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173章 視察訪問

「な・・・なんですか!?これは・・・」


サネル・カパ・デーレピュース上院議員は、村雨有紀と他数名を連れて、新大共和ケーシスの国を視察に訪問したが、目を疑うような光景に驚愕する。


源の時空空間ゲートを使って、ドラゴネル帝国からやってきた。


「以前、レジェンドに行った時にも、大きな壁に驚かされましたが、こ・・・これは・・・あの建物は、家ですか?」


源は、ひとつひとつ上院議員たちに説明していく。

「はい。レジェンドも、新大共和ケーシスも、民に学問を教えています

彼らが、それを利用して、物質モンスターと一緒に、色々な形の家を建ててるんですよ」


「素材は、木ですかな?」


「そうですね。主に木を材料とした家ですね」


「レンガ造りとは違って木なら色々な形の家を建てられるわけですな・・・ですが、あれは何です?あのこどもが、乗ってるものは・・・」


「あれはバイクという乗り物です

こどもは、街中では、それほどスピードは出せないように作られています

走ったほうが若干早いですかね」


「郊外では、早く走らせることができるのですか?」


「そうですけど、こどもたちは、あれ以上、スピードは出せないようにしてます

自分にも相手にも怪我をさせないためですね」


「あの大きな動くものは何ですか?」


「あれはトラックという荷馬車のようなものです

森から木材を大量にここに運んでは、その木材で建物を建ててるんですよ」


「あれは物質モンスターですか?馬もなしに動くとは・・・」


「うーん。水車のようなものでしょうか

水車も水の力を利用して、自動で動くように、トラックも馬なしで動かせるんです」


「あの荷物の量・・・あんなに積み込んでも動くのですか・・・」


「はい。今のところ2トンと8トンまでのものしか作成していませんが、将来は、さらに積載量を増やしたものも作ることができるようになるかもしれません

それに比べたらあのトラックは、かなり小さいですね」


「ち!小さい!?」


見たところ人間ひとりが操作できるようだ。あれだけの荷物量をたったひとりで移動させられるとしたら、あの見た事も聞いたこともないものは、もの凄い利益を生み出すと思われる。


サネル・カパ・デーレピュース上院議員も驚いていたが、村雨有紀は、新大共和ケーシスの生活ぶりをみて、よだれを垂らしながら微笑んでいる。


怖い・・・と源は思った。


「ですが、あれだけの物資を運ぶのなら盗賊に狙われないのでしょうか?」


「狙われますね。ですから、トラックには、防具と同じように、マナやスキルが付加されています」


「乗り物に、付加効果を!?」


「はい」


「そのアイディア。帝国でも実行してもよろしいでしょうか?馬車などに付加させようと・・・」


「もちろん、どうぞ。剣や防具にすでに不可を付けられる帝国ですから、出来ないことはないでしょう

あ!ですが、出来れば、鍛冶屋のサーロンさんを通してもらってもいいですか?

わたしの知り合いですので・・・」


「そうですね。分かりました。サーロン殿に頼むようにします」


「できるかどうか、サーロンさんに、確認しましょうか?」


「お願いします。セルフィ様」



源は、帝国に広げていたソースをサーロンのところに移動させて、通信した。


「サーロンさん。セルフィです。聞きたいことがあるのですがいいですか?」


サーロンは、突然、下の方から声が聞こえて、驚いて、飛び跳ねた。


「うわっ!何だ!?」


「セルフィです」


「セ・・・セルフィ様!?」


「はい。今、サーロンさんをサポートしてくれたサネル・カパ・デーレピュース上院議員と一緒に、新大共和ケーシスにいるんですが、新大共和ケーシスの馬車のような乗り物に、付加を付けているアイディアを帝国にも採用したいということなのですが、サーロンさんにもそれは可能でしょうか?」


「馬車にか・・・うーん・・・馬車ほどの大きなものに、付加を付けようと思えば、B級クラス以上のコアか、大量の核を使用することになりますね」


「出来ないことはないということですね。

そのアイディアを前のように申請して、サーロンさんを通して、帝国が依頼を出すかもしれないので、お願いできますか?」


「本当ですか!?いつも、セルフィ様には、感謝しています

是非、やらせてください!」


「詳しくは、サネル・カパ・デーレピュース上院議員と後日、打ち合わせしてください

それだけを聞きたくて連絡したので、失礼します」


ひょこひょこと小さい虫のようなものが、家から出て行くのをじーっと見つめるサーロンだった。


サネル・カパ・デーレピュース上院議員も、納得した表情だ。


源は、レジェンドでも、マイクやスピーカー、モニターなどを作り出しては、活用してきた。


いつ俺を拉致した、この世界の管理者たちが、止めに入るのかと思って様子をみていたが、特に制限されることは、今のところなかった。


銃という武器まで開発しては、活用しているのに、まったく反応がない。


奴らが作り出したコンピューターが今はこの世界を管理維持しているようだが、かなりの自由度があるようだった。


したがって、クリスチャン限定だが、現世の情報をミカエルを通して、民にも分け与えていった。


まさか、ニーナが、トラックを作るとは思いもよらなかったが・・・


トラックの形は違えど、名前も変更する必要もないと試している最中だ。


この世界の人たちからみれば、未知なものばかりに映ることだろう。


水道水や発電所なども、サネル・カパ・デーレピュース上院議員が説明を求めたので、隠すことなく話した。

普段から利用しているので、その製法こそ漏らすことはないが、特段、隠すこともしない。

サネル・カパ・デーレピュース上院議員は、それらにも、ひどく驚き、セルフィに申し出た。


「ドラゴネル帝国にも、この水道水を頼むことはできないでしょうか?セルフィ様」


「うーん・・・さすがにそれは・・・先ほどの付加については、帝国でも行えることですけど、この技術は、レジェンドと新大共和ケーシス独自のものです

与えることは、可能なのですが、それに伴って、帝国で働いている方たちの仕事を奪うことにもなるかもしれません」


「帝国では、井戸の管理は、土地所有者のものとなっているので、問題はないと思いますが・・・」


「井戸を掘る大工だかの仕事が無くなるのではないですか?帝国が、一神教を復古して、クリスチャンが多くなれば、提供したいとは思いますが、それを行う前にこれらの技術を提供すれば、私利私欲に走った人たちは、何をしてくるのか分かったものではありません

水道水に毒物を入れるなんてこともしてくるかもしれないんですからね」


「先にやるべきは、一神教の復古だということですね」


「はい。それなくして、技術を与えるのは、危険ですからね

何の価値観の統一もなく、技術だけを与えるのは、犯罪者に包丁を渡すようなものです

基本的に、レジェンドと新大共和ケーシス、そして、龍王の意思を受け継いだ村々以外には、これらの技術を提供しようとは考えてはいません

そこは皇帝陛下との約束でもありますからね

当たり前ですが、帝国に与えない技術を帝国以外の国に、渡すこともしませんので、帝国としても、技術の規制によって安全にもなるのではないでしょうか」


日本は、ほとんど日本人というひとつの民族だけで統一した価値観の下、国を運営したので、大陸よりも比較的、安定した歴史を持っている。日本人は、先住民である人間を食べるものたちを絶滅させたからだ。縄文土器のような毒々しいものを作る、人間を食べる先住民を奴隷にすることなく悉く滅ぼした。そして、海という壁であり、境界線で日本人が支配するということを維持できたので、守られていたのだ。

でも、大陸は、言葉も違えば、民族も違い、文化も宗教も違う。同じ土地にバラバラな価値観で生活していたので、人間を食べる価値観の集団も大量にいた。

大陸は、日本のような島国と違って環境が過酷だったのだ。だからこそ、一神教が平和をもたらした。人間を食べるような正義は悪と固定して、人に人権の価値観を植え付けていったのだ。

そして、この世界は、さらにバラバラ。世界を支配しているのは、現世では、人間だけだが、ここは、知的モンスターもいて、過酷さを増しているので、簡単には、レジェンドの技術を外には出せない。


「セルフィ様。なるべくわたしは、あなたに誠実に関わろうと考えているので、これは帝国側としては、損害になるかもしれないことですが、帝国は、世界を支配しコントロールしているからこそ、他国の発展を望まないという考え方もあるのです

他国に技術があるのなら、それは帝国にもあってしかるべきだと安心を得ようとするわけです」


「そうですね。管理側からすれば、そういう考え方になるは、当然のことでしょうね

価値観を統一させる手段がないのなら力で屈服させるしかないとなります

ですが、レジェンドと新大共和ケーシスは、お金を使用していません

お金は個人が大量に抱え込むと力となり、それを悪用しようとする者も出てくるかもしれませんが、レジェンドには、力の集中がないだけに、各自の仕事に留まるわけです」


現世では、経済学者ピケティが提唱したように、個人の財産が、国家を上回り、国の上に企業を利用した個人が憲法からもはばかられることもなく、権力を持ってしまっていた。

それは、お金という腐らない道具による弊害だ。

紙切れに価値があるという錯覚のように、お金も偶像思想のひとつにすぎないのだ。

お金も使い方によっては、便利なものとなるが、犯罪といわれるもののほとんどは、そのお金による弊害だ。

あらゆる依存症もその延長線上にある。

禁欲主義で自分にお金を使わず、まわりにお金を与えるクリスチャンの思想が、資本主義を発展させた。

カトリックによる規制の壁をプロテスタントは、クリスチャンであるということで恵みを与え増やしていったのだ。

クリスチャンは禁欲主義なので、神道のように欲張らない。

しかし、クリスチャンではないものたちは、カトリックが懸念した通り、お金という偶像に魅了され、クリスチャンたちの功績から、権力を悪用したものたちによって情報操作がされ、学問もわざと神がいないことを前提としたものばかりが、不自然に世に出回り続けたことによって、それらを現代人は、忘れてしまっているのだ。

歪曲させられた価値観、歴史観を植え付けられている。

進化論という学問のように見せかけた空想思想もそのひとつだ。

日本の発展も聖書からだということを知らない人がどれほどいるだろうか。

福沢諭吉も吉田松陰も、聖書的な思想に感化され、近代化を推奨したのだ。


「ですが・・・帝国ではお金は使用されているので、それを無くすことは不可能にも思えます・・・」


「突然、変えることなんて、もちろん、できませんよ

新大共和ケーシスやレジェンドは、0からはじまったからそれを可能にしただけで、帝国はすでに発展しているので、それを急に変えたら、問題になります

ボルフ王国の価値観が強い貴族たちは、未だにわたしたちを理解してくれませんからね

帝国は、猶更、時間をかけて変えていくしないとわたしも思いますよ

あらゆる問題を解決したいのなら、龍王の意思を復古させることが遠回りのようで、一番早いと思います」


「帝国からお金が無くなる、ですか・・・」


「そんな難しいことじゃないんですよ

例えば、家族間で、お金のやり取りがないと困りますか?

夕飯を作ってくれたお母さんに、毎回お金を払いますか?

お金を払いあわないと友達関係は築けませんか?

お金を払って恋人になってもらいますか?

帝国の学校をみてください。多くの貴族のこどもたちが、組織として各自、動いていますが、彼ら生徒にお金を渡さないと学校という組織は成り立ちませんか?

そのように、家族や学校がやっているように、それを国家規模で行っているだけなのが、新大共和ケーシスやレジェンドなんです

さらに帝国は、世界という規模で、家族制度に出来るのかということなのです

つまりお金は、信頼している者同士の関係では、不必要だということです

当たり前ですが、お金は人が作り出したものにすぎず、自然に発生しているものではないんですね

お金はただの発明品だということです

トラックがないことがサネル・カパ・デーレピュース上院議員の当たり前だというように、お金がないことが当たり前だとすれば、人はそのように認識するようになるんです

ですから、信頼できる基準として、聖書を心の指標としたクリスチャンに限定しているのです

一部の権力者、人を基準とした統治ではなく、聖書の教えという人間の上に神を置いて、悪を悪だと認識させる必要があるのです

信頼しないことを前提としたお金を手段ではなく、いつの間にか目的にしているから心が荒むんですね

だから、聖書は、偶像を否定するんです

神が造られた世界に存在しないもの、まやかし空想、仮想のような思想や物、事実ではないものなどを否定するのです」


「とても分かりやすいですな。今のこと、陛下にもお伝えしてもよろしいでしょうか」


「お願いします。皇帝陛下が理解を示されれば、それだけ復古も進みますしね」


新大共和ケーシスの案内を終え、レジェンドにも案内して、まわる。


ふと、レジェンド兵士たちが、街中で、会話をしながら、カーボンソードを抜いて、何か話をしていた。


サネル・カパ・デーレピュース上院議員が、それをみて、足を止めた。


「有紀・・・あれ・・・あれは、ダマスカス鋼ではないか?」


村雨有紀は、よだれを垂らして、答える。


「ダマスカス鋼ですぅ。サネル様」


「ダマスカス鋼?」

つい、源は、質問してしまった。


「あれですよ。あの兵士が着ている武具や持っている木目のような模様の剣です。伝説とさえ言われる世界でも数人しかそれを作ることができず、そんなものたちでさえも、生涯に数本作れるかどうかの業物です

リリス様や主要メンバーだけに与えられたものではないのですか!?」


え・・・カーボンナノチューブってそういうものだったのか・・・。俺は重さ関係ないからグラファイソードやグラファイトの防具を使い、帝国で出回っていたから特に何も言われなかったけど、グラファイトよりも明らかに比重が少ないカーボンソードや武具を一般兵には、渡すようにしている。


新大共和ケーシスの兵士にも配ろうとしているが、生産が間に合っていないが、レジェンド兵には皆与えている・・・。


まずい・・・?


「いや・・あれはですね・・・カーボンナノチューブという素材でして・・・そのダマスカス鋼という名前ではありません」


「違う・・・?のですか・・・うーん。似ているような気がしたんですけど・・・」


サネル・カパ・デーレピュース上院議員は、考え込んでいたが、あっちこっちのレジェンドの兵が皆、ダマスカス鋼だと思われる鎧を着ていたので、やはり違うのかと思ってくれたようだ。


「そうですか。そうですよね。あの兵士の方々、皆に、あれほど綺麗な木目のダマスカス鋼を与えられるわけがないですからね。あははは。申し訳ありません。勘違いいたしました」


いえ・・・こちらこそ・・・申し訳ありません・・・と心で謝っておく。


村雨有紀は、あれがダマスカス鋼だということに気づいているようだが、俺が誤魔化そうとしているのに配慮して、黙っていてくれているようだ。


カーボンナノチューブは、アルミニウムよりも比重が低い。2.7のアルミニウムに対して、カーボンは、1.3だ。鉄の8分の1ほどの軽さなので、比重がやたらと高いグラファイトと比べると格段の差だ。

カーボンは、編み物のように元素自体を形づくらなければいけないのに対して、グラファイトは、粘土をこねるように簡単に作れてしまうが、やたらと重い。

そんな重い装備は、一般兵には、負担がかかりすぎる。何とか使えるのは、モンスターのウオウルフなどだけになるので、兵士たちはカーボン製にしている。

しかも、比重が低いのに、鋼鉄の20倍もの強度、ダイヤモンド並みだから、確かに夢のような素材だ。

ダマスカス鋼という素材で、武具を作ったこの世界の鍛冶職人は、元素単位で作り上げたというのかだろうか・・・。リトシスも愛も使わず作ったのだとしたら、驚異的すぎる・・・。


源は、大げさに、腕を広げて、サウンドボックス(スピーカー)を紹介しはじめる。


「サネル・カパ・デーレピュース上院議員。これは、サウンドボックスというものでして、話す声を大きくしたり、離れたところの人にも、その話を伝達できるものなのです!」


「おお・・・。素晴らしいですね。もしかして、ソースから声が出るのも、そのサウンドボックスの技術なのでしょうか?」


「鋭い!!まさにそうです―――」


・・・・疲れる・・・。水道水ならまだしも・・・武具の性能が高いことは帝国が黙っていられるはずもない・・・今後は、ダマスカス鋼だと分からないように、兵士たちの武具に工夫を施そう・・・。羽のように軽いミスリルを表面にだけ付ければ、木目調の模様も誤魔化せるだろう・・・。


サネル・カパ・デーレピュース上院議員がいっているダマスカス鋼とカーボンが、違うものならいいんだけど・・・


『源。ダマスカス鋼とカーボンナノチューブは、ほとんど一致しているものと思われます。ですが、この世界にあるダマスカス鋼の武器よりも、源の作り出したカーボン製の武具のほうが精度が高いです』


『そうですか・・・ありがとう。愛・・・』


しかも、精度が高いと来ているし・・・やばいな・・・。リリスやエリーゼ・プルたちには、わざとあのまま木目調にしておいたほうがいいな。


リリスは王族だし、俺はグラファイト装備だったから、皇帝陛下も何も言われなかったんだろうな・・・。

リリスの武具は、思いっきり、緑色の木目調だ・・・。


リリスたちの装備は、たまたま、手に入ったということにしておこう。



―――源は、一通り新大共和ケーシスとレジェンドを案内したあと、考古学者の村雨有紀と話がしたいと時間を割いてもらいロックハウスに赴く。


「有紀さん。視察してみてどうでしたか?」


「セルフィ様。あれはクルマというものではないですか?」


源は驚いた。

車を知っている!?

しかし、車という言葉に反応してしまうのは、まずい・・・。

「車ですか・・・」


「遥か遠い昔、人々はこの時代よりも、発展した世界を作り上げていたとわたしは思うのです

そのひとつが、クルマという箱のような乗り物です」


「車ですか・・・」


同じことしか口から出せない。


「ビックベアーよりも重く、エレファントほど巨大なのに、スピードは速い。様々な種族に分かれた形を成していたといいます」


「あれは、トラックですよ・・・」


村雨有紀は、少し残念そうに下を向いてためいきをついた。


「ふぅー・・そうですか。あれはトラックでしたか・・・」


源は、村雨有紀は、凄い学者だと思った。

この世界は明らかに、現世と切り離されている。それを繋ぎ合わせるその能力、学者としての力量は、認めざるおえない。


「その見識を持つ、有紀さんに、頼みたいことがあったので、時間を作ってもらったのです

龍王の意思を受け継いだ村の司祭様に聞いたのですが、有力な者ほど、遺跡探検をする時に、学者を連れて行くらしいのですが、本当ですか?」


村雨有紀は、目を見開いて、机を両手で叩き、突然、立ちあがった。

ドガッ!

「ほんっとうです!!!」


「うわっ!」


驚いたな・・・もう・・・。


「落ち着いて座って話しましょう・・・座ってください」


「わたしは、戦うことができません。女ですし、力もなく、遺跡に入って謎を解明しようとするときは、冒険者アドベンチャーなどに依頼しなければ、いけないんです」


「わたしたちと」


「行きます!!」


「うわっ!」


声でか!てか、反応はやっ!


「奥深くの深層には、今だ解明できない謎が隠されている。世の理、世の鎖、迷宮が生み出す膨大なエネルギーです!」


「世の鎖?」


「龍王が残した聖書は、この世界と鎖のようなもので繋がっているとわたしは思うです!!」


また、立ちあがって力説しはじめてしまった・・・。この人、心臓に悪い・・・。


だけど、その内容は、それほど遠く間違ってはいない。その能力が必要かもしれない。


「す・・・座りましょう・・・遺跡は、膨大なエネルギーを持っているんですか?」


村雨有紀は、座って次は、小声のように小さい声で話しはじめる。

この人、わざと強弱してるんじゃないのか・・・。


「遺跡に入って261回。冒険者アドベンチャーたちのマナの回復量は、遺跡外よりも遺跡内のほうが増加していることに気づきました

コアを用意して、そのマナ量の蓄積を測定したのです

個人差こそあれど、すべての者のマナ力を回復させていたのです

人や獣人がそうなら、モンスターも影響されているでしょう


人以外にも、多くの生き物を生み出し、すべての生き物にコアを与える遺跡は、マナで満ちていると考えられる。

遺跡だけではなく、そのエネルギーは外にも発生しているようですが、遺跡はその量を遥かに凌いでいます

時によっても違います」


「えーっと、そのエネルギーが、増加する周期のようなものがあるということですか?」


「はい!!その通りです!!」


源は、予想して、耳を塞いでいた。声を大きくするタイミングが分かって来た。

愛を使わなくてもこの攻撃を防ぐことができる。


「有紀先生が、学者として一流だということは、分かりました。ですが、サネル・カパ・デーレピュース上院議員を先生は、サポートされているので、遺跡探検することは、難しいのではないですか?」


耳を塞ぐ。


「そんなことはありません!!わたしは政治家ではなく、学者です。世界の謎に挑むことこそが、わたしの本来の仕事です!」


「そ・・・そうですね・・・そこそこ深い、階層にいったのですが、世界の謎みたいなものは、見当たらなくて・・・今度、深層深くに行くときは、依頼させてもらおうと思います

その時は、サネル・カパ・デーレピュース上院議員にも頼まなければいけないのですが」


「是非!!連れて行ってください。報酬はいりません。今まで逆に払って遺跡にはいっていましたので、払わずに連れて行ってもらえるだけで、嬉しいのです」


「まーそれはそれとして、レジェンドの民ではないのですから、報酬はきちんと支払いますよ

あと、有紀先生が、個人的に遺跡探求をしたい場合は言ってください

レジェンドから実力のある兵士をお礼として無料でお貸しします

彼らが対処できないほどの深くいくのは、やめてほしいですけどね」


村雨有紀は、あわあわと、体を震わせた。


「そこまでしていただけるのですか!」


「はい。先生の研究が進めば、わたしたちの助けになりますからね」


「ぐふっぐふふふふ・・・ありがとうございます。セルフィ様!」


村雨有紀は、女性とは思えない嬉しそうな顔でよだれを垂らしながらお礼を言った。


あれ・・・頼み事をしていたのは、俺だったはずなのに・・・


「こ・・・こちらこそ、ありがとうございます。分からないことがあったら、有紀先生に質問などもさせてもらってもいいですか?」


「はい!いつでもお使いください!」

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