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197章 見学と急報

ガマル・ルィール・チェクホン殿下、リビアン・スザージ議員、ザンサニ・マール、そして、エバー村の人々は、新大共和ケーシスを見学したが、今までの価値観がすべて崩壊するようなものばかりを目にして、口が開いたままだった。


源の時空空間ゲートによって、エバー村の村人は、全員一斉に、新大共和ケーシスへと転移した。


ミカエルが、新大共和ケーシスへを案内していったが、どれをとっても、驚くものばかりで、頭がついていかなかったようだ。


夕方まで、見学を続け、外来専用の宿屋となった巨石飛行物体トーラスに設けられた広間で、一日目の見学を終え、休息時間とした。

ガマル・ルィール・チェクホンは、セルフィに伝えた。


「セルフィ殿のいっておられた意味が、分かった

不幸せな者が、ひとりもいないようにさえ見えた・・・これこそが平和そのもの

ダフキン・マットが言っていたのも納得だ

ワグワナ法国もこのような国にできるものだろうか?」


源は、力強く答えた。

「できます!

新大共和ケーシスであっても、はじめはかなり反発する人がいました

特にボルフ王国の貴族もそうでしたが、彼らも奴隷にして、無理やり聖書の価値観である平和や正義を半強制的に教え込んだのです

今では、他人を蔑むこともなくなりました

奴隷の中には、盗賊をしていた者たちも多いのです」


「あの笑顔の奴隷たちが元盗賊!?」


「はい。彼らはわたしたちの輸送手段であるトラックを襲った盗賊でしたが、今は、立派な民として、働いています

あまり働きすぎるなと言っているのですが、罪を償いたいと努力を続けています

彼らにも家を与え、食べ物も毎日与えています

神の民と変わらない待遇で、あらゆるお店が利用できるようにしています」


「奴隷は、ひどい扱いをする国もあるが、確かに恩情を与えれば、奴隷は反乱を起こさない

しかし、新大共和ケーシスの奴隷は、恩情を超えている・・・」


「愛や平和を無理やり体験させ、脳に植え付けるのです

新大共和ケーシスのクリスチャンたちは、どんどん与えていきます

奴隷にも気にとめて声をかけて、助けてあげるのです

愛を与え続けるのです

どこにいっても愛情表現をする者たちや環境があるので、悪人さえも善人になるように誘導されていってしまうのです

マインドコントロールですね

盗賊奴隷の中には、こんな親切にしてもらったことがないと毎日泣いている者もいました」


「我々の平和主義は、よわよわしすぎたのか・・・。これほどまでに、力強く愛や平和を表して、与え続ける環境を作り出せば、民たちは、あのような顔になるものなんだな・・・ここは、夢のような国だ・・・」


「神様は、すべての人間が幸せになれるための環境を常にキープし続けられています

ですが、人間がそれに気づかずに現実を無視して不完全な人間が作り出した社会通念に脳を汚染されながら悲観的になり、不安や争い、自分の頭の中に入り込んだ悪の情報によって自らを苦しめてしまうので、不幸せだと思い込んでいるのです

事実に基づいて、生活していけば、みな幸せに暮らせるのです

今は、新大共和ケーシスとレジェンド、そして、龍王の意思を受け継いだ村々だけに起こっている現象ですが、世界全体がこのような環境を作り出すことによって、平和を伝染させることが出来るようになります

100人の中の99人が、一斉に右を向けば、自分だけ右を向いていないひとりも、右を向いてしまうように、愛や正義によってマインドコントロール行っていくのです

そうなれば、戦争なんて、必要なくなるのです

遺跡から湧き出すモンスターと戦わなければいけないので、兵士たちは必要ですが、国と国とが戦わなくなれば、それほど驚異にはならないでしょう」


「分かった!龍王の意思を全力で、ワグワナ法国に広げよう

ワグワナ法国に一神教の教えを広げることに懸念を抱いていたが、シンにワグワナ法国を乗っ取られ続け民が苦しめられているのを考えれば、それを受け入れることは弊害にさえならない

セルフィ殿には、トリアティー師団国の女王ゴルバフ・ダレーシアにも是非会ってもらいたい

彼女も納得するはずだ

トリアティー師団国は、魔法国モーメントを設立したエジプタスの意思が宿っているので、一神教が長らく続いている国で、わしよりも理解するはずだ」


ミカエルによる急報の表示が点滅した。


『セルフィ様。ワグワナ法国によるトリアティー師団国への侵攻が開始されたようです

二日前に、ワグワナ法国の軍が侵入してから、すでに1万人を超える被害者が出ています

ワグワナ法国による獣人の民への虐殺が行われています』


『1万人!?それまで軍による介入に気づかなかったのか?』


『ソースは、ワグワナ法国とペルマゼ獣王国には、若干多く配備されていますが、世界中に広げていたために、限られた都市にしか配備されていません

トリアティー師団国内で兵士を徐々に招集される。または、マナなどによって兵が隠されていたとしたら、それに気づくことは困難です

トリアティー師団国の首都マーガレイヌに、その報がもたらされたのも、つい先ほどです。セルフィ様』


セルフィが、何か考え事をしていることに気づいて、ガマル・ルィール・チェクホンが、声をかけた。


「何か問題でもあるのか?」


「今、急報によって知ったのですが、ワグワナ法国の軍によるトリアティー師団国への侵攻がはじまったということです

徹底的な虐殺が行われているようで、すでに1万人を超える被害者が出ているということです」


「なに!?」


エバー村のひとたちもそれを聞いてざわめきはじめる。


「あ!エリー。そういえば、確かあの工場で、そんなこと言ってたわよね?」


「そうね・・・伝えること忘れてたわね・・・」


エバーは、セルフィに伝えた。

「セルフィ様。わたしたち、ワグワナ法国のある古い工場の中で、組織の人間たちが話している内容を聞きました

たしか、ワグワナ法国がトリアティー師団国にひどい虐殺をするようにさせて、わざとワグワナ法国を恨ませるようにしろとか・・・戦争をはじめろといった命令をしていました」


今回のこれらのことは、ソロは気づけなかったのか

ミカエルの情報をソロにはモニターを通して伝えてはいるが、さすがにそこまで万能ではないということだな・・・。


「ごめんなさい・・・早くそのことを伝えていれば・・・」


ふたりの少女は、申し訳なさそうな顔をしてうつむいた。


「君たちは、命を狙われていたんでしょ?他のことまで考えられなかったのは、しょうがないことだよ

君たちのせいじゃない」


『ミカエル。ワグワナ法国軍は、どこにいる?』


『首都マーガレイヌから120km北東の位置にある中規模都市ヌーノが一番の被害を出しているということですが、今現在、ワグワナ法国軍がどこにいるのかは、まだ把握できていません。セルフィ様』


『その様子だとトリアティー師団国の軍もまだ向かってはいないようだな』


『はい。現在、軍による編成が行われている最中です。セルフィ様』


首都から100km範囲に近いところまで侵攻されて、まだ軍を動かしていないというのは、お粗末すぎるだろ・・・


急いで、そのことをサネル・カパ・デーレピュースに報告した。


『サネル・カパ・デーレピュース上院議員。現在、ワグワナ法国によるトリアティー師団国への侵攻がはじまり、獣人の民が虐殺されているということです

帝国として軍を動かしてもいいものですか?』


『なんですと!?ワグワナ法国が・・・

しかし・・・帝国として軍を動かすには、許可が必要になります』


『その許可はいつ頃もらえるものですか?』


『数日は、かかってしまうでしょう・・・』


『数日・・・ワグワナ法国は、たった二日で、1万人もの民を虐殺しているのですよ・・・トリアティー師団国は、帝国に連盟している国なのですから、その国を見捨てるようなものですよ』


『帝国としてではなく、あくまで、セルフィ様が個人で助ける分には、許可は、あとあと発行させることもできます

ですが、レジェンドや新大共和ケーシスの軍をトリアティー師団国へと無断で連れて行くとなると問題となるのは、間違いないでしょう』


『軍として動かなければいいということですね?』


『その他にも、問題はありますが、軍で動くのは、誤魔化しも効かなくなるということです』


源は、考えた。

準備が整っていない状況での突然の襲来による被害は、コボルト襲来の時にも味わった苦い記憶だ。

あの時は、まだ自分たちが住んでいた土地に攻め込まれただけに対処が可能だったが、今回守るべきトリアティー師団国については情報がほとんどない。

ワグワナ法国側がどのような大義名分で侵攻してきているのかも分からない以上、レジェンドが介入していいのかも分からない。


ガマル・ルィール・チェクホンも難しい問題だと考え込む。


「やはり、助けに行くことは、出来ぬか・・・」


その言葉を聞いて、エバーは困惑した。

「どうしてですか?助けることが出来るのなら、助ければいいんじゃないんですか?」


「そういうわけにもいかないんだよ・・・。エバー殿

苦しんでいる者を助けることは、正しいが、その正しさが、のちに正しいと評価されるかは別問題なのだ

新大共和ケーシスやレジェンドは、ワグワナ法国、トリアティー師団国とは別の国であり、別の勢力なのだから、勝手な介入は出来ぬのだ」


その話を聞いてもエバーは納得できないという面持ちだった。


「わたしが行きましょう

セルフィ様。被害をどれほど抑えられるかは、分かりませんが、痕跡を残さず、対処すればいいのであれば、わたしが適任でしょう」


ダフキンが名乗りをあげた。


ダフキンさんは、千を超える軍隊をひとりで倒したほどの力を持っている。その時は、標的としてダフキンさんに的が当てられていた。しかし、今回の標的は、トリアティー師団国なのだから、暗殺者としての訓練を受けているであろうダフキンさんが、その身をさらさずに対処もできるだろう。


だけど・・・


「ダフキンさんは、万全な体調ではありませんし、これからはご家族と暮らしていってもらいたいと思ってますので・・・」


「セルフィ様。新大共和ケーシスやレジェンドは、わたしたちを助けてくださいました。ですから、わたしが役立つことであるのなら、お使いください」


「分かりました・・・ですが、ダフキンさんだけに任せるわけにはいかないので、わたしも行きます

くれぐれも無茶はしないでください

トリアティー師団国よりもダフキンさんの命を優先にしてください」


「分かりました。セルフィ様」


「と、いうことですので、今回の戦いへの介入は、みなさんも他言しないようにお願います」


エバー村の人々は、無言で頷いた。


源は、ダフキンに、カーボンナノチューブで作られた武具を与えた。愛によってダフキンのサイズにあうものをすぐに見つけ出して、時空空間ゲートで取り出した。色は、黒色の物を選んだ。


「ダフキンさんの武器は、どのような物がいいですか?」


「黒のナイフを一本用意していただければ、それで十分です」


「ナイフを一本ですか・・・?」


源は、カーボン製のナイフを取り出したが、そのナイフには、付加は何もされていない。


「これでもいいでしょうか?」


「素晴らしいナイフですね

ありがとうございます」


「あと、これを目と耳につけてください。ナノアイコンタクトとナノイヤホンというもので、これらを利用すれば、情報を素早く伝えることが出来るようになります」


ダフキンは、セルフィに教えられるまま、それらを取りつけた。


『ミカエル。中規模都市ヌーノは、把握できているか?』


『いえ。セルフィ様。まだヌーノには、ソースは到着しておりません』


『ヌーノに一番近いソースの座標を教えてくれ』


『分かりました。セルフィ様』


心配そうな顔をするエバーとシェラフの前だったが、トリアティー師団国の大雑把な全体図にソースの場所が、表示され、瞬間移動で、ダフキンを連れて、移動した。

そして、そこから、リトシスによって空を移動した。

その速度、マッハ12。


もの凄いスピードで移動するが、リトシスの効果で、ダフキンも問題なく移動する。

そのような体験をはじめてしたとは思うが、ダフキンは、まったく動揺をみせなかった。


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