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223章 世界樹遺跡

世界樹とも言われる巨大樹の真下にある妖精の里に到着したリリスとリタは、羽化の秘密が巨大樹遺跡にあるとふんで、地下階層に行くことにした。


妖精族戦士ポル・パラインとライム・パライン。そして、ジョゼフ・プリューレも含めて、10人の護衛を連れていく。


各自が、それぞれ5匹のモンスターたちを従えているので、小隊にも匹敵する戦力となる。


長老デネス・プッシーマに見送られながら、妖精の里を出て、ポルたちの案内で、遺跡へと向かった。


遺跡の入り口は、巨大樹の根本にあり、まるで巨大樹に入っていくかのように、下へと階段が続いていた。


「巨大樹自体が、遺跡になってるの?」


ポル・パラインが答える。


「地下なので、どのような造りになっているのかは、分かりませんが、巨大樹の中に入っていくようになっていますね

中は、他の遺跡とそれほど変わりません」


「モンスターは、どんなのがいるの?」


「その階層によって違いますが、動物系モンスターが、多いように思えます

わたしは10階までしか行ったことがありませんので、その先は、分かりません」


遺跡の中に入ると、リリスの知っている遺跡とは、作りが違っていた。

リリスが知っている遺跡よりも巨大な通路で、壁一面に、ツタが生えていて、花も咲いている。遺跡全体が、生命力に満ちている。

シャウア森林の遺跡は、ツタが生え広がっているのが普通だということかとポルが言った言葉の意味を連想する。


両手を広げた程度の大きさのプリレラという白くてうっすらと透明のような体を持っているモンスターが、体全体から光を放って、暗闇の遺跡の中を照らし続ける。

プリレラは、パタパタと羽を動かして、飛びながら、一向についていく。

最後尾には、ポルの弟ライム・パラインがリタを守るように配置について、進む。

リタは、ユニコーンのテルーに乗ってついてきていた。

妖精戦士は10人だが、各自が5匹とプリレラがいるので、ぞろぞろとモンスターが列になって並んでいる状態だ。


リリスは、気配を感じた。


「何かいるわね。ポル」


「はい。一階層からは低俗モンスターが生まれます

10階ほどまでは、わたしたちにお任せください

おい。行け」


ポルが、指示をだすと、妖精戦士のひとりが、ルーミルという白い雪男のモンスターとともに、先に進み戦いをはじめる。


コヨーテのような小さい動物の集団にルーミルは、ヅカヅカと入り込んで蹴散らしていく。


「キャウン!」という悲鳴を上げながら、モンスターは、倒されていく。


コボルトよりも弱く、野良犬に毛が生えたほどの強さのモンスターに遅れを取ることなく、一匹のルーミルだけで対処していく。


ルーミルに襲い掛かろうとするが、それを大振りの拳による打撃で殴り倒す。

殴られたモンスターは、その場所は、若干、白く凍っているようだ。



「ルーミルを飼いならしているのは、さすがね」


「今回、選ばれた10人は、戦士の中でも特に優秀な者たちですから、ご安心ください」


「そうね。でも、どれだけの深い階層に行けばいいのかも分かっていないから危険は避けられないわ

注意してね」


「はい。女王様」


一階の遺跡の奥へと進むと巨大な階段が地下2階へと続いていた。

その階段を下り、先にあったのは、巨大な薔薇のような花だった。


「これが、ピラチ?」


「はい。そうです。わたしや弟は、人工ピラチから生まれましたが、この遺跡から生まれるミステリアスボーンの妖精族は、自然ピラチから生まれます」


赤や青、黄色などの色とりどりのピラチが遺跡内に大量に生えている。


ある一画には、小屋が建てられていて、そこに妖精族の女性たちが、ミステリアスボーンとして生まれる者たちのために待機していた。


「女王様。丁度、ひとり生まれるようです」


ポルが指を指しながら、ひとつのピラチの変化を教える。


そのピラチは、みるみると色あせていき、薔薇の葉が枯れて崩れていくように、落ちていく。

そして、その中から何かが床に散らばった葉の上に、ぽとりと落ちた。


「ダメです。失敗ですね」


そのミステリアスボーンは、人間とは思えない形をしていて、ピクピクと動くことしか出来ず、さらに酸素を吸うこともできないのか、すぐに息をひきとった。


「残念ね・・・」


「はい。産婆によって丁重に葬られます。他の遺跡よりもそれがいいところです」


「他の階層にも、ピラチはあるんじゃないの?」


「はい。5階層にも、ピラチがありますが、さすがにそこまで、産婆を連れて行くのは、危険なので、人がいるのは、2階までです」


「そうなのね」


リリスは、ピラチを愛おしそうに手で撫でる。


「ありがとう。わたしもこのように生まれてきたのだと分かりました。先に進みましょう」


5階に進むまでに、さまざまな低俗モンスターが現れるが、ここまでは、慣れたもののようで、妖精戦士たちが、それらを簡単に排除していく。


「ここから先は、知的ランクDへと移行していきます

ご注意ください」


「分かったわ」


6階から現れたのは、オークだった。


地上にいるオークとは違って装備こそ貧弱だが、石のこん棒のような武器を持って、威嚇してきた。


「グオオオオォ!!」


ポルが、指示をサインで出すと、妖精戦士が、ライオンに羽が生えたラーガンというモンスターと出て行き、オークに襲いかかる。


オークは、ラーガンの頭めがけて、武器を振り下ろすが、ラーガンは、毛むくじゃらな頭を突き出すと、オークの石の武器が砕けた。


壊れた武器をみて、オークは後ろずさる。


次の瞬間、ラーガンは、オークの首元めがけて、鋭い牙で噛みつくと、ボグンという音がしたと思うと、オーガは体から力が失ったかのように、だらりと動かなくなった。


ラーガンは、オークを横に投げ捨てる。


さらに進むと、次は、集団のオークが現れ、妖精族3人が、それらを対処する。

それぞれの妖精戦士のモンスター15匹によって、あえなくオークは、沈黙していく。


こちらの被害は、まったくない。

妖精族たちが使役しているモンスターたちの質の高さが分かる。


10階層へと辿り着くと、妖精戦士たちの雰囲気が変わった。


「わたしたちが知る妖精族の中には、15階層まで行った者がいますが、わたしたちが来たことがあるのは、ここまです

ここからは、未知の世界とも言えます

危機に直面した際は、素早くリタ様と共に、安全な階層にまで避難してください」


「逃げる時は、みんな一緒よ

犠牲者は出したくないの」


「リリス様の安全が第一です

それだけは、ゆずれません

どうかお願いします」


真剣なまなざしを向けて来るポル・パラインをみて、リリスはうなずく。


「分かったわ。でも、何とかみんなで生還しましょう」


「はい」


プリレラが、光を放ちながら、先に進み。妖精戦士は、ねずみをプリレラとともに、遺跡内に広げて、先に何があるのかを確認させるために向かわせる。


1kmも進むと、プリレラとねずみたちの生命反応が消えたことに、全員が気づく。


一匹のねずみが、傷つきながら、戻って来て、報告する。


奥に生え広がっていた木々に攻撃されたということだ。


「たぶん、トレントね」


「そうかもしれませんね」


皆がそう考えているように、トレントだと思われる木々が、沈黙しながら、あたかもただの木のように立ち並んでいた。


このまま、その通路を抜けないということは出来ないので、進むしかない。


ひとりの妖精戦士が、前に出ると、2mほどの大トカゲのモンスター、サラマンダー2匹を最前列につれていくと、サラマンダーは、口から炎を抜き出し、木々に火を放つと、動こうとしていなかったトレントが暴れ出す。


「ゴアアアバアア」


内部に張り巡らされた根が、攻撃をはじめた。


仲間のモンスターたちの足や体に、根がはりついて、動けなくしたかと思うと、そのまま絞め殺そうとする。


妖精戦士たちは、腰に帯びた剣を抜いて、それらの根を斬り落としてモンスターたちを解放し、モンスターたちも、角や牙、爪などで根を払いのける。


その間も、サラマンダーの炎の攻撃は続き、トレントを焼き払っていく。


このままでは、まずいと考えたのか、トレントは、火にあぶられながらも、突進してきた。


前に出てきたのは、妖精戦士が従えるサイクロプス。

サイクロプスは、鉄のハンマーを横に振り込むと炎に包まれながら、突進してくるトレントを粉砕していった。


大量のトレントが、サイクロプスに襲い掛かり、巨大な1つの目に木を差し込むとサイクロプスが、目を押さえて、叫び始める。


リリスのモンスター、フィーネルが、動いた。


空中を飛んで、羽をバタつかせると、以前とは比較にならないトルネードを発生させたかと思うと、その風にあおられ、サラマンダーの炎が急激に威力を増して、トレントを焼き払っていく。


トルネードによって、トレントは、飛ばされそうになるのを根を地面にはって、ふんばるので、動きを封じることになる。

動くこともできないまま、炎に焼かれていく。


その様子をみて、妖精戦士たちが声をあげる。

「おおおーー!!」


「さすが女王様です。素晴らしいモンスターを使役されておられますね」


「ありがとう」


リタが、ユニコーンのテルーの背から降りて、サイクロプルの目にポーションをふりかけて、治療を行うと目はすぐに治って、サイクロプスも冷静を取り戻す。


サイクロプスは、燃えながらも、まだ残っているトレントをハンマーで粉砕していった。


「確かに、10階層からは、油断できないわね」


「はい。その通りです。わたしたち選ばれた妖精戦士であっても手を焼きますからね」


10階層の奥深くに、さらなる広い部屋へと到着すると、その中心部分に、石の台座があり、そこには、封印の珠が置かれていた。


リリスは、今回は、レベル上げや封印の珠のための探検ではないので、封印の珠をどうしようかと悩む。


リリスが、悩んでいる間に、妖精族のひとりが、平然とした顔で、封印の珠に手を伸ばして、手に取った。


「なっ!!なにしてるのよぉー!!」


リリスのその声を聴いて、妖精戦士たちが、驚いた顔で振り向く。


ポルが、リリスに聞く。


「どうされたのですか?リリス様」


「何の許可もなく、封印の珠を取るなんて・・・何が出てくるか分からないわよ!?」


「出てくる?」


「封印の珠を触ると強いモンスターが出てくるでしょ?」


「こちらの遺跡では、そういうことはありません」


「え!?そうなの?」


「はい。遺跡内のモンスターを一掃すれば、封印の珠を手に入れることができます」


「遺跡によって違うのかしら・・・」


「新大共和ケーシス内の遺跡では、そのようなものなのですか?」


「わたしが入った遺跡は、そうだったわね」


「分かりました」


ポルは、妖精戦士たちに命令した。


「これからは、リリス様の許可があるまで、封印の珠には、触ることを禁止する」


「了解です!」


戦士たちは、納得してくれたようだ。

しかし、ここの封印の珠は、すでに手に入れたので、それをリリスに献上するために、渡された。



こういう場合は、誰に使用させるのか悩ましい。

戦士ひとりに渡したとしても、ひいきにも取られ兼ねないので、自分が使うことにした。


リリスは、封印の珠を両手に持って、息を吹きかけると、封印の珠は、手の中で、消えていき、リリスに新しい能力を与えた。


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