228章 天使帝国組合
ダイヤの形をしたこの世界の太陽は、各地に空高く、複数、浮かんでいるが、それぞれが、この世界の中心に近い場所にあるといえる。
地球の内部は、どのような造りになっているのかは、今でも宇宙と変わらず謎のままだが、地球の中心のことをコアと呼ばれたりもする。
しかし、この異世界は、中心となっている場所は、下ではなく上にある。
立って、普通に暮らしていれば、疑問も浮かばないが、よく考えると不可思議なのは、重力だ。
なぜ、太陽は丸いのか。
なぜ、月や地球。他の星々は、丸く形成されていて、その物体の中心にむかって重力が働き、無重力の宇宙空間の中で、塊りとなって固定されているのだろうか。
少し前まで、ビックバンという笑い話のような仮説が宇宙のはじまりを説明していると多くの人が信じていた時期があるが、今では簡単に、それは現実の世界ではありえないことは、鼻で笑い飛ばされる。
なぜなら、宇宙は無重力の空間が広がっていて、星々は、まったく別々の方向に回転していることが分かっているからだ。
爆発すれば、飛ばされたものは、一方方向に力が保存され、同じ向きで回転しながら、飛んでいく。
地球内部なら空気もあれば、重力もあるが、宇宙は無重力なのだ。
ビックバンによって一斉に、世界が爆発の勢いで広がったのなら、どうして星々の自転の回転方向は、どれもこれも違うのか
そう、星々を主観を交えず、客観的な事実だけを踏まえて見えれば、恐ろしく秩序だった世界が宇宙全体に及ぼされてしまっているのだ。
こどもが、砂場の砂で泥団子を作るように、意思ある存在によって星々は、造られ存在していることは客観的にみれば理解できるので、ガリレオもコペルニクスも神を信じたのだ。
神を信じない学者は、そんなことも見えていないエセ学者にすぎない。
学者ではない一般人が発見できないのは、仕方がない。教わることもなければ、分析するという仕事に携わっているわけでもないからだ。
ただ、学者であるのなら、自分の信じている宗教だけを信じ込むことなどエセと言われてもしかたがない。学者は、目の前の現象が見えなくなるほど感情に流され過ぎるものではないのだ。
進化論という宗教に流され過ぎて、実際の現象を観ることが出来なくなっているのだ。
微生物からみれば、こどもが造った泥団子は、まるで突然、現れた月のようなものだ。
月は、毎年、地球から少しずつ離れていることを知っているだろうか。
離れているということは、さかのぼれば、昔は、もっと近かったと想像できる。
何億年も前に、地球と月があったのなら、おかしな話になるということだ。
すでにわたしたちは、不思議な世界で生きている。宇宙では空気がないことのほうが当たり前なのに、どうして地球は、まるで天国のように人間だけではなく、多くの生き物が、これほど繁栄できるほど安定しているのだろうか。
人間がどう想おうと実際に起こっている現象をみれば、偶然では決してありえないもので満ちていて、地球は奇跡の星なのだ。
それらが、ある時、突然、地球のまわりに月がまわりはじめたという証拠になる。
いつがはじまりなのだろうか。
クリップを机の上に置いて、小学生が持っているような磁石を上から近づけてみる。
クリップは、その磁石に簡単にひきつけられ、上へと舞い上がり、磁石に貼りつく。
ということは、小学生が持っている磁石よりも重力のほうが、引き付ける力が弱いということだ。
重力はどのようにして作用しているのかは、地球内部が謎のように、今でも謎のままなのだ。
回転が重力を生むと考える人もいるが、回転は、逆に外へ物体に力を伝えてしまう。
水の入ったバケツを勢いよく、グルグルと回していれば、バケツが逆さまになっても、水は下へとこぼれないのは、外へ外へと水が回転によって力が伝えられているからだ。
外へと向かう力は、重力のように応用はできたとしても、それは明らかに重力ではない。
野球のピッチャーが、100km/h以上の速度で、腕を振るのも、ボールに力を伝えて、速度を上げるためだ。
月は、ピッチャーが投げるボールのように、地球に投げ飛ばされて、離れて地球の外側を回り続けているのか?
そんなバカな話はない。
ある時、一瞬で、星々や宇宙が、力のバランスを絶妙に保つように、配置されたということで、何億年も前の話でもないのだ。
あれもこれも、それも偶然だというのは、奇跡を超えたありえない思想なのだ。
あまりにも偶然がすぎる。
人がテーマパークの模型を作って、確認するように、偉大な意思ある存在が、1万年も経たない昔に、突然、現世の世界を作り出したことを昔のひとたちは、あらゆる宗教でも信じられてきたし、それが学問として当たり前だった。
ほとんど100%の人間が、左右対称の顔でバランスよく作られて存在してしまっている事実が、わたしたちが意味があって存在し、作られていることを証明し、宇宙の星々もまた、同じようにバランスよく美しすぎることから、偉大な意思ある存在が、世界を時間を超えているかのように一瞬で作り出したとも考えられるのだ。
哺乳類の雌の胸の筋肉が、子孫を生んだ瞬間に母乳と一瞬というほどの速度で変わるように、時間をかけずに、作り変わることもある。
世界は、不思議で満ちている。
地球が自転をして、回転しているということは、地球内部の物は、外へと投げ飛ばされてもおかしくはないはずだが、電車の中でスマホを見ながら座っている人は、イスの上で止まっているようだが、力を保存しながら移動しているように、地球の中では、人は宇宙に投げ飛ばされることなく生活している。
地に足を付けて、生活できている不思議さは、異世界にもあり、そして、さらに、なぜか下に引き付けられ、立っていられる。
ダイヤ型の太陽は、どちらの力にも作用することなく、空中に浮かび続け、夕方になると美しく赤色に変化して、世界を照らした。
老人は、太陽の光りに反射して、自然の色も変化していく様をみていた。
「美しいとは思わないか」
老人の座っている位置の反対側に、目の部分だけ白いマスクを付けた鱗のような肌を持つ知的モンスターが、椅子に座りながら頷いた。
「とても美しいですね」
「龍王がのー」
「はッ・・・!?」
「1000年前に突然、消えた龍王がシンを受け入れおった
シンを寸前のところまで壊滅させた龍王が、シンを残したまま姿を消した理由がお主は、分るかのー?」
竜人は、静かにその理由が何なのかを模索する。理由はいくつか考えられるが、老人が喜ぶ答えに変える。
「発明王セカンとエジプタスの栄光を受けた我らには、勝てないと諦めたのではないのですか?」
「くはッッ。わしゃ。しゃしゃしゃ
龍王は簡単に、わしらを排除、出来おったわ。しゃっしゃっしゃっしゃ」
「そうなのですか・・・・」
「伝説の天使セルフィは、どうじゃろうな
あやつは、龍王と同じ選択を選べるだろうかのー
西老と南老は、あやつに痛い目にあわされておる
ワグワナ法国は、わざと与えたと強がっておるようだが、腹の底では、どうだかのー」
「東老様は、どうお考えなのでしょうか
セルフィをどうなさるおつもりですか?」
「ムスよ・・・・。わしはのー
華老が気に入らん
だから、昔から西老と密かに、話を進めて、三老と渡り合ってきた
端に追いやられておる、わしらは、分が悪いからのー
龍王と和解を成立させたのも、わしの祖先様だったのよ」
「そうだったのですか・・・・?」
「帝国の龍王の意思を維持させ、裏で支援しておるのは、わしだしのー
四老の目を誤魔化すために、あの愚か者のドルスミヤ・マガローニを使っておるのよ」
「すみません・・・・龍王の意思については、うといので、その者の名前は聞いたことがありません」
「龍王の意思である一神教を帝国首都ドラゴで伝え続けておる司祭よ
こいつはバカでのー
欲でまみれて、じわっと体から膿がわいてくるように、臭い匂いを放ちよるのよ」
「つまり、だからこそ、四老が納得すると?」
老人は、楽しそうに笑う。
「しゃっしゃっしゃっしゃ。龍王の意思を汚すことについては、天下一品だからのー
あのバカは」
「セルフィは、東老様にとって有益と成りえるのでしょうか?」
「似ておる・・・・」
「・・・・」
「あやつは、龍王に似ておるのよ
不思議な事に、ミステリアスバースとして生まれたばかりのセルフィは、なぜか龍王の意思と一致した行動をとっておる
どこからあのような知識を得たのだろうかのー
伝説の天使族というものは、そのようなものなのじゃろうか・・・
だからこそ、あやつは、利用できる」
―――源は、伝説のセルフィを指示する団体、天使帝国組合のカムタック・レースに呼ばれて、子狐のフォルを肩に乗せながら、今日は、帝国首都ドラゴへと足を運んでいた。
首都ドラゴは、相も変わらず賑やかで、商店街には、世界中の品物が売られ、店番の者たちが声をあげて、品物を売り続けていた。
フォルが、源の髪の毛を、ぐわし!と咥えて、ひっぱる。
「痛ったいなー!もうー!!もっと可愛らしく、鼻でツンツンして、示すとかないの?」
フォルは、よだれを垂らしながら、鳥の串焼きをキラキラした目で見つめている。
源は、しょうがなく、露店に近づき、串焼きを買って、串をつまんで、フォルに近づける。
フォルは、横に顔を向けて、肉に噛みつくと、スライドさせて、肉を串から抜いて、もぐもぐと食べた。
フォルとは、なかなか一緒に行動できないんだから、たまにはいいか。
フォルが、叫ぶ。
「キシェーーー!!」
「何だ!?何だ!?次は、何があった?」
フォルのお気に入りの服に、串焼きのタレがついていて、それをみて発狂したようだった。
帝国民たちも、変な声を聴いて、源の方へと目を向けた。
「おいおい・・・。それぐらいで叫ぶなよ!」
源は、フォルの服の前に、左手を持っていき、リトシスを使って、タレと服を完全に分離して、綺麗にして、串の袋にはいったナプキンで手を拭く。
何事もなかったかのように、綺麗になった服をみて、フォルは、驚きながらも、落ちつきを取り戻す。
「いいか。フォル。お前をドラゴに連れてきたのは、お前に帝国の食べ物を食べさせるためじゃないぞ
これから会う人たちに、愛着を持ってもらうために、お前は、可愛らしさをかもしだして、俺の肩に乗り続けるのが仕事なんだ
品よく頼むよ
仕事中に俺の髪の毛を加えようとまたしてきたら、次は、物理障壁魔法で、カウンター喰らわすからな」
フォルは、うっすらと笑みを浮かべる。
「プププププ」
本当に分かってるのかよ・・・。
天使帝国組合があるという建物の位置をミカエルのマップに表示させ、歩いてそこに向かう。
瞬間移動で行くことも出来るが、あまり能力を組合のひとたちに見せびらかすようには、したくなかった。
すでに、まるでアイドル、偶像のように評価されているようなので、いたって普通だというところも見せたかったからだ。
それに、いつもは、外に連れ出すことも出来ていなかったフォルにも、何か食べさせてあげたかったこともある。
源の視界に映し出されたマップに、赤色で点滅している場所に到着すると、待機していたひとりが、慌てるように建物に入って報告しにいくと、次々と大勢のひとたちが出てきて、歓迎してくれた。
人々が行きかう街道でも、はばかることなく組合員のひとたちが、拍手喝采をあげる。
パチパチパチパチ
「セルフィ様。よく来てくださいました
どうぞ、お入りください」
「カムタックさん・・・凄い人数ですね
こんなに大勢いるとは思いませんでした」
「中にまだ、いますよ
皆さん、セルフィ様にお会い出来ることを心待ちにしていました」
源が、建物の中に入ると、外に簡単に出ることもできないような怪我人や病人などが、そこそこ広い部屋が狭く感じるほど、ギュウギュウ詰めになって、並べられたイスに座っていた。
外に出てきたひとたちは、部屋のうしろに立見するため移動していく。
カムタック・レースが、前に出て、告げる。
「皆さん。わたしたちの元に来てくださいました
セルフィ様です!!」
「わーーー!!」
一段と大きな声が部屋を覆いつくす。
「皆さん。盛大なご歓迎ありがとうございます
カムタック・レースさんが、わざわざレジェンドにまで遥々、来てくださり、帝国にこのような組合が作られていることを知って、遅ればせながら、来ることができました」
組合員の人たちは、さらに大きな声を上げた。
「ただ、わたしは、何でも出来る訳ではありません
治せる怪我もあれば、治せない怪我や病気もあります
あまり期待しすぎては、治せなかった時に、ショックを受けられるかもしれないので、治すことは難しいと想定しておいてください
また、治ったように思えても、数日後、異変が起こる場合があるかもしれません
その場合は、カムタック・レースさんに伝えてください
このように完全に安全というわけではないということも踏まえておいてください
では、ひとりずつ、観ていきますので、そのままお座りください」
治すというよりも、作り直すというものだから・・・。
源は、目をつぶり、部屋に押し込められるようになっている状態に向けて、手を伸ばした。
リトシスの範囲を広げて、前列の人からリトシスと愛による分析を開始した。
前列の隅に、座っていた女性は、特にこれといって問題となるものは、観測できなかったが、どうやら髪の毛はカツラで、本当の髪の毛が、まばらにしか生えてこない病気のようだった。
女性としては、猶更、悩みとなる問題だろうと源は思った。
アモラ化されたワグワナ法国の民の中に、髪の毛がとても綺麗な女性がいた。
その女性のプログラムを基にして、カツラをしている女性の頭皮を作り変える。
そして、時空空間ゲートを開いて、森から手のひらサイズの木をもぎ取り、髪の毛の無い頭皮に、生えそろえるまでの代用として、即席の髪の毛を植え込んだ。
髪の毛の数は多いが、ナノレベルで操作できる源にとっては、こどもの積み木のように単純で簡単なことだった。
祈るように、目をつぶって座っていたその女性が、頭の異変に気付いたのか、手を頭に持っていき、カツラの中に差し入れると叫んだ。
「髪の毛があるぅぅぅ!!」
ぐわしゃとカツラを頭から取ると、ショートカット程度の綺麗な髪の毛が彼女の頭に生えそろっていたことに、驚く女性。
それをみる他の人は、何のことなのか分からず、女性がとりはずしたカツラのほうに驚いていた。
後ろのほうで、「おおーー!!」という声があがった。たぶん、女性の悩みを知っている人なのだろう。
その女性の隣の老人の目は、黒目の部分が薄くなり、白色になっていた。白内障になって、視界がほとんど見えていない状態だった。
その老人のもともとの色は、緑色のようだったので、会場の中にいた緑色の目の人のプログラムを解析して、白内障になって破損している目を作り変えた。
一本もなかった髪の毛とは違って、眼球事態は、老人は残っていたので、木の炭素で目を作り変える必要もない。
「みえる・・・みえるぞーーー!!」
老人は、目から涙を流して、喜びを表した。
部屋の人々が、目が見えるようになったという分かりやすい出来事に、歓声をあげた。
源のリトシスによって次々と完治していく、人々が、喜びの声をあげる。
「奇跡だ!これこそ奇跡だ!」
「天使様!ありがとうございます!」
源は、手を戦争によって失った者や心臓による病気を持つ者など多種多様な問題をそれぞれ作り直していった。
だが、源のリトシスでもすぐには治せない者たちもいた。
そのひとりは、もともと顔が変形して生まれてきた者だった。
しかも、その者は、ガリュードというリザードマン系の知的モンスターだったので、プログラムの情報が、源は持っていなかった。
ベースとなる情報がない場合は、作り直すことができない。
「すみません・・・わたしは、リザードマンの者をみたことはありますが、解析したことがないので、あなたの顔を治すことができません・・・」
「どのような顔でもかまいません。どうか、この醜い顔を治してください!お願いします」
「うーん・・・」
『源。今まで何万という生き物の顔のデーターを分析してきました
それらのデーターを利用して、顔の形を新たに形成することは可能です
リザードマン系の皮膚の情報はありませんが、彼の他の箇所の皮膚を分析して、組み合わせることが出来るでしょう
しかし、ベースとなる表面の顔の型を指定していただかなくてはなりません』
『そうなんだ!さすが愛だ
でも、そんなにリザードマンみたことないような気がするけど・・・』
『現世で想像されたリザードマンのイメージの顔の型は、いくつも描かれているので、源が選んでみてください
その型を基準にして、可能なプログラムを形成していきます』
うーん・・・。ガリュードという種族とまったく違う顔になるだろうな・・・。彼の本来の顔ではないし、それを俺が勝手に選ぶのか・・・。
心苦しさを感じながら、愛によって表示された沢山のリザードマン系の顔の一覧が、源の視界に浮かび上がる。
源は、適当に指を指したものにした。
その顔は、どことなく品があるようにもみえたので、これでいいだろうと愛に言われるまま、変形した男の顔を形成していった。
ゲートから手鏡を出して、彼に渡して確認してもらった。
「気にいらないかな・・・?」
知的モンスターの彼は、鏡に映しだした自分の顔をみると、小刻みに体を震わせはじめた。
「ああ・・・・ああ・・・あう・・・」
うわ・・・ショック受けてる!?まずかったかのか・・・!
「す・・・素晴らしいです・・・これほど素晴らしい顔になるとは・・・」
「え!?あ・・・そうですか・・・気にいらないのかと思って焦りました・・・」
「とても、気に入りました。セルフィ様、ありがとうございます!」
「ですが、数日経って、何か異変があったら、連絡してください」
源は、ほっと胸を撫でおろした。
何か、こっちの精神が病んでしまいそうになる・・・。
源が治せないパターンとして、獣人の子供の足だった。
その子は、猫族だったが、猫族のデーターはあっても、こどものデーターが無いうえに、体と共に成長していく足を提供しなければいけない。
その足だけは、他の部分と違ってこどものままというのは、いただけない。
「ごめん・・・君の足は、僕には完全に治すことができないんだ・・・」
母親らしき女性は、涙を流しながら、こどもを抱きしめる。
「気にしないでください。セルフィ様。診ていただいただけで、ありがたく想っています」
「あのー・・・義足という物を知っていますか?」
「義足?」
「はい。彼が大人になれば、足を治すこともできるのですが、それまでは、義足を付けて歩けるようにする方法があるんです・・・。それでもよければですが・・・」
「是非!!是非、それをお与えください!」
「分かりました」
源は、ゲートからこどもの足の長さになるだけのソースを取り出して、そのソースとこどもの太もも部分をリトシスで同化させ、その下からは、ミカエルによって調整させた足を形成した。
これで、こどもの左足が成長するのと同じように、ソースが足りない量を割り増しにして、義足の右足も同じ長さに調整するようにできる。
ソースは、カーボン製の黒色で、木目のような模様がついてしまっているので、義足の外側だけは、こどもの皮膚をスキャンして、炭素で義足を覆い、まるで猫族の足のような義足に変えた。
グラファイトのソースではなく、カーボン製のソースなので、重さ的にも問題にはならないだろう。
「治った!!あああああ!!」
母親は、こどもの足がまるで、自分の子の足だと思ったらしい。
「いや・・・これは義足ですからね?見た目は、猫族の足にみえますけど・・・
歩けるかな?」
こどもは、その義足を地につけて、椅子から立ちあがった。
すこし、フラフラしているが、立ちあがったことに、母親が大喜びをする。
さらに、こどもは、前へと歩みだし、人込みの中を移動することができた。
「歩けます・・・僕・・・歩けるよ・・・お母さん」
「おおおお・・・」
母親は、涙を流す。