20章 暴落
源は、異世界に来て、初めての人間と接触した。それは人間のこどもたちだった。
そして、源やロックは、遺跡と呼ばれるところから、生まれるミステリアスバースという存在だということを教えてもらった。
何とか源は努力して、この子たちから、この世界の情報を少しでも聞き出したい。
できれば、人間との共生をウオウルフと同じようにしていきたいと考えていた。
こどもたちは、湖の淵にあった大きめの岩に座って、源にも来るように言ってくれた。
「わたしの名前は、ニーナよろしくね」
一番年上だと思われる中学生ぐらいの女の子だった。
「よろしく。僕の名前は、源。はじめって呼んで」
そして、源は友好関係を表すために、手を出して、握手する恰好をとる。通じるのか分からないが、一応やってみた。するとニーナは、少し頷いて、手を出して握手をしてきた。握手は、この世界、ニーナたちの周りでは通じるみたいだ。
「僕の名前は、サム。ニーナはお姉ちゃんだよ」
小学3年生ぐらいの小さな男の子だった。
「初めまして、サム」
と源は答え、サムにも握手をした。
「わたしは、エマよ」
最後の女の子は、サムよりは少し上ぐらいのようにみえる。三人とも見た目からして、インディアン系の種族のようだ。
「初めまして、エマ。よろしくね」
三人の名前と挨拶が終わって、源は、疑問をぶつけてみた。
「ニーナとサムは姉弟ってことは、同じ遺跡で生まれたの?」
そう聞くと、三人は、キョトンとした顔で、お互いの顔を見あって笑い出した。
「あはははは」
どうやら違ったようだ・・・。
「わたしたちは、普通に親から生まれてきた人間よ」
「そうなんだ。本当に何も記憶がないから、分からないんだ」
ニーナとサムは親から生まれたということは、仮想世界のプログラミングの可能性があると源は思った。でも、一概にそうとも言い切れない。あいつらが拉致してきた人の記憶をすべて消して、この世界の親から生まれたという設定にさせられている可能性もあるからだ。
分からないが、脳の記憶操作がそこまで柔軟にできればの話だとしてだ。
源の意識が戻るまでの42年間で、どれほど解明され脳に影響をもたらせるのかで決まる。
少なくとも源が拉致される前ならそんなことは不可能なことだった。
「うん。笑ってごめんね」
「いや、いいよ。君たちは、この近くに住んでるの?」
源は、知りたいことを質問する。
「それは言えないわ」
しまった・・・聞いたらダメだったのか!質問も考えてしないといけないな・・・
「ごめん。聞いたらダメだったね」
「あなたのことまだ知らないしね。」
そうニーナが言うと、少し源のことを信頼してくれたようで、サムたちに言った。
「あなたたちは、泳いで遊んでていいわよ」
「はーい」と言ってサムとエマは、泳ぎ始めた。源としても、そうしてくれたほうが和んで助かると思った。
「ミステリアスバースで生まれたひとたちは、その後どうやって生きていくんだい?」
「それはわたしにも分からないわ。いつどの遺跡で、どれだけ生まれるのかは、神様次第なの」
この世界にも神様概念がちゃんとあるみたいだ。
でも、ミステリアスバースの数は、神様ではなく、あいつらだということを源は知っている。間接的に神様がそのことを許可されているということを考えれば、神様とも言えなくもないが・・・と源は思った。
「わたしたちの村にも数人は、ミステリアスバースの人がいるわ」
この子の住んでいるのは、どうやら村のようだ。こんな森の奥なのだから、そうなのだろう・・・。それに、村がミステリアスバースを保護してくれないわけでもなさそうだ。
「僕は、村では受け入れてはもらえないのかな?」
「分からない。でも、帰ったら、司祭様にあなたのことを話しておいてあげる。もし、許可されたら、村のひとたちと迎えに来てあげる。でも、もしダメだったら・・・ごめんなさい・・。諦めて・・・。」
村を仕切っているのは、司祭なのか・・・と源は思った。果たしてモーセのように神に忠実な司祭なのか、それとも異教徒のようにご都合主義の司祭なのかどっちなのだろうか。
「聞いてくれるだけで、本当に嬉しいよ。人間とこうやって話せただけで、驚きだもん」
「・・・そうよね・・・村も生きていくのに必死・・・」とニーナが話している途中に、後ろから、すごい鳴き声が聞こえた
「ウオオオォーーン!」
しまった!!巡回してるウオウルフだ!言っておくのを忘れてた!
ニーナが驚いた声で言う。
「どうして、ウオウルフが、昼間にいるの!!」
ウオウルフが、夜行性だということは、さすがに知っていたようだ。これはまずいな。
ウオウルフは、源の方に走り込んできた。
そのだいぶ後ろからもう一匹のウオウルフが加勢のために走って来るのがみえる。
ニーナは、叫んだ。
「サム!エマ!モンスターよ!!」
サムもエマも必死で、湖から出ようとしはじめる。
まずい・・・どうする・・・俺がウオウルフと仲がいいと知ったら、この子たちは、逃げるのか?でも、止めなければ、巡回しているウオウルフは、この子たちを襲ってしまう・・・もう・・しょうがない・・・!
「待って、あのウオウルフは、仲間なんだ。だから大丈夫。まかせて!」
「え!?」とニーナが、驚いた顔をした。
やっぱり・・・驚くよね・・・だろうね・・・もう終わりか・・・
そう思いながら、ウオウルフとニーナの間に源は入り込んで、すごい勢いで走り込んでくるウオウルフを止める。
「待て!止まれ!!」源は、右手を前に出して、止まるように命令する。
ウオウルフは、止まり、グルグルグウウウと威嚇しながら、ニーナを睨め付けるが、その場を少し動きはするが、それ以上は、近づこうとはしない。
ニーナはニーナで、武器を持って、必死で、サムたちを守る構えだ。もう一匹のウオウルフもかけつけ、同じように威嚇しようとする。
「いいか!人間には、手を出すな!この子たちは、敵じゃない!」
源が強めにそういうと、ウオウルフは、威嚇をやめて、少しうつむき加減で、大人しくなる。
「いいから、向こうに行っててくれ」
そう源が、指をさしていうと、ウオウルフたちは、離れたところに、移動して、源の安否を遠くからうかがいながら、腹ばいになって監視する。
それをみてニーナは、言った。
「驚いたわ・・・本当に、ウオウルフを大人しくさせられるのね」
「すまない。こうなるとは、思わなかったんだ・・・怖がらせる気はなかった」
「そう・・・」と言って、ニーナは、まだ、ウオウルフを警戒する。
「どうして、ウオウルフと一緒にいるの?」
「色々あってね。俺も最初は襲われたんだけど、こどもは食べるまでもないと思ってくれたのかもしれない」
戦って、従えてるなんてことを言っても信じないだろうし、信じたら信じたで疑われるから、納得する話をした。
「そう・・・そんなこともあるのね・・・ウオウルフは、狂暴で、人間とは仲良くなれないと思ってたわ」
「確かに、あれじゃーそう思うよね。分かるよ」
「サム。エマ行くよ」
ニーナは、危険を何度も感じて、ここにはいられないと考えたのだろう。
それを見て源は、何とか引き留めるために考える。
「待って!ウオウルフはもっと見えないところに移動させるから、あと少しだけ、話をさせてくれないか?」
「ごめんなさい。この子たちを危険な目にあわせられないわ」
「頼むほんのちょっとだけでもいいんだ」
源の必死な顔をみて、サムが気を使ったのかフォローしてくれた。
「お姉ちゃん、ちょっとならいいでしょ」
弟のその言葉を聴いてニーナも仕方がないという顔をする。
「わかったわ。でも、あのウオウルフは見えないところに連れて行って!」
「わかった」
源は、ウオウルフのところにいって、話をつけてきた。そして、見えないところまで退かせた。
そして、源は戻ってくるとニーナが先に声をかけた。
「あなたが、人間に会えて、話をしたいという気持ちは分かるわ。だから、帰ったら、ちゃんと司祭様に連絡してあげる。でも、本当に話は少しだけにしてね」
「うん。ありがとう。ニーナ」
色々聞きたいが、やはり一番聞きたいことは、この世界の状況だ。少しでも、この世界の状況が感じられる質問がしたいと考えた。
「俺は、遺跡で生まれてから、モンスターとしか出会ったことがないんだけど、この世界は、モンスターの方が多いのか?」
「わたしは、村とこの森から出たことがないの。だから森の外にどれだけのモンスターがいるのかは分からないけど、遺跡は、世界中に沢山あって、その遺跡からモンスターたちは、生まれ続けていると教えられたわ」
そうか。モンスターは、あの洞窟のようなところから生まれてくる。もしかすると、あの奇形のようなものが、モンスターのなりそこないなのかもしれない。だとすると、フォルもまた、あそこで生まれたミステリアスバースってことだろう。
世界各地にあるというが、人間の繁殖力とどっちが高いのだろうか・・・たぶん、ニーナも知らないだろう。
「この世界を支配しているのは、人間?それともモンスター?」
「分からないわ。ある国は人間が支配していたり、ある国や民族は、モンスターが支配していたり、地域によってまったく支配している種族が違うと聞いてる。でも、この世界で一番大きい勢力は、ドラゴネル帝国よ」
「ドラゴネル帝国・・・」
「ドラゴネル帝国は、様々な国や地域の集まりなの。たしか・・・連合とかなんとか・・・だから、人もいれば、モンスターもいて、様々な種族が出入りしていると聞いたわ」
たぶん、ニーナは、連邦制のようなことを言いたいのだろう。モンスターでも行き交う帝国があるのなら、もしかしたら、俺やロックも普通に出入りできるのかもしれないと、考えた。とてもいい話を聞いたと思った。ドラゴネル帝国か。
「ミステリアスバースのことだけど、中身?精神は人間なのかな?」
少しニーナは、考えて答えた。
「うーん。自分は人間だというモンスターもたまにいるって聞いたことがあるような・・・」
そうか・・・ロックのような人間だと思っているミステリアスバースは珍しいということか・・・
「ミステリアスバースは、ほとんどは記憶がまったくないんだけど、たまに変なことを語るのよ」
「例えば?」
「以前は、違う種族だったとか。意味の分からない言葉とかを言ったりね」
「意味が分からない言葉ってどんなの?」
「クラマとか、スマフとかだったかな・・・」
クラマ?スマフ?・・・もしかして、車?そして、スマホ?いやいや、クラマなら、鞍馬天狗とか、狐の鞍馬とかもあるしな・・・と源は考える。
源とニーナが、話している間に、サムが後ろから近づいて来て、源のウオウルフの毛皮で作ったマントを珍しそうに、触っていた。恰好いいとでも思ってくれたのだろう。ここからもみえて分かるのは、ウオウルフは、やはりこの森では別格のモンスターのようだ。ウオウルフの毛皮も珍しいというわけだ。
「ニーナがいう神様ってどんな神様なの?」
「わたしたちの村が信じている神様は、ヤフーヨという唯一の神様なの」
そうか・・・唯一の神様をちゃんと信じている人間もいるんだと源は思った。
「みんなヤフーヨの神様を信じているの?」
ニーナは顔を振った。
「いいえ、ほとんどの国や人間は、多くの神々を信じているわ。だから、神様の名前もとても一杯あって覚えられないぐらいよ」
多神教がメインの世界になってるのか・・・それはまずいな・・・と源は思った。
日本人の信じる多神教のような平和な思想を持つ宗教は稀である。世界の多神教はとても危険で、恐ろしいものばかりだった。
源の時代には、聖書のおかげで、ほとんど人権が理解できる宗教だけが生き残り存在して、それが当たり前のように思うほどだったが、ちょっと時代が変われば、悪さえも正義だと認識する宗教がゴロゴロしていた。
この世界が、同じように、乱れているのかは分からないが、ご都合主義がまかり通る多神教が多いとなると、やはり危険な世界であることが予想される。
こんなことをいうと多神教のひとたちは、感情的になって否定するが、それは事実だからしょうがない。多くの神々を作れるということは、自分たちの都合のいい正義の神も造れるからだ。
人間が神に従うのではなく、人が神を制御する思想で、ご都合主義に走りやすい、それが多神教だ。自分の家族に都合のいい神。自分の仲間や組織に都合のいい神を選ぶわけだ。日本には、1億も超える神々がいたのもいい例だ。
自分たちで作らなくてもすでに、多くの神々は作られているはずだから、自分たちの正義にあった神を選べばいい。そこには、正義も愛もない。正義や愛という言葉の犯罪だって存在するからだ。
日本は島国でほとんど1つの民族だから平和な多神教でやってこれたが、それは恐ろしいそれ以外の民族を大昔に滅ぼしたからだ。日本は奴隷さえも残さなかった。
そして、大陸は、そんなことはできない。秦の始皇帝などが、何とか世界に基準を作ろうと、犯罪的な思想の民族を大量に手をかけ、1つの言葉に統一しようとしたが、結局、その夢は半ばで頓挫した。多くの言葉や多くの民族があって入り乱れて共存するしかないのが大陸なのだ。
日本のように海という境界線など存在しない。犯罪者が自分たちは正しいと主張しているのは本当のことなのだ。人間は悪さえも正義だとしてご都合主義で塗り替えることができる。
「僕が信じている神様も、ニーナと同じ唯一の神様だよ。もちろん、名前は違うけどね」
「どういう名前の神様なの?」
とニーナが、聞いている時に、サムが、源のマントをひるがえした。そして、叫んだ。
「わーーー!!」
源とニーナは、その声に驚いた。
「何?どうしたの?」
「なんだ!?」
「お姉ちゃん。羽だよ!羽がついてる!!」
ニーナは、源の顔をすごい勢いで睨みつけてきた。
しまった!!俺が人間じゃないことがバレた・・・!!
それを聞いたニーナの顔は、みるみるうちに、変貌していった。
「背中に、羽・・・ハジメスエナガ・・・」
すごい勢いで、サムの手をひっぱって、エマも呼んだ。
「エマ!」
エマは少し離れたところから、何事か分からないような顔で、ゆっくり歩いてきたが、ニーナはエマの腕もひっぱって、近くに寄せる。
そして、二人の頭に手をそれぞれ置いて、三人同時に、半ば強引に頭を下げさせ始めた。ニーナは、言った。
「どうか!ゆるしてください!!お願いします。知らなかったんです!!」
ニーナは、顔をあげると、泣いていた。
そして、ふたりを連れて、一目散に逃げるように、走っていってしまった。
自分たちの荷物さえも、忘れて、武器だけを持って、走っていってしまった。ものすごい慌てぶりだ。
源は、その豹変ぶりに、声をかけることもできずに、たじろいでしまった・・・。
そして、反省した・・・自分がこどものふりをして、人間じゃないってことを内緒にして近づき、それがバレたとたん・・・彼女たちの恐怖を呼び起こして、あんな不安な顔をさせたんだ・・・ニーナに命乞いまでさせてしまった・・・たぶん、俺が襲うと思ったんだろう・・・やはり、俺も彼女たちからすれば、モンスターなんだ・・・気の強い女の子だというイメージだったニーナが、泣くほどの恐怖を覚えたのだろう・・・と源はため息をつく。
源はものすごく落ち込んだ。
すると、愛が、話しかける。
『源。ニーナ様たちは、どのようにここまで来たのか分かりませんが、森にはモンスターがいます。彼女たちが危険だと思われます』
そうだ!!あんな状態で、森に逃げるように走っていったら、モンスターに、はちあわせするかもしれない!
源は、すぐに空を飛んで、彼女たちを追いかけた。彼女たちには、気づかれないように、少し離れ気味に上から様子をみることにした。
『源。彼女たちの前方、30m先に、モンスターらしき動きがあります』
すぐに下に降りて、手ごろな石を見つけた。そして、また空を飛んで、空から先に動くものの場所に行った。
長い鋭い牙が2本生えている、大きな熊型のモンスターが、今にも、ニーナたちに向かっていこうとしていた。
ニーナたちがそれに気づく前に、石にパワーを込めて、的確な動きで腕を振りぬいた。
石は、豪速球で、熊型モンスターの額にあたり、モンスターの頭だけが吹き飛んで、そのまま倒れた。
また、源の奥深くが、熱を感じ、高揚感のようなものが湧き上がるが、源にとっては、ニーナたちが無事に村につけるのかが重要だったので、ニーナたちが向かうだろう、先に注目して、さらに空高く飛び、森の中に、うまく偽装している村があるのを発見した。
たぶん、あれがニーナたちの村だ。
その間に、ニーナたちが、無事に、到着できるのかを源は、注意深く体全体の感覚を研ぎ澄ませてあらゆるセンサーで確認する。
たぶん、大丈夫だと思われるぐらいの距離のモンスターを発見するが、それも念のために、源は退治して、安全を確保した。
30分ほどして、ニーナたちは、村に無事到着した。
彼女たちは、疲労困憊した様子で、村の入り口に入って行って、その様子から異変を案じたのか、大人たちがかけつけていった。
それをみて、もう大丈夫だと源は思った。
ニーナたちのあの様子からして、俺とロックは絶望的だと考えた。
どう考えても、村で受け入れてくれるものではない。
おれが空からニーナたちを守ったんだぞと言っても、通じないだろう。
源は、顔を落として、とても落ち込みながら、ゆっくりと空を飛んで、ロックハウスに帰っていった。
ロックとフォルは、源たちがいなくなったのを不安に思っていたみたいで、源の帰りをロックハウスの前で待っていた。でも、源の落ち込み加減で、ロックは、ダメだったのだろうと察した。源が返ってくるとロックは優しく声をかけた。
「大丈夫。また次のチャンスも来るよ。あの子たちだけが人間じゃないんだからさ」
その言葉を聞くが、申し訳なさそうに、謝った。
「本当にごめん・・・ロック・・・あの子たちが、俺の背中の羽に気づいたら、逃げて行っちゃったんだ・・・・俺も人間から怖がられるモンスターなんだ・・・」
「そうだったのか・・・しょうがないさ。怖がらない人間もいつかは会えるよ」
源は、ロックに彼女たちとの話した内容や得た情報を報告した。
村は、200人ほどの大きさで、人間ばかりだったことや森として偽装する知識。服なども布を使っていた技術もあることも話した。遠目からだったが水車もあったように思える。
ロックは、それらを聞いて、納得するように会話を続ける。
「そうかー。俺たちはミステリアスバースというものなんだな」
「うん・・・。人間もそこで生まれるのかまでは、聞けなかったけど、あの子たちは、ミステリアスバースではなく、親から生まれた子たちだということは分かった。それに俺たちの言葉でも通じたよ」
「そうか。でも、そのドラゴネル帝国なら、俺たちも受け入れてくれるかもしれないじゃないか。ミステリアスバースだと言えば、事情も分かってくれそうだよね」
「だといいんだけどね・・・。あの態度の激変をみると、人間すべてが、俺たちを理解してくれないんじゃないかと思えてきてしまうよ」
「たぶん、そのニーナって子は、森で住んでいて田舎者だから、そういう態度になったんだろうさ。だから、そんなに落ち込むなよ」
「うん・・・途中まで、上手くいっていただけに、逆にショックでね・・・。切り替えないとな!」
と源はいうと、両手で、自分の顔を叩いた。
「そういえば、ウオウルフたちは?」というと、ロックが答える。
「ウオウルフたちも何だか、元気なかったぞ。源の邪魔をしてしまったのを野生ながらに感じたのかもしれないな」
それを聞いて、源は、ウオウルフたちにも謝った。人間とも仲良く共存したかったという話をした。ウオウルフの二匹は頷いていたが、、本当に言葉が通じているのかは、分からなかった。