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172章 トム・ソーヤの冒険

俺は、トム・ソーヤ。


ボルフ王国では貧民地の民として、農民をやる以外、文字も書けなければ、読むことも出来ない者だった。

他の国々と同じで、読み書きは禁止されていた。

本当は、俺は旅をしたい。同じことを毎日繰り返すだけの農業は、嫌気がさしていた。自由気ままに旅をする商人などの仕事に憧れるが、商人ができるほどの知識などまったくないので、諦めていた。

しかし、それを一篇させる出来事が起こる。


俺は空を落ちていた。


貧民地の民をないがしろにしてきたボルフ王国を伝説のセルフィ様とこの地の本当の王族であるリリス・ピューマ・モーゼス様と一緒に、戦った。


気づいたら、空の上。


死ぬかと思ったが、なぜか俺たちは助かった。

どうやらセルフィ様の能力のおかげだったということだ。


そして、新しい国を作るといってはじまったのが新大共和ケーシスだ。


信じられないことだが、この国では、文字の読み書きを無料で教会が教えてくれる。


聖書を読めるようになり、支配者を聖書の基準で見定めるようにと、自分たちの首を自分で苦しめるようなことを平気で実行している。


普通は、絵を描くことはご法度だ。

特に貴族や王族などの絵を描くと、処刑される。

人物の名前ならまだしも、人物像をハッキリと絵に残せば、暗殺者のターゲットなどにも成り兼ねず、また反乱軍も誰を狙うのかが明確になるからだ。


絵を描くにしても、実際の姿とは似ても似つかない抽象的な絵だけが許可されるのが普通だ。

しかし、この国は、どんな絵を描いても裁かれない。


隠すことこそ、権力者であるのに対して、新大共和ケーシスは、隠さない。


クリスチャンになった友達は、ミカエルという物質モンスターで、随時、セルフィ様やリリス様の動向が把握できるように公開され、確認できると知ると、驚いたものだ。

公開するってどういうことだよ・・・。


文字の読み書きだけではない。

その他、聞いたこともないような情報さえも、教えてもらえる。

まだ、クリスチャンではなかった自分にも、多くの情報を与えてくれた。


俺は農民トム・ソーヤ。


農業は嫌いだったが、それしかやらせてもらえなかったから、農業のことは分かっているつもりだった。

でも、セルフィ様は、その常識の枠を超えている。


以前、ボルフ王国でもみせた農業の奇跡をさらに超えるような農業の成果を新大共和ケーシスで目の当たりにした。


今まで俺が育てた一番大きい作物のさらに3倍にはなるかもしれない大きくて甘い作物を大量に育て上げてしまう。


クリスチャンになった俺の友達は、早くも畑仕事は、物質モンスターにやらせて、教会で勉強ばかりをするようになっていた。


やりたいことを見つけるんだと見た事もない希望に満ちた目をしていた。


奴とは違い俺はやりたいことがある。

旅をするような仕事をしたかった。


俺は、朝早くから畑仕事をして、すぐに教会にいって午後2時まで、信仰を教えてもらおうと出向いた。

祈り方も分からなかったが、見様見真似で、祈り、信仰を持てるようにと願った。


やりたいことをするために、クリスチャンになろうとしている不純した考えで、信仰を望んだ。


毎日、物質モンスターミカエルに、「神を信じている」と言い続けたが、作用しない。必死で祈ったが、どうしてもわからず、友達に相談した。


友達はいった。


「神はいるんだよ」


俺は突然、こんなことを言いだす友達が、分からなかった。

信仰をどうすれば手に入れることが出来るのかを真剣に相談したのに、友達は、それしか言わない。


神がいるということと、信仰がどう関わっているのか、しっくりこない。


神はいるなんて言葉は、生まれてから、何百回と聞いたし、考えてきた。


神がいるからなんだとさえ思うほどに


しかし、友達は、「神はいるんだよ」しか言わない。


俺は分かっていないのか?この意味を・・・どういうことなんだ。どういうことなんだ。どういうことなんだ。


神がいるとはどういう意味だ・・・


そう悩んでいた時、突然、目が開かれた。


神がいる・・・?神はいるのか!そうか!そういうことだったのか!


俺はパウロのように目からうろこが落ちたように、世界の真実を発見した。


無理やりやらされてきた農業。その土を手ですくって、土を眺めた。


土がある!


そういうことだったのか!


人がいる・・・そういうことだったのか・・・


俺は見えていなかった。自然と涙がほほを伝った。


俺は、自分の目的を忘れて、聖書を読みあさった。


農業をしては、聖書を読み。農業をしては、聖書を読むことを続けた。


そんな生活が一カ月を過ぎると、友達が首をかしげて、俺に質問した。


「お前、それだけ聖書好きで、読んでるのに、まだミカエルを使えないの?」


「あ・・・」


忘れていた・・・俺は信仰を手に入れるために、ミカエルに許可をもらおうとしていたはずが・・・


畑の横にいるミカエルをみた。


怖かった・・・。何度もチャレンジしても作用しなかったミカエル。今回も同じで、確認しても、ミカエルは俺を否定するのではないのか・・・。

俺はまた違う道を歩いて、自分勝手なことをしていただけなのではないかと・・・


「ミ・・・ミカエル・・・俺は、神様を信じている」


ミカエルは、言った。


「はい。トム様。あなたは、神様を信じていらっしゃいます」


「え・・・。今認めてくれたのか・・・?」


「あなたは、嘘はついていません。トム様」


俺は、天高く両手を広げて、喜び畑の土に後ろに倒れた。

「やった!俺は信仰を手に入れたんだ!手に入れていたんだ!」


「ソーヤ。おめでとう」


「ありがとう。お前のおかげだよ」


友達も心から喜んでくれた。


―――ある日、ミカエルから通信が入った。

研究員による新しく開発された乗り物が、発表された。

その名も【トラック】


トラックには、種類があり、2トンや8トンもの荷物を一度に、持ち運びができるという驚異的なものだった。

8トンもの荷物を持ち運ぶには、馬車を何台も用意して、馬も何頭も必要となり、運ぶだけで、もの凄い金額が必要になる。


それが、たったひとりで、8トンもの物資を運ぶことができるというのだから、人を雇うお金や馬の維持費などもカットされ、一回で、金貨5枚分にまでなる利益を叩き出せる。


これこそまさに反則技だ。

どの国にいってもこんなものは、存在しない。

こんなものがあれば、世界は変わってしまう。


そして、そのトラックを操作する人を募集すると発表された。


俺はすぐさま、それに応募した。


すでに、畑は、ミカエルを管理するだけで賄うことが出来ていた。

トラックは、未知の技術だけにクリスチャンだけしか取り扱うことができないが、それもクリアしている。


森から建物の材料となる木を運ぶ仕事内容もあったが、122村の村に、新大共和ケーシスから食料を運ぶという仕事もあった。


トラックに乗って、新大共和ケーシスの国を旅しながら、仕事ができる。

商人のように知識がなくても、やりたいと思っていたことが出来るようになる。


その想いを審査官にぶつけて、一発合格した。

それどころか、審査官は、俺をトラックの組合のトップとしてやってくれないかという依頼までしてきた。

小さい頃から望んでいたというのだから、適正ではないかと判断されたらしい。

トラックを生み出した天才科学者ニーナによる提案からはじまっていたらしい。


まずは、仕事をこなしていくうちに、どうのように発展させていくかは、トラック仲間で相談しあって改善していってほしいということだった。


農業の仕事は、やらなくてもいいと言われたが、自分が造った作物を苦しんでいる人たちに食べてもらいたいと考え、ミカエルを使った畑の管理も続けることにした。

複数の仕事をして貢献するため、それが負担となってしまうかもしれないと、普通は一体のミカエルを俺は例外の1つとして2体目も用意してくれることとなった。


荷物を運ぶ時、必ず冒険者が数人付けるのは、常識だったが、トラックには、冒険者は、ひとりと、ミカエル一体が、警護にあてられることにした。


馬車何台もの荷物を運んでいるトラックの存在が知られれば、盗賊が狙わないわけがない。


冒険者とトラックに乗り込み、荷物を50km先の村まで、今日も運ぶ以来をこなす。


ミカエルによって地図は表示され、トラックが移動できる安全なルートが割り出される。


「なぁ・・・ソーヤさん。何だって、新大共和ケーシスは、荷物運びに冒険者ひとりだけしか派遣しないんだ?危険だろ・・・」


「そういうあなたこそ、そんな危険な仕事をどうして引き受けたんですか?」


「ほら・・あの物質モンスターがいるから、安全だっていうしさ。試しにやってみようと依頼を受けたんだ」


「その説明されていないんですね」


「仕事内容を細かく聞くなんて、怖がっていると思われるじゃないか」


「今も、ミカエルによってこの周辺の状況は把握できてるんですよ

もうすぐ見えますよ」


「ん?何が見えるんだ?」


冒険者アドベンチャーの男は、体を乗り出して、辺りを見渡す。


トラックの壁は、すべて透明なので、後ろの荷台以外は、死角がない。


「盗賊じゃないか!!」


「ですね」


トラックは、盗賊がいる場所をまっすぐと進む。


「おい!ソーヤさん。トラックは、あんたが、動かせるんじゃないのか!?」


「動かせますよ」


トム・ソーヤは、ハンドルを左右にゆらすと、トラックもそのように移動した。


「なら、どうして、盗賊がいるほうに走らせてる!!??」


「逃げる必要がないからですよ」


盗賊は、外から何か叫んでいるが、8トントラックは止まらない。


馬に乗った盗賊は、トラックを止めようと剣を出して、凄い形相で脅しているが、ソーヤは、そしらぬ顔。


速度70km/hを超えて走っていくトラックの横を馬で必死に追いかけまわし、剣でトラックに斬りかかるが、まったくビクともしない。


盗賊は、矢を放ってきたが、その矢もどこにも刺さらない。


冒険者アドベンチャーは、その様子をみて、笑った。


「はははは。そういうことか。確かに、走っているトラックの中にいれば、あいつらは、襲えないな」


「まぁーそれもありますけどね」


すると、なぜか、ソーヤは、トラックを止めた。


「お・・おい!!どうして止めるんだ!?」


盗賊たちは、トラックに追いついて、トラックのまわりを叫びながら、動き続ける。脅しの文句が続く。


「あなたクリスチャンじゃないから知らないのかもしれませんけど、ミカエルは、離れたところにも、報告することが可能なんですよ」


『もしもし、TY-トラック運ちゃんトム・ソーヤですけど、盗賊10人を発見しました。排除お願いします』


『お。今日も、ひっかかったのですか。ソーヤ組合長、お手柄ですね。報告ありがとうございます』


連絡が終わり、数分後、トラックのまわりに、突然、新大共和ケーシスの兵隊が、20人と20体のミカエルが、現れた。


「な!!なんだ!!?」


盗賊たちは、突然、兵隊が現れて、混乱する。


兵士たちは、次々と簡単に、盗賊を倒していく。

しかも、怪我をさせないように、カーボンナノチューブで造られた棒で制圧していく。

地面に倒された盗賊たちは、次々とミカエルのソースが手錠となって、拘束されていった。


『ソーヤ組合長。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします』


『はい。ご苦労様です』


兵士たちは、10人の盗賊を馬ごと瞬間移動して、消えてしまった。


「組合長?ソーヤさん、あなた責任者だったのか・・・それに、な・・・なんだったんだ・・・」


「依頼を受ける方には説明するように言っているはずなんですけどね

これからは依頼内容を細かく聞いておくことをお勧めしますよ

新大共和ケーシスでは、盗賊0を掲げて、わざとトラックには、護衛を少なくして、盗賊が狙うようにさせてるんです

わたしたちは、それを報告すれば、すぐにミカエルによって兵士たちが、召喚されるんです

つまり、トラックの護衛は、実は多いわけですね」


「そ・・・そういうことだったのか・・・」


「あなた友達少ないんですか?」


「う・・・」


痛いところを付かれたような顔をする。


「このことは、盗賊たちに知られないように、内密にしてあるので、説明を聞いていなければ、知らないのも分かりますけどね」


「あ・・あいつらは、どうなるんだ?やっぱり処刑か?」


「彼らは、首にソースの鎖を付けられ奴隷にさせられますね

新大共和ケーシス、首都ハーモニーでは、盗む必要ないんですけど、それでも盗もうとするから、そうなるんですよね

まーそのことを知らないから、盗賊をしているんでしょうけど・・・」


「ああ。ボルフ王国と同じだと思ってるはずさ。ああいうことをしなければ、あいつらは生きていけなかったんだからな。

他国の奴隷商にもでも売るつもりなのか?」


「いえいえ、そんなことはしませんよ

彼らにも、愛と正義を脳に植え付けるように、食料や住む場所を与えて、聖書の価値観を半強制的に伝えていくんです

悪いことをしようとすると首輪が作用しますし、それでも悪いことをするようなら、さらに牢屋にいれていくように、罪を重ねるごとに待遇は悪くなっていきます

その日暮らしが保証されていない盗賊業をやるより、新大共和ケーシスの奴隷のほうが、安全で、幸せだと思いますよ」


「愛って・・・そうやって教えるものなのか?」


「人には、愛や正義はないとわたしは教わりました

話せば解かるなんてものではないんですよ

生活そのもので、体にしみこませ、まわりの環境によって無理やりにでも、平和の価値観を植え込むことをしなければ、公正しようとしても、公正できないのが、人間なんです

クリスチャンでも嘘が付けるんですから、そうじゃない人が、簡単に公正できるわけがないじゃないですか

奴隷にして、無理やり平和を植え込むことからはじめないと、脳は同じところをグルグルまわるだけで、一生盗賊から抜け出せなくなるんです」


「無理やり平和な環境にって、それって無理やりというのか?」


「彼らからすれば、無理やりでしょうからね

彼らは彼らの正義のもとで、盗賊という正義を行っているんですから、それを落ち着かせるような環境に、入れ込まれるのは、彼らにとっては苦痛かもしれませんよ」


「クリスチャンになるとは、そういうことだったのか・・・俺も、毎週教会にいってみようかな・・・」


「あなたも、新大共和ケーシスの民ですから、国の方針が何なのか知るために、行くのもいいかもしれませんね

友達も増えて、情報も入るようになるかもですよ」


「言っておくが、まったくいないわけじゃないぞ・・・」


「まーそういうことにしておきましょう

これを期に、わたしも友達にしてくださいよ。お名前は、確か・・・」


「ジョン・・・ジョン・ハーパーだ」


「よろしく、ジョン・ハーパー」


「おう・・・よろしくな。俺もトラックの仕事できるかな?」


―――トム・ソーヤは、新大共和ケーシスの国をトラックで走り回った。

トラックは、ミカエルのソースを落としながら、各地の把握に努める役目も担う。

今は新大共和ケーシスの国だけがテリトリーの中だが、ドラゴネル帝国が一神教を国教として広げていけば、他国にも、トラックは走るようになるかもしれない。


従来では考えられない物流革命が起こされることとなるだろう。


行ったこともない土地に、あらゆる物資を届けながら、旅を続ける仕事をトムは、気に入っていた。


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