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216章 余波

祭りは、大盛況だ。

最初に食事無料につられて来てくれた民たちが、国を行き来しながら、宣伝してくれたことで、二日目、三日目で合わせて、5万人もの民が足を運んでくれた。


見た事もない物や食べ物が盛りだくさんあり、あらゆる芸術なども自由に行える新大共和ケーシスやレジェンドをみて、イメージを180度変えてくれた人もいた。

実際にみてみなければ、本当のところでは理解できない。

一見は百閒に如かずだということだろう。


ワグワナ法国だけではなく、トリアティー師団国の女王ゴルバフ・ダレーシアも、祭りのことを聞きつけ民と一緒に来てくれた。

ワグワナ法国の民のためにもと祭りを解放していたので、トリアティー師団国の民の心情は、どうなのだろうと心配したが、彼らは卑屈になったりしない気質の国民のようだ。

ワグワナ法国の民も、敗戦した国の民なので、大きな顔をしないし、ましてや獣人をけなすこともしなかった。

獣人たちが、聞いていた情報と違いとてもまともだったことに、驚いていた様子だった。


ユダ村やヨシュア村からもクリスチャンたちがやって来てくれた。


ワグワナ法国は、まだどんな攻撃が待ち受けているのか分からないので、ワグワナ法国の祭りなどは、今年は、行わないつもりだった。

防衛の完備が、整っているレジェンドと新大共和ケーシスだったから、行えたことだ。


戦力を3分割して、防衛を任せたので、兵士たちもそれぞれ二日は、祭りを楽しむことができた。


露店やお神輿などの行事も楽しんでくれたが、三日間、夜に披露した大花火大会で、その日の祭りをしめくくった。


夜の祭りは、いつもの明るい街灯は、すべて消して、安全のために電気ではあるが、提燈ちょうちんを各所に設置して、風流な雰囲気を醸し出してくれていた。

いつもよりも、暗い首都ハーモニーの空に何万発と放たれる花火に、人々は、驚きながら、楽しんでくれた。

真っ暗な夜空に、パッと花開く花火は、バラバラに祭りを楽しんでいた人々を一斉に、上に向けさせ、その見ている瞬間は、過去のいざこざを忘れさせてくれた。


花火は、新大共和ケーシスの壁の外から放たれていた。

何万人にも及ぶ、人々が、巨大な新大共和ケーシスの壁の上から花火をみようと群衆となっていた。

花火大会の最後は、広大な壁の外の土地に、1万匹のウオウルフたちが、そこそこ大きな棒筒の花火を口に咥えて、暗い平原を走り回った。

その優れた身体能力によって、高く飛んだり、跳ねたり、クルクルとまわっては、一匹が自由自在に動くので、そのランダムな動きが、1万も集まり、新大共和ケーシスを囲むように広がる光は、何とも言えない華やかさをみせてくれた。

棒筒の花火は、時間とともに、5色の色へと変化する。


動きはまったくバラバラだが、時間とともに一斉に、赤から白へ、白から青へ、青から黄色へと変わるたびに、色が変わったという声が観客から聴こえてきた。


源は、最後の花火大会の夜に、スミスとソロに話かけた。


「祭りは、楽しんでもらえたかな?」


「素晴らしい祭りです

セルフィさん

いえ・・・セルフィ様」


「セルフィさんでも、いいよ。セルフィって呼び捨てにしてくれてもいい

本当は、様ってつけられるのは、あまり好きじゃないんだ」


「そうですか。ですが、セルフィ様と呼ばせてもらいます

ご迷惑をかけたわたしが、馴れ馴れしく呼ぶのも問題でしょうから・・・」


スミスは、自分の置かれている状況を把握している様子だった。

しっかりしている。


「スミスとソロには、話しておかなければいけないことがあるんだ」


ふたりは、耳を傾ける。


「何でしょうか?セルフィ様」


「モンスター化していたスミスを人間寄りに戻したことを帝国にも、報告してしまったんだ

君の状況を考慮せずに、そのまま報告してしまったから、帝国は、君に事情聴取したいと言ってきた」


スミスは、顔を少しうつむかせて考え込む。


「そうですか・・・そうですよね

僕はアモラのように暴れていたのですから・・・。その間にどれだけの人を殺めたのか分かりません・・・

母を目の前で殺されて、怒りのあまり、そこから意識がないのです

帝国に調べてもらったほうがいいですよね

僕は正直に、すべてを話します」


「そうか・・・

でも、マーレ・ソーシャスを君は、師匠と呼ぶことがあるけど、それは言わないようにしてほしい

あいつは、君を利用した

君が師匠として尊敬していることがあったとしても、それを利用されたことには変わりがないからね

帝国側は、アモラと同様に、君が一方的に、マーレ・ソーシャスに近づかれ、何かされたということになっている

君のお父さんが、ソロモン家のことを考えて、そういう話にしてあるようだ」


「ですが、実際に、マナのことなどを教えてもらったことは、正直に話さないといけないのではないでしょうか」


「うん。教えてもらったことはいいとして、ただ、マーレ・ソーシャスのことを師匠と呼ぶことはせず、奴のことは、マーレ・ソーシャスと呼び捨てにして話してくれってことだね

師匠と呼ぶのを聞いたら、向こう側の思想が君にあると思われかねないからね」


「分かりました。注意しておきます」


源は、ソロに顔を向けた。


「ソロ・・・すまない。やっと兄弟が一緒にいられるようになったのに、スミスを連れて行かなければいけなくなった・・・

分かってくれるかな?」


ソロは、まわりに顔をキョロキョロさせて、右手を動かしながら、笑顔で頷いてくれた。



三日目、最後の花火大会が、終わると、ミカエルが、祭り組合があらかじめ決めておいたスピーチをアナウンスにして流した。


「皆様。レジェンド、そして、大共和ケーシスの祭りにお越しいただき、ありがとうございました

本日、これより、祭りは終了とさせていただきます

祭りは、毎年、行われる予定ですので、また来年も来てくださることを願っております

帰りの時空空間ゲートのことですが、ゲートは、明日の昼まで、出ております

その後は、消えてしまうので、それまでに、戻られることをお勧めします


宿は、無料で寝泊まりは、出来るようになっていますが、明日からは、他国の方たちは、無料で生活することは出来なくなりますので、よろしくお願いします

万が一、時間を超えて、帰れなくなった際は、わたしミカエルに報告してください

祭り全体で、確認された問題行動は、11%しかなく、89%も正常に祭りは進行することができました

皆様、ありがとうございました」



最後は、ミカエルっぽい内容に聞こえたな・・・。


11%は、なんだったのだろうと思うが、スルーしておこう。


俺の目には、問題はなかった・・・ということで・・・。



―――祭りが完全に終わり、昼の時間になって、スミスをサネル・カパ・デーレピュース上院議員の元に連れて行き、ソロを大切にしてくれている方だとスミスに説明した

その後は、統治作業を続けるために、ワグワナ法国へと戻った。


すると、街の広場に、数千人もの人盛りが、出来ていた。


「セルフィ様に会わせてくれ」


「あれは一体何なんだ?」



源は、何だろうと思い、広場に姿をみせた。


町の防衛をしていた兵士たちが、困ったような顔で報告する。


「セルフィ様。祭りに参加したひとたちが、みたこともない物などをみて、それらをワグワナ法国にも提供してほしいと殺到しているのです」


「あー・・・。そういうことですか・・・」


「皆さん。聞いてください

新大共和ケーシスとレジェンドで使われている物は、基本的には、他国には持ち出し禁止となっています

ですが、ワグワナ法国が同じように、人権を理解して受け入れてくれるようになった際には、いくつかは、解禁しようと思っています

それまでは、残念ですが、祭りで興味を示したものは、保留ということにしておいてください」


「いつまで、保留ということになるのでしょうか?バイクというものがほしいのです

いくらでも出しますので、早目にお願いします」


「わたしは、自転車がほしい!」


「電気を!電気をワグワナ法国にも、もたらしてください!!」


『ミカエル。もしかして、11%の問題行為っていうのは、このことだったのか?』


『はい。セルフィ様。8%の者たちが、新大共和ケーシスのものを国外に持ち出そうとしていたので、警告を何度かいたしました』


源は、困った顔で、落ち着くようにジェスチャーする。


「落ち着いてください

いつまで、保留になるかは、わたしにも分かりません

その目安は、ワグワナ法国の民の比率が、クリスチャンが多くなった時としか言えません

他国で高く売られたりと、勝手に利益とされてしまっては、問題にもなるからです

早目に解禁できるかどうかは、皆さんが、毎週教会に通ってくださるかどうかで、変わるはずです

ただ、言っておきますが、私利私欲に走る人は、クリスチャンから程遠いと思ってください

ミカエルにそう判断された者に、新しいものは、与えたくないというのが、わたしの本音ですし、レジェンドの決定事項です」


「見よう見まねで、あれらの料理を作ることもゆるされないのですか?」


「ああ。それなら、特に問題はありません

試行錯誤して、作ってみてください

皆さんが持っている良い才能を抑圧しようとは思っていません

技術などは、こちらからは、今は教えられませんが、試して、新しい料理を生み出してみてください」



色々な、質問をされたが、何とか帰ってもらった。

特にしつこかったのは、商人で、金になりそうに見える物が多かったのだろう。


とっとと帰ってもらった。


夕方には、ゴルバフ・ダレーシア女王からもソースを通じて連絡が入った。


『セルフィ殿

動物専用、美容院をトリアティー師団国でも、開店してくれないだろうか?

あの毛繕いは、最高だった・・・』


女王様まで・・・


『今のところ、クリスチャンの国や村になっていない他国には、レジェンドなどのアイディアや情報は、広めようとは考えていないのです

ですが、美容院なら、トリアティー師団国でも作れるんじゃないですか?』


『勝手に作ってもいいのか?』


『レジェンドや新大共和ケーシスは、お金を利用していませんから、利益を考える必要はないので、知的財産権などの規制はゆるいんですよ

危険になったり、問題になるような技術や情報に関しては、硬く規制しますが、トリアティー師団国でも行えるものであれば、わたしたちは、何も文句はいいませんよ』


『さすがは、セルフィ殿

広い寛容な心をお持ちだ』


『美容院は、いいですけど、是非、トリアティー師団国には、わたしたちの農法を採用してもらえないかと考えているんです

ワグワナ法国も、かなり農業が発達して、収穫が多くありましたが、そのワグワナ法国よりもさらに優れた農法技術があるんです』


『それは誠か!?』


『はい。これについては、早目に世界中に無償で広げたいと思っています

生きていくための食べ物があるのか、それともないのかでは、心の安定は、変わってきますからね

衣食住の中でも、食はとくに大切ですからね』


『では、早速、美容院と農業の特使を選び出して、派遣させることにしよう』


『美容院は、解禁するとは言っていませんよ・・・・』


ゴルバフ・ダレーシアは、残念そうに言った。

『心が狭いのー』


・・・・。


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