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174章 デッドショット

ニーナが、いつものように、ミカエルに保存されたあらゆる情報を検索していると、ミカエルからの通信が入った。


『ニーナ様。新大共和ケーシスの兵士ルシル・ピアゴ様が、ニーナ様に相談したいことがあると申し出ているのですが、どういたしましょうか』


『いいわ。繋げてちょうだい』


青年のような若い声で、通信が届けられた。


『わたしは、新大共和ケーシスのR部隊の兵士ルシル・ピアゴという者なのですが、ニーナ先生に、相談したいことがありまして、伺ってもよろしいでしょうか?』


『いいわよ。こちらに来てくださるのですか?』


『はい。今すぐに伺います』


ルシル・ピアゴは、マナソースを使って、瞬間移動して、ニーナの前に現れた。


「あの・・・わたしは、ルシル・ピアゴというのですが、ニーナ先生はどちらでしょうか?」


ニーナは、自分の顔を指さして答える。

「わたしが、ニーナよ」


「え!ニーナ先生!?こ・・・こども!?」


「これでも、14歳よ?」


「そ・・・そうですか・・・あの・・・その・・・あのトラックやバイクを発明したニーナ先生ですか?」


「発明はしてないわ。ミカエルの情報を改良して、トラックを実用化しただけね

でも、わたしが、あなたの言っているニーナよ」


「失礼しました。相談というのは、武器製造に関する依頼なのですが、兵士は、各自でオーダーメイドの武器を持参するように鍛冶屋などに頼んだり、ミカエルに注文したりするのですが、わたしの武器というのが独特でして・・・」


「独特?どんな武器なの?」


「はい。わたしの武器はショットです」


「セルフィ様が考案したショットね」


「はい。そうなんです。ですが、このショットは、剣や防具と比べると複雑で、どのように自分にあったものを作ろうかと試行錯誤しているのですが、難しくて・・・」


「そうよね。ショットは、それ自体が機械のように組み立てられているから、勉強していないと改良するのは難しいと思うわ」


「ミカエルが言っていることが、何言っているのか理解できなくて・・・」


「ミカエル。ルシル・ピアゴさんに何を言ったの?」


「はい。ニーナ様。ルシル・ピアゴ様は、新大共和ケーシスの兵士の中で、その実力は、群を抜いています。ショットを利用した兵士としては、世界一の使い手となります。ですが、その戦い方は独特で、固定して撃つはずのショットを振り回すように、相手を撃退するのです」


ミカエルは、海の時のルシル・ピアゴの戦いをニーナに映像を通して見せた。


「へー。凄いわね。マナを単独で発射したり、矢を放つよりも明らかに、早いわね」


「ですが、ニーナ様。ルシル・ピアゴ様の戦い方は、固定されたローショット(アサルトライフル)では、非効率なのです。ですから、弾を打ち出す銃身を極力最小減に留めて、間接を複数持ち合わせた銃を作成することを提案したのです」


ルシル・ピアゴは、ニーナに聞いた。


「言っている意味わかりますか・・・?わたしには、さっぱりで・・・」


「たぶん、ミカエルが提案している銃は、ルシル・ピアゴさんに合わせたオーダーメイドで、各方面に効率よく攻撃するために、膝や肘のような関節機能を取りつけたら使いやすくなるんじゃないかということじゃないかしら」


「ミカエル。それは造ってはみたの?」


「試作品は、作りましたが、安全性は、保障しかねます。ニーナ様」


「見せてちょうだい」


ミカエルは、作った新しい銃を瞬間移動で運んできた。

ニーナは、確認する。

その銃は、左右90度、合わせて180度の角度で銃身を折りたたむように動かすことができた。

ニーナの力では、簡単にその関節は、動かせないが、ルシル・ピアゴがやってみると手首の力だけで、銃身が動いた。

その力のかけ方で、ロックがかかり、その角度で、弾を発射できるようになっていた。

反対側に手首を振れば、戻すこともできる。


「でも・・・これ本当に、危険よね・・・こんなものルシルさん使えるの?」


「練習用の安全な弾を使って、何度も的を狙ってみたのですが、なかなか思ったようには、使えないんですよね・・・ですが、慣れれば、確かに使えそうではあります」


「ルシルさんでも練習が必要ということは、やっぱり、危険よ。でも・・・」


ニーナは、腕を組んで考え始める。


トラックやバイクは、ひとつひとつの部品が、まるで機械仕掛けのように力を分散させて、動かしていた。力の保存の法則によって小さな力で、大きな力を生むこともできる。

それに比べれば、ひとつの関節しかない作りは単純なものだ。

細かい力のかけ方によって、トラックなどは、操作可能になっている。


「手首の力で、動かす作りだから難しいのよ」


ルシル・ピアゴは、頭をかしげる。


「えっと・・・どういうことでしょうか」


「ルシルさんは、ミカエルと同機させてるのですか?」


「はい。ミカエルを同機させて、気配察知機能だけ、オンにしています」


「でしたら、分かるとは思いますけど、ミカエルは、ルシルさんの思考を読み取ることで、気配察知などの機能を動かし提供しています

それと同じように、ルシルさんのショットにも、意思によって動かせるように作り出せば、ルシルさんの感覚にあった武器が造れるんじゃないかしら」


「そんなことが可能なのですか?」


「トラックも、実は人が操作しなくても、ミカエルによって操作できるのよ。それをショットに応用するだけね」


「武器製造の依頼を引き受けてくださるということでしょうか?」


「正直、武器は作りたくないけど、ルシルさんなら、被害者を減らすほど、強くなってもらえるでしょ?」


「そうなりたいと思います!」


「なるべく希望に沿うようなものを作ってみるわ」


「ありがとうございます」



―――ニーナは、セルフィに連絡して、そのような依頼が来て製造したいということを伝えた。安全性を維持できるのなら、やってほしいと許可をもらった。


そして、セルフィが、ソロモン・ライ・ソロに使用している電脳測定機器を応用して、銃にも採用した。

有線でその回路を繋げることを最初は考えたが、戦いにそんなものがあるのは、邪魔なだけなので、無線で情報を飛ばせるようにした。

ルシル・ピアゴの兜に脳波計を設置させて、ミカエルとの伝道を利用し、処理させてから、銃の動きに連動するように作っていく。

そのショットは、思考するだけで、銃身の角度を素早く変えることができる。

また、それだけではなく、発射する時には、トリガーを弾く必要もなく、思考で、発射可能だ。

トリガーでは、アサルトライフルが打ち込む弾の制御が甘いが、意思による弾丸放出の場合は、無駄弾を減らすことができた。

意思による操作なので、ニーナの力でも、簡単に、利用できる。


相手の位置を把握できれば、それでターゲットを左右の位置だけはロックオンできる。

その方向に大雑把に銃を向けるだけで、銃身は、自動的に左右に設定され動くので、意識さえロックオンしていれば、手首を適当に横にどれだけ動かしても、的にあたってしまう。

従来のショットよりも、安全なものを開発してしまった。


ロックオンさえしなければ、弾は発射できないし、もし、発射したとしても、ロックオンしている場所にしか弾は、飛んでいかないからだ。


固定された銃の場合は、銃身との延長線上戦に、曖昧な感覚で予測しながら使用しなければいけないが、的確に当てようとするのなら、個人の能力に頼るしかなかった。

それをカバーしてしまったのだ。


ルシル・ピアゴに、試作品として、そのショットを使わせてみた。


ルシル・ピアゴは、新しい銃を前にかざして、ターゲットを右や左に変えると、自動的に銃口も素早く動いた。


「凄いですね・・・これ・・俺が狙いたいと思ったところに、勝手に動く!?」


「関節が自由自在というわけではないから、もちろん、自分の腕の関節、動かすことでそこはカバーしてもらわないといけないけど、左右に動かす分には、180度、素早く反応して、銃口を向けるわ。ロックオンは、視覚だけではなくルシル・ピアゴさん専用で、気配察知にも対応するわ」


「後ろの敵にも有効だということですね」


ルシルは、グラファイトの壁に囲まれたショット専用の射撃場で、両手に、そのショットを持って、腕をわざと交差して、的を撃ってみたり、試してみたが、どれも的の中心部分を撃ち抜いた。

ど真ん中というわけではないが、かなりの精度だ。


使えば使うほど、早く連射するようになる。


回転して、瞬時に、ターゲットを補足して、撃ち抜いた。


「トリガーを引かなくても撃てるので、かなり安定して狙えますね・・・」


「どう?使いやすい?」


「使いやすいなんてものじゃないですよ・・・練習なんていらないぐらい操作が簡単です・・・こどもでも使えるんじゃないですか?」


「そうかもしれないわね」


「博士。このショットの名前は、何と言うんですか?」


「名前ね・・・デッドショットとでも言えばいいんじゃないかしら、百発百中っていう意味よ」


「デッドショットですか。ありがとうございます!」


「今は、左右にしか動かせないけど、改良してみるわ」


ルシル・ピアゴは、飛び跳ねたり、ぐるぐるまわりながら、50個もの動く的の中心部分にことごとく、命中させた。

以前のルシルも凄かったが、腕をまわせなかった場所であっても、デッドショットを使えば、気配を察知すれば、放つことができるので、自由自在と言えるほどだった。


―――源は、後日、そのルシル・ピアゴの映像をニーナから見せてもらった。


「何だ!?これ・・・嘘だろ・・・あれ、全部、的に当たってるの!?」


「当たってるわ。ルシル・ピアゴさんだからこそ、上下の誤差もクリアしているけど、従来のショットよりも使いやすいはずよ」


「何・・・あのダンスするような銃の使い方・・・恰好いいし・・・っていうか・・・本当にミカエルの処理能力なしでやってるの?」


『気配察知だけのサポートしかしていません。セルフィ様』


まじか・・・接近戦だけなら、ゴルゴ1〇にも勝てそうなんだけど・・・


「ニーナ。彼のことリリスにも言っておいたほうがいいよ。凄い銃使いだと思う。それに、そのデッドショットの安全性が確保できたら、ワルサP99からデッドショットを兵士たちには保持させるようにしようか」


「デッドショットは、ミカエルの処理能力を少し使っているの。数が増えたらそれだけ危険にもなるかもしれないわ」


「えっと、どれぐらいの負荷がかかるの?」


「デッドショット1つに対して、大体50rpmぐらいよ」


「あ。それなら、全然大丈夫だね

ブレイン(スーパーコンピューター)1つでもあれば、いくらでもデッドショットを使用しても、処理可能だよ

念のため、1台のブレインをデッドショットだけに使用することにして、もし、ミカエルがフリーズ状態になったとしても、デッドショットには影響ないようにしておけばいいね」


「分かったわ。ありがとう。セルフィ」


ルシル・ピアゴさんも凄いけど、ニーナは、トラックの次に、武器まで製造したのか・・・自動追尾システムのような発想・・・相当勉強してるな・・・デッドショットは、現世の銃の概念を超えてる


『ミカエル。ルシル・ピアゴさんは、攻撃面は、確かに凄いと思うけど、守りの部分もちゃんと考慮して、サポートしてあげてよ』


『分かりました。セルフィ様』


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