134章 歓喜
サネル・カパ・デーレピュースは、話しを進める。
「なぜ、わたしたちが、ここでセルフィ様とお会いできたとお思いですか?」
「もしかして、偶然ではなかったのですか?」
「はい。偶然ではありません。ここにセルフィ様が来ることをソロモンが予想していたのです」
凄いな・・・この子・・・名前負けしてない・・・。
「そこで、たぶんですが、セルフィ様は、図書館に入ることを望まれておいでなのですよね?」
「そうなんです・・・。サムエル・ダニョル・クライシスから渡されたゴールドカードを見せて、何度も入ろうとしたのですが、あの二人!あの二人が邪魔するんです!そりゃーそうですよね・・・簡単に情報をみせてくれるはずもないですよね・・・」
「申し訳ありませんでした。お詫びとして、わたしが入れるように計らいます」
「え!?ですが、貴族や学者などしか、入ることはゆるされていないと・・・」
「少し、お待ちください」
サネル・カパ・デーレピュースは、警備員のふたりに、話しかけた。しかし、それでも警備員は簡単には、許可を出さなかった。議員にさえ、あれだから、無理だろうと思っていたけれど、議員の形相が変化して、なんだか、脅すような態度になると、警備員が、頭を下げだした。
大丈夫なんだろうか・・・。
「お待たせしました。では、中に入りましょう」
「入れるんですか?」
「はい。セルフィ殿は、貴族です。レジェンドという国の責任者だからですね。土地を持ち、地位を持ち、これから友好国となるかもしれない貴族の方を入れないとなるのなら、あの警備員たちは、外交を阻害するものとして、処断しようとしたら、聞く耳を持つようになったのです。頑固者には、悩まされます」
どっちが頑固者なのか分かりませんが・・・。でも・・・
「ありがとうございます!」
セルフィは、心から感謝した。生きる希望、蜘蛛の糸を掴んだのだ!
警備員の横を抜け、入る瞬間、セルフィの鼓動は最高潮に高まった。
物凄くドキドキする・・・。
ドアを開けると、そこには、大量の書物が、巨大な建物の壁に並べられ、数万という数の本が、光って見えた。
凄まじいスキルをこの図書館は保持しているようだ。
あまりの喜びに、気を失いかけそうになる。
顔を振って、意識を正気に戻し、図書館の中に入った。
この図書館には、世界の書物が凝縮されている。世界中の書物が、集められ、研鑽されて、ここに並べられている。この時代の叡智そのものだと言える。
サネル・カパ・デーレピュースが、図書館の説明をはじめる。
「ここの図書館では、書物は、自由に読むことができますが、外に持ち出すことは、出来ません。必ず、読んだ本は、棚に返してください。書き物やペンなどは、図書館では貸し出すことは出来ませんから、持参しなければいけません」
「すべての本は、自由に読めるのですか?」
「はい。この図書館に入場できた者は、どの本でも、自由に読む権利を与えられています」
最高ー!帝国ばんざーい。万歳!
万歳、万歳、万々歳。と中国式で伏せたくなる。
「わたしたちも、ソロモンなどが本が好きですから、少しここを利用しますが、セルフィ様は、ご自由に読まれてください。また、お会いするのは、謁見した時となると思います。ところで、宿屋などは、大丈夫でしょうか?」
「あ。はい。大丈夫です。ゴールドカードを見せれば、無料で宿屋にも泊まれると教えてもらっていますから」
「そうですね。では、のちほどまた」
「色々、ありがとうございました」
頭を深くさげて、お礼を言ったが、顔を上げたその顔は、嬉しさでニヤついていた。
『愛。ミカエル。行くぞ!』
『はい。源。はじめてください』
『分かりました。セルフィ様』
源は、ゆっくりと歩き、最初の一冊に手を伸ばした。そして、そこで、リトシスを発動させた。
一瞬のうちに、本の内容が、データーベースへとコピーされた。
源は、その棚に並んだ本を手で触って、横に移動するたびに、それらの本をデーター化して、愛とミカエルへと流し込み続ける。
源の賜物、リトシスは、万象の法則を作り変える能力がある。空間転移もそのうちの1つだ。違う場所の空間と目の前の空間とを繋げる穴を作成できるのも、リトシスと愛の計算による干渉によってもたらされる能力だった。
そのことに気づいた時、源は、この世界でも、愛のようなAIを作り出せるとミカエルを製作したが、そのミカエルの脳であるスーパーコンピューターに、プログラムすることは不可能といってもいいことだった。それを一期に解決したのは、また、リトシスだった。自分の中にある愛の情報をスーパーコンピューターへと変換させるという干渉を可能にしたのだ。
また、リトシスでは、人やモンスターあらゆるものへの外からの干渉ができることで、回復のような新しく作り変えることもでき、読みこむことによって、愛の超高速演算機能を使って、計算して、取り込むことができた。
人や生き物という複雑で、細胞やナノレベルまで細かい情報を処理できるのであれば、本の内容をリトシスで取り込んで、それをプログラムとして、データーに残すことなどは、容易なことだった。
現代の叡智であるこの図書館の情報を源は、愛の中に、入れ込むことが出来るのだ。
2つの世界の叡智を手に入れるようなものだ。
もちろん、この世界の秘密や遺跡の謎、龍王の謎や個人的な情報などは、手に入ることはないが、ここまでの情報を持つ人は、ほとんどいない。
次々と、情報を吸収していく。
『愛。一気に行くぞ』
『はい。源』
源は、リトシスの効果の範囲を広げ、図書館の内部まで、及ぼすと、大量の情報が瞬時に入り込んできた。
『源。すべての書物の処理を完了しました』
『ミカエルは、ゆっくりでいい。時間をかけて、情報をデーター化してくれ』
『は・・・い・・・。セルフィ・・・さ・・・ま』
源は、愛の情報から、鍛冶についての本の棚を検索して、一冊の本を手に持って、読み始めた。ミカエルが、情報処理を終わらせるまでは、図書館からは、出れない。
遠距離通信が届いた。
「セル・・・フィ・・・さ・・・ま・・・ニ・・・ナです・・・」
ああ。そうか。今頃、レジェンドとユダ村では、ミカエルのソースがフリーズ状態になっているのか。ニーナが、何かを伝えようとしているけれど、通信すればするほど、処理は遅れるので、通信を遮断した。
ミカエルの異変を伝えようとしていることは、分かっていたからだ。
申し訳ないけど、待ってもらうしかないな。始める前に、伝えておけばよかった。あまりの歓喜に酔って、配慮が足りなかった・・・。
『ところで、愛。この世界の武具への付加のことだけど、何か分かったことがあるか?』
『はい。源。核というものの認識が間違っていたようです』
『どういうことだ?』
『核は、すべての生き物に存在しているものですが、マナやスキルを具現化するための媒体だと認識していました。源』
『そうじゃないのか?』
『いえ、そうなのですが、それだけではなかったようです。先ほど、サーロン様が、行った鍛冶スキルでの付加ですが、それは、核が持っているスキルを付け加えたわけですが、その時に、仰っておられたように、想い=イメージが、具現化に影響するというものでした
その想いというもの、人の脳で生み出された想像力によって、人は動き行動をして、能力をつけて、具現化していきます
そこで、人には、すでにスキルのようなもの、ペリル書簡552ページに書かれている名称では、アーツとういものが、生み出されているというのです。源』
『アーツ?』
『スキルに至る前のスキルとでもいえるものでしょう。源には、まだ鑑定のスキルがありませんから、わたしにも測定はできませんが、人や生き物たちには、それぞれ、アーツという能力が生活とともに成長して、育っているようなのです
そして、そのアーツが、スキルへと変換されるためにあるのが、核だとマサロニーネ物理研究33ページに記載されています。源』
『えーっと、つまり・・・俺が今持っている速度向上とかのスキルがあるけれど、それを取る前から、速度向上するという意識で訓練とかをしていれば、それがアーツになって、将来は、スキルとなるという可能性があるというのか?』
『その通りです。源。実際にそれを体現したのが、2000年前に存在した。魔法国モーメントの始祖エジプタス・エミル・ガルシです
彼女は、何らかの情報を遺跡から引き出して、次の段階へと世界を変えたと言われていますが定かではありません
時代が変わるその変化のことをジェネシスアルトレーションと言います。ある種の大きな世界を揺るがす存在が現れた時、世界の法則も変わり、次の段階へと向かうという見解もあるようです
そして、エジプタス・エミル・ガルシは、想像したマナをアーツとして蓄え、核によって具現化し、その具現化したマナを封印の珠に影響を及ぼして、現代の伝授できるマナを生み出したというわけです』
『情報が多すぎて、何が言いたいのか分かりずらいが、いわゆる核を使えば、アーツをスキルへと成長させれる。そして、そのアーツの元となるのが、人などの想いであったり、イメージであるというわけだな?』
『その通りです。源。そして、源の場合は、封印の珠を使わなくても、能力追加球を作り出すことが出来るのですから、新しいスキルを生み出して、さらに他人にも伝授できるわけです。そして、そのきっかけを作ったのは、源かもしれません』
『ん?なに。なに?』
『2000年前に、ジェネシスアルトレーションを発生させたのが、エジプタス・エミル・ガルシなら、この時代のジェネシスアルトレーションを発生させた存在は、源かもしれないということです。源』
『なぜそんなことが言えるのかな・・・なんか、龍王の意思の予言を聞いた時の気持ちになったよ・・・』
『あくまでも、その可能性があるということです。源』
『えーっと・・・つまり・・・アーツを意識して、スキルやマナを作り出したとして、それを作り出すための媒体が、核だということだな。その核を作り出して、スキルとして定着させた核を使えば、鍛冶スキルで、強力な武器を作成できるというわけだな?』
『はい。その通りです。源。つまり、源の持っているリトシスは、実は、源だけのものではなく、他の者たちも、その恩恵のようなものを使ってきたということです
そして、それが顕著にあらわれているのが、源の賜物であるリトシスではないかと思われます』
『だから、俺が原因で、世界の法則が、変わり始めていると推測し出したんだな?リトシスがあるからね』
『はい。源』
『狩りで退治したモンスターたちの核を使って、その核に、スキルを入れることは可能か?』
『鍛冶4のスキルを手に入れることができれば、スキル効果によって付加可能です。源。ですが、そのためには、鍛冶師がそのスキルを保持しているか、それとも封印の珠が必要になってきます』
『俺は一度、ミカエルのソースに能力追加珠で、付加して、マナソースを作成したけれど、ほとんどがマナは、1つしか付加できなかった。それをいくつも付加するためには、どうすればいい?』
『あの時は、核を使わず、太陽エネルギーから具現化しようと試みたものでした。1つぐらいのマナやスキルであれば、付加は可能ですが、それ以上の能力を具現化しようとすれば、核が必要になってきます。その核の質によっても、付加できる数は変わってきます。源』
『なるほどね。マナソースや武具を強化しようとするなら、核が必要で、その核の質も関係してくる。そして、その核を使えば、新しいスキルやマナの開発も可能かもしれないというわけだな』
『はい。その通りです。源』
『でもさー。不可解なのは、エジプタスとかいう、たぶん魔法使い?その人は、どうやって、自分が開発したマナを遺跡に出てくる封印の珠に、プログラムしたんだろうな』
『遺跡への情報は、帝国図書館の書物にも、記載されていません。分かりません。源』
『それこそが、遺跡の謎ってやつなんだろうな・・・』
『ですが、そこから分ることは、この世界のシステムに、遺跡を通じて行えば、干渉できるということです。源』
『たしかに・・・そういうことになるよな・・・てっきり、俺は、マナとか、スキルは、運営が作り出したものだと思っていたけど、一部は、この世界の人間によって造られたかもしれないってことだよね』
『はい。源』
『俺の存在が原因かは、分からないけど、今現在のこの世界の常識が、変わり始めているのなら、ここの図書館の情報だけでは、この先、融通が効かなくなる可能性があるな』
『その可能性は、ありますね。源』
『新しいスキルを作るというのも魅力的だけど、まずは、俺たちの武器やソースに、核を使って、付加して、強化したいところだな』
『そうですね。源。そうすれば、レジェンドの戦力は、2割増しになる計算になります。源』
楽しみだ。