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150章 多神教と一神教の是非

「あと、リリスには、決めてほしいことがあるんだ」


「決めてほしいこと?」


「うん。ミカエルの情報から、沢山の街の未来予想図をみせるから、どんな町や城がいいのか、選んでほしいんだ」


「え・・・・そこまでしてくれるの?」


「もちろんさ。

レジェンドとして、提供するのは

1、ミカエルの解禁。

2、教会の建造。

3、聖書の知識の斡旋。新大共和ケーシスに司祭見習いを提供など。

4、自給自足ができるまでの食料の提供と畑の提供。

5、自衛ができるまでの護衛。

6、まつりごとの提案。あくまで、提案で、少しサポートする程度。

7、ドラゴネル帝国と新大共和ケーシスの架け橋。


と前に言ったように、街の設計図の提案も、6の政の提案の中に入ることだね


それは、ミカエルと相談して、決めておいて」


「分かったわ」


話を横で聞いているリタとバルト・ピレリリにも、声をかけた。


「あと、リタさんとバルト・ピレリリさんにだけど、リタ商店の財産は、地下に置いてあったはずから、たぶん、取り戻せる。だから、新大共和ケーシスの第一号店として、お店を作っていってほしいね。お店が1つでも出来始めたら、みんなも安心するだろうしね


バルト・ピレリリさんには、前にも言ったけど、新大共和ケーシスの軍の編成に時間を割いてほしい。奴隷は武器を持てないし、クリスチャン以外には、強い武器は渡せない。ミカエルやカーボンナノチューブで作られたような強い武器を持てるのは、クリスチャンの市民だけだから、そのことを踏まえて、軍の編成を考えてほしいね。リリスたちだけじゃなくて、ボルア・ニールセンなども、相談に乗ってくれるはずだよ。レジェンドの兵士も、新大共和ケーシスにいる者は、自給自足が出来るまでは、バルト・ピレリリさんが動かしてもかまわないからさ」


リタ商店のことまで、気にかけてくれるセルフィに、リタはありがたさを感じながら、お礼を伝える。

「分かったわ。セルフィ。ありがとう。またリタ商店が出来るようになるのは、嬉しいわ」


バルト・ピレリリは、貧民地の民を率いたことが何度かあったが、もともと兵士というわけではないので、元ボルフ王国の兵士たちも含めて、兵士たちをまとめ上げられるのか不安だったが、必要とされることが嬉しく感じていた。


「軍事に強いというわけではありませんが、わたしもお役に立ちたいと思っています。セルフィ様」


「奴隷兵士は、武器は持てないけど、バルト・ピレリリさんにまかせたらいいよね?リリス」


「そうね。バルトお願いできる?まずは、聖書の価値観を教えることが先よ」


「分かりました。リリス様」


「あと聞きたいのは、神の民の20万人の人たちだけど、もともと一神教を信じていた人たちっているのかな?」


「お母さん分かる?」


「そうね・・・。ボルフ王国は、長らく多神教を信じていたから、ほとんどいないと思うけど、ケイト・ピューマ・モーゼスの影響をそのまま残している人たちもいるかもしれないわね」


「やっぱり、そうですか。もしいれば、すぐにでもクリスチャン認定できる人がいれば、色々と復興がはかどると思ったけど、難しいのかなー」


「メーゼ神教の司祭などもいて、一神教は、良くない噂も建てられていたこともあるし、まだ分からないわね」


「一神教の良くない噂?それはどういうものなのですか?」


「わたしは、ケイト・ピューマ・モーゼスの意思を受け継ぐ、一神教だからあまり詳しくは知らないけれど、多神教は、神を多く認めているので、あらゆる考え方を受け入れるという正当性を訴えたりもしているわね」


「あーなるほどです。多神教で言われる良くある話しですね。わたしも多神教的な人から何度も聞いたことがあります。ですが、深く考えれば、それらは実は人間的な考え方なんですよね」


「人間的な考え方?」


「いわゆる神を人間が自分勝手に、利用している思想だと自分たちの口で証明してしまってるんですよ。多神教の人たちは、平和などを口にしますが、人間が平和になるために、神を利用していると言っているのです。つまり、人間が平和になれば、神はどのように利用してもかまわないと言っているのに等しいわけです。そのような物の言い草をする人は、実は、自分たちの下に神を置いて、利用していて、傲慢な発言だということです

ですが、一神教は、「神は三位一体の神様しかない」という傲慢そうなことを言いますが、実はこれは、ものすごく、へりくだった考え方なのです。なぜなら、人間は不完全であり、その人間の上に神を置いて、正義を語るからです

人間がどうあろうと神は人間の好き勝手に変えられるものではないと、現実を認めているのです。神ですら何でもよくなれば、人間には正義などなくなります。ボルフ王国の王族たちは、非人権的な思想ですが、彼らは心から正しいと思っているのです。犯罪者たちも心から正しいと思っているからそのように行動しているのです

神を無くせば、人には、愛も正義も固定することなどできないんですね。犯罪者の趣味趣向の正義があれば、多神教の平和も同じ人間を基準としているので、犯罪者とレベルが同じ、趣味趣向の正義でしかなくなるのです。どこまでも人間を基準にすれば、正しいことなどなくなるんですね。多神教の人たちは、その矛盾に気づいていないんです」


ここは俺を拉致したような奴らが作った仮想世界だから現実とは違う世界の法則が沢山存在している。

だけど、現実の世界では、まさに正義の固定を目指す保守派的な人たちが、いつの時代にもいて、悪さえも認めていくようなリベラル的な思想もいる。

どちらも良し悪しは確かにあるけど、保守的な考えを少し強めながら教育していく必要がある。

なぜなら、人には愛や正義がないからだ。俺がいた現実の世界の時代では、人権が当たり前にあったが、それは聖書があったおかげで、憲法に固定されて正義が掲げられている。

でも、その憲法がなかった200年前はといえば、人権など無かったのだ。だから、人は、人を食べていた文化で世界中が広まっていた。人間が人間を食べるというカニバリズムを白人や日本以外の場所では、大量に行われていた。中国では、人の肉が露店で平気で売り買いされていたし、戦争では兵量を準備することさえしなかった。なぜなら、敵が食料になっていたからだ。

信じられないかもしれないが、それが本当の歴史だ。俺のいた時代では、人権が当たり前だと思い込むほど平和ボケしてしまっていた。聖書の固定された正義が憲法にあるおかげで、平和に生きていられるのに、それをまったく学校では教えられない。それこどか人間を食べる人間は、サイコパスというまるで病気のように伝えられ、特殊な人間だから犯罪をするように誤魔化しているほどだ。

これらの考えは大嘘だ。人には、愛や正義がないから、どんな人も人間を食べることを正義だとした文化で育てば、まるでブタや牛の肉を食べるように、人間の肉を食べることも正義や愛だと思って行ってしまうのだ。

脳にどのような教育がされているのかで、人は悪さえも、善だと信じ込むほど恐ろしいものなのだ。だからこそ、俺のいた地球のように、平和ボケできるほどの世界にしたい。人権をこの世界にももたらしたい。世界中にクリスチャンになるという福音が延べ伝えられなければ、いつ自分たちが食べられてしまうかも分からないからだ。ペルマゼ獣王国では、人間の頭を笑顔で女性が売っていた。彼らは、それを悪いとさえ思っていないのだ。


「やっぱり、あなたは凄いわ。セルフィ。ケイト・ピューマ・モーゼスは、龍王に影響されて一神教を信じていた。そして、妖精族たちには、一神教を信じるようにと伝えられてきたんだけど、そこまで深くは考えていなかったわ。だから、セルフィは、クリスチャンであることを重要視して、【人権】を世の中に広めたいと思っているのね。【人権】を広めるなんていう夢のまた夢のような思想をしっかりと持てているセルフィは、本当に凄いと思わされるわ。まるで、【人権】が当たり前だったような国で育ったかのように、それを確信を持って伝え続けてる・・・・。わたしたちの常識では、民は領主の所有物で、モノ扱いよ。ボルフ王国の考え方のほうが当たり前ですもの・・・。あなたが、伝説の天使だと知らないで、あなたのその【人権】の思想を聞いたら、100人中99人があなたを笑うはずよ。民に権利があるなんて世界が来るはずないってね。本当に、あなたの存在は、不思議だわ。そんなわたしに育てられたリリスも、分かっていなかったんじゃないかな」


リリスは、頷きながら、自分を振り返るように答えた。


「わたしは、一神教や多神教の違いも分かっていなかったわよ。一神教を信じるようにリタ叔母さんから少し教わっていただけだった。でも、神様がいることは信じていたわ。どの神様が本当の神様なのかは分かっていなかったけれどね。今はしっかりと新大共和ケーシスのみんなに一神教を伝えていきたいと思ってるわ」


「多神教のひとたちは、神を信じているから自然と平和的な思想に落ち着く。言っていることは矛盾していても、感情では、神を大切にしたいと願うからだね。でも、多神教は、人に正義を与えられないという本質があるから、危険なんだ。感情論で大雑把に信じてしまいすぎてる。差別しないといいながら、一神教を差別的な目でみている発言をしてしまっている。まるで独裁政治を教えている宗教のようにね。実際は、その逆なんだけどね。神は御一人だからしょうがないと一神教は、へりくだって伝えているだけなんだ。人がどう考えようが本当の神様は変わらないし、変えられない。そして、その変わらない神様を基準にして、正義や愛を固定しなければ、人間はどこまでいっても、愛や正義など存在しなくなるんだ。

平和的に生きていく神を信じる者たちはまだいいけど、そうじゃない犯罪的な思想まで、結局、自由にしてしまっているのが多神教の思想なんだ。だから実は、恐ろしい思想なんだ。

ゆっくりこういう話もしていたいけど、今は、新大共和ケーシスの建国のことを話していこう。最後に、新大共和ケーシスには、こういうものを提供したいんだけど、どうかな」


源は、ミカエルを使って、視覚的に、映像をみせる。その映像には、大きそうな施設が2つあり、見た事もないようなものが、置かれていた。そして、もう1つには、大量の水が溜まっているようだった。


「これはなに?こんな建物、みたことないわ」


「これはね。1つは、下水道施設だね」


「下水道施設?」


「うん。えとね。これから、新大共和ケーシスには、仮設住宅の後に、クリスチャンになった人たちが、ミカエルを使って家を建設していってもらうことになると思うんだけど、その家の1つ1つに、水が使えるように、地下から管を通して、家につなげるんだ」


「家の中で、水が使えるようになるっていうこと?」


「うん。この映像にあるように、この蛇口というものをひねると、水が出るようになるんだ」


「「「すごい!!」」」


リリスも、リタも、バルト・ピレリリも、その映像をみて、驚いていた。


「それでね。家に1つそれぞれトイレも作れる。そして、そのトイレは、下水に繋がっていて、家を汚さずに、利用できるというわけだね」


「まるで魔法ね」


「そう思えるかもしれないね。でも、この下水道施設を利用するには、もう1つの施設も作らないといけないんだ」


「この施設は、何なの?」


「これは、電気を生み出す施設で、その中の火力発電っていうものだね」


「電気を生み出せるアイテム?」


「アイテムというか、ニーナが勉強している科学なんだけどね。例えば、リリスは、木に火をつけることができるでしょ」


「それぐらいなら、出来るわね」


「その火は、何かを燃やせるだけのエネルギーを持っている。そのエネルギーを利用して、電気にしてしまう施設なんだ」


「「「すごい・・・」」」


3人は、また不思議そうな顔で、映像を睨みつける。


もし、この2つが、新大共和ケーシスとレジェンドにも、用意できれば、さまざまなサービスをさらに提供できるようになる。


「どんなことが出来るようになるの?」


源は、ミカエルの映像をスクロールして、みせる。


「うーん。例えば、お風呂。家の中に、水を溜めて、その水を温めて使うことができる。毎日のように、お風呂に入れるようになるよ」


「凄いじゃないの!!すべての家に、それを付けられるの??」


「2つの施設が出来たらね。今のように布で体を拭くだけよりも断然綺麗になる。あとは、これはキッチン。おいしい料理を作るのに便利で、このコンロというところから、火をいつでも簡単に出して、水も横の蛇口から自由に出せるんだよ。レジェンドやユダ村で、22万人の料理を早くつくれている秘密は、これだね。施設とは違うやり方で電気を生み出して使ってるんだけどね

あと、これは冷蔵庫。電気のエネルギーを熱エネルギーにかえて、冷たい空間を作るんだ。食べ物がすぐに痛まない。これができれば、食料の保存も可能になるね」


3人は、くいるように映像を見続ける。


「ちなみに、この電気を発見して実用化しようとした科学者はクリスチャンなんだよ。神を信じない科学者は、この世界には法則なんてない!って訴えていた。でも、神を信じる科学者たちは、この世界は神の作られた法則があると信じた。どちらが本当のことだったのかは、この2つの施設をみれば分かる。神がいるからこそ、世界には法則があって電気も使えるんだ。だから、もの凄い科学が発達したのも、神を信じる科学者たちによる功績なんだ。偉大な科学の発展をもたらしたとされる人たちの9割は、神を信じる科学者たちだったんだよ」


リタたちは、話しの内容が解らいのか、考え込む。

「どういうこと?科学・・・発達した・・・・?」


「あ!ごめん。今の忘れて・・・つまり、この2つの施設があれば、暮らしが便利になるってこと」


しまった・・・・ついつい、普通に現世の常識を口にしてしまっていた・・・。


『特別、今の発言で変わってしまったことはありません。今ぐらいの発言なら管理システムも認めているのかもしれませんね。源』


『そうなのか・・・?拉致した人間のあいつらじゃなく、あいつらが作り出したコンピューターが管理しているから、セーフになっただけかもしれない・・・。まー沢山いる人間の発言をきちんと聞いているとは思えないけどね・・・。うっかり口に出してしまっていた・・・全力で誤魔化しきる!』


源は、大げさなジェスチャーをしながら、話しを戻そうとする。


「水を使えるようになったり、料理ができる設備がよくなったりすることは、一部のことだけど、他にも色々と出来ることが多くなっていける。この施設をレジェンドやユダ村、そして、新大共和ケーシスに用意しようかと思ってるんだけど、どうかな・・・?」


「いいに決まってるじゃない!!お金はいくらぐらいかかるの?」


「お金は、大丈夫だけど、燃やすためのエネルギーが必要なんだ」


「燃やすためのエネルギー?」


「生き物の遺体とか、ぼくたちの排泄物。または、森にある木とかだね」


この異世界には、ノアの大洪水が起こっていないので、大量の石油や石炭、天然ガスが存在していない。なので、生き物の遺体を集めて、油などを手に入れる必要がある。


「レジェンドの兵士たちには、モンスターの遺体をミカエルに運んで、地下で買い取らせてもらっていたから、そこそこ、あるんだけど、定期的に、それらを回収できないとこの2つの施設のエネルギーが不足しちゃうんだよね」


この世界の人工太陽を使うことも出来るけど、資源は使えるものがあるのなら、それを使いたい。


リタはまた不思議そうな顔で口にする。

「生き物の遺体がエネルギーになるのね・・・そんなこと聞いたこともなかったわ」


「えっと、ちょっと変んな話だけど・・・生き物は、おならをするでしょ。実は、そのおならに火を近づけるとボッて燃えるんですよ。つまり、僕たちの体の中では、ガスが作られている。そして、体の脂肪もエネルギーとして燃やせる。排泄物もエネルギーになる。分からないかもしれないけど、天然ガスや原油という資源も、生き物から取れるんですよ。木ももちろん、燃やせるから石炭というものに地に閉じ込めるかのように圧縮させ、作ることも可能なんです」


リリスは、なんとか納得してくれたようで、頷きながら答える。

「お金は必要じゃないけど、生き物の遺体や排泄物、木が必要ってことね」


「うん。手っ取り早いのは、木なんだけど、木を使いすぎると森の生態系が壊れちゃうから、なるべく木は、最初だけにしたいんだ。それで下水道施設ができれば、排泄物などは、確保できる。あとは、モンスターとかの狩りをクリスチャンになった兵士たちが、献上してくれると助かるんだけどね」


「お金を使わないで、生活できるんだから、それぐらいは、協力してくれるでしょ。モンスターの遺体は、ミカエルが、運んでくれるんでしょ?」


「うん。運ぶ手段は、提供させてもらうよ」


「それなら問題ないわよ」


「それでも足りない場合は、帝国からモンスターの遺体を買い取ろうと思ってるんだよね。なんだか、冒険者アドベンチャーは、モンスターから魔石などのアイテムや牙や毛皮などを取ったら、それ以外は捨ててるみたいだよね。帝国には、ミカエルは使わせられないんだけど、簡単な荷車みたいなのを提供したら、やってくれそうだと思ってる」


「いいと思うわ。そのためにも、新大共和ケーシスの冒険者アドベンチャーたちの効率も上げていきたいわね」


「そうしてくれるとありがたいね。だいぶ、レジェンドにもエネルギーの蓄えがあるから、半年ぐらいは、それでまわるとは思うんだけどね」


「バルト・ピレリリさん。このモンスターの遺体の回収のことも、まかせていい?」


バルト・ピレリリは、セルフィの語ることは聞いたこともない事ばかりで、話についていけなくて、少し不安だったが、受け入れた。

「や・・やります!!」


「それじゃー。バルト・ピレリリさんには、レジェンドの会計係を紹介するよ。彼女がレジェンドで買い取りなどの管理してくれてるからさ

以前は、1kg=4銅貨ぐらいで買い取りしていたけど、今は他の仕事と同じでそれを仕事の義務として買い取りはしていないよ」


リリスが質問した。


「それで兵士たちは文句言わないの?」


「最初は少しもめたけど、そこで兵士だけ報酬を渡すのなら、その報酬で食費なども払ってもらうことになると話したら、納得してくれたね

レジェンドの兵士はほとんどがクリスチャンだからミカエルも使えるし、楽に遺体回収できるしね」


源は、ミカエルを使ってローグ・プレスに聞く。

『ローグ・プレス。セルフィだけど、レジェンドのモンスターの遺体を管理している子の名前はなんていったっけ?』


『えとですねー・・・。トリシュ・ポーガスという16歳の女の子です。セルフィ様』


『トリシュ・ポーガスさんね。ありがとう』


「トリシュ・ポーガスっていう子が管理しているみたいだからお願いね。バルト・ピレリリさん」


「はい。ありがとうございます。セルフィ様」


源は、リリスの様子を伺い、聞いてみた。

「リリス。そろそろ、エリーゼ・プルも、考えがまとまったぐらいじゃないかな。会いに行ってみる?」


リリスは、少し考えた後、頷いた。


「そうね。彼女の考えを聞いてみたいわ」


源は、リリスを連れて、エリーゼ・プルたちが捕らえられている地下へと転移した。


その地下には、同じ牢屋に、エリーゼ・プルとバーボン・パスタボ。そして、離れた場所に、ボルフ王国国王とその家族の牢屋があり、さらに、その奥に、アモラ210体が、未だに、ミカエルに拘束されたままになっていた。


それらの管理は、ミカエルが行っていて、トイレなどの時は、牢屋から出し、食事も届けられていた。


リリスは、エリーゼ・プルとバーボン・パスタボの牢屋に近づいた。


「エリーゼ。あなたには、申し訳ないことをしたわ。本当なら、レジェンドで出会った時に、あなたにマックル・セスドのことを伝えるべきだったかもしれない。でも、あの時は、言えなかったの」


エリーゼ・プルは、顔を横に振った。


「ごめんなさい。リリス・・・・。わたし、操られていたとはいえ、あなたに怪我をさせるなんて・・・。確かに、マックル・セスドのことをあいつらから聞いて、あなたのことを憎いと思ったわ。でも、あなたも苦しんでいたことも知っていたから、怪我させようとなんて思ってなかった・・・。信じてもらえないだろうけど・・・」


バーボン・パスタボもエリーゼをフォローする。


「操られていなければ、エリーゼがそんなことするはずがない。俺だって、何の恨みもないのに、セルフィ様を攻撃しただろ。どうしようもなかったんだ・・・。止めようがなかった・・・」


リリスは、その証言が本当なのかとセルフィの顔をみる。


「バーボン・パスタボのいうことは、本心だと思う。確かに、バーボン・パスタボは、アモラにされていたから、本人の意思では、止めようがなかった。彼は信用してもいいと俺は思う。でも、エリーゼ・プルは、どうかは、俺には判断できない」


「そう・・・」


ミカエルが、二人に伝える。

「セルフィ様。リリス様。お二人は嘘はついてはいません」


「そうか。ありがとう。どうする?リリス。俺は、バーボン・パスタボは、仲間として、受け入れるべきだと思うけどね」


「そうね。わたしは、エリーゼ・プルもゆるしたいし、わたしも許されたい」


その言葉を聞いて、エリーゼ・プルは、泣きながら言った。


「リリス・・・本当にごめんなさい。フィアンセを殺されたあなたの辛さと考えれば、わたしは・・・。あなたが、ゆるしても、まだわたしは自分がゆるせないの。どうかこのまま、まだ牢屋にいれていてもらえないかしら・・・」


リリスは、困った顔をした。


そして、バーボン・パスタボは、訴える。

「エリーゼ・プルが残るというのなら、俺も牢屋にいさせてくれ。頼む」


リリスは、頷く。


「うん。ありがとう。バーボン・パスタボ。エリーゼ・プルのことよろしくね」


源は、3人のやり取りをみて、確かに反省しているのだろうと感じた。


「1つ条件をだしてもいいかな?エリーゼ・プル」


「はい。何でしょうか?セルフィ様」


「この牢屋に残ってもいい。でも、毎週日曜日には、教会には顔を出してほしいんだ。ただ、それだけでいいからさ。心の整理がついたら、また戻って来てほしい」


エリーゼ・プルは、黙って涙を流して、うなずいた。




源は、次に、元ボルフ王国国王キグダム・ハラ・コンソニョール・ソールの牢屋へと足を運ぶ。


「キグダム・ハラ・コンソニョール・ソール。あなたに聞いておきたいことがある。あなたの国、ボルフ王国は、滅びました。ですから、新大共和ケーシスに、隠してある財産の在りかを教えなさい」


「教えれば、我々を逃がしてくれるとでもいうのか」


「そんなことは出来ません。ですが、あなたが、高い税収で財産を集めていたことは解っています。それらを国の民たちに、返す必要があります」


「フ・・・。奪って、お前の懐にいれるというのが、本音であろう?」


「あなたと一緒にしないでください」


「何にしても、言うつもりはない」


「そうですか。あなたが最後まで行ったことは歴史には、そのまま残っていくことでしょう」


キグダム・ハラ・コンソニョール・ソールは、苦々しく顔を歪ませた。



『ロック。少し、手伝ってほしいことがあるんだけど、今いいかな?』


『ああ。大丈夫だ』


源は、リリスとリタ、そして、バルト・ピレリリを連れて、新大共和ケーシスに戻った。


そして、リタたちと別れるとロックを連れて、ボルフ王国の跡地に転移する。


「え!ここは、爆弾で汚染されてるんだろ!?」


「あー。それは、ほとんど除去したから大丈夫だよ。それにロックは、物質モンスターだから問題ないと思うよ」


「思うよって・・・本当かよ・・・」


「そんなことより、これを食べてほしいんだ」


源は、右手から金貨を出して、ロックに渡した。


「食べろって、金貨じゃないか!」


「うん。確か、ロックは、食べた鉱物の場所を探知できるよね?俺も、リトシスを発動すれば、出来なくもないんだけど、あまりにも膨大な情報になるから、ロックに頼みたいんだ」


「分かった」


ロックは、その金貨を丸ごと飲み込むと、目をつぶって、金の在りかを探る。


「そうだなー。各地に金の場所があるのが分かるけど、まとまっているのは、4カ所だ」


ロックは、4カ所の方に指を向けて、教えてくれた。源も、リトシスを発動させて、確認する。ボルフ王国跡の四隅の地下に、分けられていたようだ。


源は、その1つのほうに、ロックと向かうと、リトシスを発動させて、土などを払いのけると、鉄のドアを発見した。そして、その鉄のドアを破壊し、階段をみつけると、その階段を下りていき、地下へと向かう。


いくつか鉄格子てつごうしがあったが、それらも破壊して、先に進み、大きな鉄のドアもリトシスで穴を開けて、中を確かめた。


中には、金だけではなく、あらゆる財宝が、5m四方の広さの部屋に、ぎっしりと保管されていた。

ロックがそれをみていう。

「すごい財宝だな・・・」


「うん。国民から奪っていた食料などを金にして、さらにその金で集めた財宝だろうね。税率45%で還元率は5%も無かったんだから・・・」


それらをリトシスで宙に浮かせて、時空空間ゲートを開き、キグダム・ハラ・コンソニョール・ソールたちを閉じ込めている金庫の場所に移動させた。キグダム・ハラ・コンソニョール・ソールは、それをみて、歯ぎしりして、悔しがっていた。


残りの3つも同じ作りになっていて、それらの財宝も、すべて金庫の中へと移した。


総額で、50万枚の金貨に相当する財宝だった。日本円にすると500億円ほどの財産だが、流通が限られている世界で、これだけ集めたのは、例え国だとしても、凄いことだ。どれだけ民から搾取して、帝国に献上しないようにしてきたのかが、うかがえる。


ロックがその他にも探知したのは、たぶん、金鉱山などの自然金だろう。そこまで、金を必要としているわけではないので、ほっとくことにした。


この50万枚は、リリスに報告して、新大共和ケーシスのために、使ってもらうことにする。



源は、財宝のことを済ませると、112人のレジェンドの兵士をボルフ王国の領土りょうどの村々に、各自、ミカエルの黒い兵士3体を連れて、転移させた。

元ボルフ王国が所有していた土地であり、これからは、新大共和ケーシスの土地となるので、そこの領主たちや多くの民たちに知っておかなければいけない情報を伝えるためだ。

それは

1、ボルフ王国滅亡、壊滅、貿易不可

2、新しい国、新大共和ケーシスの設立

3、大共和ケーシスの支配者だったケイト・ピューマ・モーゼスの末裔である女王リリス・ピューマ・モーゼスの即位の情報

4、領主は、そのままにし、税収も変わらない。現在の状態を維持

5、領主は、各自、新大共和ケーシスのリリス・ピューマ・モーゼスに会いに来るように

6、新大共和ケーシスの首都は、建設中ゆえに、村人の移住受け入れは、半年後として、基本、受けれないとする


これらのことを兵士たちは、ミカエルのソースを村に広げて、一斉に、ミカエルをスピーカーとして報告した。もちろん、領主たちには、直接、兵士が、おもむき伝えた。


ボルフ王国の領土内の人々に、一斉に、情報がもたらされた。領主の過半数は、すでに、新大共和ケーシスで奴隷として捕らえられているので、その70カ所には、レジェンドの兵士たちが、領主の代行をしてもらうことにした。


レジェンドの兵士たちは、もともと貧民地の農民あがりなので、もの凄く戸惑っていたが、新しい領主として、座っていればいい。分からないことがあれば、ミカエルを通して、聞くようにと伝え、申し訳ないが、無理やりやってもらうことになった。


領主代理として、赴任するので、奴隷となった領主貴族たちの家で寝泊まりすることになる。食事は、新大共和ケーシスで用意するので、そちらのもの以外は、口にしてはいけないと忠告した。そんなことをするとは思わないが、毒でも兵士たちにもられたら、問題になるからだ。

主人を奴隷にされた領主の家族や使用人たちの突然の兵士の領主代理への視線は、冷たかった。


また、源は、元国王やエリーゼ・プルたちの見張りの面からも寝る時は、金庫の中で寝るようにした。

一番の理由は、アモラだ。自分が寝ている間に、愛に、自分の脳の負担がない程度に、アモラに変貌させられた210人を解析させて、元の人間に戻させていった。人間ひとりの情報を得るには、時間がかかってしまうので、210人を助けるには、まだまだ日数がかかってしまうだろう。


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