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19章 初めての遭遇

この森の主、ウオウルフとの共存共栄を果たした源とロックは、夜にウオウルフが、護衛をしてくれるという申し出に感謝してまかせた。


源は、金剛石グラファイトの素材で作ったワイヤー、グラファイロープを作り、そのワイヤーを森で監視しているウオウルフの近くまで、引いて、ロックハウスと繋げた。


何か怪しいものが近づいたり、モンスターなどが来た場合は、この糸を揺らすように指示した。


そうすることで、ロックハウスのグラファイロープが、揺れて、木で作ったぶら下げてある木の板が音を鳴らす仕組みになっている。警戒音に気づいたら、すぐに源たちも駆けつけるということにした。


ウオウルフたちとの会合の数日は、まだロックも源も、信用せず、かわらずロックハウスの中で、夜は番をしていたが、日々一緒に生活をしはじめると、彼らが本当に裏切るつもりがないと判断しはじめた。


違うモンスターが現れた時もちゃんとグラファイロープで知らせてくれて、一緒にモンスターも倒した。


それで、信頼が生まれ、夜は、彼らに監視をまかせ、ふたりは、交代の番をせずに、休むことが出来るようになった。知らないうちに疲労していたふたりも、休むことができた。


もちろん、ロックハウスの外には、ウオウルフたちにも教えていないグラファイロープが張り巡らされていて、もし、近づいたら、それでも警戒音が鳴らされ、起きられるようにしておいた。


このグラファイロープは、ピアノ線のように張ることが出来て、強度は、5倍以上だ。

普通はグラファイトで作ると、横からの力に弱いので使えないが、他の素材も組み合わせることで、そこそこの強化したワイヤーを造り出すことに成功した。かなりの粘りを得られた。


ウオウルフにとっては、ここの場所は縄張りだったので、土地勘もあり、優れた監視役を毎日続けてくれていた。夜は、5匹以上の監視が常に、ロックハウスを守るように配置されている。


昼間には、ウオウルフは、数匹が護衛としてついてくれた。

護衛ではないとは思うが、ウオガウの息子ガーウも、よくロックハウスに遊びにきては、フォルと遊んでくれていた。


昼になると、ガーウは、源のところにきて、ずっとそばで待機していた。


ウオウルフの角は、大人になるまでは、小さいようだ。めすの角も小さい。大きな角を持つのは、大人になったおすウオウルフのようだ。


神様は、動物を人間の友達として、用意された。人と動物は本来は分かり合える。自然界が弱肉強食で厳しいなんてことは嘘だ。なぜなら、生存している動物の9割は草食で、ナマケモノという物凄く遅く動く動物さえも平気で生きている。恐竜でさえ発見されたものは、95%が草食なのだ。


むしろ、肉食動物のほうが現実的に不自然だ。草食動物は、動かない植物を食べるので、安定して生きていけるが、肉食動物は、相手が動くのでエネルギーを消費し、毎回必死に追いかけなければいけない。それに人間と違って、肉食動物は、1週間に一回のペースほどしか食事をしない。食べたいだけ食べてなんて生活ではない。だから、狩りに失敗すると、命がけになってしまう。


このように肉食動物が増えたのは、ノアの大洪水の後からだ。それまでは、人も動物も恐竜も巨大で、その腸も大きく植物を消化する腸内細菌を飼うことができた。ライオンなどは、本当は、草食動物なのだ。ただ、環境が激変してしまって、今の長さの腸では、草が消化できないので、草食動物の腸だけを狙っているのだ。結局ライオンなども、草を求めていることになる。


アフリカなどでは、ライオンなどは恐れられない。まだゾウのほうが怖がられる。人は、残酷な映像をクローズアップして見せられ続けると弱肉強食の世界だと錯覚してしまうが、もし、本当にそうなら、どうして、人間は、外で気楽に歩けるのだろうか。弱肉強食の世界なんて大嘘なのだ。


だが、この世界は違う。ここは、俺を拉致したあいつらが作り出した仮想空間で、異世界だ。どんな設定にでもできる。動物の人間は、はなから相いれない設定にされているかもしれない。しかも、ここで死ねば、現実の俺も死んでしまうというのだ。だから、モンスターをすぐには信頼できない。

俺は、鳥人間だから、受け入れられているだけなのかもしれない。この世界のことをまったく解っていないので、最悪の結果を想定して動くことが大切になる。


にしても、このガーウをみていると、リアルの世界とあまり変わらない設定なのかもしれないと少し思ってしまった。


ガーウは、源のズボンをひっぱり始めた。


「なんだい?ガーウ」


そういうと、ガーウは、何やら、目で方向を教えるように、訴えてきた。


「付いてこいって言ってるの?」と源が聞くと、ガーウは、頷いた。


突然どうしたんだろうと思いながら、ガーウが進むので、その後をついていった。


ガーウが、案内したところには、数多くの果物が大量に木に実っていた。


「おー!すごい。これ食べれるのか?」と言うと、ガーウがまた頷く。

ウオウルフは食べることができても、源たちが食べられるかは分からない。なので、いくつかの種類の果物らしきものを取って、ロックハウスに持っていくことにした。


この場所を教えてくれたガーウに、源は、「ありがとう」と笑みを浮かべて、頭を撫でると、ガーウは、笑顔で笑ったような顔をしたように、源にはみえた。


うーん。ウオウルフって泣いたり笑ったりするものなのか?とまた疑問を抱いた。


さすがに、ここの縄張りをしきっているウオウルフだけあって、森に何があるのかをきちんと把握しているようだ。


ウオウルフたちの結束は固く、常に仲間数匹で行動を共にしていた。そうすることで、違うモンスターに襲われても対処するように考えられているのだろう。


ウオウルフ全体が家族のようになっていて、ここの家、あそこの家といった個別な組織体系ではなかった。


なんだか、古き良き時代の日本の光景をウオウルフたちから見た気さえしてしまった。


源とガーウは、果物を持って、ロックハウスに戻り始めた。


すると、なんだか、湖の方から人の声が聴こえた気がした。


『源。人間です』


『え・・・本当に人間なのか!?』


『はい。たぶん、人間のこどもが、湖で泳いでいると思われます』


『おー!やっぱり、この世界にも人間はいたんだ・・・!』と喜ぶが、すぐに考え直した。というのも、人間の姿をしたプログラムかもしれないからだ。


ただ、人間という種族も存在していること、そして、この世界で初めて人間種に遭遇できたことは、源にとっても喜ばしかった。


源は、ガーウを連れて、気づかれないように、ロックハウスに入った。そして、ロックに人間が湖で遊んでいることを報告した。


「人間がいるのか!」

源と同じ反応だ。


「そうだよ。ロック。はじめての人間との遭遇だ・・・」


「話に行こう!」とロックが喜んで立ち上がるが、源はそれを止めた。


「ロック。ちょっと待って」


「ん?どうした?」


「あのな。ロックはどこからどうみても、岩人間だろ?」


そういうと、すぐにロックは、理解したようで、残念そうに、座った。


「その人間っていうのは、こどもみたいだし、岩人間をみたら、人間がどう反応するのか、分からないよね・・・」


ロックは、何もいわず、残念そうにうなずく。


「でも、これはチャンスだと思うんだ。もし、あの子たちと仲良くなれたら、この世界がどうなっているのか、聞ける。鳥人間の俺とか、岩人間のロックだって、見た目はモンスターだけど中身は、人間だというのをこの世界では、普通に容認されているかもしれないだろ?」


「え!?そんな可能性があるのか??」


あ・・・ここが仮想空間だとロックは知らないから今の発言はまずいか・・・


「えっと・・・分からないじゃないか。1%でもそういう可能性があるってことだ」


「1%か・・・」


「とにかく、俺がそっと人間のこどものふりをして、話しかけてみるから、待っててよ」


「頼むぞ・・・源!仲良くなってくれよー!」


「頑張るよ・・・もし、ダメでも、あの子たちがどこから来たのかは、つけて確かめてくるよ」


「そうだな」


「それまでは、ロックは外にでないようにね。このロックハウスも遠くに見えるようなところに彼らはいるから、ロックがみえたら、逃げるかもしれないからさ・・・」


「わかったよ」


「あと、俺は人間にみえるかい?羽とか大丈夫かな?」


そう源が聞くと、ロックは、源をくるくるまわし、人間にみえるか確かめる。


「大丈夫だよ。源。羽もちゃんとマントに隠れている」


源はロックにチェックしてもらって、気合をいれて、外に出て、人間のこどもたちのところに、歩いていく。なんだか分からないけど、すごく緊張が走る。

この世界に来て半月以上も、モンスターだけしか見たことがなかった。

ロックだけが、話せる仲間だ。だが、源もロックもこの世界のことを何も知らない。知らない者同士が、何とか生きてこれただけで、奇跡的なことだった。

人間と接触できて、もし、受け入れてもらえたのなら、生存確率は飛躍的にあがる。


あのこどもたちは、俺とロックの命をにぎっているようなものだ・・・。源は、ウオウルフと戦った時ぐらい緊張を感じながら、なるべく、不自然じゃないように、右手と右足を同時に動かし、次に左手と左足を動かして歩く。


すでに不自然な歩き方になっていた・・・。


近づくと、人間のこども3人が、源に気づいた。すると3人は、すぐに、湖からあがって、武器を手にして警戒しはじめた。武器は、木で作られた棒の先に何かの金属が付けられている子供用の小さめの槍だ。


やっぱりだ・・・警戒された・・・やばいぞ・・・なんとか友好的だと思ってもらわないと・・・


源は必死に、手を上げて、とても不自然な笑顔で、手を振った。


敵ではないというのを出来るだけ、アピールしたい。


自分はこどもだという設定で、平和的で脅威じゃないというイメージに受け取ってほしいと願う・・・。


だが、3人のこどもたちは、警戒をやめずに、武器を持って、並んで源に向かって対峙する。


こどもの厳しい質問が飛んできた。


「あんた一体、ここで何しているんだ!?」


うーん・・・いい質問だ・・・ここで答えを間違えたら・・・さらに怪しまれるぞ・・・


「初めまして、こんにちは。僕は、き・・・記憶がないんだ・・・」


「何?」


「気づいたらここにいて、記憶がなくて困ってたんだ」


こどもたちは、こそこそ小さい声で、相談しあっているようだ。


「怪しいやつだな!何が目的だ!」


・・・。怪しかったか・・・親と旅をしている途中という話の設定も浮かんだが、ならお父さんは?といわれて、言われたまま、ロックをみせるわけにもい・・・それに、嘘はなるべく、避けようとした結果だったが・・・ダメだったか・・・


「本当なんだよ。記憶というか、気づいたら、ここにいたんだ」


「そんなことで生きていけるわけないだろ!」


確かにおっしゃるとおりです・・・ここは聞かなかったことにして、一方的に押し切って誤魔化すッ!


「いいかい。怖がらないでくれよ。僕は、君たちが初めてあった人間で、すごく嬉しいんだ。はじめて人間にあって、話したいと思ってるだけなんだ。信じてくれ」


こどもたちは、また小さい声で相談しあって、真ん中の一番年上らしき女の子が、源に聞いてきた。


「もしかして、遺跡から生まれたのか?」


ん・・・?遺跡から生まれた・・・?どういう・・・ちょっと待てよ・・・。あの洞窟がこの世界でいう遺跡というものだったとしたら、俺はあそこで生まれたのか??


「わからない。でも、洞窟の中で目を覚ましたんだ!」


こどもたちは、また相談しあう。そして、源に言って来た。


「たぶん、その洞窟は、遺跡だ。君は、ミステリアスバースだ」


ミステリアスバース・・・。不思議な生まれ?誕生か・・・


「その・・・ミステリアスバースで生まれるのは、よくあることなのか?」


「そうさ。色々な種族が遺跡から生まれてくる。みんな記憶がない」


そうか・・・俺とロックは、この世界でいうミステリアスバースなのか・・・1つ分かったぞ・・・ただ、こんな貴重な情報をこんなにすぐに与えてくれる。この子たちには嫌われたくない・・・。どうにか、取り入らなければ!


「それも知らなかったんだ。できれば、少しだけでも、話をしてくれないかい?怖いなら、僕はここに座ってでもいい」


こどもたちは、相談しあう。


手で源をまねいて、こっちに来るように、真ん中の女の子が、ジェスチャーをしてくれた。


「こっちに来なよ」


よかった・・・少し信頼してくれたみたいだ。でも、少しでも怖がらせたくない。


源は、両手をあげて、ゆっくりと、後ろ向きに歩いて、近づくことにした。


「どうして、後ろ向きに歩いてくるんだ?」


「君たちを怖がらせたくない。僕は本当に、君たちと話がしたいだけなんだ!」


少し間があいた後、話をしてくる。


「・・・あなたを信じるよ。記憶がなくて何も解らないんでしょ?」


「本当にそうなんだ・・・」


生前の記憶はあるけどね・・・この世界の記憶は0です・・・と心では答える。


「おいで、話だけならしてあげる」


「本当に、ありがとう!」


源は、心の中では、叫んでいた。ロック!!成功したぞ!!神様感謝しますぅ!


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