210章 情報開示
【210章 情報開示】
ワグワナ法国の政治を独裁的に裏で支配していたバッカス・トワ・オルドールは、地面に顔をむけて項垂れていた。
シンは、兵士どころか、アモラ化を民にまで感染を広げて、まるで道具のようにワグワナ法国を利用したからだ。
表向きだとしても民主の正義を掲げていただけに、非人道的な行為に及び、10年間仕え続けた自分たちを助けだすこともしないシンに疑問の念を抱く。
トリアティー師団国へと侵攻してからシンとの連絡が途絶えたままだった。
アモラ感染は、民に深い傷跡を残した。
首都ダリンでは、肉片となったアモラに家族が囲んで涙を流している光景もあった。
家族の誰かがアモラとなってしまい討伐されたのだろう。
「生き残っているアモラはいないですか?」
ルピリート将軍は、顔を横に振る。
「兵士たちに危険を強いるわけにもいきませんでした。また、首都ダリンの民のためにも、早く感染という驚異を無くし、被害者を出さないためにも、討伐することに専念させましたので、生き残ってはいません
セルフィ様。ワグワナ法国をどのように統治再生していくかの権限は、あなたに委ねられています
皇帝陛下は、あなたがどのようにワグワナ法国を再生させていくのか、我々帝国軍人にみてもらいたいと望まれています
ですから、帝国軍を存分にセルフィ様の采配で動かしてください」
「統治については前々から聞いていましたが、帝国軍も残ってもらえるのですね」
「はい。教会などを設置し、龍王の意思を民に伝え、正しくマインドコントロールしていく術を我々も学べと命令が下っています」
「どのように民を統治していくべきなのかも、聖書は教えているので、帝国軍のみなさんも毎週日曜日は、教会にいって学ぶようにしてください
占領した民として虐げるような統治をされては困るからです
はじめは、義務的に教会にいってもらうことになりますが、自然と聖書の神とその愛と正義を認め信仰心が芽生えてもらえると嬉しいと思います」
「分かりました
軍人たちには、徹底させておきます
そして、この政治家たちと捕虜は、どうすればいいでしょうか?」
源は、バッカス・トワ・オルドールなどの政治家を見渡した。
「バッカス議員
あなたたちの議員資格は、剥奪します
不正選挙による偽の任命をされた政治家たちですから、政治家になる権利は、元々あなたたちにはないからです
あなたたちが行ってきた不正行為の多くは、ワグワナ法国の民の前に白日の下となることでしょう
我々は、ワグワナ法国の王位継承権第2位を持っておられるガマル・ルィール・チェクホン殿下と共に、平和主義だったワグワナ法国へと復古させていくつもりです
あなたがたは、奴隷とされますが、さらに何かしらの企てを働いたのなら、あなたがたの身をトリアティー師団国に送り届けることとなるでしょう
不本意ではありますが、あなたがたへのトリアティー師団国の怒りの防波堤と我々がなっていることをご理解ください
あなたがたは、今後、裁判にかけられ、どのような処遇になるのかが決められることでしょう
何か言いたいことはありますか?」
「王族貴族を復古させまた、独裁政治に変えて、民をないがしろにするつもりか?」
「あなたたちは、民主と叫びながら、実際にやっていることは、独裁行為でした
気に入らない者がいれば、社会的にも弾圧し、さらには暗殺を繰り返して、他国の民を虐殺したのです
選挙を行い民に選ばせていると錯覚させながら、統計するのはあなたたちの域のかかった者たちなので、いくらでも数字を書き換えられる
王族貴族たちは、顔をさらけだして、上に立って政をしなければいけない
誰が上にいるのかが明確なら、その権力者がもし、民をないがしろにした政治を行えば、民から反撃されやすいので、民をないがしろに簡単にはできないのです
実際にそのように振舞っていたボルフ王国は、自分たちの行ってきたことで簡単に滅びたのです
ですが、あなたたちは、まるで民と同じ権利者のように惑わしながら、隠れて民をないがしろにする行為を続けてきたのです
本当の民のための政治を行うのなら、明確に誰が統治しているのかを示すべきなのですね」
「すべての責任は、我々にあるとされるわけか・・・」
「あなたたちが、だたの操り人形のような者たちだったことは、考慮します
ですが、あなたたちが組織の仲間であり、それを理解しながら、利得だけに走っていたことがゆるされるわけではありません
心から悔い改め、1からやり直すように今後は、生きていくことをお勧めします」
バッカス・トワ・オルドールは、小さくつぶやいた。
「こうする以外の道はなかったのだ・・・」
『愛。バッカス議員の今の言葉は、本心か?』
『90%の確率で、真意だと認められます。源』
彼らにも心からの誠実さが少しでもあるのなら、シンの情報を獲られるかもしれない。
源は、通信で、帝国連合軍すべての者たちに通達した。
《皆さん。我々、帝国連合軍は、ワグワナ法国に勝利しました
ですが、油断はできません
この戦争に出てくると思われていた暗殺集団などの介入は未だにないので、いつ彼らが攻撃してくるかもわかりません
そして、井戸水や食べ物も、かならず30分以上、間をあけてから口にするように、再度、徹底させてください
またアモラ化されては、統治にも支障をきたします
まずは、安全確保を最優先させます
ワグワナ法国のすべての民に、ガマル・ルィール・チェクホン殿下の声が届くようにしますので、準備が整い次第、現状についてのご説明をお願いします。殿下》
《セルフィ殿。あい、分かった》
源は、ワグワナ法国の書籍倉庫に赴いた。
そして、リトシスを発動させて、すべての情報をプログラム化して、愛とミカエルへと流し込む。
大量のデーターを数分で取り入れて、ワグワナ法国のどんな小さな村であっても見逃すことなく、すべての場所を把握した。
そして、近場のソースの場所に瞬間移動して、そこから、最高速度マッハ12で、村々へと到着すると、ソースを大量にばら撒いていく。
それを繰り返し、2時間ほどで、ワグワナ法国すべての村々にソースを行きわたらせた。
首都ダリンの民たちは、中央広場に集まるように伝えられ、こどもも含め、多くの民が、集まった。
民たちは、どんなことをされるのかと脅えていた。
自分たちは獣人に食べられるのか、それとも虐殺が行われるのかとビクビクしていた。
中には、恐怖のあまり、首都から逃げて行こうとする者たちもいて、帝国連合軍兵士たちが、危害は加えないと説明していく。
首都ダリン、そしてワグワナ法国のすべての村々、すべての民にガマル・ルィール・チェクホン殿下の声が届くように、ソースを配備すると、源は、ガマル・ルィール・チェクホン殿下とともに、中央広場の前に姿を現した。
ふたりは、ゆっくりと宙に浮きはじめる。
「ワグワナ法国のすべての民よ
わたしは、死んだとされていたが、命を救われた本物のガマル・ルィール・チェクホンだ
殺されそうになり隠れたのは、わたしだけではない」
時空空間ゲートから現れたのは、政治家リビアン・スザージ議員と平和主義レジスタンスのリーダー、ザンサニ・マールが現れ、セルフィのように宙に浮いたまま、健全であることを証明した。
「リビアン・スザージ議員だ!!」
「生きていたのか!ザンサニさん!」
彼らのことを知っていた民たちが騒ぎ出す。
「彼らもまたわたしと同じように、命を狙われ、殺されそうになったのだ
帝国連合軍の手をかりて、このワグワナ法国を悪意ある政治を行ってきた者たちを捕らえた
ワグワナ法国をむしばんでいた者たちは、もうその権力を奪われたのだ
皆は10年に及ぶ、彼らの情報操作によってトリアティー師団国の獣人が、恐ろしい存在だと信じているが、実際はそうではない
ワグワナ法国を動かし、王族貴族を排除した300人の政治家たちは、偽物の政治家たちだったのだ
彼らは不正選挙を行い、皆が選んだ政治家ではなく、自分たちの都合のいい政治家たちを選んで、ワグワナ法国を悪意によってコントロールしていたのだ
確かにワグワナ法国は、他国よりも食については確保され、豊かさがあったが、裏では、他国にも劣ることもない悪行を隠れて行いつづけていたのだ
皆がどれだけ真剣に考えて投票用紙に選んだ政治家の名前を書いたとしても、それらの用紙は捨てられ、民の意思は無視して、自分たちの都合のいい政治家たちを選ぶというわけだ
統計するのは彼らなのだから、民は答え合わせなど出来るはずもない
国を信じているものたちは、疑うこともできなくされる
戦争を起こせるような国にするために、自作自演で911獣人暴動事件を起こし、平和主義者たちを暗殺しつづけ、邪魔な本当の平和主義者たちは弾圧を繰り返して来た
ザンサニ・マールは、平和主義者のレジスタンスだったが、彼がいなくなり、勢力を伸ばしていた平和主義のレジスタンスが今でもあるが、彼らは表向きは、平和を語るが実際は、政治家たちによって統制され、繋がっているだけで、行っていたのは、わたしのような本当の平和主義者の王族、貴族、政治家への嫌がらせなどをしていたのだ
同じように、不正選挙で選ばれた300人の中にも平和主義者だと宣言している150人のハト派がいるが、彼らの平和主義は、表向きであって、実際は、戦争反対を叫びながら、戦争になるように裏では話が進められていたのだ
政治家たちが、言い争いを演じることで、何もしらない民たちは、自分たちの意見と同じ政治家がいることをみて、安心させるというトリックだったのだ
独裁政治をしていないかのように誤魔化しながら、実際は、独裁政治を行い続けてきたのだ
前にも話したが、三国同盟のボルフ王国は、すでに存在していない
存在していない国の軍があるわけもないので、ボルフ王国からの援軍が来ていたというのも偽りだったのだ
このようにあらゆる嘘の情報を10年間流し続けてきた
人間至上主義を掲げて、国を鎖国していたが、民に本当に世界で起こっている出来事を知らせないために、外からの情報を封鎖するためのものだったのだ
ワグワナ法国の民だけが、まったく違う常識を持ってしまっている
つまり、我々は、騙されていたのだ
これより、腐敗してしまい戦争ばかりを行い続けた政治から10年前の平和主義で、獣人とも仲良く暮らしていた時代を復古させていく
帝国連合軍が、数年間は、統治支配するが、我々の常識が正しく修正されたあとは、我々がまたワグワナ法国の正式な統治者となる
ワグワナ法国軍は、トリアティー師団国に突然、侵攻し、獣人の民の方々を虐殺した
しかし、トリアティー師団国は、我々にチャンスを与えてくださっている
我々が、平和主義へと復古するのなら、それを見守るとおっしゃってくださっているのだ
これ以上、無益な争いや反乱などを起こすことがないように忠告しておく
そして、ワグワナ法国を牛耳っていた者たちは、井戸水や食べ物にモンスター化させる恐ろしい感染症をバラまいている
ワグワナ法国のすべての民は、飲み食いする時は、その食べ物や飲み物を30分、間をあけてから口にいれるように徹底しなさい
30分間をあければ、感染力は無くなる
大人は、こどもがモンスターとなってほしくないのなら、目をはなさず、それを守らせるようにしてほしい
このように、ワグワナ法国を牛耳っていた者たちは、残酷で卑劣な者たちだった
まずは、自分たちの身の安全を守り、そして、帝国連合軍に逆らうようなことはしないようにしてくれ
そして、皆に紹介しよう!
皆が知っている龍王による予言の者が現れた
天使族である伝説の存在、ハジメスエナガだ
龍王の予言は本当だったのだ
彼によってボルフ王国は、滅亡し、そして、ワグワナ法国は、解放された」
源は、マントを脱ぎ取り、背中の白い羽を大きく広げると、民たちから驚きの声があがった。
「わたしの名前は、末永源といいます
遺跡からミステリアスボーンとして生まれ、この世界のことを何も知らずに歩んでいたのですが、伝説の天使だということを悟らせないために、”セルフィ”という名前を使っていました
今ではセルフィと呼ばれることのほうが多いですが、帝国領でも本当の名前を大々的に公表しました
龍王冒険記57章には、”人権”について少し述べられています
すべての意思ある者たちは、神の基で平等だという意味です
王族、貴族、政治家、上に立つ者たちはいれども、すべての者は、神による権利を有して、蔑ろにしてはらないと教えることです
これからワグワナ法国の皆さんには、この”人権”を学んでいってもらいます
人権とはどのような意味なのか、それが書かれているのは、1000年も前から存在している龍王の意思である聖書です
人ではなく、神を基準とした愛と正義を皆さんには理解していってもらいます
多神教であっても人権を理解できるものについては、活動を阻害しようとは考えてはいません
ですが、人権とはなにかを皆さんが、理解できるまでは、毎週教会にいって聖書を学んでもらうことになります
なるべく参加してください
人権を理解した者だけが、政治家になる権利を獲られることになります
今までのような不正選挙ではなく、すべての民に政治家になるチャンスがあるということです
150人は、王族貴族による貴族院。そして、150人による民からの議員を募集することとなりますが、まずは、300人がすべて人権を理解してもらってはじめて、政治をお渡しできるようになります
教会では、すべての民に、文字の読み書きを教えていきます
皆さんが、ワグワナ法国によって情報を遮断されていたのは、文字が読めず、書けない者が多かったからです
これからは、皆さんが学び、本当の情報を皆さんご自身で精査してください
正しい統治がされているのか、皆さんがチェックするべきなのです
皆さんの中には、10年間の情報を信じきって、我々のことを信じられないと考えてしまう人もいるかもしれませんが、少しだけでも自分たちの国が本当に正しかったのかと疑問を持つようにもしてほしいのです
両方を天秤にかけて、みてください
どちらの情報が、本当に正しいのかをです
国外への通行禁止も、人権を理解した人たちには、適応されません
他国にも自由に行き来できるようになるということです
そうすれば、またどちらが正しいことを言っていたのかを見比べることができるようになります
信じろといっても、すぐに信じられるわけもありませんから、まずは、両方を疑うことを学んでみてください」
民のひとりが、叫んだ。
「本当にあなたは伝説の天使なのですか!?」
「わたしは、ミステリアスボーンとして生まれた当初は、龍王のことさえも知りませんでした
それから色々な出会いの中で、龍王を知ることとなったのです
自分が伝説の天使だと宣言したこともありませんし、確信も未だにありませんが、龍王が伝えたかった聖書のことについては、理解しています
伝説となるのかは、わたしがこれから歩んでいく道で証明していくしかありません
ですが、世の中には、争いをわざと作り出す存在がいるのです」
源は、時空空間ゲートを開いて、一体のアモラをリトシスで浮かせて、皆にみせた。
「これが先ほど忠告したアモラというモンスターです
このモンスターの正体は、ワグワナ法国軍の兵士です
彼らに感染させられ、このような姿にされたのです
ですが、わたしは、彼らを元に戻す力を持っています」
アモラの前に手をかざした。
数分の時間をかけて、体内からアモラ感染の核を分離し、人間の姿へと戻した。熟練度の向上と比例して、リトシスによる操作も時間短縮できるようになっていた。
「ローガヴィール!!あれは、ローガヴィールよ!!」
女性が、人だかりの中から叫び、前へと出てきた。
「あなたは、彼の知り合いのようですね
彼はもう大丈夫ですよ」
男は、何が起こったのか解っていないで、まわりをキョロキョロと見渡す。
源は、地面にゆっくりと彼を降ろすと、女性が、人々を押しのけて、涙しながら抱き付いた。
おぞましいモンスターが、人間へと戻ったその様子をみて、人々から声があがる。
「伝説の天使だ!天使様だ!」
「癒しの力だ!!」
「「「おおおおお!」」」と歓声があがる。
「今回のモンスター化する事件によって4万人に及ぶ、ワグワナ法国の民が、犠牲となりました
これらを起こしたのは、ワグワナ法国を裏で操っていた者たちで、そこにいる300人の政治家たちは、その仲間です
すぐには無理でも、少しでも聞く耳を持つように、努力してほしいのです
そして、皆さんに分かってほしいのは、隣国のトリアティー師団国では、1万人に及ぶ獣人の民たちが、ワグワナ法国軍によって虐殺されたということです
騙された皆さんと、被害にあったトリアティー師団国ですが、お互いに被害者ですが、自国が起こしたことですから、トリアティー師団国に対して、配慮の気持ちを抱いてください
お互いに歩み寄っていけることをわたしは願っています
まずは、3つのことを守って今までと同じように生活してください
1つは、先ほど、ガマル・ルィール・チェクホン殿下が言われたように、飲み物、食べ物の中に、アモラ化する汚染された細工がされている可能性があります
首都ダリンだけではなく、すべてのワグワナ法国の民の皆さんは、かならず飲み食いする場合は30分の時をあけてから、食べるようにしてください
2つは、毎週日曜日は、教会に足を運んでメッセージを聞く
3つ目は、無暗に問題を起こさないことです
これに逆らって、問題を起こした者には、それ相応の処置が下されるものと思ってください」
人々は、納得する者もいたが、疑心暗鬼になっている者たちも多かった。
ボルフ王国の民たちは、源のことを普段から知っていたし、好意的に思っていたので、受け入れる気持ちがあったが、ワグワナ法国は、情報規制が徹底されていたので、すぐには信用できない雰囲気になるのは当たり前だった。
しかし、アモラ化によって多くの被害者がでたことには、不満の声と誰にぶつけていいのか分からない気持ちがあった。
ワグワナ法国軍の捕獲された兵士たちの首には、すべてソースによる首輪が付けられ、すべて奴隷とされる。
クリスチャンとなった者は、解放されるのは、新大共和ケーシスと同じだ。
彼らの防具は、没収された。
源には、まだまだ仕事があった。それは、1万4000以上ものアモラ化した兵士たちを元に戻すことだ。
手足を切断されているので、いくらアモラといえども、そのままではもたない。
アモラが保管されていた地下へと移動して、まずは、傷口の止血を一斉に行った。
『セルフィ様。援軍としてワグワナ法国へと南下しているペルマゼ獣王国ですが、ワグワナ法国が完全に制圧されたという情報を得たのにも関わらず、変わらず南下を続けています』
『何!?』
どういうことだ・・・。守るために援軍を差し向けたのなら、守るべきものがすでにないのだから、引き帰るのが当然だ。
わざわざ、連合軍が待ち構えているワグワナ法国に攻め入ろうとでも思っているのか・・・?
三国同盟のうち2つまでが、陥落した。そして、次に狙われるのは、ペルマゼ獣王国だということは明白だから、今において攻撃するチャンスはないとでも考えているのだろうか・・・。