだ。
紐で、ぶら下げてるとか?
上に急激に、引っ張ったり、手を放して、突然、落としたりしているとか?
でも、紐とか、融通の利かない動きじゃないんだよな・・・もっと、自然というか・・・生き物か!!
牛とか、馬とか!!
いや、ジャンプするものだ!
急にジャンプする生き物に、俺を乗せてるんだ!
70kgぐらいの俺の体を軽々と抱えたまま、自由自在に疲れることなく、あいつが寝ている時間以外は、動き続けるタフな生き物!
時々、高い場所にジャンプしたと思ったら、すぐにヒョイっと飛び降りるような生き物だ
どんな生き物だよ!
飛び跳ねまくる馬でも、そんなこと出来ないだろう・・・。
俺が知っている生き物では、あの動きにピッタリのものは、思い浮かばない・・・。
観たい!!見てみたい!俺を乗せている動物を・・・どうせ死ぬなら、答えを観てから死にたいな・・・
見たい!見たい!見たい!
目でみるのじゃなく、心の目でみる?なんて、訳の分からないことでも、なんでもいいから、世界をみて、動物と看病してくれている奴も見たい。
目が見えていたのは、当たり前のことだったはずだ。まぶたを開いて、その目でみるだけだったんじゃないのか?
そんな簡単なことも出来ないのか?
そう・・・まぶた・・・まぶたをゆっくりと、開いて・・・深くイメージするんだ・・・自然にまぶたを開いていたことを心に響かせるんだ!!
まぶたがゆっくりと開いていった。
!!!!
みえ・・・た・・・!??たああああああ!!??