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225章 3つ頭

リリスは、妖精戦士たちを戦闘態勢にさせて待機させた。

妖精戦士たちの操るモンスターは、50匹。

そして、リリスは、大型犬タークと大型怪鳥フィーネル2匹、アイスドラゴンのフレーとビックボア50匹を操れる。


ビックボアたちもグラファイトとカーボンを組み合わせた鎧を装備させているので、大抵の攻撃には耐えられると思われる。


フレーもフィーネルと同じく、ミスリルという羽のように軽く、それでいて鉄と同じだけの強度がある素材で作られた鎧を装備させている。


皆が準備を整えたことを確認してから、台座に置かれた封印の珠を右手に掴んだ。


何が起こるのかを警戒していると、広場の空中に、赤い文字が浮びあがる。


《Those who resist the destiny》


「古代語?」


文字の意味も分からず、周りの変化に注視するが、特にかわったことは見受けられなかった。


そこでリリスは、その赤い文字に、手を伸ばした。

指が文字に触れると文字が反応して、消えたかと思うと離れた場所の白い壁に入り口のような穴が、2つ現れた。


1つは、20mほどの大穴。もうひとつは、2mの穴だった。


大穴からもの凄く大きな咆哮がこだました。


「グオオオオオオオオオオ!!」


その咆哮が終わったと思うともうひとつの穴から次々とモンスターが、飛び出して来た。


そのモンスターは、体はライオンで、顔は人間。そして、羽はコウモリのもので、サソリの尾を持っていた。


大きさは、2mと大きく、顔が人間のものなので、とても気味が悪い。


「キメラ・・・」


「リリス様。お気をつけください。キメラの毒は、サソリの毒を超える猛毒です

刺されてしまえば、助からないものとお考えください」


「分かったわ。みんなも注意して!フレーお願い」


アイスドラゴンのフレーは、リリスの指示とともに、大きく口を開けてキメラたちに冷たい息を顔を横に振るように吹きかける。


その息は、地面を氷が一瞬で作らせるほど冷たい冷気だった。


しかし、キメラたちは、その攻撃を床を駆けて避けたり、コウモリの羽で飛びあがり、躱した。


穴からぞろぞろとキメラがまだ出てくるので、リリスは、フレーに、意思を通わせ、その穴を凍らせて、さらに入ってこさせないように封鎖させた。


妖精戦士たちのモンスターのほとんどは、装備をつけていない。

サソリの尾を持つキメラと戦わせれば、被害が増すと考え、リリスは、右手を前に振り下ろし、装備で固められているビックボア50匹による総攻撃を開始させた。


ビックボアは、横一列になって猛突進した。


リリスたちがいるフロアに入り込んだ10匹のキメラのうち2匹は、ビックボアの突進を躱しきれずに、サイのような鎧の角に串刺しとなり、そのまま壁に押し付けられた。


身動きが出来なくなり、キメラは、動かせる尾で、反撃、抵抗しようとするが、攻撃する前に、素早い動きのタークのウィングソードで、その人面の顔は吹き飛ばされた。


空中に逃げたキメラは、フレーの冷たい息によって氷つかされ、羽を動かせなくなり、地面に落ちたところをまたビックボアの突進によって攻撃される。


体全体が氷つかされていた一匹のキメラは、その衝撃で氷と一緒に粉々になって床に肉片が散乱した。


生き残ったキメラは、2匹。


その2匹に攻撃しようとするが、そのリリスの攻撃の意思が伝わる前に、大きな穴から出てきたモンスターに全員が、驚愕した。


アイスドラゴンのフレーと比べるほどの20m級のモンスターは、山羊の体に、顔が3つ、山羊とライオン、そして、蛇の頭を持っていた。


「これは・・・」


「伝説のモンスター、キマイラです!リリス様」


妖精戦士たちが、20mの巨大なキマイラに圧倒され、ざわつく。


「無理だ・・・倒せるわけがない・・・」


リリスも、その声に納得してしまいそうになるほど、キマイラの醸し出す存在感は、異様なものだった。


A級を超えている?


そう思えるほど、リリスであってもその力を推し量ることができなかった。


フレーが、キマイラに対して、大きく叫んだ。


「グワオウオウ!!」


その威嚇に反発するように、キマイラも咆哮を上げる。


「グオオオオオオオオオオ!!」


フレーが、冷たい息をキマイラに対して、吹きかけると、キマイラの蛇の口から炎が噴き出し、お互いの攻撃が相殺される。


熱風と冷風が、まわりに吹き荒れる。


興奮しているのか、フレーが、前に進みはじめる。


それを生き残った2匹のキメラが、止めるかのように攻撃をしかけようとするが、地面の氷が、鋭い槍のような棘となって、キメラ1匹を突き刺し、動けなくさせたと思うと、フレーは、右前足でもう一匹の頭を床に叩きつけて倒しきる。


フレーの氷操アイスコントロールによって、突き刺さった氷は、さらにキメラの体の中で変化して、心臓に突き刺さり、キメラは2匹とも倒される。


キメラを相手しているフレーに対して、キマイラの山羊の顔が、ぐるぐると首をまわしはじめたと思うと、雷がほとばしり、フレーに直撃させた。


強烈な電気が全身にかけめぐり、フレーは倒れそうになるが、何とか踏みとどまった。


ポル・パラインが、大声で叫んだ。


「一斉攻撃だ!!いけーー!!」


その号令とともに、妖精戦士たちのさまざまなモンスター50匹が、一斉に、キマイラに襲いかかる。


キマイラもそれに反応するかのように、走り出した。


巨体にもかかわらず、その走りは早く、ズガンズガン!と大きな足音を立てながら、50匹のモンスターたちを弾き飛ばしながら、前へと進む。

モンスターたちは、キマイラの足にしがみつこうとするものもいたが、キマイラの巨体で素早い動きのため吹き飛ばされる。

後方から攻撃を加えようとするモンスターに対しては、蛇の頭による炎が襲い掛かった。


火抵抗が低いモンスターは、炎に焼かれて暴れ出した。


「ターク。足を狙って!」


タークは、リリスによる指示を受けて、走り抜け、ウィングソードで、キマイラの足を狙うが、キマイラは、足をあげて躱すとその足でそのままタークを後ろに蹴飛ばした。


タークは、カウンター攻撃を喰らうように直撃して後ろに吹き飛ばされるが、他のモンスターとは違い上手に立て直して、耐えきった。


セルフィに与えられた鎧がタークを守ってくれたとリリスは、ほっとする。


ビックボアによる突進攻撃をしようとするが、近づいたところで、また雷によってビックボアたちも動けなくされた。


大型怪鳥フィーネルの得意なマナは、風系だが、キマイラの蛇は、炎を吐くので、無暗に風を起こせない。

火は、風と合わさると威力を発揮して大炎となってしまうからだ。


キマイラの方向に、炎を逆流させることもできるが、キマイラ自体が、炎を使用するということは、火抵抗があると思われるので、意味がなく、むしろ、仲間の火抵抗がないものたちに被害が出てしまうかもしれないので使えない。


2匹のフィーネルは、リリスを足で掴んで、キマイラからの距離を確保して、リリスの足となる。


暴れまわるキマイラによってモンスターたちが、次々と倒されていく。


妖精戦士たちは、翻弄されるだけで、効果的な攻撃を見出せないでいた。


巨大なモンスターキマイラに、対抗しうるのは、アイスドラゴンのフレーだったが、キマイラの動きは、フレーよりも格段に速く、フレーが攻撃しようと近づいても、その攻撃を躱してしまう。


その後、蛇の頭から出る炎や山羊の雷によってジワジワとフレーにもダメージを与えていく。


キマイラの速度についていけるのは、大型犬タークや大型怪鳥フィーネルぐらいだった。


キマイラの広範囲に落とされる雷さえも、タークとフィーネルは、回避した。


「フレー。キマイラの意識をあなたに向けるように戦って」


フレーは、氷操アイスコントロールによって、キマイラの足元の床を凍り付かせ、走り回ろうとするキマイラをスリップさせた。

もたついている間に、4本脚をさらに氷つかせて、動きを鈍らせる。


それを逃さず、フィーネルが、3つの顔に、向かって矢を連射すると、その矢をキマイラは、嫌がりながら悶える。


矢によるダメージは、巨大モンスターには、ほとんどないが、顔に棘が刺さる程度の嫌がらせにはなった。


フレーとフィーネルの攻撃の後、タークが、後ろからキマイラの足をウィングソードで斬りつけた。


ウィングソードは、大木でさえも切裂けるほどの威力を持つので、キマイラの足にも深くその刃は、食い込み、切り裂いた。


「グアアアアア」


キマイラが痛みで叫ぶが、タークは、他の足にも同じように、攻撃をして、氷ごと斬って、キマイラの動きを止めた。


速度は、キマイラが上回るが、パワーは、フレーのほうが上だ。


フレーは、さらに、前足で、キマイラの傷ついた足の関節を狙って踏み抜くと、キマイラの足が逆関節に折れ曲がった。


ベギゴッ!!


「グアアアアア!」


動けなくなったキマイラは、背中の巨大な羽を羽ばたかせて、空中に逃げるように移動すると蛇の頭は、赤色に、そして、山羊の頭は黄色の透明な何かが顔全体に浮かび上がりはじめた。


「何・・・あれ・・・」


何か分からない変化を出したキマイラに、リリスは危機感を覚えて、すぐにフィーネルにタークを持たせて、変化を続けるキマイラの背中に乗せた。


タークは、変化の間に、背中の羽をウィングソードで切裂いて、地面にキマイラを落とした。


リリスは、キマイラが変化がし終わる前に倒しきらなければいけないと感じて、フレーにレッドアビリティを施し、身体能力を向上させた。

フレーは、再度、キマイラに襲い掛かる。

蛇の頭が、伸びて、フレーの首回りに巻き付くと、太いフレーの首を絞めつけ始めた。


しかし、フレーは、氷操アイスコントロールによって蛇を凍らせると、蛇はそれ以上動けなくなった。

赤色の何かのせいか、氷はすぐに溶け始めようとするが、さらに上から氷を厚くさせていく。

さらに、フレーは、大きな口を開けて、黄色い変化をはじめている山羊の首にかぶりつき、そのまま首をへし折った。

残るは、真ん中のライオンの顔だけだと攻撃しようとしたが、ライオンの頭は、もの凄い大きな咆哮をあげた。


「グオオオオオオ!!」


その咆哮が凄まじく、リリスの使役するモンスター以外は、その場で体を震わせて、動けなくなる。


フレーでさえ、後ろにのけぞり、キマイラから距離を取った。


リリスも咄嗟に、手で耳を塞ぐが、それでも振動は、体全体に響いてくる。


しかし、それがキマイラの最後の抵抗で、リリスによってレッドアビリティを発動されたタークが、キマイラの倒れた体を伝って、ライオンの首回りを素早く走り回ったとおもうと、ウィングソードで、太い首を斬り裂くと、首から大量の血が噴き出し、声も出せなくなり、ゆっくりと床に倒れ込んだ。


そして、最後に、フレーの両前足によってライオンの頭に、強烈な打撃が加えられると、ライオンの頭の骨は粉砕した。

最後にキマイラの胸元に、太い氷の棘が突き刺さし、キマイラの心臓を串刺しにすると、完全に動かなくなった。


それをみて、妖精戦士たちが、雄たけびをあげた。


「「「うおおおおおお!!」」」


「リリス様が、伝説のモンスター、キマイラを倒されたぞ!」


ポル・パラインが、リリスに近寄る。


「まさか、伝説のモンスター、キマイラさえも倒されるとは、あなたはやはり、ケイト・ピューマ・モーゼスの再来です」


「何とか倒すことができたわね。傷ついたモンスターたちにポーションを使ってあげて」


「はい。各自が、対応しておりますので、ご安心ください」


巨大モンスター、キマイラの遺体が床に倒れているが、その遺体の上に、赤色の文字が浮かび上がった。


《Person who defeated destiny》


「また、古代文字ね。また触れということかしら・・・」


「分かりません。キマイラのようなモンスターが再度、現れるなんてことがあるのでしょうか・・・」


「どうかしら・・・みんなを回復させてから試してみましょう」




リタが、一通り、怪我をしたモンスターを診終わると、リリスは、フィーネルを飛ばして、その文字に近づき、手を伸ばして、触ってみた。


すると、真っ白だったフロアーの色が、真っ赤に一瞬で変わったかと思うと、巨大な女性の顔が、天井に映し出されたと思うと、それが一気に小さくなり、空中に、豪勢な赤いドレスを纏った女性が現れた。


『わたしは、あなたたち全ての造物主、神々の頂点に君臨するアシュタロテ』

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