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158章 発展の兆し

源たちにとって嬉しい誤算があった。

それは、新大共和ケーシスの神の民となった元貧民地の民20万人の中の数千人が、すでに、聖書の神を信じた事だ。


もともと、ボルフ王国では、多神教が広められていて、神を信じるという人は多かった。神がいるという認識は、すでにあっただけに、それが聖書の神にシフトされただけで、分かりやすかったようだ。


セルフィやリリスたちに対する信頼も後押しとなっていた。


絶対に変えられないとあきらめていたボルフ王国の支配を打ち破り、そこから自由にしてくれたレジェンドやリリスたちが進める一神教を知りたいと心から望んで、教会に通い、メッセージを真剣に聞いていたからだった。


もちろん、ミカエルによる認定が彼らに与えられた。


他の20万人の神の民たちも、聖書の教えに対して理解しようとする気持ちを持ってくれているようだ。


ミカエルを使えるようになった数千人に、取扱い説明を、レジェンドからニーナを呼んで来て、行ってもらった。

今では、ニーナには、助手がついている。その助手もミカエルの使い方を説明していった。


ミカエルを使えるようになった民は、毎日驚きの連続を体験した。

畑仕事も、ミカエルを使用できるようになり、ほとんど自分たちは、指示をするだけになったからだ。

また、ナノアイコンタクトやナノイヤホンなどを装備して、画面から興味のある衣服を選ぶと、数日後、その服は、レジェンドから届けられた。

もちろん、それらは無料だ。


リリスは、クリスチャン認定されたひとたちに、頼んで、家を建築していく作業をしてもらうことにした。


ミカエルを使える民は、ノンクリスチャンたちに、建物の形や色を説明して、架け橋となり、家を選択させた。

ミカエルは、その注文を受け入れると、仮設住宅ではないきちんとした家を建て始める。


新大共和ケーシスの民は、奴隷たちもみな、結婚しているカップルには、家と畑が与えられる。

やりたい仕事があれば、店舗も作ってもらえる。

どれも新大共和ケーシスの民なら奴隷だろうとノンクリスチャンであろうと無料だ。


新大共和ケーシスの民は、レジェンドの民の数とは比較にならない22万人という多さなだけに、あらゆるアイディアが、考えられ、クリスチャンたちに相談して、ミカエルで具現化していった。


政治の運営も、クリスチャンになった人たちの中から選んで、行ってもらうことになった。

国の営みをまわしていくには、政治が必要だからだ。

少しでも政治に興味があるクリスチャンたちに頼みこんで、政治家として新大共和ケーシスのあちこちに配置した。



クリスチャンの中に研修として、今レジェンドでも行われている新しい企画である下水道施設と電力施設を見学させた。

下水道施設担当責任者C地区のメイ・プリードと電力施設担当責任者ロー地区のハーレ・ワイトに、研修員たちを任せた。


ミカエルのことを研究する新大共和ケーシスのクリスチャンもニーナに付き従わせた。


神の民で、兵士になった者たちの中にも、クリスチャンになった者たちがいた。


彼らには、ミカエルを利用した狩りを行うようにさせた。

また、剣だけではなく、ショットを持たせた。


ワルサーP99 ハンドガン。ショットだ。


首都ハーモニーを守る時だけに使えるショットも練習させるようにした。


アサルトライフル → ローショット

アドバンスドヘビーマシンガン → ビッグショットだ。




新大共和ケーシスの壁の上には、ビックショットが設置された。

クリスチャンの兵士以外は、使用できないようにソースが埋め込まれ、ミカエルが管理している。ショットがクリスチャン以外の者に渡った時は、分解されるようにしている。


また、クリスチャンになった兵士たちには、カーボンナノチューブの剣や鎧が贈られた。

カーボンナノチューブは、軽くて硬い素材だ。熱伝導率も高くマナとの相性もいい。

そこにミカエルが盾役として、守っていれば、狩りで命を失う確率を減らせる。


彼らには、ミカエルや武器の操作の訓練とともに、領主になるための知識も学んでもらうことになった。


新大共和ケーシスの122の村では、それぞれ領主が治めているが、70の村には、レジェンドの兵士が領主代理として、出向いてもらっていたので、なるべく早く新大共和ケーシスの民に、変わってもらうためだ。


そして、何よりも重要視して進められていたのは、司祭育成だ。

クリスチャンになった人たちの中で、司祭になるための神学をレジェンドの司祭様を中心に、学びの場を開いて動いてもらうことにした。


今は、大きな教会が5つあるだけだが、なるべく小さくしていき、窮屈にならないように、分けていく予定だ。教会が増えるということは、それだけメッセージをしてくれる人も増やしていく必要がある。


それに首都ハーモニーだけではなく、122の村々にも、いずれは教会を建ててメッセージをしてもらうことになるので、これこそ力を入れて取り組むべきことだった。


聖書の預言者モーセのように口下手の人も想いがあれば、採用していく。


源に、ミカエルの通信で連絡が送られた。


『セルフィ様。電力施設担当責任者のハーレ・ワイトです

電力施設と下水道施設が完成しました。あとは、それらの施設をレジェンドに設置するだけです』


『ハーレ・ワイトさん。ありがとうございます

早速、それらの施設を転移させますね』


源は、ハーレ・ワイトと下水道施設担当メイ・プリードを拾って、レジェンドから離れた地下で作られていた電力施設を回収するために、瞬間移動した。


これだけ短期間で製造できたのは、施工工場の中で施設を作り上げていたのが大きかった。普通なら、土地に施設を建てていくのが普通だからだ。そうすると移動の距離だけ時間を費やしてしまう。


「ミカエル。あとは、この施設を運び出すだけだな?」


「はい。セルフィ様。ハーレ・ワイト様と設置する場所は、すでにレジェンドに確保されています。レジェンドの敷地に電力施設の場所があり、石油もレジェンドの地下で生産されているので、それを利用して、火力とするだけです」


ハーレ・ワイトが、説明する。


「A地区とB地区の間にある広場にすることを司祭様と住民たちとの話し合いで認可されていますので、心配はありません」


「そうですか。ありがとうございます。では、転移空間を開きますので、それで移動させていきます」


大きな施設をリトシスで持ちあげて、巨大な時空空間ゲートを発動させた。


担当者ふたりもリトシスで浮かばせながら、一緒に施設とともに、レジェンドに転移させた。

レジェンドの空に、火力発電所が浮かび、予定地であるA地区の隣へと持っていく。

源の視界の画像では、ミカエルによってどの向きでどこの場所におくのかが、分かりやすく表示され、ゆっくりとリトシスで、電力施設を降ろしていった。


その後は、ミカエルのソースが、次々とコードを繋ぎ合わせ、火力発電所の中に、石油を投入していった。

発電所の外のレジェンドの街のコードはもちろん、すでに繋がっている。


電力担当の3人と下水道担当の3人、そして、新大共和ケーシスの民の研修員6人も火力発電所の中に入って、ミカエルから説明を受けた。


「皆様。この青いボタンを押せば、電力が、村にいきわたります

こちらのモニター50機にはレジェンドの様子が映ることになります

すでに、レジェンドには、街灯が設置されていますから、電力が上手く作用していれば、光りを灯すこととなります

では、ハーレ・ワイト様。青いボタンを押してください」


「わ・・・わたしですか!?セルフィ様ではないのですか?」


源は首を振る。

「いえいえ、電力施設担当責任者は、ハーレ・ワイトさんですから、最後までお願いします」


ハーレ・ワイトは、恐る恐る指を伸ばしていき、青いボタンを押した。


一斉に、機械が動き出し、モニターがレジェンドの街を映し出した。

そして、街灯が、光り、電気が通っていた家の一部も光った。


「「「わー!」」」


女性たちの声が、発せられる。


源は、三人に声をかけた。


「皆さん。おめでとうございます。皆さんのおかげで、レジェンドに電気が流れるようになりました。これで、色々な発展をもたらすことができるようになります」


三人に向かって源が拍手を送ると、残りの9人の女性たちも、続けて拍手した。


「次は、下水道施設の設置ですね。メイ・プリードさんよろしいですか?」


「はい。下水道施設は、ロー地区の左隣、川の近くに設置する許可が取れています。その川から水が取り込めるように、すでに、ミカエルによって増設された土地となっています」


「分かりました。では、ここの電力のことは、三人に任せます。メイ・プリードさんは、一緒に、行きましょう」


源は、メイ・プリードと一緒に、ユダ村の近くの施工工場地下に、瞬間移動した。


そして、先ほどと同じように、巨大な時空空間ゲートを開いて、下水道施設をレジェンドに転移させる。


ゆっくりと施設を地面に置くと、ミカエルがしっかりと設置させていく。

今回は、施設に水がまったく貯められていない。水が貯まり、使えるようになるには、数日かかる。


しかし、動かすための最初のボタンを押してもらわなければいけない。


電力施設から電気が流れてきているおかげで、下水道施設も稼働させることが可能となった。


メイ・プリードと二人の担当者。そして、新大共和ケーシスから来ている研修員たちが、きちんと稼働するのかどうかを不安そうにみている。


オレンジ色のボタンをメイ・プリードが押すと、一気に、電気がついて、機械が動き始めた。

ミカエルが、さらに、各箇所の水道管を開いていくためのボタンを押して、解りやすく水が流れていく図が、水色で表される。


「メイ・プリード様。問題なく稼働しました」


「「「おおー」」」という声があがる。


また、拍手が鳴り響く。


遅れて、電力施設からも、ハーレ・ワイトたち6人が来て、拍手を送った。


源は、みんなに言う。


「あとは、皆さんが、ミカエルを管理しながら、この施設が長く安全に続いていくようにしていってもらうだけです」


ハーレ・ワイトが答える。


「はい。分かりました。あと、電力ですが、太陽エネルギーのためのパネルもすでに作られているので、それらも設置してもよろしいですか?」


「ああ。そうですね。お願いします」


「はい。パネルは、レジェンドにミカエルに運ばせて、壁の外側に設置する予定です」


「分かりました。ハーレ・ワイトさん

新大共和ケーシスの研修員の方達は、これと同じことを首都ハーモニーでも行っていってもらいます

将来的には、新大共和ケーシスの国の中にある122の村にも、これらの施設を設置していくこととなると思いますので、それらも想定しながら、担当してください。現在、下水道施設と電力施設は、同じものを2つ製作中です

新大共和ケーシスとユダ村にこれらは使ってもらうことにします

ユダ村は、規模が小さいですから太陽パネルだけで電力は提供していくことになると思います」


「「「はい!」」」



源は、あとは皆に任せて、移動した。


そして、これらの準備が整ったことで、次にやるべきことのために、地下へともぐる。


帝国にも負けないようなレジェンドの村にしようとはじめた時から、かなり成長しただろう。

まだまだ、やることは沢山あるが、今は、その帝国がレジェンドの後ろ楯となり、自分たちを脅かしていたボルフ王国も滅亡し、リリスが、新大共和ケーシスの国を立ち上げた。


核爆弾の脅威にもさらされながら、行ってきた作業も順調に進められ、レジェンドでは、下水道や電力さえも手に入れた。


レジェンドのほとんどは、クリスチャンとなっているので、ミカエルを利用して、効率のいい生産性をあげてくれている。


多くの品々は、レジェンドだけでは、使えないほどになっているので、その分は、新大共和ケーシスにまわし、それ以外は、保管して、帝国などに販売許可をもらい行っていくつもりだ。


ミカエルで生産された品物は、ブラド品として、高級に取り扱い、普通よりも値段をあげて、他国に回すことになる。


そうすることで、他国の仕事を奪うこともなく、まわしていける。

そもそも、この世界にはない製品の場合は、とくに問題はない。

電力や下水道は、その1つだろう。


新大共和ケーシスの食料に関しても、帝国からの支援もあってかなりゆとりがある。

すべてを失ったのに、ひとりも餓死者は出していない。


しかし、これからは、ペルマゼ獣王国とワグワナ法国との戦いが待ち受けている。

また、マーレ・ソーシャスたちの謎の集団もいつこちらに牙を向くのか分からない。

世界中に広まった聖書を回収しなければいけないし、この世界の謎も解いていなかければいけない。

なぜ龍王は、ハジメスエナガという天使の予言を残したのか、どうして、狼王もまた聖書の言葉を合言葉のように利用していたのか。

核とは何なのか、魔法とは何なのか、スキルとは、種族とは、謎は深まるばかりだ。

解っていないことは、大量にある。

やることは山積みだ。

なるべく、犠牲者は出したくない。そのためにも、今は帝国に逆らわないことが、一番犠牲者を防ぐ方法だと考える。


ソロモン・ライ・ソロとの約束である兄のスミスを元に戻すことも忘れてはいけない。


ロックとフォルだけの仲間からウオウルフ、レジェンド、新大共和ケーシスという仲間たちへと広がってきたことで、成長していることは間違いない。


滅ぼされないようにさらなる力を蓄えていくことだろう。



『セルフィ様。ソロモン・ライ・スミスの体に埋め込まれたソースが破壊されました』


『なに!?』


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