231章 タン
ダフキンは、一本のカーボン製のナイフを模造して、数本のナイフを源に投げつけた。
闇範囲によって暗闇となっている状態を作り出している壁は、激しい模擬戦をしたとしても外に影響を及ぼすには、常識を逸脱するほどの威力のある攻撃を繰り出すしかないので安全だ。
ダフキンは、ほとんどマナを使わず、身体的な強化やスキルを使用するために、源もダフキンと合わせるように、物理攻撃だけで対処しようとする。
暗闇の中でも、ミカエルの探知機能を使ってナイフの位置を把握し、投げつけられた3本をデフォルメーションで弾き飛ばした。そしてダフキンに変撃しようとしたが、源の首元に、ナイフがいつの間にか、突きつけられていた。
源は、驚きながらも瞬時に対応した。
首元のナイフを素早くデフォルメーションの一本の枝で防ぐが、後ろから背中の中心部分を蹴られ、数m前に吹き飛ばされた。
蹴られた時の衝撃で、一瞬、息が出来なくなる。
なんだ・・・どうしても、ダフキンさんの動きが把握できない・・・
早いわけじゃない。速さだけならスミスのほうがよっぽど早い。
そのスミスよりも俺はさらに早いし、速度抵抗による認識処理も増し加わっているというのに、先手先手を取られてしまう・・・。
なら・・・こちらから行くまでだ。
ダフキンに追われないように空中をランダムに八方に渡って最高速度で移動し撹乱させてからの攻撃ッ!
「ガハッ!」
源の位置を予測したのか、ダフキンの蹴りが顔面に炸裂した。
カウンターぎみに蹴られて、自分の速度が仇になる形になる。
もの凄い衝撃だ。
リトシスを使おうとしても、なぜかダフキンの動きを認識できない。
まるでダフキンは、瞬間移動をしたかのように、気づいたら攻撃されているので、リトシスを発動してガード出来なかった。
速度抵抗が増した源には、ダフキンの動きは、スローモーションのように見える。
なのに、なぜかダフキンの姿が突然、消えたようにその位置が分からなくなるのだ。
それに、リトシスもそうだが、防御魔法も纏わせているのに、なぜかダフキンの物理攻撃は、魔法防御に干渉しない。
まさか・・・これらの魔法防御なども、リトシスと同じで認識しなければ発動しないのか!?
いや、そんな訳はない。随時、発動している意識が薄くなっているからなのでは?
源は、攻撃も防御も止めて、目をつぶって防御魔法だけに集中した。
ダフキンの攻撃は魔法障壁に弾かれた。
どうやって把握しているのかは分からないが、マナのガードが弱まった箇所を狙っているんだ!
だからといって、防御だけをしているわけにもいかない。
俺のマナ量ならいつまででも防ぐことは出来るが、訓練の意味がない。
攻撃もしていかなければ・・・。
先手を取られるので、こちらから猛攻を繰り出そうとするが、それが逆にカウンターとなって痛い目をみる。
どうしてだ・・・?俺の攻撃は、毎回、空回りするばかりだ・・・。
頭の後ろに、ざわつきを感じるとナイフが、数cmのところにまで投げられていたことに気づいて、はやぶさ斬りを使って、源の持つ最速の剣で弾くが、ダフキンは目の前、下にかがむような体勢で構えていた。ダフキンのナイフは、源の胸元に、突きつけられていた。
「ま・・・参りました・・・
また降参です・・・」
源は、両手をあげて、頭をかしげて、質問した。
「どうして、わたしは、ダフキンさんの動きを把握できないんでしょう・・・」
ダフキンは、ナイフをゆっくりと降ろして、鞘に納める。
「セルフィ様。丹をご存知ですか?」
「タン・・・?ですか・・・。聞いたことありません」
「まず、この模擬戦を行う前にも言いましたが、わたしの剣は、殺しに特化したものです
セルフィ様のような生かす剣とは、種が違うのです」
「僕の剣は、生かす剣なんですか?この戦い方で、何人も手にかけてきたんですけど・・・」
「わたしが、幼い頃より教え込まれてきたのは、いかに相手に力を出させずに、素早く命を絶つのかという戦い方です
相手が気づく前に、決着がつくように訓練されているのですね
セルフィ様は、とてもお強い」
「連敗ですけど・・・?」
「セルフィ様はお強いのですが、剣が向かう先が、相手の生死を考慮せず、それどころか、相手を殺傷しないところを無意識で選んで攻撃されているようです」
源は現世では柔道という格闘技をしていたが、命のやりとりとは程遠いところで行われていた。力の流れは、この世界の能力や愛の補佐があってさらに深く読み取れることができ、愛によるあらゆる格闘技の知識も頭の中にはいれているが、暗殺といった実践的な知識はほとんどなかった。
「言われてみれば・・・確かに・・・そう・・・かもしれませんね・・・
だから、生かす剣だと表現されたのですね?」
「はい。わたしは、それは悪いことではないと思います
剣の方向性は、その人の色を塗り替えてしまう危険性が潜み、逆に生かす剣を使う者の精神は、清いからです
ですから、わたしとの模擬戦をすることは、セルフィ様にとってどうなのかと躊躇していたのです」
「でも、敵にダフキンさんと同じようなレベルのものがいたら、わたしは負けてしまうかもしれませんから、教えてほしいですね」
リトシスは、認識できる攻撃にたいしては、ガードなどが発動するが、認識できない攻撃については、対処できない。
ダフキンの戦い方は、もしかするとサムエル・ダニョル・クライシスに通じるものかもしれないと源は思った。
「スミス君の剣は、剣士としての指導を受けているようなので、相手の急所を狙う型が染みついています
本人は意図的に急所を外すようにしているようですが、体に染みついている戦い方は、殺に向かっています
これは命のやり取りをする上では、大切なことです
セルフィ様はお強いので、これを無視したとしても、相手を倒すことができますが、もし、セルフィ様と同じほどの強さの相手と対峙した際には、その戦い方では、相手に分を明け渡してしまうこととなるでしょう
暗殺者は、スミス君のような騎士精神とは違い、相手を殺めることを目的としていますので、最短最速で、相手の急所を的確に狙うのです
これを短といいます」
「先ほど言っていたタンとは、そのことですか」
「いえ、先ほどの丹は、また別のものです
わたしたち暗殺者でも、相手が同じようにタンを理解していれば、簡単には倒すことが出来ません
その場合、相手の急所ではない部分で、相手の戦力を削っていきます
相手に負担を与えていくのです
これを担と文字では書き、タンといいます」
「相手の戦力を削るとは・・・具体的にどういうことですか?」
「相手によって違いますが、例えば、戦力となる部分は、やはり腕や足です
腕は、攻撃や防御に使われますし、足は相手の動きを鈍らせます
ですが、相手もそれを分かっているので、四肢にも注意をはらっていて、簡単には、削ることができません
その場合は、さらに戦力を削る担を細部へと移行していきます
例えば、相手の親指や小指などを狙っていくのです」
「指ですか・・・なるほど・・・
でも、親指は、分かるかもしれませんけど、小指ですか・・・
普通は、人差し指とかを狙うのではないのですか?」
「親指と小指は、物を掴む際に、安定させるために、とても重要視される指なのです
片方の腕を掴んでみれば、分かると思いますが、小指を伸ばしたまま握る力と小指も含めた握りには、極端に力の伝わり方が違ってくるのです
親指はもちろん、必要不可欠ですね」
「なるほど、相手と力が切迫しているのなら、相手の身体を少しずつ削っていくことに目的を変えるというわけですか」
「はい。急所を狙うのが、短
目や鼻、眉間やみぞおち、心臓や三半規管など、そういった急所を攻撃するのです
鼻を削いでしまえば呼吸が乱れ、目は視界を鈍らします
そのように、担によって戦力を減少させ、相手の呼吸器官なども狙っていくわけです」
「背中を蹴られた時、息が出来なくなったのは、それですか」
「そうですね。相手の身体に瞬間的にでも、悪影響を及ぼせば、意識がそちらに飛ぶのです
これを綻といいます
その破綻した意識の隙間を狙い意識外からの攻撃に移るのです
わたしが、セルフィ様にナイフを投げつけたのも、綻を作り出すためでした」
以前、帝国のコロシアムで待機していた時、対戦相手のスピードスターのパーシー・テシリに目を向けた瞬間、後ろから突然、声をかけられて驚いたことがった。あれも綻の隙間に入り込まれたからだったのかもしれないと源は思った。
「意識外からの攻撃・・・」
いくら探知機能を増やしたとしても、その綻を駆使して使われてしまえば、意識は探知へと向かわなくなるので、意味がなくなるということなのか・・・?
意識を逸らす攻撃・・・
ダフキンは、タンの説明を続ける。
「ひとが、意識できるのは、1つの時に、1つまでです
同時に複数の意識を待ち合わせることはできないのです
1つのドアを開けながら、閉めることが同時にできないように、意識もまた、1つずつしか向けることが出来ず、同時に考えられていると思っても、それはコンマ何秒という差で順番に意識を移し替えているだけにすぎないのです
意識を違うものへと移したその瞬間に、意識外の隙が生まれます
会話をもちかけて、相手に何かを考えさして、綻を作り出す方法もあります」
う・・・。もしかして・・・サムエル・ダニョル・クライシスが、やたらと俺に話しかけてきたのは、綻を誘発するためだったのか・・・?
「世界には、様々な能力を持った者たちがいますが、それらのほとんどは、意識と直結している場合が多いのです
ですから、その能力の隙をつけるとすれば、綻を使うことが有力な1つの方法なので、習得することは大切なことです
この隙を逃さず、見分けるための訓練を鍛と言います
人によって綻は個人差があり、強い者ほど、綻という隙は、限りなく短い時間になります
その短い時間の隙さえも見逃さないほどの鍛が必要になるのです」
源は、それを聞いて困惑した。
「そんなことをどうやって見抜くというのですか?そんな一瞬の相手の意識を認識するなんてことが、本当に可能なのですか?」
「はい。普通では、認識することは不可能です
ですが、それを可能にするのが、丹なのです
最初に、わたしがお尋ねした丹がこれです」
「丹・・・
それは何ですか?」
「丹とは、目に見えない力のことを表す言葉です
体内に宿るエネルギーを感じ取り、それを利用して、身体能力を増させるのです
いわゆる気孔とも呼ばれたり、霊力とも言われたりするものです」
「マナとはまた違うものなのですか?」
「似ているようですが、マナとは違うと言われています
何を考えているのかまで、把握することは、わたしには、できないですが、意識を逸らした綻を感じ取ることが丹を使えば、出来るようになります
複数のタンを習得している者同士では、戦うことができなくなることがあります
お互いに、綻の取り合いになり、意識の隙間を生み出すのは、相手を攻撃する時が一番大きくなるからです
相手が先に攻撃しようとしたその瞬間、守る意識が皆無になるので、カウンターで攻撃できるからです
線の取り合いになるのですね」
なるほど・・・ダフキンさんの戦い方は、ワグワナ法国との戦いの中で拝見させてもらったが、その時は、どのタイミングであってもスローにみえていた。
それは、俺の綻を読み取っている戦いではなく、敵の綻を読み取り、それに合わせていたというわけだ・・・。
「じゃータンを習得している相手には、どう戦えばいいのですか?攻撃もできなければ、相手の攻撃に意識を向けてしまい、また綻が生まれるのですから、お手上げですよね?」
「それに対処する方法があるのです
それが、旦です
目の前に、犬と猫が並んで立っているとしましょう
犬に集中すると、その瞬間は、猫は意識から消えます
猫に集中すると、犬が意識から消えます
ですが、犬と猫を離れた場所からみることで、2つを1つとして認識するのです」
「つまり、広い視野を確保すればするほど、対処できるということでしょうか?」
「はい。その通りです
そして、究極の旦は、無心になります
無心になり、すべてのものを1つとして捉えて、相手に対処するわけです」
「うーん・・・無心ってよく聞きますけど、完全に無心になっていれば、相手の攻撃も無視することになるのではないですか?」
「そこまでの無心は、生きて肉体がある以上、普通の人には無理ですね
先ほどセルフィ様がいわれた広い視野を獲るために、無心に近づけることを目的としているのが、旦なのです」
完全に無心というわけではないということか・・・。確かに、完全に無心になった人がいたら、戻るということも考えれなくなって、植物人間にでもなるのでは?と考えたことがあったが、戻って来れなくなるほど、無心になるなんて、空を教えたソロモン王にさえ出来ない・・・。
ソロモン王は、しっかり老後まで意識があったことが聖書に書かれているからな。
でも、問題なのは、いつもいつも物事を考えてしまう性分の俺が旦を習得できるのか?ということだ。
こどもの頃は、寝ることが趣味で、考えないということを平気で行えていたが、弟の死を体験した時からか、常に考えることばかりをしてきたからな・・・。
仏教でいうと煩悩だらけというところだろう・・・。
「旦を鍛えるには、どうすればいいんですか?」
「毎日、静かに祈るように、自然体で過ごすことです」
俺、祈るのって苦手なんだよな・・・。ジっとしていられないというか、動いていないけど、動いているというか・・・。
友達が、集まっている時に、よく「暇だ。暇だ」と口癖のように言っていた友がいたが、俺は暇だと感じたことがあまりない。
どんな時にも、何か発見や考えることは、すぐそこにあるから暇だという感じには、ならなかった。
まー、物事を考えることが、祈ることだというのなら、祈りは俺の十八番でもあるが、旦とは、そういうことではないのだろう・・・。
「自然体ですか」
「床に楽に座り、静かに心を落ち着かせることを続けるのです
その時、なるべく無心になるように意識を向け、すべてを1つと捉えて受け入れるのです
状態を正常に保つことを淡といいます
水が静かにその状態を保つように感情の起伏なく、正常を保つわけです
それに大きく貢献するのが、呼吸です
深く呼吸を落としていく呼吸法により、淡に至り、旦をしやすくしていきます」
源は、深く深呼吸をして、楽な体勢で床に座った。
「また、その旦を行う際に、丹の訓練である鍛もできます」
「え?そうなのですか?」
「はい。旦は、無心になることですが、丹は、感じ取ることです
体の中に必ず生き物にはあるエネルギーを発見し、それを自在にコントロールしていくことが、丹の鍛にあたります
お腹の中で、丸いエネルギーの丹を作り出し、それを気道に沿って上へと移動させ、口から丹を出すイメージなどをしていくのです
その丹をしっかりと捉えられるようになると、丹を再度、飲み込むことで、健康になったり、怪我を治したり、新たな力を発揮できるようになります
丹を多岐に渡って発揮できるようになると、相手の綻の隙間をも感じられるようになっていくのです」
源は、言われるがまま、丸いボールのような丹をイメージして、口から出した気分になって、口を軽く開けた。
「まさか!!」
ダフキンの声に反応して、源は目を開けた。
「え・・・!何これ!?」
源の目の前に、白く光る丸いものが浮かんで少し揺れ動いていた。
「丹が他人にも直視できるほど具現化するとは・・・聞いたことがありません・・・」
「そう・・・なんですか・・・?
えと・・・これどうするばいいんだろう・・・」
「その丹を取り込んでみてください」
「取り込む?」
「食べるようなイメージですね」
源は、その白い光りの球を口の中にいれた。
すると、源の体全身に何かエネルギーが満ちて、体が白く光り、力のようなものに襲われる。
「何だ・・・これ・・・
ダフキンさん・・・これは・・・」
源は、体からほとばしる力に戸惑いダフキンに目を向けたが、ダフキンの体のまわりに青いものが漂っていることに気づいた。
「ダフキンさんの体のまわりに青い何かがありますね・・・」
「それは、わたしの丹です。セルフィ様
わたしの丹は、青です
そして、セルフィ様は白のようですね」
ダフキンが、言葉を発するとその青いオーラのような丹が揺れ動いた。
「丹がしゃべるごとに、いや・・・その直前に、揺れ動いていますね」
「それが綻の意識の隙間です」
「この揺れ動くのがですか?」
「見え方は人によって違うようですが、セルフィ様の綻の見え方は、それかもしれませんね
わたしの場合は、色の変化になります」
「たしかに・・・若干、色も変化しているかも・・・」
「あとは、ご自分の丹を広げ、相手を包み込むかのようにすると、細部にまで相手の動向を把握することが出来るようになるのです
これを探といいます」
「広げる・・・ですか・・・」
源は、なんとか、自分の丹だと思われる白いオーラを広げようとするが、どうもうまくいかない。
中からエネルギーが増し加わったような感覚だが、それ以上、何かが出来るというわけではなかった。
「出来ません・・・まったく、この光りは、動かせませんね」
「丹を応用したものが探ですから簡単には出来ないでしょう
それは鍛を行っていく以外ありません
ですが、初めから視認できるほどの丹を出されるとは、思いもよりませんでした」
「タンはいくつもあるのですね」
「はい。今教えた以外にもタンはあります
幻惑や幻想などを無効化する単もあれば、相手のタンを利用して反撃する反もあり、気持ちを強くする胆もあります
体の中の悪いものを外へと出す痰は、料理などに作用させて他人の悪いものを体外に出させる効果もあるのです
毒などに侵されている場合にも発揮します
相手の共感を得るための嘆もあります
商売など交渉する際には、嘆はとても効果を発揮します
そして、タンの奥義ともいわれる奇譚もあると言われています」
「奇譚ですか・・・。それはどういうものなのですか?」
「分かりません・・・。奇譚というものに至ったとされる人はいません
もしかしたら、戦神とも言われた龍王は、使っていたのかもしれません
どのようなものなのかは、分かりませんね」
「そうですか・・・」
「セルフィ様はお強い」
「さきほども言われていましたが、ダフキンさんと比べたら、どうも・・・」
「セルフィ様の強さは、わたしとはまた別のところにあります
セルフィ様の戦いを戦争中に見ましたが、セルフィ様の丹の変化は、人数制限がないかのようでした」
「人数制限?」
「私の場合、探などを使って、敵の綻を探れるのは、多くても10人までです
ですが、セルフィ様は、丹を知らない相手であれば、どうやっているのか分かりませんが、すべてを把握して多数との戦闘を可能にされているようです
わたしには、そのようなことはできません」
たぶん、ダフキンさんが言っているのは愛の処理能力のことを言っているのだろう。
綻という隙を狙ってこない攻撃なら何千という矢を放たれても把握できる。
そして、すべてをリトシスでガードすることも出来るからだ。
ダフキンさんは、それがどうやら出来ないようだ。
俺が浅く広い戦い方であるのなら、ダフキンさんは、狭く深い戦い方だということだろう。
「なるほどです」
「先ほどの戦いでは、マナを一度も使われていませんでしたしね」
なるほど・・・マナの種類によるが、広範囲の攻撃魔法であれば、効果的だということかもしれない。
サムエル・ダニョル・クライシスとの戦いでも、サムエルに攻撃しても愛であってもまったく通用しなかったが、愛が標的をサムエルから何万という兵士たちに切替えて攻撃した時、奴は対処できないようだった。
そこに、サムエル・ダニョル・クライシスの弱点があるのかもしれないな・・・。
ダフキンは、真剣な表情でセルフィに伝えた。
「タンは、どんな人も使いこなせるはずですが、これを知るものの多くは、***・・・・だけなのが普通です」
「えと・・・途中、言葉が聴こえなくなりましたね」
「***・・・・は、許可されない言葉ということですね
わたしが言いたかったのは、これら複数のタンについては、他のものには、教えないようにお願いしたいということです
悪側の人間がこれに気づいた時、弊害があるかもしれないからですね」
「その意味は、よく分かります
クリスチャンだけにミカエルなどの特権を与えているのもそのためですからね
タンについては、教えていただいたダフキンさんの許可なく、クリスチャンであっても、簡単には教えないようにすると約束します」
「ありがとうございます。セルフィ様
これら複数のタンを習得されれば、セルフィ様もさらに力を増すことでしょう
そして、セルフィ様をも超えるような強敵が現れた際には、短を実行し、急所を狙い相手の力を出させず、倒すことを優先するべきかもしれませんね
丹を発動させて、相手の綻の隙間を感じながら、胆で相手の戦力である身体を削っていき、弱らせていく戦い方がベストです
それらを伸ばすために鍛えること、それが鍛になります」
「分かりました。また、ダフキンさんのお時間がある時、教えていただいてもいいでしょうか?」
「もちろんです」
「これらのタンのことは、主力メンバーに伝えることはダメですか?」
「簡単には口外しないという約束で、限られたメンバーであり、クリスチャンと認定できている方であれば、良いと思います」
「分かりました」
源は、タンを意識しながら、またダフキンと数回、模擬戦を行った。
源は、一度も勝てなかった。