146章 突然の放浪の民
源は、目を覚ますとレジェンドの兵士たちに、簡単に作られたタンカで、運ばれていた。
「セルフィ様。目を覚まされましたか」
「あ・・ああ。みんなは?みんなは無事か?」
「はい。みんな無事ですよ。安心してください」
すぐにミカエルに経過状況を確認する。
『ミカエル。俺が気絶してからの状況を今すぐ説明してくれ!!』
『はい。セルフィ様は、100万以上いた生物を無事に、地上へと降ろした後、すぐに気を失われましたが、その後は、リリス・ピューマ・モーゼス様の指示のもと、レジェンドへと向かっています。今は、レジェンドまで150km地点まで、進んでいるところです。ボルフ王国は、謎の大爆発によって汚染されているとセルフィ様が仰られたので、遠回りして、レジェンドまでの移動を続けています。汚染させるモンスターアモラは、未だにわたしが、あの場で拘束し続けています。マーレ・ソーシャスは現れてはいません。レジェンド側、貧民地の民20万人の被害は0で、アモラによる感染者も0です。ボルフ王国国王たちは、縄を付けられ一緒に歩いています。セルフィ様』
『愛。愛からもっと詳しい状況を教えてくれ』
『はい。分かりました。源。ミカエルが言っていた謎の大爆発とは、核爆発だと思われます』
『核爆発!!??』
『はい。源。ボルフ王国で、誰かが核爆発を起こさせて、すべてを吹き飛ばしたと考えられます。ミカエルのソースによって確認できたのは、城や壁のような石で出来たもの以外は、吹き飛んでしまっている状態です。もちろん、城も半壊してしまっています』
『ミカエル。今のボルフ王国の画像を映し出してくれ』
『はい。分かりました。セルフィ様』
ミカエルによってみた光景は、広島の原爆で起こったような景色となっていた。焼け焦げた土の他、ほとんどが消え去ってしまっていた。
『愛。こんな文明しかないのに、核爆弾なんて作れるものなのか?』
『分かりません。源。源のように、現世の記憶があり、核爆弾を作れる知識があったとしたら、出来ないことはないかもしれませんが、ほとんど不可能でしょう』
『汚染状態は、どうなんだ?』
『ボルフ王国全体が、10kmから15kmにかけて、放射能汚染にさらされています。源』
『そうか・・・もう住めなくなってしまったというわけか。もちろん、俺たちが作った畑も森もみんな消し飛んでるもんな・・・』
『残念ですが、その通りですね。源』
『ボルフ王国にいたひとたちの数は、何人だ?』
『22万5670人です。源』
『22万か・・・この22万をレジェンドの溜め込んでいる作物を分けると、何日ぐらいもつ?』
『節約したとして、3か月ですね』
シンダラード森林の森をボルフ王国の規模の畑として利用したら、あきらかに環境破壊になってしまう。ボルフ王国は汚染されているというから戻るわけにもいかない。リトシスで一気に、汚染を排除することもできるが、土地自体が、すでに栄養がなくなっているので、これから畑を作ろうとしても、とてもじゃないけれど、その先の食料が不足してしまう。
うーん・・・困ったな・・・。とにかくみんなに、起きたことを連絡するか。
『セルフィだ。みんな心配をかけたね。今、目を覚ましたよ』
『『『よかった』』』
みんなが、安心した声を出す。
『ボルフ王国は、汚染されているっていったけど、どういうこと?セルフィ』
リリスが、質問してきた。
『えーとねー。あの大爆発は、ただ爆発しただけじゃないんだ。何というか、生き物に害を与える病気にさせるようなものを拡散してしまう爆発だった。だから、ボルフ王国には、戻れないね』
『そう・・・。この先どうしようか・・・』
『一応、今確認したところ、22万人の食料は、レジェンドの溜め込んだ食料を切り詰めてつかえば、3か月は保つらしい。その3か月の間に、ボルフ王国のひとたちは、違う場所で、畑や建物を用意して、街を作り直さないといけなくなるだろうね』
『できそう?』
『うーん・・・何とも言えないけど、あのボルフ王国の土地は、すでに栄養が無くなっていて、作物も育たなくなっていた。それを考えたら、別の場所で、畑を作ることは、ミカエルなどを総動員したら、明日にでも、畑は作れると思う。あと、レジェンドのみんなが作ってくれた家具などの品物も、みんなに与えることは出来るね。レジェンドのみんなには、いきわたってしまっていて、使う人がいなかったからね。でも、肝心の家はすぐには用意できないね』
『野宿ということになるよね?』
『そうだね・・・仮設住宅といって、簡単な家ならそれほど時間はかからずに、容易できるかもしれない。まずは、それで我慢してもらうことになるかな・・・』
それを聞いて、ボルア・ニールセンが、提案を出してくれた。
『ボルアですが、セルフィ様。巨石飛行物体は使えないのでしょうか?』
『あ・・・。ほんとだ。使えるね!半径1kmで、幅は、2kmを超える広さがあるから、そこに家が建つまで、家として、使ってもらえばいいのか』
『愛。巨石飛行物体には、何人が寝泊まりできる?』
『約300万人ほどです。源』
300万人か・・・。十分じゃないのか?うーん・・・でもなー。家の中のスペースの10分の1が埋まっていたとしたら、どうだ・・・。とてもじゃないけど、多すぎる。せめて、スペースが埋まっているのは、20分の1にはしたいところだろう。だから、巨石飛行物体に止められるのは、15万人程度にするのがいい。まーでも、仮設住宅ができるまでは、狭いスペースだけど、我慢してもらうか。
『ボルア。巨石飛行物体で寝泊まりできるのは、ぎゅうぎゅうに押し詰めて、300万人で、少し押し詰めて、30万人程度になりそうだ。22万人だと、狭苦しい状態になるけど、我慢してもらって、外でも大丈夫と言う人には、外で生活してもらおうか。巨石飛行物体には、本当なら15万人ぐらいが寝泊まりできるぐらいが丁度いいだろうね』
リリスが源の言葉に反応する。
『その他のひとたちは、申し訳ないけど、野宿してもらって、その仮設住宅というものを作っていってもらうしかないわね』
『そうだね。それでミカエル。22万人が、暮らしていくのに、丁度いい場所は、どこになる?』
『今、いる場所から、約30km南下した場所は、川が流れ、森も周辺に潤沢にあり、平原が広がっているので、畑を作るのに適しています。セルフィ様』
『そうか。リリス。どうする?ミカエルがいうには、そこが新しい国造りをするのなら、適しているらしいけど』
『まずは、22万人のみなさんに、今の現状を話しをしたいわ。ミカエルを使って、みんなにわたしの声が聞こえるようにできる?』
『はい。出来ます。リリス様』
リリスは、歩いて、レジェンドに向かっていたひとたちにミカエルを利用して、声をかけた。
『みなさん。わたしは、リリス・ピューマ・モーゼスです。少しみなさんに伝えたいことがありますから、その場で立ち止まってください』
長い行列となって進んでいたが、ミカエルのソースによってすべての人に声が届いていたので一斉に、足を止めた。
『みなさんに、再度、今の状況をご報告します。まず、ボルフ王国は、滅びました
レジェンドの加勢を得て、民が立ちあがり、ボルフ王国は、滅んだのです
ドラゴネル帝国もそのことには、容認して、これからのわたしたちをサポートしてくれます
勘違いしないでほしいのは、ボルフ王国を爆発させたのは、わたしたちではありません。謎の者が、ボルフ王国を爆発させました。結果、みなさんを救うために、空へと転移させたのです
わたしたちが犯人であれば、わざわざ自分たちも危険になるようにすることはないので、わたしたちがしたことではないということです。真犯人は、誰かは分かってはいませんが、その真犯人が起こした爆発でしょう。その爆発によって、今まで住んでいた場所は、汚染され、そこに住むことはできません
ですから、今いる地点から南30km地点に、住むために適した新しい土地があることが分かったので、そこから国作りを1からはじめようと思います。帝国もいるわけですから、まったくの0からのスタートというわけではありません
わたしに賛同してくれる方は、そこで新しい国を作っていきましょう。ですが、賛同できない方達は、他の土地へと移動してくださって構いません
ですが、亡国の民となってしまったわたしたちは、他国に行ったとしても、受け入れてくれるかは、分かりません。みなさんが、各自で考えてください。旅の食料を確保できるまで、一緒にいるという選択枠もあります。レジェンドのみなさんたちも、わたしたちを助けてくださるので、希望を持って歩みましょう。セルフィ。何か付け足すことはある?』
『レジェンドは、みなさんを見捨てません。出来る限り、みなさんが飢えないように、食料を用意しようと考えています。今、レジェンドが蓄えている食料は、22万人分が、3か月です
その間に、畑を作ろうと思います。貧民地のみなさんは、前回、栄養がない土地でも、作物が育つことを体験されていますが、今回の土地は、新しい土地なので、すでに土地が肥えています
以前よりも早く食物は育ちます。これはレジェンドでも証明されています
少しずつですが、家なども簡単なものを提供していこうと考えています。家具や服などはレジェンドにあるものを提供させてもらいます。仮設住宅という簡単な家を作るにも時間がかかってしまいますから、それまでは、巨石飛行物体という巨大な乗り物の中での生活をしてもらうことになります。人数が多いので狭く感じるので、野宿などでもいいという方は、野宿をしてもらうことになります
その先のことは、女王リリス・ピューマ・モーゼス様と打ち合わせをしていき、みなさんに伝えていくことになります。これから、30kmの先の場所まで、ゲートを開きますので、そのゲートをくぐって、転移してください。ゲートをくぐっても、すぐに立ち止まらないようにしてください。22万人いるので、先頭のひとは、ゲートをくぐった後、2kmは進んでください。よろしくお願いします』
源は、行列の先頭まで行き、その場所に、5mほどの大きな時空空間ゲートを開いた。人々は、それをくぐって、歩いていく。
その大きなゲートをみて、人々は、どよめきながら入っていく。
不満そうな顔をする人もいたが、貧民地の20万人のひとたちは、逆に嬉しそうな顔をしていた。ボルフ王国の権力に押さえつけられていたからだろう。貴族などは、文句ばかりをもらしていた。すべての財産を失ったわけだから、普通ではいられないのだろう。人によってはすでに、みんなとは違う方向に行ってしまった人もいた。
以外だったのは、ボルフ王国軍側として戦った兵士たちが、貧民地の人たちのように、大人しく着いてきていたことだった。文句1つも言わずに、従ってくれていた。
あれ・・・ちょっと待てよ・・・ボルフ王国の負傷した兵士たちはどうした・・・。
『愛。ボルフ王国の負傷兵は、どうしてるんだ?』
『源。生き物100万以上を瞬間移動させたのですが、源のマナ力にも限界があったので、死んでしまう状態だったものたちは、あの爆発と共に、亡くなっています』
『マジか!』
『はい。源』
少し、背中をゾゾゾっと悪寒が走った。要は、愛は、死にそうな人間と元気な動物を同じものだとして考えて、選定したということだ。
『愛。いいかい。君に教えていなかったかもしれないけど、人間と動物を一緒に考えてはいけないよ。人間は、神様の似姿に作られた存在で、動物も大切な生き物だけど、人間を優先にすることをしないといけないんだ』
『はい。源。わたしは、聖書のことも理解していますから、源の仰る通り、そのことも理解できています』
『・・・。うーん。じゃーどうして、ボルフ王国の兵士たちを見捨てたの?』
『源。源にとって、この世界の動物は、動物にみえるかもしれませんが、この世界がどのように選定されているのかは、未だに不明です』
『あ・・・・そうか!』
『はい。そうです。源。この世界で動物のように見えるものであっても、実は現実の世界の人間である可能性があるのです』
『そうか・・・。なるほどね・・・。え・・・ちょっと待って、じゃーさ。コボルトとかも人間だった可能性があるってこと?一角うさぎも?』
『その通りですね。源。逆に、この世界で、人間だと思えるような者たちも、実は、作られたプログラムだけの存在の可能性もあります』
『うーん・・・リリスやロックも?』
『リリス様は、分かりませんが、ロック様は、人間である自覚がはじめからあったので、人間の可能性が少しだけ高いと思われます。ですが、それもそのようにプログラムされた可能性もあるので、やはり分かりません』
『だから、すべての生き物を人間であるかもしれないと平等にして、生かしておける健康なものを優先的に、選んだというわけか』
『はい。その通りです。源』
『うーん・・・。でもさー。現実の世界では、人間の脳なわけじゃん?その脳で、この仮想世界の動物となっていたとしたら、その動物は、人間のように振舞うんじゃない?例えば、フォルなんて、あれはキツネとは思えないほど、おしゃれ好きだし、頭いいからね。フォルは、人間の可能性とか高いと言えるんじゃない?』
『その可能性は、あるかもしれませんね。源』
『だよね。だったら、人間のように振舞うものを人間として、認識しなければ、それ以外はもうすでに、人間じゃないよね』
『倫理解釈では、人に意識がなく、それでも生存している植物状態の人間は、本人は、生きているとはみなさない考え方があります。つまり、源にとって、この世界で、人間のように個性を持った個体は、人間として成立していると考えるわけですね?』
『ロックも俺もそうだけど、すでに脳には、色々な情報が詰め込まれていた。拉致したあいつらは、脳の記憶を消せる技術を持っているようだけど、本当にすべての記憶を消せるとは思えないんだよね。やっぱり、人としてこの世界に生存しているものは、人間の可能性が高いとして、人間として扱うべきじゃないかな。でも、愛の考え方のほうが正しい可能性もあるから、あの時、選定したことは、間違っていたとは思わないよ。でも、次からは、人間性がある可能性が高いものを優先にしてほしい。動物はプログラムである可能性が高いからね。あと俺がもし動物を手にかける時に、その動物がフォルのように人間性があると分かったら、俺に教えてくれ』
『分かりました。源。次からは、人間のように振舞う個体を人間である可能性が高いとして、選別いたします。ただ、確実に、その個体が人間性を持っているのかを判別はできません』
『そうだろうね。40%ぐらいの確率があったら、教えてくれればいい』
『分かりました。源』
少し驚いたけど、話しを聞いてみたら、確かに、動物たちも人間である可能性がなくはない。でも、今の情報では、どこまでいっても憶測としか言えないので、どこかで割り切らなければいけない。やはり、人間として振舞うものを人間と認識したほうが、確率は高いだろう。でも、愛のその選定のおかげで、俺が気絶していても、みんなで、歩いてここまで来ることができた。もし、負傷者を助けていたら、あの場から動くことも出来なかったかもしれない。いやいや・・・助けられた命なら、時間をかけたとしても、助けるべきだろう・・・。俺ならリトシスがあるから、かなりの負傷した人も助けられたはずだからだ。1分以内の突然の集団瞬間移動をせざるおえなかったから、さすがに把握するのは愛まかせになった。申し訳なかったと後悔した。
源は、22万人が、時空空間ゲートを渡ったのことを確認して、閉じた。
『愛。どのように、街を作っていくか、効率的な機能になる街づくりの設計図をミカエルに伝達してくれ』
『分かりました。源』
『ミカエル。今からどのような街づくりになるのか、効率的な街づくりの設計図を渡すから、それをみながら、仮設住宅などを建てていってくれ。リリスに許可をもらうまでの仮の設計図だ。だから、仮設住宅もすぐに移動できる程度の作りにしてくれ。でも、優先するべきものは、畑だ。ソースを畑づくりに向かわせてくれ。割合は、仮設住宅20%。家具や衣服類20%。畑40%。食事作り10%。残りの10%は、その他の作業だ。食事作りは、レジェンドの地下倉庫にある食材を使ってくれればいい。レジェンドで作ってくれれば、俺があとで、一気にリトシスで移動させる』
『分かりました。セルフィ様』
『レジェンドにいるみんなに報告しておきます。無事にボルフ王国を崩壊させることができました。レジェンドからの死者は、0です。ですから安心してください。ですが、問題があります
滅んだボルフ王国領土に大爆発が起こされ、22万人の民が、路頭に迷っています。本当は詳しく事情を説明したいのですが、今はまず、22万人が餓死しないため、モンスターなどに襲われないためのサポートを優先したいと思います
そのうちの20万人は、もちろん、貧民地に住んでいた民です。ですから、レジェンドのみなさんも新しい国のために、生産性をあげて、取り組んで彼らをサポートしてくださると助かります
わたしたちレジェンドの生産性を証明するためのいい試練にもなります
ボルフ王国のみんなは、すべてを失いました。今持っているものは、ほとんど服だけです。与えてあげてください。申し訳ないですが、ミカエルの大半の労力をこちら側で、しばらくは使わせてもらうことになります。また、何か決まったら連絡します。詳しいことが聞きたければ、ミカエルの通信を使ってご家族と連絡を取り合ってください。ある程度、落ち着きましたら、はじめからきちんと説明させてもらいます。今は以上です』
源は、レジェンドの主要メンバーに対して、連絡をした。
『これからは、俺は、巨石飛行物体を新しい国の土地に持ってこようと思ってる。その中で22万人が暮らすのは、狭くなるかもしれないけど、寝泊まりはできるからね。その他の多くは、野宿してもらうことになる。22万人の食事は、今ミカエルにレジェンドで作ってもらっているけど、野宿してくれる人は、焚火などが出来るようにと、モンスターなどに襲われないための管理を誰かにしてもらいたいんだけど、ローグ・プレス隊長、任せてもいいかな?』
ローグ・プレスはハキハキと答えた。
『もちろんです!セルフィ様。お任せください』
『ニーナですけど、わたしは今レジェンドにいるし、食事の管理は、わたしに任せて』
『ありがとう。ニーナ。人手が必要な時は、俺かリリスに言ってくれ。貧民地の人たちも手伝ってくれると思う』
司祭様が聞いてきた。
『セルフィ様。わたしにも何か手伝えることなどはないですかの?』
『ありがたいですが、司祭様は、レジェンドの管理をそのまま続行してください。ボルフ王国との戦争を突然はじめたことで、レジェンドのみんなも家族を心配して、今どうなっているのか不安だと思います。なるべく安心できるように、それぞれの家族が連絡できるようにミカエルなどを利用して対応してほしいですね』
『分かりましたぞ。セルフィ様。ところで、このことをユダ村にも伝えれば、今、ユダ村で働いているソースも貸してもらえるのではないでしょうか。また事情を話せば、レジェンド並みに収穫をした蓄えも、こちらに提供してくれるかもしれませんしの』
『さすが、司祭様です。ユダ村のことは考えていませんでした。そのことをユダ村の司祭様にご連絡していただけませんか?』
『分かりました。やっておきますのじゃ』
司祭様は、出来ることがあったと喜んでいるような声で答えてくれた。
『リリス。まずは、食べ物と野宿できる準備をさきに済ませたい。今後のことを話すのは、その後になりそうだけど、いいかな?』
『もちろんよ。セルフィ。ありがとう。でも、わたしも何かすることないかしら?』
『リリス。君は、これからは1つの国の女王として全体を見ないといけない立場になる。だから、あまり自分からは動かずに、何かしなければいけない時は、なるべく、俺も含めて人を使うようにしてくれ。リタさんとバルト・ピレリリと一緒に、色々話しあってくれたほうがいいかもね』
『そう・・・ね。動いたらダメなのね・・・。分かったわ。セルフィと夜話せる時まで、待っていることにするわ』
『ボルア・ニールセンとバルト・ピレリリは、リリスがしなければいけないことを変わりに実行したり、管理をするのを手伝ってくれ。ロックは、ローグ・プレスと周囲の警備を頼む。ロックは、ミカエルと同一化しているから、警備なども誰よりも適しているからね』
『分かった』『『分かりました』』
源は、リトシスを発動させて、200kmの検索をはじめた。ボルフ王国は、放射能汚染が周囲10~15km範囲で、広がっていた。このまま放置していたら、風向き次第では、新しい土地も汚染されてしまうかもしれない。
『愛。ボルフ王国跡地からの広範囲の汚染の除去をはじめる。100%で感知して処理していってくれ』
『分かりました。源』
源のリトシスの効果で、汚染が急激に中和され排除されていった。広範囲に渡って汚染されてしまった場所も、濃度が濃く汚染されていた場所も、それぞれ、確実に、放射能を除去していった。そして、どうしても消滅できなかったものに関しては、入れ物の中に水を持って来て、それの中に入れ込み、誰もいない場所の地中深くに、保管することにした。
『放射能汚染除去利率90%です。源』
愛をフル活用して、2時間かけて、それ以上の広がる汚染を防いだ。
ボルフ王国も、源が貧民地の人たちと作った畑も、すべて消し飛んでいた。残念でしかたがない。
源は、ボルフ王国の前に置いてあった巨石飛行物体をみにいった。全面はかなりの損傷していたが、全体的には、完全には破壊されていなかった。城のように岩で作られていたからだろう。
リトシスで、他の岩を使って修復すると、空に浮かばせた。巨石飛行物体の前に、巨大な時空空間ゲートを作り、新しい土地の空へとつなげて、転移させた。
突然、空に、巨大な物体が何もないところから出てきたので、人々は、空を見上げて驚いていた。
源は、巨石飛行物体を地面へと着陸させた。
『ボルア。誰を先に中にいれるかは、君の裁量で決めてくれ』
『分かりました。セルフィ様』
司祭様から連絡が入った。
『セルフィ様。ユダ村の司祭様からですが、大量の食物の蓄えをすべて提供してくださるとのことですじゃ。ですが、これらはユダ村に置いておいて、ユダ村で、料理を作らせ、料理にしてから、そちらへ移動させてはどうかと提案されましたが、どうしましょうかの?』
『とても助かります・・・。大量の物資を保管する場所も新たに作る必要もなくなりますし、そちらで料理を作ってもらえるのは、願ってもない事です。料理を作られたことを教えていただければ、わたしが、転移で運びますとお伝えください』
『分かりました。あと、色々な家具や農業のための道具なども蓄えがあるということですじゃ。食事と一緒に持っていってくださいと言われましたのじゃ』
『ありがとうございますとお伝えください。司祭様』
『ニーナ。リリス。今の話聞いてたかな?』
『はい。聞こえていました』
『聞いてたわ。セルフィ』
『うん。ユダ村でも、食事を作ってくれるというので、ニーナの負担も減ることになるね。ニーナは、ユダ村の司祭様とやり取りをして、どれぐらい作ればいいのかの打ち合わせをしながら、作っていってくれ』
『分かりました』
リリスが、源に伝える。
『セルフィ。貧民地の女性を2000人集めることにしたわ。レジェンドとユダ村に、それぞれ1000人ずつ料理のお手伝いをしてもらうことにするわね』
『いいね。そのメンバーが集まり次第。教えてくれ。俺が時空空間を開いて、送り届ける。あと、その女性たちの中で、管理する女性をひとりずつ決めておいてくれ。料理の総責任者は、ニーナにして、そのふたりをレジェンドとユダ村の料理の管理者として、動いてもらうことにする。ニーナは、ユダ村との情報のやり取りなどに専念してもらうことにするよ』
『分かったわ』『分かりました』
源は、シンダラード森林に瞬間移動して、木々を森の環境を変えないように、バランスよく抜き取り、リトシスで、薪の大きさにして、用意した。
そして、その薪を持って、転移し、新しい土地の地面に置いた。
『ローグ・プレス。大量の薪を持って来たから、野宿する人たちが焚火をする時は、これを使うようにしてくれ』
『分かりました。セルフィ様。今のところ、順調に、約5万人ほどの男性が、広く場所を確保して、それぞれ野宿できるように準備が続いています。ほとんどが、兵士とまだ未婚の男性ばかりが外で野宿を選んでくれました。薪はどうしようかと思っていたところでした。ありがとうございます。下のことは、各スペースに白い布を木に張って、男女別に使えるようにしておきました。今のところ、モンスターも出現していませんし、特に問題はありません。ただ、出来れば、水を汲む何かがあれば、助かるのですが・・・』
『そうか。トイレの問題もあったんだね。それに水の問題か。川があるけど、毎回川に人が移動して飲みに行かなければいけなくなるしね』
『ミカエル。水を10ℓほど入れることができる軽いケースのようなものをすぐに作成できないか?』
『可能です。セルフィ様。大量に作成してもよろしいでしょうか?』
『そうだねー・・・数としては2万個ぐらいにしようかな』
『分かりました。2万個すべてが作り終えるのは、1週間後ほどになります。セルフィ様』
『おぉ。早い・・・。作っておいてくれ。これでいいかな?ローグ・プレス』
『はい。ありがとうございます。セルフィ様。食事の配膳の手伝いもみんなに伝えることができますので、指示をくだされば幸いです』
『うん。準備できしだい頼むと思う。また何かあったら連絡して』
『分かりました。セルフィ様』
『ミカエル。畑の方は、どんな様子だ?』
『順調に、畑は、耕しています。地下に穴を掘るよりも、表面をほぐすだけの作用ですから、4エーカーの土地を1家族として、今のところ5000家族分が、作られています。セルフィ様』
『よし、数時間でそこまでの動きなら畑は問題はなさそうだね。ボルア・ニールセン。貧民地の畑の割り当てをミカエルと調整して決めていてくれないか?仕事量が増えるけど、大丈夫かな?』
『はい。大丈夫です。わたしも人を動かしてやっておりますから、その仕事も割り当てます』
『畑づくりに関しては、ボルアも知っていると思うけど、その頼んだ人に、ミカエルの知識も活用しながら、管理するようにとお願いするよ』
『はい!!』
モンスターも出現していない。料理も作られている。寝るところも一応確保した。即席のトイレの場所も水もある。畑も順調に増えていっている。徐々に、仮設住宅も準備できるだろう。家具や服なども時間とともに提供できる。
ミカエルがなければ、この22万人のうち餓死した人はどれぐらいいただろうか。レジェンドやユダ村の食料の蓄えも、ミカエルが多いに役立っていた。
ミカエルを作る時は、かなり時間と精神力、体力を使ったけど、予想以上に役立ってくれて、本当に助かる。
あとは、帝国側に報告をしないとな。
源は、ミカエルを通して、サネル・カパ・デーレピュース上院議員に連絡をした。
『サネル・カパ・デーレピュース殿。セルフィです』
『おぉ。セルフィ様。戦いはどうなったでしょうか』
『ボルフ王国は、滅亡しました。こちらの死者は、0です』
『0ですとぉ!!?』
『はい・・・。わたしも驚いているのですが、この戦果は、ソロモン・ライ・ソロの能力の高さによる功績だとわたしは思っています。さすがに、死者が0になるとは思いもよりませんでした』
『ソロが・・・・ソロがそこまで活躍したというのですね』
サネル・カパ・デーレピュースは、感極まって涙を流す勢いのようだった。
『ですが、すべて計画通りというわけではありませんでした。今はとても切迫していて、簡単にしか報告はできませんが、ボルフ王国は、突然の大爆発で、すべて消滅し、消え去ってしまいました。国が吹き飛ぶほどの爆発でした
わたしは、その爆発が起こる直前に、ソロから撤退命令が出たので、100万以上の生き物を同時に転移させて、マナ力を使い過ぎて、気を失いました。100万以上の生き物の命は助かったのですが、それ以外のすべてをボルフ王国の民は、失った状態なので、服以外何も持っていない状態です。今は、急遽レジェンドが蓄えていた食料を22万人の亡国の民に与えようとてんやわんやしている状態です』
『お任せください!!セルフィ様。その食料不足の問題は、帝国が速やかに担いましょう。すぐにでも手配をして、援助させてもらいます』
『そんなことが出来るのですか?』
『今は戦時下です。帝国の裁量は1つにまとめられているので、速やかな対応は可能です』
鶴の一声というやつだ。戦時下は、面倒な政治の決め事を飛ばして、皇帝陛下の命令で速やかに命令を下し、決定することができるようになっている。
『本当に助かります。その物資は、帝国にまとめてもらえば、わたしが、転移スキルで、直接、22万の亡国の民の場所まで、持っていけます。ちなみに、その物資を10回に分けて準備してもらえないでしょうか?』
『10回ですか?』
『はい。実はレジェンドの蓄えだけで、なんとか3カ月分は、もたせられそうです。そこに、帝国からの10回にわけた物質が届けられれば、助かります。1回でこちらに持って来ても、それを腐らせずに保管することもできないかもしれません。今すでに、新しい土地には、畑を作らせていますから、早ければ3カ月後には、新しい国での農業の再開が可能になるでしょう。自活できるまでのつなぎとして、10回に分けてもらいたいのです』
『その10回に分けることは分かったのですが、何もない状態からたった3カ月では、何も収穫は得られませんよ?』
『そうかもしれませんね。ですから、余裕を持って、食料は確保しておきたいのです』
源は、レジェンドならそれが出来る可能性が高いことを知っていたが、それもこの世界では規格外の常識なので、曖昧にした。
『分かりました。そのようにしましょう。均等に10回に分けることはできないかもしれませんが、目安で、分けさせてご用意させていただきます。ちなみに、1つの国を亡ぼすほどの功績は、金貨1万枚の報奨金に値しますので、それらの使い道は、セルフィ様。また、女王リリス・ピューマ・モーゼス様の采配にお任せ致します』
『本当に助かります。では、落ち着きましたら、詳しい内容をそちらに提出させていただきます。よろしくお願いします』
よし、後は、料理が出来た頃だと思うから、料理を提供して、リリスとリタさんと会って、この先の国のイメージを聞きに行こう。