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169章 研究員ニーナ

改革が行われると、目に見えるように効果が現れ、食糧難だった村々の問題が、改善されはじめることで、新大共和ケーシスは、自然と受け入れられるようになっていった。


セルフィが貧民地の時に教えた肥料農法は、新大共和ケーシス内122村の死んでいる土地にさえも効果を表していた。


人々は、排泄物を溜めては、肥料にしていく方法を覚えて、エネルギーのリサイクルができるようになっていた。


4年置きに、土地を変えて、使用していた土地は、休ませていく予定だ。


ヨシュア村から源は、戻って来たが、ミカエルの映像から、リリスたちの活躍をみていたので、感心していた。


リリスだけではなく、兵士や貴族、民からもかなり理解力が深まっているということに喜びを感じる。



―――ニーナは、もうすぐ15歳になる。

ロー村という龍王の意思を受け継いだ村で生まれ育った彼女は、伝説の天使を待ち望むひとりだった。

ある時、その存在と巡り会ってから、その対象であるセルフィのために生きようと心に誓いを立てた。

それまでも、ロー村の村人たちから天使のことを聞いて、村が存在している理由を聞かされてきたが、まさか自分の時代で天使が現れるとは思ってもみなかった。

ロー村の司祭様も90歳近くまで、待ち望んでも発見できていなかったからだ。


背中に羽の生えた少年との出会いは、ニーナの人生を大きく変えたのだ。


何とか、天使セルフィの役に立てるように勉強や武芸を頑張っていたが、その時の14歳の少女に出来ることはしれていた。

しかし、セルフィのほうから自分に声をかけてもらい、必要とされたその仕事は、物質モンスターの育成だった。

弟に物事を教えるようにミカエルにもこの世界の事柄を教えていった。

その物質モンスターを生み出したのは、伝説の天使セルフィ。

地下にいつの間にか研究所を建てて、見た事もない道具を使って物質モンスターを生み出していた。

物質モンスターミカエルのその性能は、驚くべきものだった。

ミラーといわれるモニターから家を選択するとミカエルは、指定された場所にその家を建造していった。

形こそ自由には変えられなかったが、色などは自分が選んだものに沿ってミカエルは造っていった。

形を変えられない理由を自分なりにミカエルの情報から調べて理解した。

家には耐震耐火構造という最低限この強度が必要というものがあり、自由に壁や柱を取っていいものではないと知る。

柱などを減らせばそれだけ強度が保てなくなり、壊れやすくなるのだ。

それだけではなく、火災が起こる時にも、壁などが火災の速度を遅くしてくれる効果があった。

ニーナは、そういったことなどから勉強を積み重ね、普通の異世界人たちが知らない情報を多く吸収していった。


『ミカエル。新大共和ケーシスは、建造物の作業や農業の刈り入れなどで忙しいのよね?』


『はい。ニーナ様。22万人のうち1万人までの家が提供されましたが、その多くは、仮設住宅です

問題となるのは、運搬効率で木材などを運ぶにしても、その労力が不足しています。ニーナ様』


『運ぶ作業は、ミカエルが行っているから大丈夫じゃないの?』


『わたしは、人型になって歩行することはできますが、大量の資源を運搬するには、非効率です。ニーナ様』


『運搬するのに効率のいいものってどういうものがあるの?』


『例えば、車です』


『クルマ?』


ミカエルは、同機させたソースによりニーナに直接映像を送り出した。


『はい。ニーナ様。これが車というものです。小さな爆発を利用して、これらを動かし、人の何倍もの積載重量を運搬することができます』


『セルフィは、どうしてこれを作ろうとしないの?』


『セルフィ様は、一度、車の製造を検討されていましたが、時間がないことと車の欠点を考えて、今は着手されていません。ニーナ様』


『クルマの欠点ってなに?』


『車は、それ自体で1トン近くの重さがあり、それだけ重いものが動くということは、力の作用が起こり、衝突した際の衝撃はすさまじいものになり、死傷者などが出てしまうことです。従って、車ではなく、セルフィ様は、自転車を選ばれました。ニーナ様』


『馬車とどちらが危険なの?』


『車のほうが自由に動かすことが出来ますが、馬車は、騒音が激しく人や動物に発見されやすいですから、回避できます

従って車のほうが危険だと言えるでしょう。ニーナ様』


『車もわざとうるさく作ればいいんじゃないの?』


『それも1つの案ですが、街中では、10km/h以上の速度で走れないように設定すれば、かなりの安全は確保することができると思われます。ニーナ様』


『だったら、車は造ってもいいわよね?』


『セルフィ様からは、認可されているものの1つです。ニーナ様』


ニーナは、車に使われる部品を1つ1つ調べて、ミカエルと一緒に作っていった。

以外と車は、重要機関以外は、箱のようなもので、シンプルな作りをしていた。

ミカエルのブレイン(スーパーコンピューター)に比べると原始的で、精密機械こそ理解はできないが、それ以外のものは、少しずつ理解していった。

力の作用の積み重ねだということに気づいてからは、ミカエルを使って部品を製造し、組み立てていった。

ニーナは、作業以外の空いた時間には、回路の仕組み、エンジンの仕組みなど多岐に渡った勉強をミカエルの情報から呼び出しては、知識を膨らませていった。

ニーナがはじめに作った車は、2トントラックだった。


ミカエルの提案によって情報にある形のトラックではなく、まったく別の形に製造された。


ニーナは、セルフィにミカエルと作ったトラックを見てもらうことにした。

『セルフィ。ニーナだけど今いいかしら?』


『うん。大丈夫だよ。何かあった?』


『これをみてほしいの』


源は、ミカエルからの映像をみた。

角が丸い四角い透明なもので覆われた箱もので、ベルトコンベアーのようなものがその下に付けられていた。


『えっとこれってもしかして、戦車?』


『車よ。トラックというものを変形させて造ってみたの。馬力的には、2トントラックと同じ程度あるわ』


『これをニーナが造ったの!?』


『新大共和ケーシスの戸建て建設には、木材などの運搬が必要だけど、馬や牛よりも積載量を増やせるものをミカエルと造ってみたの

壁は強化プラスチックではなくエンジニアリングプラスチックを使用して、透明な造りにしてみたの』


『エンジニアリングプラスチック?』


『ガラスの10倍の強度のアクリルのさらに50倍の強度がある素材で、防具などにも使えるとミカエルの情報から学んだの』


うーん・・・凄い現世的な単語をニーナが話してるんだけど・・・

『実際に動かすことはできるの?』


『出来るわ。町の中では、安全のために10km/hまでしか速度は出せないけど、郊外なら馬よりも早く移動できるわ。本当の車には、タイヤというものが使われていたけど、それでは音が静かすぎるから戦車のようにして、騒音をたてるようにしたの。』


『凄いね・・・俺も車は造ろうと思ってたんだけど、今はまだ早いかなと悩んでたんだ

でも、新大共和ケーシスの122村の発展を考えても、車は必要になる

俺が時空空間ゲートを開いて、大量の資源を送ることもできるんだけど、出来れば、俺がいなくてもみんなで道具を使って行えるようにしたいと思ってたんだ

まさか、車を作り出すとは思ってなかったよ』


『ミカエルから聞いたら、車は危険でもあるというから、セルフィが造った自転車と同じようにミカエルを車に同機させて、安全に操作できるようにしてみたわ

このトラックは、使用する許可を出してもらってもいい?』


『ミカエル。危険を察知したらすぐに止めることは可能か?』


『街中で10km/hのスピードで使用する分には、緊急停止もでき、透明強化プラスチックにより死角も少なくなり、街中での危険は数%にまで抑えられています。セルフィ様』


『ニーナ。車は、クリスチャン以外の人も使えるように考えてるの?』


『そこまでは考えてなかったわ』


『街中では速度が出せないようにしてあるのなら悪用することはないかもしれないけど、盗賊などに盗まれることもあるかもしれない。それに車も革新的な技術の1つだから、クリスチャンだけの許可にしておこうか

新大共和ケーシスの土地以外では使用できないようにもしてほしいかな

使っていくうちに改良点が見つかるとは思うけど、その都度、ミカエルと試行錯誤して、使用してみてくれ

司祭様やリリスにも報告して許可をもらってね

でも、俺は賛成だよ

それが上手く使用できると分かれば、複数、生産してもらうことになるかもしれない

頼めるかな?』


『ありがとう。セルフィ。わたしとミカエルに任せて』



ミカエルのソースが組み込まれた車は、安全に走行を可能にした。

問題点としては、透明プラスチックを使用しているので、日光にさらされると車内は、かなりの暑さになってしまうことだった。

透明性が高いだけに角度によってレンズのような作用になり、信じられないほどの熱を生み出してしまうこともあった。

なので、日中は、その上から太陽熱を遮断するプラスチックをさらに外側から被せることでカバーした。

防具の上に防具を着るようなものだ。

ニーナが造ったトラックは、複数作られ、活用された。

知能こそないが、物質モンスターを次は、ニーナが造ったことが、レジェンドや新大共和ケーシスの新聞にも写真付きで掲載され、話題となった。


街中では、10km/hも速度を出せないが、危険を感じると自動運転でブレーキがかけられ安全を確保する。

動かす時は、人が必ず乗り込んでいるが、人が操作する必要もない。


それを新大共和ケーシスの食糧難に苦しむ村に送るためには、運搬する手段が必要だった。

ボルフ王国ですべての財産が消滅してしまっていたので、馬車もなく、困っていたが、車を生産するようになると荷物を大量に移動できるようになった。


道路はないが、首都ハーモニーのまわりは平原が多く、トラックは問題なく運搬車として利用できた。


エネルギーは、石油に依存している。


ミカエルを作り出してから1年以上が経過して、ソースは日を追うごとに大量になっていく。

マインド(スーパーコンピューター)もそうだが、施工工場も大量に地下に作られ続けている。


ニーナが一番、ミカエルを使い慣れしていたが、ニーナ以外でも、民や兵士たちが、あらゆるミカエルの使用方法をあみ出していた。

この世界の学者といわれる人たちよりも、多くの知識を持った民たちが生まれていた。

彼らは、そのことに気づいていないが、むさぼるようにミカエルから情報を得て、知識を増やしていったので、新大共和ケーシスやレジェンドの政治なども、試行錯誤して、問題を解決していっていた。


ミカエルなどのことを知らない122の村に、そういった者たちが送り込まれると、彼らは、まるで大魔法使いのように重宝され、信頼を勝ち取っていった。


ミカエルやトラックなどを知らない、文字を読み書きもできない人からすれば、魔法のように見えるようだ。


それらの知識を得たので、他の国に出て行こうと考える人も出てくるかとも思ったが、誰も新大共和ケーシスから出て行こうとはしなかった。


それはミカエルが使用できなくなるからだ。


他の国に比べて、極端に税が低いのもそうだが、お金を使用しなくても、平和に生活できる環境をわざわざ捨てようとは思わないようだ。


これらの知識や情報は、新大共和ケーシスやレジェンド、ユダ村、ヨシュア村だけに蓄積されていった。


今のところ外にこれらの情報が漏れたという報告は、ミカエルから上がってはいない。

ドラゴネル帝国も、これらの技術に手出ししないという約束は破らないでいた。


新大共和ケーシスでは、自転車が広がっていたが、レジェンドでは、バイクも発明され、使用されていた。


バイクといっても、自転車のようなものではなく、キックボードのように立って走るもので、人間がふたり乗れるぐらいの馬力しかない。

バイクは、クリスチャン以外も使えるので、離れた都市との交流も盛んになった。

石油ではなく、太陽エネルギーによって動くように設計されている。


バイクもニーナがミカエルと一緒に作り出したものだった。


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