154章 異世界の不思議
話を終えるとすぐに、ミカエルが、異変を報告した。
『セルフィ様。昨日、人工核を移植したCランクのモンスターの中の10匹ほどが、森で、生き物を襲いはじめています』
『え・・・。狩りとかじゃなて?』
『肉などには手をつけていませんから、狩りだとは思えません。セルフィ様』
源は、すぐにそこに瞬間移動した。すると、キングベアーが、生き物を追って森を暴れ回っていた。
『なんだ?人工核の副作用か?』
愛が答える。
『分かりません。源』
源は、キングベアーの目の前に、瞬間移動した。キングベアーは、突然、目の前に、人が現れて、動揺する。
「おい。暴れ過ぎはよしてくれ」
キングベアーは、動きを止めたが、喉を鳴らしながら、源を威嚇する。
「その力を与えたのは、俺だから申し訳ないんだけど、食べる以外で、生き物を殺し過ぎるのは、やめてくれないかい?話しても通じないだろうけど・・・」
「グルグルグルグルゥ」
「しょうがない・・・」
『リリス。セルフィだけど、リリスって動物を大人しくできたりする?今、目の前にいるのは、キングベアーなんだけどね』
『近くにいるモンスターなら、出来ると思うわよ』
『申し訳ないんですが、お願いできますでしょうか?』
『いいわよ』
源は、リリスがいる場所と、この森とをつなぐ時空空間ゲートを開いて、リリスを転移させた。
「この子ね。でも、この子・・・・何だか普通のモンスターじゃないわね」
「うん・・・」
リリスは、少し頭をかしげながら、キングベアーに話しかけた。
「あなた、暴れてるの?」
「グアグアアアアグア」
「そう・・・うんうん。そういうことね」
リリスは、キングベアーの気持ちを代弁してくれた。
「敵を倒すと力がどんどん増していくから、強くなりたいと言ってるわ。セルフィは、それをやめさせたいの?」
「あ・・・いや・・・えっとね・・・実は昨日、このキングベアーを含めた50匹のモンスターたちに、ある実験を行ったんだ。俺が作り出した人工核を体に移植させて、様子をみようとしていたんだけど、暴れてしまっているから実験の副作用かなって思ってね」
「何それ・・・そんなことが出来るの?」
「うん・・・。出来ちゃったんだよね」
「元に戻すことは出来ないのよね?」
「いや、出来るね。元のC級モンスターに戻せる」
「キングベアー。あなたね。その力を奪われたくなければ、大人しくしなさい」
キングベアーは、リリスの何かに抵抗できないのか、目をそらし、大人しくなった。
「生き物を殺したらダメってこと?」
「ううん。食事に必要な分は、しょうがないからね。あと暴れてるのが、9匹いるんだよね・・・」
源は、森の全域に、リトシスの感知を広げて、その9匹を見つけ出し、宙に浮かせて、自分たちのところに移動させた。
「こいつらもだけど、余計な殺生をしないように言ってほしいんだ」
「あなたたち、食べもしない動物を傷つけたらダメ。分かった!?
いうこと聞かないと、その力を奪うわよ」
モンスターたちは、頭を下げた。そして、大人しく、森へと散っていった。
「それにしても、あの子たち、本当に強いわね」
「解るの?」
「うん。何となくモンスターたちの潜在能力は、分かるのよ。特にキングベアーは、どうしてあんなに強そうなのかしら」
「あのキングベアーには、人工核を3つもいれちゃってるからね・・・」
「何?その人工核って・・・。それを入れれば、モンスターが強くなるの?」
「レジェンドの兵士たちは、もともとが農民だから、Cランク程度の強さが頭打ちになって、これ以上、生命数値を上げることができないでしょ。その枠を広げてあげられる可能性があるのが、人工核なんだ」
「え?核を増やせば、強くなるっていうこと?」
「俺もよくは解っていないけど、この世界の生き物は、人間も含めてみんな核があるのが普通だよね。その核があるおかげで、魔法を使えたり、スキルが使えるようなんだ
それだけじゃなく、普通以上の力を蓄える機能も核にはあるみたいで、どうやら他の生き物の命を奪うとその相手の核の一部の力を自分の中に蓄えることが出来るんじゃないかと思う
農民の能力を普通だとして、それ以上の力を得られているのも核のおかげかもしれないんだね
でも、その核にも種類があって、人間の核もあれば、モンスターの(コア)もあり、多種多様な核をいれるとその生き物の特性を受け継げるようなんだ
相手の能力の力を蓄えられる量も核の種類によって違っているんだ
また、核は、その生き物の性質まで記憶しているみたいで、普通の核を使うのはアモラのようになってしまって危険だと思われる
だから、人工核で副作用がないように、本来の種族の特性を保てる核をいくつもいれて、さらに能力を蓄える量も増やせるのかを実験しているんだね」
リリスは、何だかひらめいたような嬉しい顔つきでお願いしてきた。
「アルティコア・・・。凄いわね!。わたしの動物たちも、今以上に強くなれないかと悩んでいたの。その悩みの解決策がそれよ。
わたしの動物たちにも、それをやってくれない?」
「うん。いずれはそうしたいと思ってるんだけど、まずは、他の動物などで実験してからじゃないと危険だからね。今のところ50匹には、副作用はないみたいなんだけどね」
リリスは、懇願するかのように源に頼みごとをする。
「それに、ロックさんに行ったミカエルとの融合というものも、わたしにやってほしいの。わたしは、少しでも強くなってみんなを守りたいのよ。ねー。お願いセルフィ!」
さっきのキングベアーも、副作用によるものでは無かったようだし、今のところ問題がない。リリスがそういうのなら、やってみてもいいかと考えた。人工核については、何だか分からないが手ごたえを感じていた。
「何か、少しでも異変を感じたり、違和感があったら、すぐに俺に教えてね。その時は、すぐに元に戻す。それに元に戻せるのは、俺だけで、俺がいなければ、誰も元に戻せないという危険性は、理解しておいて」
「分かったわ。セルフィ」
「本当に、何か異変があったら必ず言ってよ?リリス」
「分かってるって」
『ミカエル。リリスがいつも使役しているモンスター。タークとビックボア、フィーネルの位置を教えてくれ』
『分かりました。セルフィ様』
源は、その3匹の目の前に、時空空間ゲートを開いて、森に連れてきた。
「フレーは、まだ伸びしろがあるから、必要ないよね?」
「そうね。フレーは今のところいいわ」
源は、木をもぎ取って、人工核を3つ作った。昨日は、C級クラスの核だったけれど、今回は、B級クラスの人工核をベースにして、作成した。
そして、動物たちに、人工核を移植した。
『源。倍以上の容量となったことを確認しました』
「すごい・・・」
リリスも、動物たちが変わったことを感じたようだ。
「あとは、リリスだね。ミカエルとの融合は、核は関係ないからたぶん、副作用はないはずだけど、これも異変を感じたら、教えてね」
源は、ミカエルのソースのプログラムをリリスという個体のプログラムと融合させて、作り変えた。
「何これ・・・」
リリスは、ミカエルの処理能力によって、自分の能力をさらに明確にすることが可能となり、世界がまるで違うように見えるようになったことに驚いた。
「ロックさんが言っていたことは、これなのね・・・世界がまったく違って見えるわ」
「これで、リリスも、ナノアイコンタクトとナノイヤホンを使う必要はないね。ミカエルは、日を追うごとに、処理能力が向上していっているから、その処理能力をリリスは、有効に使えるようにこれからはなるはずだ」
「ありがとう。セルフィ」
「うん。人工核が安全だと解ったら、レジェンドの兵士たちが望むのなら、これを実行しようと思ってる。ミカエルのソースもだね。そうすれば、ひとりひとりのレベルの底上げができて、犠牲者も減らせるだろうからね」
「新大共和ケーシスの兵士たちにも頼める?」
「クリスチャンになった兵士なら解禁しようとは思ってるね」
「ありがとう。セルフィ。あと、セルフィには、言っておきたいことがあったの」
「ん?何?」
「実はわたし、新大共和ケーシスが、落ち着いたら、一度シャウア森林に行ってみようと思ってるの」
「それは、妖精族のひとたちを新大共和ケーシスに呼びたいから?」
「それもあるんだけど、実は、わたしは、まだ妖精族の本当の姿には、なっていないの」
「本当の姿?」
「うん。リタお母さんが言うには、妖精族には2度の誕生があるらしいの。そして、ケイト・ピューマ・モーゼスも、それを体験し、能力を開花させたと言われているわ。わたしも、ケイトのように強くなるために、シャウア森林に行こうと思うの」
「それは時間がかかるものなの?」
「分からないわ。それを体験した妖精族は、少なくて、もしかしたら、ただの伝説なだけで、実際には、2度目の羽化はできないのかもしれない。
シャウア森林にいって、それを確かめなければいけないと思ってるの。
羽化するのは、すぐでも、それを解明するための時間は、かかりそうね」
「龍王は、信じられないほど強かったようだけど、その龍王の騎士として名が挙がっていたケイト・ピューマ・モーゼスは、どれほど強かったのかと思わされるよね。
もし、リリスも妖精族、本来の姿に成れたとしたら、能力が開花する可能性があるね。
帝国図書館にあった記録では、ケイト・ピューマ・モーゼスは、沢山の動物を操ることができたと書かれていたからね」
「そうなのね。ボルフ王国によってケイト・ピューマ・モーゼスの情報は、消されているから詳しくは、わたしたちも羽化した後、どのような能力になるのか分からないのよ」
「とりあえず、新大共和ケーシスに戻ろう。女王が国にいないのは、今は問題だからね」