表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/269

208章 三段構え

【208章 三段構え】


シンによる仕掛けが施された遺跡内部を攻略し、実態の体ではないモンスター、ミストを倒して、戻ろうとしたが、ダフキンが壁に吹き飛ばされダメージを負った。


ダフキンに攻撃を加えたのは、頭の両サイドに2つの黒い角を生やした全身を毛におおわれたモンスターなのか、それとも魔族なのか分からない者だった。


あれは・・・


姿こそ前とはちがっていたが、よくみるとそれは、ソロの兄であるスミスだと思われた。


「スミス・・・なのか!?」


前は、マーレ・ソーシャスと同じようなまるで悪魔そのものの姿だったが、今回は、モンスターのような姿となっていた。

顔もそうだったが、体全体に長い体毛が生え、足はカモシカの足を太くしたようなものになり、ケンタウルスのようではなく、カンガルーのように2本脚で立ち、太い足のかかとを上げて、前のべりになった体勢になっている。


源は、少し後ろに退いた。


前回会った時も驚異だと感じたが、今回のスミスは、それをさらに超えていると感じたからだ。


スミスからすれば、ただ移動するために、床に付加をかけただけだったと思われるが、石で作られた床は、えぐれ、破壊される。


スミスの姿が目の前から消えた。


瞬時に、愛の演算能力を100%にして、対処したが、それもかなりギリギリの状態でスミスの動きを読み取り、源は、後ろに振り向くと同時に、デフォルメーションを顔の前に掲げた。


その場所に、スミスの腕が伸ばされ、源もダフキンのように吹き飛ばされて、壁に激突した。


認識するギリギリのタイミングだったので、リトシスが発動していないためダメージを負う。


スミスは、続けて、源に左腕からの攻撃を加えようとするが、デフォルメーションは、二股に形を変えて、右側の攻撃を防いだ。

しかし、左腕をスミスの右腕が掴んだと思うと、次の瞬間、源の左腕が「ボムッ!」と吹き飛んだ。


「ぐあ!!」


何だ・・・この攻撃は・・・


『分かりません。ですが、もの凄い熱量を感知しました

その熱量のために、源の血液が水蒸気爆発したようです。源』


水が水蒸気爆発したという話は、工場などでも聞いたことがあるが、血液も爆発するものなのか・・・


左腕が吹き飛ばされ、腕がもう少しで引きちぎれそうになり、痛みによって思考が混濁こんだくする。


とにかく、スミスの動きは、早い。

以前もかなりの速さをみせていたが、今のスミスは、それ以上だ。


対抗するために、肉体強化をほどこし、その上に、速度強化をかけた。


スミスの動きを察知して、源もスミスを追うかのように喰らいつき蹴りをいれて、スミスを吹き飛ばした。


その間に、口でデフォルメーションを咥え、時空空間ゲートを開いて、右手で森の中からそこそこ大きな木の欠片を取り、左腕を形成していく。


リトシスを発動できていなかった蹴りだったせいか、まだ、腕が木の茶色が消えかける前に、スミスは、源へと攻撃を繰り出してきた。

左腕の止血はできたが、動かすことができない。


先ほどは、どのような攻撃をされたのか分からなかったが、スミスの手のひらには、白いマナだと思われる光が凝縮されていて、それがかなりの熱量を持っていると予想された。


あれに触ってはいけないと右腕だけで枝分かれしたデフォルメーションの剣筋で、その攻撃を跳ね除ける。


グワン!!


という音が響くが、スミスの腕を弾くほどにしかダメージを与えることはなかった。

スミスは、リトシスを発動した攻撃に対しても、耐えるだけのパワーとバランスがある。


スピードスターと言われるパーシー・テシリのスピードを超えてるぞ・・・。


しかし、速度強化をほどこした源には、スミスの動きは把握することができていた。

源が使用した魔法マナの効果は、一般と比べても比較にならないほどの効果をあげるために、速度強化魔法を使用するとその速さは音さえも超えている。

そして、その速さに抵抗力も自然と加えられるので、思考速度も急激に伸ばしてしまうからだ。

デフォルメーションやリトシスによってスミスの攻撃をなんとか弾くことはできていたが、油断すると、あの手に攻撃される。


しかも、あれは両手にほどこされているので、両手で攻撃され、さらに少しでもフェイントをいれられるとギリギリのタイミングで防ぐことしかできない。


スミスは、攻撃を防がれることに苛立ちを覚えたのか、直線的に、飛び込んで攻撃をしてきた。


すぐにそれに対応して、時空空間ゲートを目の前に形成させるとスミスは、そのゲートの中に入ったかと思うと、すぐそこの壁の前のゲートから現れ、激突した。


壁は大きく破壊された。

自分のスピードによって壁に衝突してダメージを負い、たじろぐ。


どうすればいい・・・?ソロのためにも、スミスを間違っても殺すことはできない。

最大の問題は、スミスの体に何が起こるのか分からないものが、埋め込まれていることだ。


核爆発だか、水素爆発だかの技術がシンにあるだけに、対処するのが難しい。

魔法による核爆発なので体内のものに埋め込めるとは思えないが、何があってもおかしくはない。


スミスは、対象によって上手く躱されていることに怒りを覚えて、四方八方に素早い動きで撹乱しようとする。

スミスが、動くたびに、石で作られた壁や床が、まるでスミスの足跡のように破壊されていく。


視覚によって情報を獲るために、マナの1つであるライトを発動させていたが、源は、わざとマナを止めて、真っ暗な状態にした。

しかし、野性的な能力を持っているのか、それほど動きを鈍らせることはなかった。


しかし、スミスは、音を出さずに移動することが困難だと踏んだ源は、愛を利用して、暗闇の中でも全体を的確に把握していた。


暗闇が増えたことで、スミスの体に黒い影、影操シャドウコントロールまとわりつき、一瞬スピードをゆるめたので、源は、スミスの後ろにまわりこみ、背中を触って、瞬間移動で共に移動した。


移動してすぐに、源は、封印の珠を動かし、外界からの途絶を試みた。


部屋に現れたのは、イグシオン5匹。以前、攻略したイグシオンの部屋へと移動してきたのだった。


イグシオンは、源だけではなく、スミスにも【放電サンダーボルト】で攻撃を繰り出す。


スミスは、まともに、【放電サンダーボルト】を喰らい苦しむ。


「どうやら、スミスは、雷抵抗が低いようだな」


『セルフィ様。ご無事でしょうか?』


『うん。ミカエル。大丈夫。今のところ無事だ。やっと通信できるところにこれたけど、ここにはソースは、何機いる?』


『50機です。セルフィ様』


『イグシオンは、無視して、相手は、あのモンスターのようになったスミスだ

かなりのスピードだから、あらゆる探知機能を発動させて、動きを把握してくれ』


『分かりました。セルフィ様』


50機のソースは、フルで探知機能を発動させて、源に情報を送り、その情報から愛がさらに精密な計算によって情報を増やしただけに、スミスの動きをさらに明確に把握した。


スミスは、素早く【放電サンダーボルト】を放ったイグシオンに走り込み、首根っこを右手で掴むと、イグシオンの顔もろとも吹き飛ばした。


一匹を瞬時に倒したと思うと、さらに4匹を数秒のうちに倒していく。


しかし、スミスの目には、さらにイグシオンが大量にみえていた。

100匹ほどのイグシオンがあたり一面に現れ、それらを睨みつける。


「グルルルルル!!」


先ほどの【放電サンダーボルト】とは比較にならない威力の【雷雨サンダーレイン】が、部屋一面に降り注いだ。


ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!


さすがのスミスも動きを止めた。


源は、マインド系のマナ【幻覚イリュージョン】を発動させ、大量のイグシオンの姿を再現させながら、自らの【雷雨サンダーレイン】で攻撃していた。


動きを鈍らせたスミスの腕を両手で後ろから掴み【氷操アイスコントロール】によって、体全体を瞬時に、凍らせた。


そして、リトシスによってスキャンを開始する。


しかし、すぐにスミスの両腕から氷がはじけて、爆発した。


これも水蒸気爆発か・・・。


爆風であっても源の認識では把握できているので、リトシスで無効化する。



その爆風よりも早くスミスは、両手で攻撃を繰り出して来た。


デフォルメーションが、源の体のまわりを木の枝のように囲いながら、スミスのすべての攻撃を弾く。


速さに重点をおき過ぎたスミスの攻撃を弾く以上に、源の攻撃は、深く押し込みスミスをじわじわと後退させていく。


スミスの腕は、デフォルメーションのパワーに押し負け、徐々に傷ついていく。


力を込めたスミスは、右腕を源に伸ばしたが、その腕を源は斬り落とした。


痛みに顔を歪ませたその隙に、さらに左腕と両足を斬り落とすと、スミスは、床に倒れた。


そして、また氷でスミスの全体を凍らせ動きをさらに封じ、さらにサンダー系のマナをデフォルメーションに流して、スミスの動きを封じた。


すぐにスキャンを再開する。


スミスは、口から白いファイアを吐き出して、攻撃をしてきたが、リトシスと【魔法壁マジックバリア】でその攻撃を無効化する。


何度もスミスは、攻撃するが、その間にも、スミスの体を調べる。


『源。スミス様の体は、アモラ以上に、魔族と魔獣、そして、人間の細胞が、融合してしまっています

元の姿に戻すとしたら、それはもう以前のスミス様ではなく、作り変えるようなものとなります

人間であれば、脳による損傷で済むかもしれませんが、プログラムで作り出された存在であれば、その過程で、スミス様の意識などが消失させてしまう可能性もあるかもしれません』


『アモラの時のように、分離できないのか?』


『人間の姿にすることは可能ですが、魔族と魔獣の性質を取り除くことは、できません

そして、コアの左横に、四角い物体を発見しました

これについては、分離できます』


源は、すぐにその四角いものを分離して、何もない地下の場所に、時空空間ゲートを出して素早く捨てた。


『よくこの場所を考え付きましたね。源』


イグシオンが、また5匹現れ、サンダー系のマナを発動して攻撃してきているが、源には、まったくきいていないので、無視していた。


『うん。シンの仕掛けをマネしてみたんだ。もしかしたら、ここなら、何らかのスミスの監視の目をかいくぐれるかと思ってね

イチかバチかの賭けだったけど、懸念していた体内に埋め込まれていた物は、取り除けた

あとは、何とか元のスミスに戻してやりたいけど・・・無理なのか?』


『危険かもしれませんが、人間の性質を増やすことで、対策していく以外ありません。源』


『分かった。少しずつ人間の性質の細胞へと変えていこう』


源は、スミスの意識が戻るようにと祈るように徐々に作り変えていく。


『セルフィ様。首都ダリンの民とトリアティー師団国の民、ダリンへと向かっていた4万のワグワナ法国軍が、アモラ化しています』


『え!?』


『セルフィ様との連絡が途絶えてから、昼食をとりはじめたワグワナ法国兵士たちが、突如として苦しみだし、アモラへと羽化していきました。セルフィ様』


人間の性質を徐々に増やしていった効果があったのか、スミスは、大人しくなりはじめていたが、その間にも、奴らは手を打って来ていたということか・・・。


俺を殺すための罠というよりも時間稼ぎのための罠だった可能性もある・・・。


『アモラへと羽化してしまった者たちは、かなりのスピードで首都ダリンへと走り出しています

首都ダリンの民にも、羽化の変化があります

トリアティー師団国の民に対しては30分間、飲み物や食べ物を放置して食べるようにと情報を流し、さらなる悪化を防いでトリアティー師団国軍によって沈静化に成功しています

また、ルピリート将軍によって統制された帝国軍が、首都ダリンから出たアモラを討伐しています

ですが、水や食べ物を食べないようにと民に伝令を送っていますが、伝わっていない民の中からアモラとなった者たちが現れ、さらにアモラの数を増やしています』


『麻酔針で、眠らせることはできないか?』


『ドローンによって麻酔針を撃ちましたが、動きを少し鈍くする程度で、無力化には至っていません。セルフィ様』


麻酔も効かないのか・・・。大熊でも一瞬で眠らせるほどの麻酔なのに・・・。


スミスへの措置が上手くいったのか、徐々にモンスターの姿から人間の姿へと変わっていく。しかし、以前のスミス少年というよりは、青年。大人の姿となってしまっている。ソロのイメージから得たスミスの姿とは違う。


大人しくなり、目をつぶっていたスミスは、目を開けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ