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224章 30階層

世界樹遺跡に妖精族の第二の誕生である秘密が隠されているかもしれないと小隊を率いて向かったリリスたちは、地下階層27階まで進んでいた。

リリスが、仲間とチャレンジした階層をすでに超えた深さだったので、リリスからしても未知の領域となっていた。


50匹のモンスターたちを妖精族が、必死にコントロールしながら、なんとかここまできたが、今戦っているハイオーガは、一匹だけでも、強敵なのに、それが集団で襲い掛かってきていた。


ハイオーガたちは、なぜか装備までつけて、それぞれが剣などの武器も所持して、さらに攻略の妨げとなっていた。


ここまで来るのに、女王であるリリスを守るかのように、妖精戦士たちは戦い続けていたが、ハイオーガの驚異に翻弄されていた。


「何て強さだ・・・」


妖精戦士のボアの突進さえも、ハイオーガは、その体で完全に受け止め、そのまま横に投げつけるとボアは、他の仲間のモンスターにぶつかりながら、転がっていった。


雪男ルーミルも、怪力をほこるモンスターだが、そのルーミルと競るほどの力を持っているハイオーガは、さらに武器を持って、ルーミルを斬りつけ撃退させる。


さすがの妖精戦士たちも困惑の色を隠せなかった。

ハイオーガの集団を目の当たりにして、絶望の色を醸しだす妖精戦士もいた。


「リリス様。わたしたちが倒せる階層は、ここが限界のようです・・・

やはり、羽化の秘密は、遺跡にはないのかもしれません

どうか、退避してください」


「分かったわ。あなたたちは、一旦、後ろに下がっててちょうだい

ここからは、わたしたちがモンスターを相手します」


「いけません!あのハイオーガたちの強さをみてください

とてもではありませんが、危険すぎます!」


リリスは、ポルに笑顔をみせながら、前に歩み出す。


「ターク!フィーネル!行くわよ」


ハイオーガの数は、27体。

50匹のモンスターを総動員してもまだ3体しか倒せていなかった。

妖精戦士のモンスターたちが、戦っている中に、大型犬タークが、もの凄い早さでその戦場の中に走り込んでいく。


タークは、セルフィの能力追加球アペンドボールによって複数の身体強化系のマナとスキルを保持していた。

さらに、人工核アルティコアは、3つ、タークの体の中に形成され、各モンスターの能力も若干受け継いでもいた。


【速度魔法】【強化魔法】【防御魔法】などを戦う前に自分に施すと、戦っているハイオーガの横を駆け抜ける。


カーボン製のタークの鎧には、ウオウルフたちと同じように、ウィングソードが取りつけられていて、ハイオーガをまるで、粘土のように、切り裂いた。


タークが、威嚇の咆哮をあげると、一斉に、ハイオーガたちが、タークに目を向け、困惑しはじめる。


タークの強さを肌で感じるほどの威圧感に無視することが出来なかった。


そこにいた妖精族やそのモンスターたちも、タークが戦闘モードになった時の変わり様に、驚く。


27体のハイオーガのうち、15体が、タークへとターゲットを変えると、タークは、そのハイオーガたちをまるで釣るかのように、仲間がいない場所へと連れて行った。

ハイオーガたちの体が、細切れになって吹き飛ぶ。


大型怪鳥フィーネルによるトルネードを組み合わせた鎌鼬エアーカッターが、タークに集中していたハイオーガたちに、直撃したのだ。


ハイオーガたちの体は、上へとぐるぐるまわるように飛ばされながら、中で、切り刻まれていった。


大型怪鳥フィーネルに、一匹のハイオーガが、飛び掛かった。

ハイオーガの剣は、フィーネルの背後から振り下ろされたが、フィーネルの体に当たる前に、剣は弾き返された。


フィーネルの持つマナの1つ空防エアーガードによる効果だった。


ハイオーガの中には、弓矢を持っている者がいたが、フィーネルやタークにいくら矢を放っても、その鎧やマナによるガードによって弾き返されるだけだった。

ハイオーガの剣が、タークの体に当たったとしても、カーボン製の鎧に防がれる。


タークには、鎧の無い顔の部分を狙い放たれたが、タークの人工核の1つであったピーシーズの硬質化によって皮膚が強化されていたので、オーガの矢は刺さることもなければ、傷1つつけられることもなかった。


タークは、マナやスキルによって強化された身体能力を使って生き残っているハイオーガたちを排除していく。


女王リリス・ピューマ・モーゼスのモンスターたちの強さを目の当たりにして、妖精戦士たちは、奮起して、自分たちも負けずに、残りのハイオーガに再度立ち向かいはじめる。


その戦いのさなかに、二つの影が現れた。


妖精戦士の中のひとりが叫ぶ。


「突然、現れたぞ!気を付けろ!」


しかし、その影は、攻撃するのではなく、妖精戦士たちに危害を加えないというジェスチャーをみせる。


「エリーゼ!それにバーボン・パスタボ?」


「リリス様。わたしたちも参加させてください

新大共和ケーシスからしても、何もせずに映像をみているだけではいられません」


エリーゼ・プルとバーボン・パスタボは、ミカエルのマナソースによって瞬間移動で、リリスのところにやってきた。


「ハイオーガを倒せばいいのですね?」


「うんうん。そうね。お願いするわ」


エリーゼ・プルは、カラカラとカーボンソードをさやから抜くと、ハイオーガに向かって走り込み、オーガの攻撃を受け流しながら、筋肉質のオーガの体をその鎧ごと真っ二つに切り裂いた。


「このふたりは、新大共和ケーシスの戦士たちです

仲間なので安心してください」


突然、現れた存在に警戒していた妖精戦士たちも、リリス女王の配下だということを知るとハイオーガに集中して、戦いはじめる。


ハイオーガの生き残りが、バーボン・パスタボに力に頼った剣さばきで、振り下ろすが、バーボン・パスタボのカーボンアックスとオーガの剣がかち合うと、そのオーガの剣が、砕け散り、そのままアックスは、オーガの顔を吹き飛ばす。


妖精戦士たちは、リリス女王のモンスターやその配下たちの戦いぶりを横目でみながら、その強さに驚きを隠せない。

ハイオーガが、まるでゴブリンのように、簡単に倒されていくからだ。


27体すべてのハイオーガを倒しきると安心したのか、床に座り込む者もいた。


「リリス様。さすがです

まさかこれほどの強さを持たれているとは、思ってもみませんでした

もうダメだとさえ思っていましたが、それを覆されるとは・・・」


「彼女たちは、新大共和ケーシスの戦士長をしている者たちです

まだまだ、本気を出していないはずです

タークたちもA級に匹敵するほどの強さ、それ以上の強さがあるとわたしは思っています」


「わたしの目からすれば、大型犬や大型怪鳥にしかみえなかったのですが、そうではないのですね」


「いえ、ポルの言うようにタークやフィーネルは、大型犬と大型怪鳥ですよ

ただ、わたしたちと一緒に、戦って常に鍛えていますから、あれぐらい強くなれたのですね」


「個々のモンスターには、限界があるはずですが・・・」


ポルは、自分たちが持っている常識以上の力を持つリリスのモンスターたちに疑問を抱きながらも、それ以上、問いただすことはしなかった。


「ポル。遺跡は、10階単位で、封印の珠などが設置されていたり、何かがある気がするの

今まで遺跡に入った時も、10階や20階には、何かがありました

ですから、なんとか30階に行ってみたいのです」


「わたしたち妖精戦士たちが、役に立てるかは分かりませんが、リリス様がそうおっしゃるのであれば、信じるしかありません

ですが、リリス様が危険だと思われた時は、わたしたちの命を盾にして、避難してください」


「ありがとう。ポル。進みましょう」



リリスたちは、エリーゼ・プルとバーボン・パスタボの参加によって30階を目指すことにした。

28階、29階とハイオーガと変わらないほどのモンスターの襲撃にあいながらも、それを粉砕して、30階へと辿り着いた。


階段の先を降りると、たちまち、30階の遺跡の作りが変わった。


一歩踏み込んだだけなのに、別の場所に転移したかのような真っ白で、巨大な空間の場所に変わる。


逆に階段を一歩上がると、また普通の遺跡に戻るという不可思議な現象に、皆、驚いた。


「何?この場所・・・。あれ・・・エリーゼたちは?」


リリスは、すぐそばに一緒に歩いていたはずのエリーゼ・プルとバーボン・パスタボを探すが見当たらない。ついてきているのは、妖精戦士たちとそのモンスターだけだった。


リリスは、29階に向かう階段に上るとエリーゼ・プルとバーボン・パスタボが、そこにいた。


「どうしたの?エリーゼ」


「いえ、階段を降りたのですが、皆さんが突然消えて、また戻って来たのです」


「そうなの?わたしたちも、降りたら、あなたたち二人がいなくなっていたから、戻って来たのよ」


「もう一度、行ってみましょう」


3人が同時に、地下30階に降りるが、またなぜか、エリーゼ・プルとバーボン・パスタボだけが、姿を消したので、また戻る。


「分かりませんが、どうやら妖精族だけしか入れないようにされているのではないでしょうか?」


「そういうことなのかしら・・・確かに、妖精戦士たちは、全員同じ場所にいるわ・・・」


「わたしたち人間は、30階層では、手助けできないということかもしれませんね」


「ということは・・・。分かったわ。エリーゼとバーボン・パスタボは、このまま、新大共和ケーシスに戻ってちょうだい

わたしたちで何とかしてみる」


「それは危険ではないでしょうか?わたしたちが無理なら、アイスドラゴンのフレーだけでもここに連れてこれませんか?」


「フレーは、大きすぎて、マナソースのマナを大量に使ってしまうのよ・・・」


「では、セルフィ様に、頼まれてはどうでしょうか?」


「そうね・・・。何とか、セルフィの力無しで、最後までやってみたかったけど、安全には変えられないし・・・」


『リリスよ。セルフィに頼みたいことがあるんだけど、いいかしら?』


『もちろんだよ。リリス。俺も手伝いたいと思ってた。そっちに行けばいいのかい?』


『いえ、今、わたしたちは、巨大樹遺跡の地下30階層に挑もうと思っていたんだけど、エリーゼ・プルとバーボン・パスタボは、そこには入れないみたいで、妖精族しか挑めないようなの

だから、セルフィもたぶん、入れないと思う』


『種族別のクエストになってるってこと?』


『クエスト?』


『いや、ごめん。そうすると、俺も無理そうだね

俺に何かできることがあるの?』


『どうやら、妖精族のモンスターは、一緒に入れるみたいだから、フレーもここに呼びたいのよ』


『ああ。そういうことね

待ってて、すぐに時空空間ゲートでフレーを送るよ』


『ありがとう。セルフィ』


源は、リリスと一緒にいるソースの座標を特定して、そこに、時空空間ゲートを開いて、アイスドラゴンのフレーを送り届けた。ついでに、ビックボア50匹も転移させた。


「フレー。あなたの力が必要よ。お願いね」


「グオオウオウ」


リリスは、フレーを連れて30階層に降りると、妖精戦士たちが、また驚きの声をあげた。


「ドラゴン!!」


「大丈夫よ。このアイスドラゴンは、わたしのモンスターなの

どうやら、妖精族以外は、ここには入れないみたいだから、アイスドラゴンを戦力として連れてきたわ」


「そういうことですか・・・これほど立派なドラゴンは、みたことありません

わたしがみたドラゴンは、ワイバーンまでです」


「フレーという名前よ。フレーは、強いから助けになってくれると思うわ」


30階層の何もないかのような巨大な空間の中心だと思われるところに、白い台の上に、封印の珠が、置かれていた。


「ポル。わたしが言っていたように、たぶん、あの封印の珠を動かすと何か起こると思うわ

わたしが知っているのは、強いボス級モンスターと戦わなければいけない状態にされるの

すべてのモンスターを倒さなければ、そこから出ることができない状態にされるのよ」


「もし、そうでしたら、危険です

一旦、わたしたち妖精戦士だけで、試してみてもよろしいですか?

それまで、リリス様たちは、29階の階段前に待機していてください」


「いえ、それはよしたほうがいいわ

戦力を分散しても、被害が増えるだけよ」


「ですが・・・」


「ここが第二の誕生の秘密の場所なのか分からないけど、妖精族しか入れないというのなら、もしかしら、本当にここに秘密があるのかもしれないわ

ケイト・ピューマ・モーゼスも、ここに来たんじゃないかしら

ケイト・ピューマ・モーゼスの伝説になるほどの強さのヒントを得られるかもかもしれない

ケイトの意思を受け継ぐわたしが、これを避けて通ることはできません

妖精戦士たちこそ、わたしを信じて、29階で待機していてもらいたいぐらいです」


「さすがにそれは出来ません

行くと言われるのなら、わたしちも一緒です!」


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