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209章 褒美

【209章 褒美】


「あなたは・・・」


「俺は、君の弟ソロモン・ライ・ソロと共に一緒に戦っている仲間で、セルフィという者だ

君がモンスター化して暴走してしまっていたのをソロと一緒に、元に戻そうとしていたんだ」


「僕が・・・アモラに?」


「君は、アモラとはまた違う性質のものへと羽化してしまっていたんだ

本当なら元通りに戻してあげたかったけど、今の状態にするぐらいしか出来なかった

ゆるしてほしい」


スミスは、動こうとしたが、腕も足も無かったので、ショックを受ける。


「すまない。君を抑えるためには、こうするしかなかった

でも、手足は、元に戻せるから安心してくれ」


「母は?お母様は、どうなりましたか?」


「俺には、そのことは分からない

ただ、君がモンスター化したあと、大爆発が起こったのだけど、その状況では無事とは言えないと思う」


「いえ・・・思い出しました・・・母はもう・・・」


「君に色々と説明してあげたいけど、今は時間がないんだ

アモラが大量に発生しているみたいで、それを何とか鎮圧しないと・・・」


「まだ、アモラは増え続けているのですか?」


「帝国で発生したアモラは鎮圧されたけど、君をモンスターにした奴ら、マーレ・ソーシャスのような奴らが、違う国の民や兵士たちの食事などに盛ったようで、今暴れているんだ」


「師匠の・・・僕も連れて行ってもらえませんか?僕にも手伝わせてください」


「君は、本当に自分がスミスだという認識があるのか?」


「はい。わたしはソロモン・ライ・スミスです。どうか、アモラ討伐に参加させてください」


「君には意識がなかったから分からないと思うが、マーレ・ソーシャスは、君を利用した者で、帝国にアモラをけしかけた主犯格だったんだ

そして、そのマーレ・ソーシャスは、俺が葬った」


「そうですか・・・。やはり師匠はわたしを・・・。父にも注意するように言われていたのです・・・。それをわたしは・・・。その結果、母を失いました」


『愛。どうだ?』


『スミス様は、真意を述べられています。源』


「分かった。君は元の意識を取り戻したと信じるよ」


源は、氷操アイスコントロールで体の自由を奪っていた氷を融かし、スミスの両足も人間側の性質の物にして、つなぎ止めた。


そして、自分の腕も完全に治して、即座にサンダー系のマナで攻撃を繰り返しているイグシオンを退治し、その後に出現したハイイグシオンも即死させる。


「スミス。動けるかい?」


スミスは、手足を動かしてみた。


「問題はないようです」


「君は自分の姿を鏡でみていないから分かっていないかもしれないけど、以前の君の姿ではないし、体も以前のものとは違うはずだ。だから、ソロのためにも無理はしないでくれ」


「はい。分かりました。弟のことありがとうございます」


「すぐに会わせてあげたいけど、今は時間がない

アモラ討伐を優先させてもいいんだね?」


「はい。お願いします」


源は、監視のために、服にソースを付けて、スミスを連れて、捕らわれていた遺跡に戻った。

そして、ダフキンに近づき、フルポーションを飲ませた。


「ダフキンさん。大丈夫ですか?」


「大丈夫です。セルフィ様

油断しました」


「実は、各地で、アモラ化がはじまり、4万のワグワナ兵士がアモラとなり、首都ダリンの民にもアモラが発生しています

これから沈静化するために向かいますが、行けますか?」


「動けますので、お任せください」


源は、ゴルバフ・ダレーシアとルピリート将軍にミカエルを通して通信した。

『ゴルバフ・ダレーシア女王様。ルピリート将軍。今の状況を教えてもらえますか?』


『トリアティー師団国の民がアモラというモンスターになる者が出ました

何とか討伐して、こちらは大丈夫です』


『女王様。わたしなら、アモラとなった者たちを元に戻すことができますので、出来れば、完全に殺さないようにしてください

ただ、アモラは、その血液から感染させて数を増やしていくので、無理そうなら、討伐して被害を減らしたほうがいい場合もあります』


『そこは聞きました。セルフィ殿なら戻せることも聞いていましたが、討伐を優先したのです』


『そうですか。分かりました

ルピリート将軍。首都ダリンは、どうですか?』


『こちらも、捕獲は難しいです。見つけ次第、討伐するように兵士たちには、伝えています』


『お二人は、知っているとは思いますが、首都ダリンへと向かっていたワグワナ法国軍4万人もすでに多くがアモラ化して、首都ダリンへと突き進んでいるようです

これをどうにかしなければいけません

他の村にも到着してしまえば、さらにアモラの数は増えていきますから、早く対処する必要があります』


『首都ダリンは、このまま部下に任せます

その4万は、わたしが向かいましょう

ヘタに兵士を使えば、アモラ化の感染におかされるかもしれないですから』


『分かりました。ルピリート将軍


ソロ。指示をくれ』


レジェンド軍の者たちには、ソロによる指示が表示されていた。


『ソロに指示をされて、集まってくれているようだけど、レジェンド兵とウオウルフ軍は、時空空間ゲートを開くから転移してくれ

4万のアモラ討伐になるから覚悟してくれ

アモラは、Bランク相当の強いモンスターだ』



「スミス。これを耳と目に付けてくれ。そうすると色々な情報を共有することができる」


源は、ナノアイコンタクトとナノイヤホン。そして、一本のカーボン製の剣ををスミスに渡して装備させ、時空空間ゲートで、レジェンド軍とルピリート将軍を呼び寄せた。



ソースをスピーカーのようにして、連れてきた全員に聞こえるように話した。


「ワグワナ法国軍4万のほとんどがアモラ化して、かなりのスピードでバラバラにこちらに向かって来ている

こちらは、隊列を組んで戦うことで、各個撃破するように、制圧していく

画面に表示されているように、各自、配置について、ソロの指示に従ってくれ


アモラの血は、感染力を持っている

くれぐれもアモラの数をむやみに増やすような戦い方はやらないように

助けようと思わず、倒すことに専念してくれ

自分たちの命を優先させる」


『ドローン隊のみなさんは、ドローンの麻酔針が、アモラには通じないので、実弾の武器に取り変えてください

もし、実弾を使うことに心を痛めるようでしたら、その方は、攻撃する必要はありません

麻酔針で攻撃して、動きを鈍らせるだけでも結構です』


源の話が終わると前方方向から走り込んでくる生き物を発見した。


以前のアモラとは少し下半身が違い、アモラの足は、さきほどのスミスのようなものとなり、腕も3本から4本に増えていた。


下半身の毛は、青色で違和感を覚える。


今回のアモラの速さは、前以上のようだった。


源は、先頭にたって、走り込んできた5匹のアモラに向かっていった。


デフォルメーションは、目で捉えきれないほどの速さで、源の周りをグルグルと動き、そのままアモラを粉々に斬り倒す。


そして、すぐに、その破片を炎弾ファイアボールで焼き尽くした。


ほとんど時間をかけずに5匹ものアモラを倒したセルフィをみて、レジェンド兵士たちが、勇気を与えられたかのようにやる気になる。


さらに10匹が現れ、そのアモラも、近づく前に、離れた場所で体をまっぷたつにされて吹き飛ばされる。

目に見えない空気のマナによる刃の効果だ。


さらに20匹が走り込んできたが、源は、指示を受けて後退すると、レジェンド兵士たちが、アモラと戦いはじめる。


兵士たちは、アモラのパワーにも負けずに攻撃を防いだり、受け流したりしながら、仲間との連携を駆使して、アモラを問題なく討伐していった。


返り血1つ浴びることなく、上手に戦っていたのをみて、源も安心する。

一体一体のアモラの強さとレジェンド兵士たちの力は拮抗しているが、知的レベルが低いアモラと比べて、連携が取れるレジェンド兵士たちは総体的に優っていた。


時間とともに、アモラの数は膨れ上がりはじめるが、アモラにおくれを取るレジェンド兵士はいなかった。


物質モンスターなので、感染する恐れもないとロックは、暴れまわり、アモラをなぎ倒していく。


大量のアモラが走り抜けようとした場所に、ルピリート将軍が、立ち塞がっていた。そしてゆっくりと歩を歩みだす。


3mの体躯で、物質モンスターである将軍は、堂々と前に進みアモラが、襲いかかるが、どの攻撃にもまったく将軍にダメージを与えることはできなかった。


アモラは、木をなぎ倒すようなパワーがあるが、アモラがどのような攻撃をしても、ルピリート将軍には、まったく効かなかった。


傷1つつけることもできないようだ。


ルピリート将軍が持つ斧は、あまりにも巨大で、分厚かった。

斧を右から左へと大きく振りぬくと、アモラは、壮大に吹き飛んだ。

スピードこそないが、そのパワーは、桁違いで、そして、アモラの攻撃さえも少しも気にしないその戦いぶりをみて、そういうタイプの強さなのだと源は、納得した。


果たして、リトシスで攻撃したとして、その攻撃が通用するのかと考える。


ウオウルフ1万匹も、アモラにまったく負けていなかった。アモラは、スピードもあるが、その戦い方は単調で、そんな速さには、強化されたウオウルフたちには対処することは難しくなかった。


アモラは、大きな体だけに鎧につけられたウィングソードは、はずすことなく横なぎに斬り捨てていった。

羽化することで、体が大きくなるので、兵士たちの鎧もほとんど弾けて、手首などの一部の部分以外は、無防備な状態だった。


ウオウルフたちが、横に走り抜けるだけで、斬られていく。


ダフキンは、アモラに対しても苦にしない強さを持っていた。人間相手には、首を狙い力をそれほどかけない攻撃をしていたが、アモラのような相手には、力を込めた戦い方をして、的確に、アモラの首を落としていく。



問題は、スミスだった。


スミスは、アモラを倒すと心に決めて、戦場へとやってきていたが、アモラを目の当たりにすると、母たちのことを思い出し、アモラたちの背景、本当は人間であるという意識が抜けなかった。


まったく攻撃しないわけではなかったが、スミスは、アモラの手足だけを狙って、無力化していった。


源は、その戦い方をみて、懸念を抱いく。


『スミス。自分の命を優先にして戦えないのなら、危険だ

アモラを攻撃できないのなら、君は戦う必要はない

退いてくれ』


『戦わせてください。セルフィさん

僕は、アモラが人なんだとはっきりと自覚しているのです

ひとりでも助かる見込みがあるのなら、生かしておいてあげたいのです』


『ソロ。君からもスミスを止めるように言ってくれ

スミスは、まだ今の体に慣れていない

そんな状態で、アモラを気にかけて戦うのは危険だ』


だが、ソロからの返事はなかった。


大丈夫だということなのか・・・?


アモラの手足だけを狙うスミスの戦い方を再度みてみることにした。


スミスは、体のまわりに白い光りを大量に作り出したと思うと、その1つ1つが、アモラの手や足へと的確に飛んでいくと、アモラの手足は吹き飛んだ。


なんだ・・・あのマナの攻撃の仕方は・・・


『源。帝国の情報からでは、あのようなマナは、確認されていません

源と戦った時の掌にマナを集めた戦い方も独特なものでした』


スミスは、帝国さえも把握していないマナを使えるのか・・・。

というようりも、強い!。


スミスは、マナの使い方が巧みで、さらに動きが早かった。

アモラたちの攻撃を潜り抜けると同時に、筋肉の塊りのようなアモラの腕が吹き飛ぶ。

渡した一本のカーボン製の剣をまるで、自分の手足のように振りぬき、アモラの手足を斬り落としていく。


人間の意識があったほうが、もしかして、スミスは強い?


『スミス様の動きからすると以前の魔獣などの能力の何割かを宿しながら、それをしっかりとした意思で使いこなしているので、単調な戦い方ではなく、応用力のあるものとなっています。源』


『解ったよ。スミス。そのまま安全に戦えるのなら、無力化することに専念してくれ

でも、くれぐれも、アモラの血で感染なんてことには、ならないでくれよ

今回のアモラは、以前とはまた少し違っているようだし、こんどまた羽化したら、また今の状態に戻れるかは保証はないんだからな』


『はい。分かりました。セルフィさん』


スミスは、ゆっくりと宙に浮かび上がると、剣を鞘に戻して、両の掌を下へと向ける。

10本の指の先に、白い小さなマナと思われるものが現れたと思うと、腕全体に、それらが、増えていった。

腕を振るとその白いマナが、アモラに飛んでいき、アモラの手足に当たると破裂するかのように爆発する。

武器を持ったアモラが、白いマナを攻撃しようとするが、その武器を避けるように軌道を曲げて、腕に着弾する。


アモラの密集が多い場所に、大爆発が起こった。

大量のアモラが消し飛ぶ。

ルピリート将軍が斧を地面へと叩き込むとその十数m先の土地が、内部から膨れ上がるように外側へと拡散して、10mほどの穴が地面に空いた。


土系魔法なのか、それとも特殊スキルによる効果なのかは分からない。


スミスと同様に、公表されていない戦い方で、大量のアモラを排除していく。


レジェンド兵士たちは、ソロの指示で、攻めては、また下がり、無理をしないような戦い方でアモラの数を減らしていった。ミカエル1000体が、前線で盾となり、兵士たちを守っているのも大きい。


ドローンは、実弾をアモラの顔、特に鼻だと思われるところを射撃するようにしていた。

目こそないが、嗅覚の機能を阻害してしまえば、アモラは目隠しの状態で戦わざるおえなくなるからだ。


被害らしい被害は出てはいないが、それにしても4万のアモラは、数が多すぎる。


一番アモラの数を削っていたのは、ウオウルフ隊だった。

個体としてアモラの能力を上回っていて、数も1万もいることから、彼らの活躍が目覚ましい。


バラバラに襲ってくるアモラにたいして、1000匹の10隊に分かれて、戦うウオウルフ隊は、おくれを取ることも無かった。


アモラは、生き物であるウオウルフの顔に体液を浴びせようとするが、ミカエルのソースが、ウオウルフの兜についていて、弱点である顔の攻撃をされた際に、シャッターを閉めるようにガードした。


アモラの攻撃を喰らうウオウルフもいたが、カーボン製の装備をしているウオウルフには、それほどダメージとはならなかった。


数こそアモラのほうが圧倒しているが、能力の差。そして、装備の差で上回っている。


4万 対 1万4千の戦いは、質の差によって、勝利は時間の問題と思われたが、少しでもみんなの負担を減らそうと、源は、南側へと瞬間移動して、アモラの後ろから数を減らすことにした。


『愛。確実にアモラだという個体だけを把握してくれ』


『分かりました。源』


愛によってアモラ4000匹の位置を把握した。


『広範囲にマナで攻撃した時、味方への被害となる確率はどれぐらいだ?』


『どのマナを使用するのかによりますが、4000匹に対しての攻撃だと約2%だと推測されます。源』


『さらに後方のアモラだけにしぼって2000匹への攻撃ならどうだ?』


『限りなく0に近づきます。源』


広範囲に渡って、バラバラに走り抜けているアモラを後方上空から、2000匹のアモラを対象にして、表示によってロックオンすると、源の属性である光系マナの光線ライトレイを出力10%程度に抑えて2000発、発動させた。


光りが一斉に、放たれると、瞬時に、アモラ2000匹が、消滅した。


身体強化マナのバフ、強化魔法ストロング速度強化スピーダーをかけて、マッハ12の速度で走り、アモラたちに追いつき、デフォルメーションによって、4本の手と2本の足を切断していく。


デフォルメーションをまるで針のように、長く形状を伸ばして、500mの長さにして、横に振りぬくと、大量のアモラの両足を斬り落とした。


倒れたアモラの手を斬っていく。


速度強化魔法のバフをかけた源の主観では、アモラは止まって見える。


前からは、1万4千と強者たちによって迎え撃たれ、後ろからは源によって攻撃されることによって動けるアモラの数を急激に減らしていった。

アモラの中には、逃げようとするものもいたが、一匹でも、もらせばまた汚染が続いていしまうので、源は、一匹も逃すことなく追いつき、無力化した。

アモラ化したワグワナ法国軍の侵攻は、終息する。


生き残ったアモラは、1万4032匹だった。

それらは手足を失い、動けない状態にされ、レジェンドの地下に閉じ込めておくことにした。


首都ダリンのアモラは帝国軍によって制圧され、それ以上の被害は、抑えられた。


アモラ化の策略によってもたらされたワグワナ法国の被害者数は、民も含めて4万に上った。


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