199章 制圧
『襲われているだろう村を効率よく探すにはどうすればいい?愛』
『危険を伴いますが、広範囲に渡って、広げられているソースの位置から、さらに高所の位置からのサンダー系のマナを発動させることで、電気による物質の分子レベルによる振動を探知することによって人工物である場所だと思われる所を特定することが可能です。源』
『そんなことが出来るのか!?』
『サンダー系のマナを源が使用した際に、観測された方法です
直接、近くで確認できるわけではないので、精度はかなり劣ってしまいますが、村単位での所在に関しては、特定できると思われます
ですが、その村にワグワナ法国軍が侵攻しているかまでは、把握できないでしょう
注意としては、源のマナ効果からすれば、50%ほどの出力で確認できると思われます。源』
『分かった。やってみよう』
源は、200km範囲に広がった数少ないソースに空間ゲートを開いて、各場所の高い場所に、【雷雨】を発動させた。
雲一つない場所の大空に、突然、大量の巨大な雷の雨が、ほとばしり、微量な電気が、広範囲に大地へと広がった。
『南東31km。南45km。南西67km。北東32km。北76km。北西83kmの地点に、人工物だと思われるものを探知しました。源』
愛は、源の視界に、その探知した場所にマーカーを付けて表示した。
『最短距離になるように誘導してくれ』
『分かりました。源。赤く点滅している場所に向かってください』
源は、音速をも超えるスピードで、急加速した。リトシスが発動していなければ、空気をも切裂くドーナツベーパー現象が起こったかもしれないが、空気抵抗さえもリトシスは遮断する。
数十キロの距離ぐらいなら、数秒もあれば、到着してしまう。
ワグワナ法国軍に襲われている村と襲われていない村とバラバラにあったが、どの村にもソースをばら撒いては、また他の村へと移動し続ける。
その間にも、ソースがある場所の上空に【雷雨】を発動させる。
何度か試したが、それ以上の村の所在情報は掴めない。
遅れて、ヌーノで助けた獣人の民たちに他の村の所在をソースが聞き出したが、源が探知したものと一致していた。それ以外の村はこの周辺にはないようだ。
―――セルフィによるマナの効果が解除されると、ワグワナ法国軍の兵士たちは、目の前に襲っていたはずの獣人たちが、突如として消え去り、殺したと思って転がしておいた獣人の死体も、消えていたのに、驚く。
「どういうことだ・・・??」
混乱している中、指揮官によって、指示が出された。
《獣人によるマインド系マナの策略が行われていたようだ
追い込んだ汚れた生き物たちは、中心街へと逃げて行った
これから、軍全体で、中心街へと向かい、奴ら汚物を見つけ次第、排除せよ
報告によれば、奴らも無抵抗というわけではない
こちら側も被害が出ている
注意して、中心街へと移動を開始せよ》
ワグワナ法国軍の兵士たちは、一杯くわされたと不機嫌になりながら、街の中心へと移動をはじめた。
中規模都市ヌーノの中心街は、霧のようなもやがたちこめていて、視界が悪くなっていた。中へ行けば行くほど、霧は濃くなり5mほど先であっても把握できなくなっていた。
これもまた獣人たちによる誤魔化しだろうと思ったワグワナ法国軍の兵士たちは、目の前に人らしき影を発見すると見境なく、攻撃した。
しかし、その影は、ただの獣人の民ではなかった。
振り下ろされる剣をさばいて、逆に兵士をレジェンド兵は、斬り裂いた。
フレーは、近づいてきた大勢の近づく兵士たちに向かって、凍てつく息を吐いて、氷付かせる。
「た・・・助けてくれーー・・・」
霧の中のダフキンは、戦力を倍増させていた。源から受け取ったカーボン製のナイフを的確に兵士の眉間に投げつけ倒していく。
ダフキンのまわりにいる兵士たちは、5人単位で顔面を狙われ瞬時に倒れていく。どれだけ重装備をしても視界のためにある隙間にダフキンのナイフは飛び込み即死させていくからだ。
ダフキンの使っているナイフは、一本だったはずだが、次から次へとそのナイフは、投げられ、突き刺さったかと思うとそのナイフは消えていく。
霧の中で、攻撃された悲鳴とも言えないようなうめき声がまわりに広がるが、ワグワナ法国軍の兵士たちは、それは獣人たちのものだと勘違いしながら、次々と霧の中へと余裕の表情で入っていく。
霧の中にまぎれたダフキンは、止められるわけもなかったが、ダフキン以外の兵士たちの強さも普通ではなかった。
ミカエルによって敵味方の位置を把握していた新大共和ケーシスとレジェンドの兵士たちは、実際は、霧によってみえないはずだったが、ミカエルの探知機能によって明確に相手の姿を仮想によって表現されていた。
敵味方も把握できないワグワナ法国軍の兵士たちは、なすすべもなく、霧の中に入ったが最後、斬り倒されていった。
戦いの最中にセルフィから報告がはいる。
『ヌーノ以外の襲われている村は、3つだ
ヌーノと同じように、その村の中心へと囲むようにワグワナ法国軍が、侵攻している
これから目の前に、時空空間ゲートが現れた者は、転移して、その村のワグワナ法国軍を倒してほしい
ゲートが現れなかった兵は、ヌーノの制圧をそのまま行ってくれ』
ミカエルによってヌーノ含めた4つの町の状況を把握していたので、ミカエルが、的確に、仲間の戦力を把握して、4つに分けて表示させていた。
新大共和ケーシスとレジェンドの兵士たちは、飛び込むように、目の前のゲートに入っていく。
村の獣人たちの半分近くは、すでに時空空間ゲートで安全な場所に転移されていた。
ローグ・プレス、エリーゼ・プル、バーボン・パスタボ、ダフキン、そして、ウオウルフ隊のオウガウも、ゲートで各村へと移動した。
転移した兵士たちには、源によってばら撒かれたソースの情報から、すぐに村の大雑把な即席の全体マップが表示され、それを基にしてエリーゼ・プルたちが、制圧のための指示を出す。
リリスとロック、ルシル・ピアゴは、戦力を一番投入されていたヌーノに残った。
バルト・ピレリリは、新大共和ケーシス、そして、ボルア・ニールセンは、レジェンドの防衛を任され、今回の戦いには参加していない。
『ミカエルによって敵味方、民の区別された表示はされるが、それは100%正しい表示ではないので、実際に敵なのかどうかを自分たちの目で見分けて攻撃してくれ
表示された識別情報の色の精度は、60%ほどしかないと思ってくれ』
『『『分かりました』』』
今回、ワグワナ法国軍制圧のために選ばれた新大共和ケーシスとレジェンドの兵士たちは、選りすぐりの者たちだった。
それぞれが、マナやスキルを独自に使いこなしていたので、Cクラスばかりのワグワナ法国軍の兵士たちを圧倒していた。
数こそワグワナ法国軍の方が多かったが、5人まとめてもこちらの兵士ひとりには勝てなかった。
ウオガウは、70匹のウオウルフ隊を引き連れて、1つの村をまかされた。
ウオウルフたちも、レジェンドの兵士と動揺に、能力追加珠や人工核によってさらに自己能力を伸ばしていた。
転移ゲートに飛び出して、縦横無尽にワグワナ法国軍に走り込んで、鎧につけられたウィングソードで敵を真っ二つに斬り裂いていく。
離れた場所にいる敵には、炎弾を口から出して倒しているウオウルフもいた。
ウオウルフたちにも、ミカエルの表示はされていたが、それと同時に、嗅覚などの自分たちの本能的な能力によって、ミカエルに情報を送り、識別の精度を高めていた。
民である獣人は確実に攻撃することなく、敵兵だけを攻撃した。
虐殺を繰り返すワグワナ法国軍に、襲われもうダメだとあきらめていた獣人の民を助けていく。
怪我をしている獣人たちには、走りながらポーションをふりかけていった。
他の2つ村では、エリーゼ・プル、バーボン・パスタボ、ローグ・プレス、ルシル・ピアゴ、ダフキンを含めた兵士たちが、戦っていた。
エリーゼ・プルとバーボン・パスタボは、ロックよりも強いのではないかというほどの戦果をみせつけた。
ワグワナ法国軍の兵士では、まったく相手にならない。
鉄の装備をしていた兵士たちの鎧をまるで粘土を斬るかのように、斬り裂いていく。
しかし、ダフキンと変わらないほどの速さで、ワグワナ法国軍の兵士を多く倒していたのは、ルシル・ピアゴだった。
離れた場所にいる敵兵士でも、瞬時にデッドショットが放たれ、次々と四方八方にいる敵を倒していく。
ルシルの体には、沢山の充填するための弾薬があちこちに付けられ、デッドショットの弾が無くなると同時に、流れるような動きで、すぐに弾薬を装填する。
まるで無制限に弾があるかのように、敵を倒しながら、空になった弾薬を捨てていく。
デッドショットには、トリガーがなく、ルシルがロックオンして、射撃のイメージを抱くだけで弾は放たれる。
ワグワナ法国軍の兵士は、これらの突然の襲撃に対応できずに、制圧されていった。
『ミカエル。俺たちが来てからの獣人の被害はどれぐらいだ?』
『セルフィ様のゲートを利用せず、外へと逃げようとしたヌーノ以外の獣人たちの被害が一番大きく、200人を超える死者が出ています。セルフィ様』
万単位で虐殺を行ったワグワナ法国軍を200人の被害で抑えられているのは、多いのか少ないのかは分からないが、制圧はほとんど完了した。
『セルフィ様。1000名ほどのトリアティー師団国の軍が、あと30分ほどで、ヌーノに到着します
速足で向かうことができる獣人たちだけで編成され、他の多くの兵士たちも、後続として続いて村へと向かって来ています』
情報を聞きつけてから、数十キロの距離の場所に兵士を到着させたことは、早いと言える。民を助けようとする気概はトリアティー師団国にはあるようだな。
ワグワナ法国軍は、突如として現れた兵士やモンスターの襲来によって、自分たちのおかれている状況を把握して、逃亡をはかるものたちが、出てきた。
ウオウルフたちによって助けられた村は、トリアティー師団国の援軍だと思ってくれるかもしれないが、新大共和ケーシスとレジェンドの兵士たちは、人間なので、誤魔化しは効かないと思われる。
ヌーノでは、機転を利かせて霧のマナで視界を悪くさせていたようなので、なんとかなるかもしれないが、他の2つ村での戦闘は、人間の軍による介入が報告されることだろう・・・。
獣人の民を助けたが、彼らに姿を現し話をしたのは、ミカエルだ。2つの村では、人間の兵士の援軍を見られたとは思うが、その人たちには、説明が必要か・・・。
あとは、30分で俺たちがどのように撤退するかだ・・・。事後処理が大変だ。
源は、時空空間ゲートで助けた獣人の民たちに、ミカエルに話す内容を伝え、一斉に、ソースが話しかけた。
「ワグワナ法国軍は、壊滅し、残った兵士たちも逃亡しました
ワグワナ法国軍が突然侵攻して、トリアティー師団国の皆さんを襲いはじめましたが、彼らワグワナ法国軍の兵士たちも誘導されていたのです
ワグワナ法国とトリアティー師団国を本格的な戦争に導こうとしている者たちがいるのです
わたしは、物質モンスターですが、両国が、戦争をしないようにと願って、今回、あなたがたを助けました
あと30分もすれば、トリアティー師団国の軍が、ヌーノに到着しますので、これから、ヌーノから5km離れた場所に通じる転移空間をまた出します
それでお帰りください
他の村の方たちも、トリアティー師団国の軍が来る場所のほうが安全だと思われるますので、同じところに転移させます
転移空間に入って助けをお待ちください」
3回同じ内容をミカエルが、助けた獣人の民に伝えると、時空空間ゲートで安全だと思われる場所に移動させた。
『みんな。ワグワナ法国軍は、おおむね制圧完了した
多くの民の命がみんなのおかげで助かったよ
目の前に、新大共和ケーシスとレジェンドに通じる時空空間ゲートを開くから、それで帰ってくれ
今回、ワグワナ法国軍を倒したのは、謎の物質モンスターだということにしてある
俺たちも、この戦いには、参加していないということにしておいてくれ
特に新大共和ケーシスの兵士は、介入していないと情報封鎖する必要がある
逃げだしたワグワナ法国軍の兵士たちから、俺たちのことは報告されてしまうとは思うけど、そこはなんとかしてみる
新大共和ケーシスの皆さんには、これから迷惑がかかるかもしれませんが、手を貸してくださり、ありがとうございます
なるべく、俺たちの介入した痕跡を無くしてチェックしてから転移してくれ
特にルシル・ピアゴのように弾倉を辺り一面にばら撒くような痕跡を残されると後から問題になるからね』
『あれ・・・?そういえば・・・好き放題、捨ててましたね・・・あはははは』
『弾倉は、俺が全部回収しているから大丈夫だよ』
『あ・・・ありがとうございます。あはははは』
なんだか、ルシル・ピアゴの誤魔化し方をみると研究所の後輩の高村を思い出す。
本当ならワグワナ法国の死体も全部回収して、自分たちの痕跡を無くしたいところだが、ワグワナ法国の被害もみせなければ、トリアティー師団国が、一方的に被害をこうむっただけだと思われるかもしれないので、わざと残すことにした。
トリアティー師団国軍が来る前に、新大共和ケーシスとレジェンドの兵を一斉に、転移させ戻した。
源も一旦、レジェンドに戻って、その後の様子をミカエルのソースの映像で確認することとした。