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234章 勢力のバランス

レジェンドの遥か西。

龍王が定めた世界の最西端に3つの国が、帝国に連盟することなく古くから存在し、まるで帝国に抵抗するように西側の広い土地を保持していた。

1つは、北西にある国、ディア・ガル・ア・ダリウスヘルが治める大死霊ハデス。

その南には、ブタンが治める獣魔兵国アプル。

そして、もっとも広い土地を南西に持つ、エジプタスが建国したとされる魔法国モーメント。

現在、魔法国モーメントを治めているのは、女王タミラ・サラエラだった。


獣魔兵国アプルの最東端には、その3つの国が隣接する土地があり、その土地の3000m級の高い山チャイニーズマウンテンの頂上に、古い城、デスタール城があった。

奴隷が次々とチャイニーズマウンテンから飛び降り自殺をしたという山の崖にあるデスタール城には、まったく人の気配がない。

兵士ひとりさえもいないが、そこに悪魔族の3人が、現れた。


古い城で使用されていなので、蜘蛛の巣などが張り巡られ、お化けの館ならぬ。お化け城のようになっているが、一室の広間だけは、隅々まで綺麗にされて、丸い大きな石で作られたテーブルの前に、豪華な椅子が、3つ置かれ3人が座していた。


「グカカカカカ

このように3人が集まるのは、何年ぶりかな

カカカカカ」


全身、動物の毛で覆われ、牛魔の姿をして、頭には2つの白くて大きな角が横から生え、豪快に笑ったのは、獣魔兵国のアプルだった。


周囲が黒くぼやけたようなになって、空間が雲のようにランダムに歪んでいる。その中心に座っているのは、大死霊ハデスの王ディア・ガル・ア・ダリウスヘル。

ディア・ガル・ア・ダリウスヘルも2つの角があったが、黒色の光る角だった。その姿は、マーレ・ソーシャスと似た悪魔そのもののようだった。真っ赤なマントを羽織り、赤い目を光らせながら、闇の底から聴こえるかのような声だった。


「我を呼び出した理由を申せ・・・・」


「グカカカカカ

久しぶりに会ったと言うのに、何の挨拶もなしかな?

大死霊の王よ」


「早く用件を言え、お前ほどわたしたちは、暇ではないのだからな」


少女のような高い声で催促したのは、真っ黒なマントで全身隠したまま椅子に座るタミラ・サラエラだった。


「ミシェル・サラエラ。いつまでその姿のまま俺たちと話すつもりなんだ?」


タミラ・サラエラの姿をしたミシェル・サラエラは、不機嫌そうな顔になる。


「いいから用件を言えといっているのだ」


「分かったよ

悪魔族3人を集めた理由は、帝国に新たな勢力が生まれ始めていることを告げるためだ」


ミシェル・サラエラが冷たく指摘する。


「龍王の予言にある伝説の天使セルフィの勢力のことだろう?そんなことは、わたしたちだって知っている」


「我らの存在のために、長年、帝国は、激しい動きをみせることなく、本国に戦力を常に集めていた

今もそれは変わらないが、この新勢力がボルフ王国だけではなく、ワグワナ法国さえも攻め落とした

そして、次は、ペルマゼ獣王国に牙を向こうとしている」


ディア・ガル・ア・ダリウスヘルが、口を動かすことなく話す。


「ペルマゼ獣王国が滅びようと知ったことか・・・・」


「グカカカカ

大死霊の王よ

大死霊ハデスとペルマゼ獣王国が争い続けていることは、もちろん知っている

だがな、ペルマゼ獣王国だって帝国に抗う国の1つなのだから、我々の役にもたっているではないか

このまま反帝国を掲げる勢力が削られるのは、シンをのさばらせるだけなのではないのか?」


「そんなことは、分かっているわよ

本当にペルマゼ獣王国を滅ぼそうと思えば、ディア・ガル・ア・ダリウスヘルは、少し本気を出せばいい

滅ぼさなかったのは、そういうことでしょ

だからといって必要としているわけじゃない

わたしたちに、ペルマゼ獣王国を助けよとでも言うの?

わたしは、大死霊ハデスとペルマゼ獣王国の因縁に関わってはいないけど、あんな国、滅びればいいと思っている

奴らこそ、シンそのものではないのか?

ディア・ガル・ア・ダリウスヘルにわたしは賛成だわ」


「毒を以て毒を制すというだろう」


ブタンは、ふたりの様子を伺うが、二人の反応は、悪いままだった。


「分かったよ

俺だってペルマゼ獣王国のような平和とは程遠い存在は、滅んでもいいと思っている

だが、あんな国よりもセルフィのほうが驚異ではないのかと探りを入れているわけだ

だが、思いの外、奴らの監視体制は徹底していて、なかなか入り込めないでいるのさ

帝国に第二のサムエル・ダニョル・クライシスが現れたとしたら厄介だろう?

セルフィとそれに連なる新勢力については、ここでペルマゼ獣王国と消し去ったほうがシンを弱体化させることになると踏んでいる

これについてはどうなんだ?」


ディア・ガル・ア・ダリウスヘルとミシェル・サラエラは、無言のままだった。


「何も答えないということは、賛成だということだな

大死霊の王が言う勢力のバランスを帝国側寄りに及ぼそうとしている奴らなのだから、排除するべきだろう

いつでも出撃できるように準備を整えておいてくれ

あと、お前ら、愛想が無さすぎる

もっと前向きな姿勢にならないと平和など訪れないぞ」


そう言い残して、アプルは、消えた。


「坊や

久しぶりね」


「姉さん・・・・

その呼び方は、おやめください・・・・」


「あなたは、どう思ってる?」


「我は、恐怖によってシンを押さえつけてきた・・・・

動くとするのなら、血の海をみせるまで・・・・」


「そう・・・

あなたは、本当にそれでいいの?

わたしは、あなたのこと・・・」


「姉さん・・・・

我は、遠い昔に死んだ・・・・

今あるのは、怒りと報復、そして恐怖を示すこと・・・」


「でも、わたしは、その遠い昔からあなたを見守り続けてきたわ

そんな、あなたが賛成だというのなら、わたしもあなたの意思に従いましょう

あなたのことを理解している者もいること忘れないで」


「ただ・・・・

奴は、信用できぬ・・・・」


「そうね・・・

牛っ子は、わたしたちを利用しているつもりなのだろうけど、それをわたしたちは、利用している

それでいいとは思うけど・・・

何かあったら、いつでもわたしに相談して、わたしに出来ることがあれば、何でもするわ

最後に、母さんがいつも教えていた言葉を贈るわ

愛がなければ、すべては虚しいもの」


ディア・ガル・ア・ダリウスヘルは、小さく頷き、その場から消えた。



―――ダフキン・マットから教えられたタン。

それに、ソロモン・ライ・スミスに教えられた新たなマナの活用法。

その2つの理解をもっと深めないといけないと源は考えていた。


あれから、毎日のように時間をつくっては、体の中からたんを作り出して、体にまた含んだ。

丹については、謎が多すぎて、どうしたものかと思考を巡らせる。


源は、ダフキンを指導者として、レジェンドと新大共和ケーシスの手練れと中心メンバーを数人呼び出した。

リリスは、未だに連絡がないので参加していない。

メンバーは、ロック、ウオガウ、ローグ・プレス、ボルア・ニールセン、エリーゼ・プルとバーボン・パスタボ、そして、バルト・ピレリリとティアリア・パラディン、デッドショットを扱い急激に成長していたルシル・ピアゴだった。


源は、説明する。


「みんなに秘密裏にここに呼びよせたのは、この世界の強さの一端だと思われるタンをダフキンさんから指導してもらうためだ

タンは、サムエル・ダニョル・クライシスの強さの秘密でもあるかもしれない

俺は、ダフキンさんから少しだけタンを習ったが、それだけでも効果が出始めているので、みんなにも伝えようと思うが、これは限られた人間にだけしか教えられない

極秘事項とするので、ここにいるメンバー以外には、伝えてはならない」


集められたメンバーは、頷いた。


ダフキンは、セルフィに教えた内容を伝え、さらに語る。


「タンは、マナとは違い、個々の差によってその効果や発揮される強さは異なります

タンが得意な人もいれば、まったく掴めない人もいます

まずは、楽な姿勢で、タンの無心状態になり、その後、タンを体の内部から作り出し、気の球を作り出してみてください」


ダフキンが、ひとりひとりに近づき、タンの感覚を伝えようとするが、誰一人、気の球を作り出せる者はいなかった。


たんは、実際に存在します

時間をかけて、たんを練り出す必要があります

静かに心を落ち着かせて、気の力を感じ取るのです」


源もみなと一緒に、たんを作り出す。


ダフキンに教えられた当初は、源の白い気の球は、直径5cmほどだったが、直径10cmにまで大きくなっていた。

しかし、その気の球を源が出しても、それに気づけていたのは、源の他は、ダフキンだけだった。



メンバーは、タンの鍛錬のたんを続けた。


数日後、慌てたようにロックが、源に駆け寄り、周囲に人がいないのを確認して小さな声で伝える。


「セルフィ!気の球が出せたぞ!!」


「おー!やったじゃないかロック!」


「人のいないところに移動するぞ」


たんは何も知らない人たちには見えないから大丈夫だとは思うけね

でも、移動したほうがいいな」


目の前にパっと時空ゲートを開いて、誰もいない大平原の真ん中へと移動した。


ロックは、静かに目をつぶり、たんで無心になるように心がける。

ロックは、物質モンスターなので、酸素を吸って生きているわけではないので、呼吸法も関係がない。

ただ心を落ち着かせると硫黄のような黄色い珠がお腹の辺りから出てきた。


「おおー

本当だ!たんが出てる」


「そうだろ。そうだろ

教えられた中では、俺が一番早く気の球を出せたかもしれないな」


「ロック。その気の球を口の中に含み、体に何かの力を感じてみるんだ」


「それはまだしていなかったな」


再度、目をつぶり、黄色い気の球をゆっくりと口元へと移動させようとするが、気の球は、源のものと比べるとまだ安定していないようで、ふらつき、消えそうになるが、また色を戻して、ロックは口に含んだ。


ロックのまわりに、薄っすらと黄色いオーラのようなものが、全身を覆う。


「セルフィの体のまわりに、白い気のようなものがみえるぞ」


「うん。それが俺のたんだね

ロックは、濃いオレンジ、橙色かな?」


「そうか・・・

これがたん

セルフィの丹がみえるようにはなったが、力のようなものは、ほとんど感じないな

いや、若干違うか・・・?」


ロックは、頭をかしげながら、体をもぞもぞと動き出した。


「おい・・・ロック・・・

それ何してるんだ!?」


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