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167章 いのちの木

レヴィンチ・タダ司祭は、セルフィたちを連れて100kmも離れた場所に案内しようと馬車を用意しはじめたが、源は自分たちの能力を使って空を飛んで、移動することにした。


お歳を取られているレヴィンチ・タダ司祭のことを考えて、馬車ごと移動したが、馬車から高い場所を見下ろす状況に司祭は動揺を隠せなかった。


レヴィンチ・タダ司祭の指示に沿って、向かった先は、大きな森の中だった。

森の中なので、木は生い茂っていたが、特に何があるというわけではない。

強いて言うなら、中規模の滝が岩山の上から流れていて、風流な雰囲気がただよっていた。

滝の下に溜まった水はとても綺麗で、透き通っていた。


司祭は、その滝の横から滝の裏側、大量に降り注ぐ水の中側の空間へと歩いていく。源たちも司祭様の後についていった。

しかし、滝の裏側は、岩の壁があるだけで何があるというわけでもなかった。

レヴィンチ・タダ司祭は、祈りをささげ、セルフィに説明する。


「セルフィ様。これが龍王から守るようにと仰せつかり、先代たちが守って来た龍の滝です

ここに古代語が刻まれています」


【Man doses not live on bread alone.but one every word that comes from the mouth of God.】


と岩が削られ読みずらくなっていたが、確かに掘られていた。


これもまたクリスチャンならだれでも知っている暗唱聖句の1つだ。


「人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる」


と日本語で源が口にすると、古代文字が書かれていた岩壁が消えて、人が通れるほどの入り口が出現した。


「うおおお!?」


レヴィンチ・タダ司祭が声を上げセルフィをみる。


「やはり、あなたは伝説の天使なのですね・・・」


「ユダ村でも同じように、古代語が岩に刻まれていたんです

そして、それは聖書の一文なので、聖書の言葉をそのまま読んだだけで、今のように次に進む道が現れたんですよ

ミカエル。中の様子を確認してくれ」


「分かりました。セルフィ様」


「うお!何ですかこれは?」


小さい黒色の虫のようなソースが、大量に暗い穴の中にはいっていくのをみて、レヴィンチ・タダ司祭が驚く。


「これはわたしが作り出したミカエルという物質モンスターのようなアイテムです

レジェンドやユダ村もそうですが、このミカエルを活用して生活水準をあげています

ヨシュア村にもミカエルを提供させていただきますね

詳しくは、レジェンドから研究員を派遣して説明させ、ミカエル自身でも皆さんにお答えさせるようにします

ミカエルの利用方法は、沢山あるので使用してください」


「そうでしたか。とてもありがたい申し出です

ありがとうございます」


「ただ、心から聖書の神を信じている者だけがミカエルを使用できるように設定していますので、表向きはクリスチャンのようでも、心では神を信じていない人には、使用することはできないようにしてあります

ですから、盗賊などに例え盗まれたとしても、彼らには使用することはできないわけです

このミカエルは、兵士としても利用できるので、モンスターに村が襲われた時などにも活躍してくれるはずです」


「さすがは、セルフィ様です

ありがたく使わせてもらいたいと思います」


ミカエルのソースが状況を知らせる。

「セルフィ様。50m先までは安全です」


「では、司祭様。行ってみましょうか」


ミカエルのソースによってライトが付けられ、中の様子が分かるようになっていた。


岩の入り口の先には、細い道が長く下へと続いていた。

壁は植物のつたのようなものが沢山、壁をつたっていた。

その道の中央には、水が流れる長いくぼみがあり、そのくぼみに道と平行にして、遺跡の奥へと水が流れていた。


50m以上歩き、その先には、大きな広場が広がっていた。


遺跡の中は、綺麗な水が田んぼのように張られ、その水の中には、大量の植物が100四方の広場に平面一体を水を浮かぶように生い茂っていた。


その広場にあるのは、綺麗な水とその植物。そして、その植物のつたが、壁一面に伸びているだけで、その先には、別の部屋に通じるような扉などはなかった。


「うーん・・・何でしょうか。龍王が残したものは、無さそうですね」


『愛。この植物は、何だ?』


『分かりません。源。文献の中には、これに該当するものは、みあたりません』


「司祭様。この植物は、何かご存知ですか?」


「いえ、この植物は、みたこともありません」


その植物の葉は、綺麗な丸で、楕円形ですらない。黄緑色の綺麗な色で統一され、その葉は、透き通った黄緑色のしずくのようにさえみえる。


源は、その葉を触ろうとすると、その葉は、不思議と動いて触られないように少し広がった。


ただの植物ではないようだ。


『リタさん。セルフィです。今よろしいですか?』


『いいわよ』


『ミカエルの映像を見てほしいのですが、その映像に映っている植物が何なのか分かりますか?』


数秒して、リタが答える。


『それ世界樹の若葉じゃないの!?』


『え!これがそうなんですか?』


『どこにそんな量の若葉が生息しているの?セルフィ』


『今、龍王の意思である聖書を保持しているヨシュア村から離れた遺跡にいるんですが、そこにこの植物だけがあったんです』


『前にも話したけれど、世界樹の若葉は、育成することがとても難しいのよ

それだけの数を育て上げるのは、普通なら考えられないわ

若葉の葉も若葉の身も利用できるから、それだけの若葉があれば、フルポーションもいくらでも生成することができるわよ!』


『でも、1つ1つはそれほど大きくはないですけど?』


『世界樹の生命エネルギーは、砂粒ほどであっても、人間の生命エネルギーを超えているのよ

だから、世界樹は、いのちの木とも呼ばれているの』


いのちの木か・・・

いのちの木といえば、創世記に出てくる善悪の木とついになってエデンの園の中央に育てられていた木だった。

アダムとエバが、罪をおかしてからは、神様はその状態で人が永遠に生きることが無い様にと封印をされた。

このいのちの木の話は世界中に伝承としてのこされていて、日本では竹取物語としても出てきたり、秦の始皇帝が永遠の命を得るために求めたものとしても、有名だ

この世界も聖書的な要素を含んで作られているのは間違いないだろう

それを悪用しているのかどうかは分からないが・・・


源は、不思議な植物に興味を抱いたので、愛に頼んだ。


『愛。世界樹の若葉を分析してくれるか?』


『分かりました。源』



『リタさん。妖精族の族長たちの件は、どうなりましたか?』


『セルフィが提示した条件で今検討してもらっているところよ

答えが出るのは数日後になると思うわ』


『分かりました。ありがとうございます』



「レヴィンチ・タダ司祭様

今、植物に詳しい方に聞いたには、これは世界樹の若葉ではないかということです」


「なんと!あの世界樹のですか」


「はい。これだけの若葉があれば、回復薬を作り出せるかもしれないということです」


「さぞ立派な回復薬が作れるのでしょうね」


「ここにいる皆さんには話しますが、実は部位欠損した箇所も治すフルポーションを作成することも出来るかもしれないのです

もし、レヴィンチ・タダ司祭様のゆるしがあり、この若葉を利用させてもらえたとしたらの話です」


「もちろん、お使いください。龍王は、伝説の天使様のために遺産を残されたとわたしどもは考えているのです!」


「ありがとうございます。その代わり、わたしたちは、ミカエルをヨシュア村に提供させてもらいます

ですが、フルポーションの生成は、ある部族の秘匿技術を提供してもらってのことですし、クリスチャンだけにしか利用できない物として、取り扱おうと思っています

龍王の遺産を守られるレヴィンチ・タダ司祭様なら大丈夫だと思い話をするのですが、これらのことは、内密にお願いします」


「ヨシュア村の司祭として、ここのことは、誰にも教えられはしませんし、若葉のことも言いません。この遺跡にこれがあることも今まで知らなかったのですからね」


「ロックたちもお願いね」


「ああ。もちろんさ」


「誰にもいうはずはありませんですじゃ。セルフィ様」



『愛。解析はどうした?』


『源。この植物のデーターは途方もないものです

細胞レベルのプログラムの中に、大量に埋め込まれたその情報は、他の生き物と比べても、異質です

これを他の生き物に応用しようとしても、体が担いきらないことでしょう

ただ、フルポーションとして作成することは、今の段階でも可能でしょう

ポーション自体を解析したことがありませんので、まったく異質のポーションとなってしまうでしょう』


『そうか。でも、妖精族が長い間、世のためにその技法を世に出さないようにしてきたのだから、その許可をもらうまでは、作ることはやめておくよ』


愛の性能でも、ここまで時間をかけさすとは、相当のものだと思われる。

フルポーションが手に入れば、これから帝国の1つの騎士団として、動くレジェンドの兵士たちに重傷者が出たとしても、各自にポーションを持たせていれば、生存率もかなりあがる。

これから他国と戦うのであれば、どうしても手に入れておきたいものだ。



源は、レヴィンチ・タダ司祭とその後、打ち合わせをした。

レジェンドで行った教会の布教と政治、農業や産業、工業、軍事などの発展などを説明し、今後、ヨシュア村にも、レジェンドやユダ村に行ったものを提供できることを伝えた。

ミカエルが使用できるクリスチャンであるのなら、能力追加珠アペンドボール人工核アルティコアも提供することができることも話をした。


それらの話をミカエルの映像をみせながら解説していったのだが、レヴィンチ・タダ司祭は、1つ1つ驚きふためいて、信じられないといった雰囲気になった。


これらの支援がヨシュア村にも行き届けば、食料問題も、軍事的なことにしても、多少はカバーできる。


なんといっても、もし、ヨシュア村に危機が訪れたのなら、マナの瞬間移動や時空空間ゲートで、即時に援軍を派遣することができる。


離れたところであっても、ミカエルのソースという媒体が現地にあればそれらも可能だということだ。


その代わりに、ドラゴネル帝国の龍王の意思の復古の手伝いをしてもらうことに同意してもらった。

レヴィンチ・タダ司祭は、それこそが自分たちの村の意味だとおっしゃり、いつかは世界中に福音を延べ伝えたいと願っていたと前向きに賛成してくれた。


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